ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
例のレースイベントが終わって数日後。
「よう、おはようさんだ」
「はよっす隊長」
出勤し駐車場に車を止めた俺は、丁度出勤してきたレフト3とあいさつを交わした。
「しかしあれですね、隊長が
「便利だぞ軽トラ。俺が探索者だったら間違いなく愛車にしているわ」
そう、廃車になったアルトの代車として俺が借りたのは、軽トラ【ハイゼット】である。この界隈じゃ最も普及している車種だ。
小さいわ軽いわ小回りが利くわ荷物は乗るわと、おそらく地球上で1、2を争う利便性を持つ。何しろ軽自動車のカテゴリーであるにも関わらず、アメ車のピックアップトラックと同等の積載量を誇る。実用性だけで考えたら一択と言っても過言じゃない。
実際ダンジョン内の収穫物を輸送する専門のクランである【運び屋クラン】の多くが軽トラを用いていた。変質したとはいえ地下鉄の駅構内を模したシンジュクダンジョン内では、取り回しがよく走破性も高い軽トラは適任といえよう。
まあそれはさておき。
「車屋が新しいの仕上げるまではこいつだ。親父さんがなんかやたらと張り切ってたからしばらくかかるな」
なじみの車屋には前と同じアルトワークスを頼んでいるんだが、わざわざ中古品のレース用パーツを集めて組みなおすとか言い出してた。限界まで酷使し使いつぶしたのが、なんか琴線に触れたらしい。金額は前と同じでいいから簡単につぶれないようにチューンナップさせろと張り切っている。
「そうすか。……これからしばらく悪党連中は、軽トラに乗った隊長にシバかれんのか。ちょっとかわいそうというか笑えるというか」
「指さして笑ってやれ。下手に同情するよかいいだろ」
レフト3を伴ってオフィスに入る。休暇や外回りに出かけた面子を除いたメンバーが、三々五々仕事を始めようとしていた。
「おはようございます隊長。早速ですけれど、お仕事のメールが入ってますよ」
トザマがそう声をかけてきた。支給品のタブレットを立ち上げてみれば、確かに仕事用のメールがいくつか届いている。
「これとこれは通知で……こっちは代表からの呼び出しか」
詳しいことは書かれていないが、執務室に顔を出すようにという指示がある。いつものごとく何やらややこしい話が待っているのだろう。
「さて今回はどんなお仕事やら」
鼻を鳴らして、俺は席を立った。
「殺人事件?」
「
代表の元に訪れた俺は、新たな仕事の話を聞かされていた。
「ただの殺人じゃないってことですね? でなきゃ
何しろ殺しなんて日常茶飯事どころじゃないのが封印都市だ。そこらで死体が転がっていたって通報されるようなことはないし、されたとしてもよっぽどのものじゃなきゃGSは動かない。
つまり
「昨日、シンジュクダンジョン東側2番出入口の近くで、バラバラにされた遺体の
差し出された資料に付属した写真に目を通す。その中では確かに人間の体の
「臓器ブローカーじゃなさそうですね。連中こんな無駄なバラし方はしないし、パーツを残すようなへまもせんでしょう。それに路地裏でいきなり解体するとも思えません。……あと、この場でバラしたにしては、地面に広がっている血の量が少ないかと」
私見を述べてみる。代表は頷いて言った。
「その次の写真を見てみなさい。現場の全体よ」
ページをめくる。現場の写真を確認して、俺は眉をひそめた。
「これは……」
写っていた現場の光景。中心部、直径5メートルほどの地面だが、周囲とは
ここまでくれば、推測はできる。
「
俺たちがダンジョンで跳ばされた時には、効果範囲内の
「あのとき今回のバージョンだったらと考えたら、ぞっとしますな。……技研の見解は?」
「あなたと同じ。ダンジョンの外でも使えるように改良された装置が用いられたと見てるわ。……あの装置自体の調査も煮詰まってきてたから、いいタイミングなのかもしれない。……タイミングが狙われてたって可能性もあるけど」
最初の転送装置はGSに回収され、異世界対策機構と共同でねじの1本までバラされて調べられていた。結果わかったのは電力に加えて
確かにこの状況で新たな転送装置とは、タイミングが良すぎる。
「罠だとわかっていてもこちらとしては手を出さざるを得ない。いやらしいやり方ですね」
「誰かの狙いって決まったわけじゃないけれど、そう考えておいたほうがいいわね。……ともかく、今回も異世界対策機構と協働してもらうわ。用心して事に当たりなさい」
「イエス、マム」
俺は敬礼にて答えた。
ほんじゃ、せいぜい切り取られないように気をつけるとしますかね。
忘れたころにやってくる伏線回収。