ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
さてどうしたものかこの変態の集合体……と?
なんか観客が騒がしいんだけど。
「「「「「……わざ、しーんわざ」」」」」
手拍子が打ち鳴らされ、コールが始まる。
「「「「「しーんわざ! しーんわざ!」」」」」
「おおっとお! ここで新技コールだぁ! たしかに後半からのマッチョ祭りに加えて、参加者達は次々と新技を披露しているっ! そして! 現時点で新技を披露していないのはただ一人っ!」
…………ん?
「そうねえ、鉄球の動きは鈍らせたけど、新技は出してないわよねえ
俺かよ!?
「「「「しーんわざ! しーんわざ!」」」」」
観客の視線は確かに俺へと向いている。うわ~い、めっちゃ期待されてますよこれ。新技なんか用意してるわけねえだろ。
「「「「「しーんわざ! しーんわざ!」」」」」
「ってなんであんたらも一緒にコールしてるか」
気がつけば停車して(俺もしてるけど)、手拍子と共にコールしてる参加者達。意地の悪い笑顔を見せる者、期待の目を向ける者。思惑の違いはあれど、逃す気はないらしい。
だからよぉ、新技なんてそう簡単にあるわけが……。
あったわ。
「……ま、
アイドリング状態の車から降りる。そして様々なポージングを次々と繰り出している合体マッチョに向かって歩き出した。
見たところ、複数人のテックを同調して使うことによって構造を支えたり補強したりしているようだ。見事な技術なんだが、なんていうか、この、どうよ? という個人的な感想は置いといて、恐らくは防御関係も相当堅い。普通の手段ならダメージは通らないだろう。
「これでミスったら、大恥だなあ」
呟いて、ごきりと左肩を回す。そうしてから構えを取った。
「増強」
テックを使い駆け出す。
瞬く間に、合体マッチョの足下に迫る。反応がない……と思ってたら。
「「「「「ンバ~リヤ!」」」」」
何らかの防御系テックを使ったようだ。怪しいオーラが合体マッチョの全身から立ち上る。
正直触るのいやだなあと思いながら、俺は右脚を踏み込んだ。
踏み込んだ足を軸に、螺旋の動きと威を乗せて左手を突き出す。しかしただの増強した震破掌では、合体マッチョの防御を抜けるか怪しいところだが――
「『
インパクトの瞬間、増強の効果を全身体能力から打撃の衝撃のみに集中するようスイッチ。その威力は狙い違わず。
「「「「「アフゥン!」」」」」
合体マッチョの防御を抜け、その足首を構成していたマッチョどもを纏めて吹き飛ばした。当然、合体マッチョはバランスを崩すわけで。
「「「「「ピリオドを超えて!!」」」」」
片足になったところを無理矢理姿勢制御しようとする合体マッチョ。
隙だらけなんだよなあ。
「増強45口径」
「「「「「オファ!」」」」」
バンバンバン! と残ったもう片方の足首に弾丸を叩き込んでやる。さすればそっちを支えていた連中も吹っ飛ぶわけで。
ぐらりと、支えを失った巨体が倒れ込む。轟音を立てて倒れ伏した巨体が崩れ、マッチョどもが四方八方に飛び散った。かろうじてグロい絵面はなかったようだ。
無理矢理テックで構造を支えてたんだ。バランスが崩れればこうもなろう。
……ちっ、左手がしびれやがる。ノーリスクというわけにはいかんか。反動の対処は今後の課題だな。
「最後はいつも通り実も蓋もないがぁ! 見事な新技のお披露目だァ! いやあどうでしたか仕掛けが全部叩き潰されたイケハタさん!」
「アンタやっぱ悪意あるでしょ。もう諦めたけど。……ま、ここまで来るとあっぱれ見事と言うしかないじゃない。素直にシャッポ脱ぐわよ」
実況が響き、そして。
「「「「「じゃ、お先に」」」」」
参加者達が一斉に俺の横を走り抜けていく。
……………。
「おいこらてめらちょっと待てや!」
やっろう俺置いてけぼりにしてレース再開しやがった。慌てて車に乗り込みギアを入れてアクセルを踏んで――
ぼすん。
「……ふぁっく」
ぶしゅうううという音を立てて、ボンネットから煙を噴くアルトワークス。どうやらついに限界を超えてエンジンブローを起こしてしまったらしい。よりにもよってこんな時に、である。
「おおっと! エリーターズ隊長、ここで無念のリタイヤだぁ! 最後の最後でこの大番狂わせ! まさかの事態に観客も騒然としているぅ!」
「大本命ってわけじゃないけど、結構彼に賭けてる人多かったようだしね。荒れるんじゃないかしら」
観客席の騒がしい騒動を横に、俺は天を仰いで呟くように言った。
「……無線封鎖解除。後始末は任せた」
※【another side】
「ですって。総員撤収するわよ」
隊長からの指示を受けたライト1が、そう言った。周囲は死屍累々。イベントにちょっかいかけようとしていた連中だ。エリーターズとホープブリケイドの共同作戦により、そう言った輩は壊滅状態に追い込まれていた。
「やれやれ、できればのんびり観戦と行きたかったのですがなあ」
「お前さんこっそり見てたやんけ。無線封鎖忘れて叫んでたの聞いてんぞ」
レフト4とレフト3が言葉を交わすのを聞きつつ、ライト1は思う。
(さて、我らが隊長は1位になってくれてるのかしら?)
そんな彼女が隊長リタイヤの報を聞き、賭けがご破算になったと崩れ落ちるのは5分後。
そういうわけで、罰ゲームを喰らうことになった俺なのだが。
「うんまあ、恥ずかしいと言えば恥ずかしいけど」
今の俺の格好は、バミューダパンツタイプの海パンに、アロハシャツを羽織った姿。所謂水着である。その格好でなぜか撮影会をさせられていた。
なにこの罰ゲームと聞こうにも。
「今殴ってやっからそこ動くなぁ!」
「ほほほ捕まえてごらんなさぁい」
表彰台のところで参加者と戯れているイケハタ氏は、しばらく忙しいようなので聞くこともできやしない。どこら辺に需要があるのこれ。
「いいよぉ~たいちょーさんすごくいいよぉ~」
「この千載一遇の機会! このクラハム見逃さん!」
「けしからんすごくけしからんいいぞもっとやれください」
あったよごく一部に。むしゃぶりつかんばかりの様相でシャッターを切ってるお嬢とクラハムとトザマの姿を見て、俺は肩を落とすしかない。
「いいよ~そこいい感じでポーズ決めて~」
「家宝にして子々孫々にこの感動を伝えねばな!」
「腹筋がエロいハァハァ」
「売れる! これは売れるでぇ!」
なんか増えた。
やれやれ。もうこうなったらどうしようも無いので俺は天を仰ぐ。
空は高く、夕焼けに染まり始めていた。
ほら水着シーンだぞ。喜べ。