ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
皆様ありがとうございます。おかげで捻れ骨子が調子に乗って次ができました。
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GSと言う職場にも、完全な休日という物はある。
法律が機能しないこの無法地帯でも、いやだからこそ休みは必要だ。いくらタフでなければ生きてはいけないと言っても、年がら年中24時間戦えるわけじゃないんだから。
ということで久しぶりの休日である。とは言っても俺はそう多趣味というわけじゃない。精々惰眠をむさぼってから、射撃場にでも出かけるくらいだ。今回もそうした。
「……なのになんでまた、銃撃戦に巻き込まれてんだろうな俺」
「ごめんねえたいちょーさん。私のせいで」
仕事と同じように物陰に身を顰めて弾雨を凌いでいる俺の隣で、申し訳なさそうにしている少女。
言わずと知れたお嬢。
何でこんなことになったのか。俺は少し前のことを思い返してみる。
昼を少し過ぎた頃。自宅を出て適当な飯屋で朝食兼昼飯をすませる。こんな無法地帯でも、普通にインフラは生きていて、店を構えて商売してる者がいた。もちろん全部不法である。
こんなところでわざわざと思われるだろう。脛に傷を持つ者たちが、法の目を逃れるために居を構えた……と言うこともあるが、最大の理由は多分、
封印都市は通常の国土ではない扱いであり、政府、公営組織の介入をほとんど受けない。その代わり公共サービスなどは一切無く、インフラから何から全て民間の業者が直接請け負っていたり、住人が勝手に整えていたりする。かつての九龍城みたいなものだ。
ちなみに本場の九龍城はダンジョンの『触媒』となり、香港を侵食してとてつもなく拡大し来訪者がうろつき回っていたりするが、それでも普通に住人がいるというのだから、人間は逞しすぎる。
ともかく探索者を目指さない堅気な人間でも、一攫千金を狙ってこの町を訪れたりするわけだ。もっとも適応できなければ食い物にされた挙げ句行方知れずになる、なんてのはざらにあった。
ダンジョンは全世界に酷いダメージを与えたが、安定すると莫大な富をもたらすようになった。来訪者の死骸から採れる希少物質。ダンジョンの構成材から採取できるレアメタルやら何やら。ダンジョンや来訪者を研究することによって発見されたり開発されたりする新技術など。全てが一攫千金に値する。金になるなら人が集うのは道理。だから人々は命を賭けてダンジョンに関わろうとする。
実のところ国家主導で大規模にダンジョンの資源を得ようとする動きはあった。しかしどうやらダンジョンには何らかの自己防衛機能があるらしく、大がかりに介入しようとすると来訪者の数が爆発的に増えて凶暴化したり、ダンジョンの構造自体が劇的に変化したりして、殺意マシマシになる。多くの国がそれで大層痛い目を見た。九龍城が香港全土を覆うほどに拡大した理由、と言えば大体の所は察してもらえると思う。
結局民間に請け負わせ探索者やって貰って、そこそこの規模で資源の採取などを行う、と言う形が一番穏当で効率が良かった、ということだ。……うん、益々ゲームの舞台設定である疑惑が高まったな。
つらつらと考えながら歩いていると、遠目に見知った顔を見かけた。お嬢である。
普段なら必ず所属するクラン――ホープブリケイドの連中が1人か2人一緒に行動しているはずなんだが、見たところ1人だ。不用心だと眉を顰めた。
彼女は特殊なテック使いだが、戦闘能力は高くない。一般人に毛の生えた程度だろう。ゆえにこの町で単独行動などしないはずだったのだが。
声をかけるべきか。迷う俺の視界の端に、
なんと言うことの無い、ボックスワゴンである。駐車する場所を探しているのか、速度を落としてゆっくりと走行していた。
直感に従う。駆け出しながら懐から銃を引き抜きスライド。身体能力を最大限に増強。道路を飛び越え中央車線に着地し再びジャンプ。お嬢の背後、ワゴン車の前へ一気に到達する。
普通であれば、運転手あたりが「何すんだ馬鹿野郎!」とか怒鳴り散らすシチュエーションだが……。
罵声はなく、がらりとサイドのスライドドアが開かれる。そこから降りてこようとする人間たちが
運転席、助手席、降りてこようとした3人にそれぞれ2発ずつ叩き込んでやる。狙い違わず、全員を撃ち倒した。降りてこようとした連中が手にしていたサブマシンガンが転がり落ちる。
「!? 誰……たいちょーさん!?」
銃声に振り返ったお嬢が驚きの声を上げた。一瞬俺だと分からなかったようだ。まあそれもそうか。普段のスーツ姿ではなく、カーゴパンツに長袖Tシャツ、その上にデニムのシャツを前開きで羽織って、サングラス状のシューティンググラスって言う私服姿だ。そこらの兄ちゃんとさして変わらん。
「つけられてたぞ。1人とは不用心だな」
お嬢に話しかけつつマガジンを付け替え、チャンバーチェックを行いセーフティをかけてから銃をホルスターにしまう。何の事情があるかは知らんが、このまま放っておくわけにはいくまい。周囲を警戒しながら話を続けようとして――
一瞬の後、
強化した視界の端にスコープの反射光が映らなかったらヤバかった。こいつはかなり組織的な行動だ。そこらのチンピラじゃあるまい。
「心当たりは?」
俺に抱え込まれたお嬢は、少し考えてこう答えた。
「たくさん」
ふむ、分からんでもない。お嬢のテックは
そう考えていたら、新たな気配。逃げたり隠れたりしている一般人とは違い、こちらに駆け寄ってくる足音だ。
「忙しない休日になりそうだ」
苦笑してから、俺は再び銃を抜いた。
推奨MGM、Gのレコンキスタより【天気晴朗なり】。