ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
後半戦が始まった。
「「「「「セイヤセイヤソーレソーレ! セイヤセイヤソーレソーレ!」」」」
初っぱなから地獄だった。
「おおっとぉ!? マッチョバニーメンたちがぁ! コースの端に埋まっていた鉄球にわらわらと取り付いたぁ! 一体何をする気なのか!」
実況の言うとおり、マッチョバニーどもがわらわらと鉄球に取り付く。そして。
「「「「「セイヤセイヤソーレソーレ! セイヤセイヤソーレソーレ!」」」」
あろうことか10人ほどで鉄球を瓦礫から押し出し、そのまま球転がし競争のように爆走し始めた。なぜだか鉄球の上で数人がラインダンスを踊っているというおまけ付きで。
それが後方から追いかけてくるのである。
………………。
わけ分からなさすぎて怖いわっ!
「なんとぉ! 放置されていた鉄球を人海戦術にて再利用っ! これはエコ! あまりにもエコ! エコすぎてわけが分かりません!」
「うちの子達がぜひやらせてくれって。テンション上がって良い感じよね。……決してネタが無くなってきたからじゃないわ。きっと」
ネタが無くなってきたにしても、もうちょっと理解できる方向性で来て欲しかったなあ!
ともかく、なんかゲームの中間ボスか強制イベントみたいなのが背後から迫ってきているわけだ。しかも連中バフ系のテック使いを集めたようで、その速度は徐々に上がっていた。
しかも……くっそ、
「鉄球と連中。同時にテックを使って動きを鈍らせるのには限度がある。それに近づいたら反撃の一つもするだろあいつら。ああ見えて考えてやがんな」
ただの色物じゃない。単一事象集中型のテックの弱点、集中力が必要なことと、ある程度近づかなければならないということを妨害するために、マッチョどもを動員したようだ。やっぱただのオネエじゃねえわイケハタ氏。
「しかし普通に考えるんなら、ああいうのは曲がれなさそうなんだが!」
言いながらシフトを変えハンドルを切る。第一コーナーという名の直角よりは緩やかだが、速度が乗っているときついカーブを走り抜けていく俺たち。
その背後で。
「「「「「セイヤセイヤソーレソーレ! セイヤセイヤソーレソーレ!」」」」
鉄球転がす変態達が、土煙を上げながら難無くコーナーをクリアしていく。やっぱりそう甘くはなさそうだ。
幸いなことに、連中の速度はこちらに及ばない。まだ余力を残しているかもだが、今のところ追いつかれる心配は無い。
「とは言えミスったらお陀仏なのは変わらんし、後ろからの圧は集中力を奪ってくる。その上……」
俺はちらりと彼方に視線を向ける。急造サーキットの外、朽ちたビルの窓辺に一瞬だけかすかな反射光が見えた。
待機させてるライト5だ。インターバルの時にレフト2が話していたが、賭けのためにレースを妨害しようと動いている連中がいる。今のはスコープの反射光を利用して、動きがあったとこちらに知らせてきたのだ。通信を使わなかったのは盗聴の危険性を考えたからだろう。つまり近々仕掛けてくると言うことだ。そっちにも気を配らなければならない。
「となれば、できるだけ不安要素は……」
「「「「「セイヤセイヤソーレソーレ! セイヤセイヤソーレソーレ!」」」」
「減らしておきたいんだがやかましいな!?」
絶好調で球転がしてラインダンス踊ってんなあいつら。脅威とか以前に気が散るわ!
真っ先に排除しておきたいところだが……火力的にもテック的にも俺個人の手に余る。無理を承知で参加者を説き伏せて協力するべきかと考えた俺だったが。
「助力が必要かな隊長君!」
機会を窺っていたのか、クラハムが併走して話しかけてきた。渡りに船だな。
「ああ、丁度良い。手を貸してくれ」
「後ろの彼ら対策かな? であれば僕に任せて貰おう」
いやに自信満々に言うクラハム。俺は眉を寄せた。
「一人でアレを? できるのか?」
「このクラハム、できないことは口にしないさ」
何か考えがありそうだな。……任せてみるか。俺に実害はないし。(←鬼畜)
「分かった。任せる。……無理はするなよ」
「その言葉、万の援軍にも勝る! 確かに引き受けた!」
あいつも大概チョロくないかあ? 格好いい笑みを残して身を(バイクごと)翻し、鉄球へ挑まんとするクラハム。一体何をやる気やら。
バックミラーに映る彼女は速度を落として鉄球に近づき――
「伸るか反るか、付き合って貰おうか!」
大体超な兄貴系のボスステージ。