ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
カーブと言うか、適当に片付けて整地した交差点だ。最高速を維持したままクリアすることはできそうにない。
かと言って後ろから鉄球が迫っている状態で、下手に速度は落とせない。そして一斉に突っ込んだら、事故る可能性も上がるというものだ。だったら。
俺はオープンチャンネルでインカム越しに伝える。
「俺が殿になる! お前らは順に飛び込め!」
「隊長君!? だが……」
聞き入れるかどうか怪しいところであったが、しっかりと聞いていたらしいクラハムが声をかけてくる。
「迷ってる暇も無いし余裕もねえ! 団子で突っ込んだら諸共だってのは分かるだろ! 俺なら何とかする!」
やりたかねえが、何とかできる手段を持っているのは俺だけだろう。ホントやりたくないんだが。
「……分かった。武運を!」
「おいいいのかヨ!?」
「ごちゃごちゃ言っている時間が惜しい! 彼の言うとおりに!」
真面目にやってると頼りがいのある女なんだよなあ。参加者に指示を飛ばしているクラハムを見て、いつもああでいてくれたらありがたいんだがと思う。無理だろうが。
まあそれはそれとして!
「上手く行ったらお慰みってなあ!」
……思いついたときは便利なんじゃないかなあと思ってたんだが、ホント使いどころがなかったんで今まで忘れてた。なにしろこんな特殊な状況なんてなかなか無い。普通の使い方だけで十分だったのだ。
まあいい、これも何かのきっかけだ。使えそうなら使ってみるさ。俺は迫り来る鉄球に速度を合わせ、できるだけ距離を近づける。
「増幅っ!」
テックを使う。いつもと違うのは、鉄球と地面の
俺は自身のテックを色々と鍛えた結果、一つのことに集中させることによってより高い効果を得るという技術を身につけた。さらにそれを発展させ、一つの
しかしこんな状況、攻撃ではないがさりとて排除するには苦労するような厄介な物、なおかつただ転がってくるだけのシロモノ相手であれば。
果たして。
「おおっと! GS隊長が鉄球に近づいて……なんか鉄球の動きが鈍くなっています!? これはどういうことでしょうかイケハタさん!?」
「あら、なんかテックを応用しているみたいね。あの重量を留めてるんなら、ちょっとすごくない?」
気楽に言ってくれてるが、そんなに楽じゃねえんだよなあ! こういう重量物が相手だと、テックを使う負担が半端ない。単一現象に集中するからこそ、できる芸当だ。
「んぎぎぎ……」
うめき声が漏れる。脳味噌が鷲づかみにされて引っ張られているような感覚。痛みはないが圧迫感がすごい。だがその甲斐あって、鉄球は徐々に動きを緩める。完全に止めるのは無理だが、人が軽く走る程度くらいには速度を落とした。
「ここまで来りゃあ、後は一気に!」
参加者が全員
バックミラーで確認してみれば、ゆっくりと交差点に到達した鉄球は、そのまま奥の瓦礫へとめり込み動きを止めた。ひとまずは乗り切ったか。
「隊長君、助かった。このクラハム感謝の極み」
「礼を言うのは後だ」
通信越しにクラハムが語りかけてくるが、俺は素っ気なく返してスピードも落とさない。
なんでかって?
「なんとテックを使って鉄球を押しとどめ、大きなトラブルもなく難関をクリア! 大仕掛けでしたがあっけなく躱されてしまいましたねイケハタさん!」
「そうね、ちょっと駆け引きがあるかと思ってたら隊長ちゃんやるじゃない。……ところで
…………やっぱりかよ。
「おいポリ公、いまのって……」
「分かってんならアクセル緩めんな! お代わりが――」
言葉を交わしているうちに、ごごん、と周囲から音が響いた。
そしてコース左右の廃ビルが、ゆっくりとこちらに倒れ込んできた。
「――来やがった!」
「ぬう、一難去ってか!」
「次々と派手にやってくれんじゃねェかヨ!」
またしても脇目も振らず全力全開。ホントに某ジョーンズさんとこじゃねえんだぞこん畜生!
「お~っほっほっほっほ! ギミックが連動するのは当然よねえ! まともに1週目が終わるとは思わない事ね!」
「イケハタ氏絶好調! もう完全に悪の黒幕顔です! 果たして参加者は無事生きて帰れるのか!?」
「あのカマ野郎がああああああ! 後で絶対殴るううううう!!」
「良いからアクセル踏んでくださいまし!」
『死ぬうう! 死んじゃううううう!!』
背後で次々とビルが倒れ粉塵が上がる中、俺たちはただひたすらに駆け抜ける!
ってまだ続くんだこれ!?
一周どころかまだ最初のカーブ曲がっただけ