ようこそ、逸般人たちのいる教室へ   作:山上真

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04_全総刃:01

 お話にならない。……自分の所属するクラスを端的に表現するなら、その言葉がお似合いだろう。

 授業が開始した当日。俺は早くも自分のクラスに見切りを付け始めていた。

 何故なら、授業中の私語、居眠り、携帯操作をする輩が多すぎる。教師が特に注意しないもんだから、瞬く間に伝播してしまったのだ。今日は授業の説明がメインだったとはいえ、流石に酷すぎる。

 真面目に授業を受けている者など、ほんの一握りである。これでは注意するだけ無駄というものだ。注意が効果を発揮するのは、相応の危機感を持っていればこそ。早々に楽な環境に浸りきってしまった相手には、『馬の耳に念仏』である。

 三時間目の休み時間、俺は清隆に話しかけにいった。清隆の隣席である美人さん――名前は知らない。初日の自己紹介の際、彼女は名乗ることなく席を立って行ったためだ。――は席を外している。目の保養的な意味では残念だが、話す内容を考えると逆に都合が良い。

 

「あ~あ、割かし美人さんや可愛い子が多いクラスなのに残念だ。……そうは思わないか? 清隆」

「いきなり何だ。……まあ、言わんとすることは分かるが」

「分かるんなら、手本にする相手はキチンと選べよ? 昨日の自己紹介の時も思ったが、今のお前はハッキリ言って浮いている。無難とも言えない自己紹介から察するに、おそらくは『平凡に過ごしたい』ってとこだろうが――正直、この学校で生活するに当たっては、うちのクラスの奴は手本にならんのが多すぎる。流石に全員とは言わんが、反面教師にすべき相手の方が多いのは確かだな」

「……そんなになのか?」

 

 俺の言葉に、清隆は困惑を露わにした。

 無理もない。清隆にとっての『一般常識』は、あくまでも知識上のものでしかないのだ。

 俺ですら、肌で理解するのに相応の時間が掛かったのが事実。あの施設を脱走してみせた手腕は流石と言えるが、俺以上にあの施設の空気に染まり、俺より遅く抜け出した以上、如何に清隆でも修正時間が足りないのは明白だ。

 

「ああ。ここが一般的な高校であれば別に問題は無かったろうさ。だがな、ここは特殊な高校だ。世間一般とは基準にするべき部分が違う。Sシステムの詳細、お前も見当が付いているんだろ?

 率直に言うなら、このクラスは『底辺学校』のそれだ。そりゃあ底辺学校でも出来る奴はいるだろうが、客観的に見てどんくらいのレベルだよ? って話になる。万人認めるほどの相手の場合、所属する確率自体が低過ぎるのはお前でも分かるだろ?

 言わば『厄介者』同士が結び付いたのがこのクラスだ。実力を抑えて周りに迎合するのは自由だが、抑え過ぎると目も当てられん結果になる。金が無くてまともな生活が出来るか? 親が出してくれるわけじゃなく、自分で稼がなきゃならんのだぞ。しかも、月の給料は一定じゃなく、可能性でしかないが連帯責任制だ。

 訊くが、お前の知る『一般常識』と照らし合わせて、このクラスはどうだ? 一流会社の一部署だと仮定して、まともに給料が支払われる出来だと思うか?」

「……いいや」

 

 俺の問いかけに、清隆は難しい顔で答えた。

 

「だろ? このクラスに意義があるとすれば、『最底辺』の見本としてだ。ああはなりたくない、あそこまで落ちたくない、そんな風に周りの心情を誘導するのさ。俗に言う『窓際』だ。仕事の面ではいなくても構わない。……ここが会社だとすれば、それが雇い主側の本音だろう。

 んなクラスに配属されちまった以上、まともな生活を送ろうと思えば、評価を覆す程の実力を示さざるを得ないだろうよ。

 人間、生きていれば誰だってミスはするし、『能ある鷹は爪を隠す』の例もある。学校の評価基準がどうあれ、そこに勤める教師が人間である以上、確かな実力を示せば目を向けるだろうし、その度合いによっては何だかんだ名分を用意して支援もしてくれるだろうさ。

 特に、俺たちの実力は一等上等だ。普通に考えて、一般的な『学生』の枠に収まるもんじゃない。捨て置くには惜しい、そう思う教師は必ず現れる。

 だがな? 実力を抑え過ぎれば、その可能性もゼロになる。ましてや、最初は実力を抑えていて、後々にでも発揮することになれば、十中八九クラスからは『裏切り者』扱いだ。そんな実力があるなら最初からやれよ! と、クラスメイトは自分たちを棚上げして、そんな文句を言ってくるだろう。

 ハッキリ言って、そんな生活のどこが楽しいってんだ? それよりは、最初から実力の高さを見せつけて、無理矢理にでも黙らせた方がマシに決まってる。

 つまりは、どの道クラスからの批判は避けられない、ってわけだ。必要以上に実力を抑えるのもストレスが溜まる。――なら、自分の楽しみを優先させて何が悪い?

 分野にもよりけりだが、他のクラスにも俺と渡り合える奴はいる。自然、お前とも渡り合えるだろうさ。俺たちが気にするべきは、クラスよりもそっちだ」

「理解は出来る。……だが、実力を出し過ぎれば、オレがここにいることをあいつらに気付かれる。いずれは気付かれるにしても、出来るだけ遅らせたいのが本音だ」

「言わんとすることは分かる。……だがな? 結局はその思考も、お前自身の経験が足りないからだ。バレたところで、向こうも碌な手出しは出来ねえよ」

「……どういうことだ?」

 

 再び、清隆は困惑を露わにした。

 

「この学校を抜け出す条件は二つ。退学か、卒業かだ。……ここまではいいな?」

「ああ。オレは施設の奴らからいらん手出しをされて、退学になることを恐れている」

「それが間違いだ。この学校の掲げる主義を鑑みると、狙った奴をピンポイントで退学に出来る可能性は低い。先に淘汰されるのは、実力の低い奴だ。

 なるほど、あの施設の力を思えば、政府直営のこの高校にも手出しや口出しは出来るだろう。条件次第で退学を促す様な試験だって用意出来るかもしれない。それは否定しないさ。

 だが、限度があるのも事実だ。そして、ここに干渉出来るだけの力を持つ相手は、何もあの施設に限った話じゃない。現に、ここに入学した奴の実力を下げないためだけに、敷地内にとある施設が用意され、『お目付け役』として人員も派遣された。……世の中には、そこまで出来る力を持つ奴もいるってわけだ。

 分かるだろう? そこまでする奴にとっては、必要以上に退学を促す様な試験など邪魔でしかない。優先順位としては低くとも、『社会評価』ってやつが無いよりは有った方が良いのも事実だ。である以上、本人が自分の意思で退学を望むのなら、或いは実力が足らずに退学になるならまだしも、そうでないなら成り行きに任せて卒業を待つだろうさ。

 その一方で、そいつらが外様であることも、そいつらの基準があることも間違いない。この学校の元々の方針には従っても、それを外れるようなら看過しないだろう。それこそ、場合によっては主導者を殺してでも止めるだろうさ。

 そんだけの力を持つヤバい奴が目を向けてる生徒が、俺たちの同級生にはいるってことだ。同時に、そのヤバい奴とは反対の方針を掲げる奴にも目を向けられている。……今挙げたのは、あくまでも一例だ。全く別の理由で、全く別の人物に目を向けている、或いは向けられている奴だっているかもしれない。

 そら。そんな状況で、必要以上にあの施設を怖がる理由がどこにある? 清隆、お前はある意味で経験不足であり、だからこそ、必要以上にあの施設を高く見積もっているんだよ」

 

 さて、これでどこまで清隆に響くか。正直な話、清隆には最初からある程度実力を示してもらわなければ困るのだ。

 清隆が実力を披露しようとしまいと、いずれあの施設はここに目を向ける。良くも悪くも、あの施設から『最高傑作』と謳われるだけの価値があるのだ。目を向けたなら、必ず何らかの働き掛けをしてくるだろう。

 それは別に構わないのだが、問題なのはそれを受けた学園側だ。……外部からの働き掛けを受ける生徒だ。ほんの一時でも、学校側からの清隆に対する注目度が上がる可能性は否めない。

 清隆が問題なく『平凡』を演じていられたのならば、Dクラスということも相俟って、劣等生であると思わせられただろう。外部から退学を促されても、然程疑問には思われないだろう。

 しかし、現状では一般常識に対する差異が激しいこの男のことだ。まず間違いなく天然ボケにも等しいミスをする。ともすれば、既にやっているかもしれない。例えば、入試で全教科の得点を50点に揃えるとか。

 そのミス次第では、学校側――教師が何らかの働き掛けをしてくる可能性だってある。無いとは思うが、無理矢理にでも実力を披露することを求めてくるかもしれない。実力を隠すが故に『弱み』となってしまうわけだ。

 それでも、清隆の実力ならばどうにか出来るかもしれない。だが、そんな真似をしてしまえば、際限なくエスカレートさせることにもなりかねない。そして結局、清隆は『平凡』から遠ざかり、要因となった人物に怒りを向ける。……これでは誰にも救いがない。

 もちろん、これは『最悪』とも言える推測だ。起こり得る可能性は低い。しかし、ゼロではないのだ。まして、教師もまた人間である。欲望があり願いがあるのだ。心底から『聖職者』たることを望む方が間違っている。

 そしてどうやら俺は、起こり得る未来予想図に対して『他人事』と捨て置ける気がしない。今の時点でここまで気を回している事実が、そのことを証明している。……清隆を見捨てて脱走したことに対する贖罪の念か、或いは清隆に対する同胞意識か、その理由までは定かじゃないが。

 

「お前の言うことは正しいと思う。だが、言葉だけだと信じ難いのも事実だ。本当にそんな奴がいるのなら、オレにも会わせてくれ。自分の目で見て確認したい」

「構わないぜ。今日の昼飯を一緒に食うことになってるからな。まあオマケもいるみたいだが、確認するだけなら問題ないだろ。放課後には『お目付け役』のところにも連れてってやるよ」

「分かった。その時はオレも同席させてもらう」

「決まりだな」

 

 どうにか、こちらの流れに乗せられたようだ。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 昼休みの食堂は人が多く、応じて喧騒に満ちている。だからこそ、必要以上に会話を聞き咎められることもない。

 テーブルの一つを陣取るや否や、早速響が口を開いた。着席した面々の前には、種雑多な料理が並んでいる。ちなみに、俺と清隆は揃って『山菜定食』を注文した。無料の一品である。

 

「料理が冷めちまうし、食べながら自己紹介をやってくとして……クラス順で良いか?」

 

 反対意見は上がらない。

 A組:鐘鳴響。

 B組:白浜翔、一之瀬帆波。

 C組:緋勇龍也、軽井沢恵、坂柳有栖。

 D組:綾小路清隆、全総刃。

 以上の八名が、一堂に会している。

 

「てか、響。お前は誰も連れてきてねえのかよ」

「悪いか! クラスで目を付けた奴は全員先約が入ってたんだよ。まあ、無理もないけどな。一年生は昨日、食堂を利用してないわけだし。昨日の内に流れで約束してる奴は少なくないだろ」

 

 そのセリフは尤もで、同じクラスの女子がグループで座っている姿が目に入る。

 

「帆波さんもそうだけど、まさか軽井沢さんまでこの学校に入ってるとは思わなかったよ。思わぬ再会ってのはあるもんだね。こうなると、もしかしたら他にもいるかもしれないなぁ、なんて思ってしまうよ」

「思わぬ再会、ってのは同意だけどね。……基本、学生の人脈なんて高が知れてるもんなんだけど、鐘鳴君と白浜君に限っては例外な気がするわ。白浜君は言うまでもなく、鐘鳴君は『(いつき)』でしょ? どこに知人がいてもおかしくない感じ」

「ああ! 鐘鳴君をどこかで見た気がしていたのですけど、雑誌でしたか。入院中、馬先生に自慢混じりに紹介されましたよ。娘の教え子で、若い頃の自分に負けず劣らずの美男子だと……」

「ってことは、坂柳さんは剣星先生の知り合い? あのスケベおじさんの近くにいて大丈夫だった? セクハラされてない?」

「盗撮されたりもしてない? 訴えるなら力になるよ? ――あの人、あらゆる中国拳法を修めた達人であるのは間違いないし、自分で漢方薬調合するし、鍼灸院を経営してるし、中華料理もプロ級と、凄いほど長所があるんだけど、同時に極度のエロ親父なんだよね。好きなものは女子高生、趣味は盗撮と公言して憚らないし……。

 うちの父さんにとっては『エロ友だち』であり、『日本一素晴らしい中国人』として尊敬もしている。母さんも度々ツッコミを入れてるけど、本心から嫌っているわけじゃない。僕だって好きだ。――ただ、そんな風に許容出来るのは、相応の付き合いがあるからこその話であることも間違いじゃないからね」

 

 響と翔は真面目な顔で坂柳に問い掛けている。

 次いで補足説明を聞けば、馬剣星とやらはとにかく凄い人物であることが分かった。同時に、二人が心配するのも尤もだ、ということも。

 

「ともあれ、女性陣と綾小路とは連絡先を交換しておきたいな。……どうだい?」

 

 響の提案を誰も断ることはなく、そのまま全員が互いの連絡先を交換した。

 続けて、響が口を開いた。

 

「俺、彼女募集中だからさ。立候補してくれても良いし、他の女の子を紹介してくれても良いよ? ってまあ、こんなことを言うと嫌われそうだけど、正直、自分でも好みのタイプが分かってないんだよね。

 言い訳がてら自分語りをさせてもらうと、小学一年の時からずっと『自分磨き』に精を出してたんだ。まあ、そもそものきっかけは卒園式でフラれたことなんだけど。何の変哲もない一般家庭の生まれで、何の取り得もないガキだったし、フラれたことには自分でも納得してるんだ。

 ただ、当時の自分は途轍もなく悔しくて悲しかったんだろう。以来、見返すためか、或いは新たな恋に向かうためか、とにかく『自分磨き』に精を出したってわけ。

 本末転倒と言うべきか、その子の顔も名前も覚えていないんだけどね。覚えているのは、『貴方では、私の相手に物足りないわ』っていう断りの文句だけ。まあ園児だったから、実際はもう少し舌っ足らずだった気もするけど。ともあれ、その言葉が今でもたまに脳内に響き渡るんだ。

 だから、その言葉をバネにして、九年間、努力に努力を重ねてきた。自分を磨き上げてきた。辛かったけど、楽しいことも多かったし、後悔はない。

 そんで、不意に昨日、正気に戻ったんだよね。彼女作って恋の成就を迎えないことには、俺、報われることないじゃん……ってさ」

 

 チャラい出だしから始まったセリフも、最後まで聞けばしんみりとした空気を迎えていた。

 ありがちと言えばありがちなきっかけだ。或いは、転生特典が齎した必然なのかもしれないが。

 

「……なるほど。鐘鳴君は一種の呪縛に囚われているわけですか」

「けどさあ、仮に私が彼女になったとして、それで解決する問題なのって話じゃない? 要は、恋に落ちて初めて好きな子のタイプを自覚する、ってパターンでしょ。それこそ、行き当たるまで取っ替え引っ替えするしか手はないんじゃない?」

「そういう理由があるんなら軽々しく否定も出来ないけど、間違いなく醜聞だね」

 

 女性陣は口々にそれぞれの所見を述べた。理解は示しているが、全肯定はしていない。

 

「だよね~。自分でも自覚してる」

「う~ん。彼女探し、僕も響に便乗させてもらおうかな?」

『はあっ!?」

 

 翔の言葉に、全員が驚愕を露わにした。

 

「家庭的事情と個人的事情の両面でね、結婚相手には相応の覚悟を求める必要があるんだ。だからと言って、愛のない結婚は御免だし。

 そうなるともう、僕が惚れ込んだ相手を落とすか、惚れ込まれた相手に僕が落とされるか、そのどちらかしかないんだけど、いずれにしても時間が掛かるし。

 そうは言っても、相手の目途も立っていないのが現状なんだよね」

「あ~、納得。白浜君は今の時点でも社会的成功者と言えるけど、そこにあの『道場』が加わればねえ……。ってか、むしろ『道場』周りの理由の方が大きくない? 安全性はぶっちぎりで高いけど、危険度もそれだけ高いじゃん」

「うん、まあ、そういうこと」

「どういうこと!?」

 

 訳知り顔で軽井沢が口を開けば、翔もそれに同意した。そして、すかさず一之瀬が食って掛かった。

 

「私も詳しくは知らないんだけど、簡単に言えば、白浜君の家系って武術のサラブレッドなわけよ。お父さんかお母さんか、どっちかは分からないけどご実家が道場をやってるし。そこに『類は友を呼ぶ』と言わんばかりに複数の達人が住みついてるし。

 権力はないけど権威はあるって言うか……。必然、妬み嫉み恨みも相応に買っているわけ。その中には、報復に手段を選ばない連中も相応にいるってこと」

「武術に継承は欠かせないけど、危険性を自覚するが故に誰しも弟子を取るのに慎重でね。そんな折に出来た弟子が僕の父さん。武術の才能はてんで無いんだけど、何の因果か、武術家としては異例の、道場に住む達人全員の弟子になったわけ。結果、多種多様な武術を一身に修めてる。そして、僕もまた両親から武術を学んでいる真っ最中。

 武術界隈では有名な話なんだけど、時の流れ故か、中には知らない人もいるみたいでね。以前、うちの道場に来た軽井沢さんが弟子と勘違いされたことがあるんだよ。それで終われば何の問題も無かったんだけど、軽井沢さんを人質に取って脅してくる始末でね。結果、一つの反社組織が日本から姿を消しましたとさ」

 

 翔は軽い口振りだが、事実であれば大した問題である。いやまあ、嘘を吐く理由があるわけでなし、紛れもない事実なんだろうが……。

 しかし、だとするならば翔の言葉も納得である。この『陸の孤島』は、反社組織的な意味でなら一種の安全圏と言えるわけだ。

 

「僕と付き合うだけでも、相手にはそういう危険性を承知してもらわないといけないわけでね。正直、出会いがあっても関係の維持・向上が難しいから、どうしても二の足を踏んじゃうんだ」

「それはまた……鐘鳴君とは別ベクトルで難儀ですね」

「って言うか、誘拐って……。え? ホントに?」

 

 坂柳と一之瀬はそれぞれ異なった反応を返すが、この場合、一之瀬の方が一般的だろう。一般市民にとっては、誘拐なんぞ早々縁の無いものだ。

 

「残念ながら、本当なんだよね」

「……分かった! 私、頑張るね翔君!」

 

 こぶしを握り締め、翔を見つめながら一之瀬が宣言した。……どうやら、翔は既に一人落としているらしい。出会ってまだ短いが友人のことだ。是非とも頑張っていただきたい。って言うか、俺も彼女が欲しい。

 

「これがリア充というものか……」

「あら? 私は綾小路君をロックオンしていますよ? そう、幼い時に貴方を見かけたあの日からずっと……。フフ、これも一目惚れと言うのでしょうかね?」

「それは……光栄と言うべきなのか?」

「さあ、どうでしょう? 私の目的は、貴方に敗北を与えることですから」

 

 バチリ、バチリ。清隆と坂柳の視線が交わる。

 坂柳の言葉が真実なら、必然としてあの施設を知っているということだ。つまり、俺のことも知っていておかしくない。にも拘らず、坂柳の目に映っているのは清隆だけ。

 

「チッ、爆ぜろ清隆。このイケメンが!」

 

 その事実に、俺は清隆に対して悪態を吐かずにはいられなかった。    

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