ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
「電波状態に異常? ……お嬢、テレパスは通じるか?」
網膜投射の疑似立体映像。その端に通信機能の不調が表示された。俺は即座にお嬢に問う。
『私のテックは問題ありません。こちらでも電波妨害を確認。ドローンの制御ができないので、先行偵察は無理ですね』
ライト4のテックは電波を仲介にするため、電波妨害などがあると使い物にならなくなる。改善は図っているがまだまだ十分ではない。
通常の通信もドローンもまともに使えないとなると、お嬢のテレパスが頼りだ。
ふむ、と俺は一瞬考え、口を開く。
「ミナセ嬢、ライト2と一緒にお嬢の護衛へ回ってくれ」
「了解です。……やはりこちらは」
「ああ、罠張ってるだろうな」
考え無しに電波妨害など展開してないだろう。最初から、俺たちをおびき寄せる腹づもりだったか。
「そういうわけだから銃後を突かれるとかなわん。そっちは任せたぞ」
今回連れてきた
「了解っす。隊長もお気を付けて」
即座に2人が離れていく。それを見送って、俺たちは向き直る。
「さて、一筋縄じゃいかなそうだが」
少し離れた場所には廃病院が佇む。
……なんかこう、ホラーゲームじみてきたなこれ。
エリーターズのメンバーにツーマンセルを組ませ、二方向から廃病院にアプローチをかける。戦力よりもリスクを分散させた形だ。
ライト1とライト3、レフト1とレフト3。室内戦闘を想定して組ませた。簡単にへまを打つ連中じゃないが、今回はどんなのが相手なのか分かったモンじゃない。いざというとき逃げ切れれば良いが。
グラジアは裏手から単独で行動して貰う。彼女は
なお本人から『私を単独で行動させて良いの? 逃げるかも知れないわよ?』と問われたが、ここで逃げ出したら首輪がボン、だ。あの首輪、テックによって制御されてるらしいから、電波妨害とか関係なく作動する。それが分かっていて逃げ出すほどあほではあるまい。
そう言ってやったら何だか複雑な顔をしていたが、とりあえず指示には従ってくれたようだ。素直に裏手の方へ回っていった。
互いの位置は、お嬢のテックを仲介に把握できる。(これもグラジアが逃げ出せない理由の一つだ)電波障害の下で高度な電子装備と同様のことができるのは利点であるが、お嬢自身の身柄を抑えられたらアウト。ゆえに戦力を割かねばならないが、それは仕方が無いと割り切る。
『全員配置につきましたね? ……たいちょーさんは本当に
「ああ、罠だとしたら誰かが矢面に立たにゃいかん。で、現場の責任者は俺だ」
『……分かりました。アプローチを開始してください。お気を付けて』
では、ミッション開始といこうか。俺は
向こうさんの注意を引くためだ。まさか真正面から堂々と入ってくるとは思う……かも知れん。何しろわざわざ俺たちを罠にはめようってんだ。こっちの行動パターンや考えなど、お見通しでもおかしくない。
つまり用心を重ねても無駄、とまでは言わんが、下手な潜入方法では対処される可能性が高い。だから、
ハンドガンとベルトにカラビナで提げた脇差トンファーのみ。しかも双方抜いていない。周囲の気配を探りながら、玄関ロビーで立ち止まった。
がらんとしたロビーの真ん中で、俺は口を開いた。
「お出迎えはなしかい? 歓迎してくれる物とばかり思っていたんだがね」
声が無人の施設内に反響する。その後にしばしの静寂。そして。
「……チャイムも無しに正面から入ってくるとは思わなかったのでねぇ。いやいや、予想を覆してくれる」
どこからともなく発せられたのは、合成音による言葉。老若男女いずれとも判別がつかないそれに、なんかいやな粘っこさを感じて、俺は僅かに眉を顰めた。
「客が来ると分かっているんなら歓待の用意くらいはしておけよ。……改めて言うがGSの御用改めだ。神妙にお縄につく気はないかい?」
「その気が無いと分かっているだろうに」
ぬたりと笑う気配。会話をしながら俺はさりげなく周囲に視線を巡らせ、気配を探る。
テック使いの気配は無し。そして件の転送装置も見当たらない。あれは周囲の存在を転送させるため、ある程度近づかなければ転送に巻き込まれないはずだが。
この間の様子を見ると効果範囲は半径2.5メートルほど。最低でもその範囲に装置はない。とは言え改良されて効果範囲が広がっていたりしたらその限りじゃないわけで、油断はできん。
「さて、折角来ていただいて何もない、と言うのも味気ない物だから、すこし
「なんだい? 暗がりからゾンビでも多量に出てくる感じか?」
言葉を交わすうちに何か動きが……あると思ったんだが、廃病院は静寂を保ったままだ。銃撃の音も響いてないって事は、他の連中のところも動きがないって事だろう。何を企んでいる?
「ところで、そちらの目的は転送システムだろうが……あれを小型化するのは技術的に難しいそうでねぇ」
「ほう?」
向こうから話を振ってきやがった。説明したがりのマッドサイエンティスト……ではないか。「難しいそうで」と言ってる時点で己が開発したものではないと知れる。誤魔化してるだけかもしれんけど。
「しかしだねぇ、
その台詞が響いた途端、俺の周囲に何か力場のような物が張り巡らされたと感じる。
転送装置の作動か!? だが物は見当たらない。どうなってる?
下手に身動きが取れなくなった俺に対し、何者かは語り続けた。
「つまり
「は!?」
ちょっと待て、もしかして
「では、楽しんでくれたまえ」
愉悦を含んだ声が響いた。
建物自体がテレポーターという反則。