ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
(……さてどうにも、手詰まりだな)
荒い息を整えながら、現状を打開するために思考を巡らせる。
攻撃は凌げる。ダメージは与えられる。しかしそれらが、こちらの優位には繋がらない。砲弾のようなヤツの打撃は、擦っただけでも浸透するようなダメージを残し、こちらが与えた傷はすぐさま再生する。与えているダメージは明らかにこちらの方が上なのだが、ヤツの体力もスタミナも、まるで底なしだ。平気な顔――むしろ嬉々とした様子で傷を再生させ、嵐のような猛攻を押しつけてくる。厄介この上ない。
(45ACP弾の貫通銃創も再生させやがる。この分じゃダムダム弾とかを体内残留させても、自力でほじくり出して再生させるんじゃねえかこいつ)
隙を突いて抜き撃った45口径でも致命傷を与えられない。流石に心臓か脳味噌ぶち抜いたら死ぬんじゃねえかなとは思うが、いまいち自信が無い。何しろ腹ぶち抜いたのに再生しやがったんだから。
お互い服はボロボロで血まみれ。一見互角に見えるだろうが、受けた傷を片っ端から再生しているヤツは、血まみれでもその肌に傷一つ残っていない。対してこちらは見た目通りの有様だ。致命傷こそないものの、体中のあちこちで打撲傷が生じているのが分かる。下手をすればどっかの骨に罅くらいは入っているかもだ。
合間合間に治癒力を増強して回復を図っちゃいるが焼け石に水。こっちのダメージは蓄積していく一方だ。それにスタミナも体力も、徐々に削られていく。流れは完全にヤツの方にあった。
「やはりいいなお前。これだけ攻撃を当てられた事なんて無いぞ」
楽しそうな様相のまま、ヤツは感心したような言葉を放つ。素のスペックではヤツの方が遙かに上だが、技量はこちらが上回っている……なんてのは甘い推測だろう。
恐らくヤツは
はっきり言って勝ち目は薄い。
だが。
「……その目も良い。お前、
「応とも。今お前さんの攻略法を考えてるところさ」
戦闘に支障のあるダメージはない。弾はまだ残っているし、刃も折れちゃいない。
まだ生きている。
諦める理由など、どこにもない。
(頭と心臓を含む重要器官への攻撃は、本能的に回避している。ならば最低でも、そこに当たれば真っ当なダメージになる……といいなあ)
ダメならダメで別の手段を考えるしかない。なに、理不尽なボスキャラの相手なんぞ、前世のゲームで散々やった。コンティニューがないだけだ。
右手に銃。左手に脇差しトンファーを逆手に。腕を交差して構え、左脚を踏み出し半身で銃口をヤツに向け、勝機を窺う。
ヤツはぬたりと笑みを深め、襲いかからんと――
して、不意に動きを止めた。
「……なんだ、今良いところ……は? 撤収!?」
突然虚空に向かって(その間にもこっちから視線は外さなかったが)会話をしているように見える。どうやらお嬢と同じようなテレパス系のテックが使われているようだ。眉を寄せていかにも不快ですと言った表情のヤツは、こちらを見据えたまま会話を続ける。
「おいおいふざけるな。こっからって時に……はぁ? あん? ……ああ、なるほど」
表情が得心した物に変わる。そうして会話を終えたらしいヤツが、にぃ、と笑って言った。
「どうやら今回はここまでのようだ。ちとおしいが……
勝手なことをほざきながら、ヤツは身を翻し、背中を向け去って行く。背後から撃てば、などとは考えない。その背中には隙が見いだせなかったからだ。
「次までには
そう言ってから――
ふと、何かを思いついて立ち止まり、ちらりと目線を向けた。
「そうそう、ワタシの名は、【カントウ・メガ】だ。覚えておけ」
言うだけ言って、ヤツは今度こそ姿を消す。
その姿が見えなくなってしばらく。やっと俺は構えを解いた。
「厄介なのに目を付けられたな、こりゃ」
武器をしまいながら深々とため息。どうやらヤツを擁する何らかの勢力が動き出したらしい。
ゲームで言えば黒幕かボス敵か、そんなところだろう。物語があるのだとすれば、ここから動き出したってな感じだな。
疲労と身体の痛みが今になって響いてきた。座り込みたくなるが、今腰を落としたらしばらく立てなくなるだろうという自覚があったので堪える。
歩き出そうとしたそのとき、『たいちょーさん! たいちょーさん! 聞こえる!?』と、お嬢のテレパスが響く。テックのジャミングがかかっていたようだ。それも解除された――ヤツの勢力は退いたらしいな。
無事だとお嬢に答えてから、俺は天を仰ぐ。
「クソ
無性に煙草が吸いたくなった。
それを我慢して、俺は歩き出す。
強敵の顔見せ回的な。