ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
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とりあえず、3日で退院した。(ベルセレククリニックじゃない普通の病院だ)
「なんで3日で治んのよ。各部内出血と一部微細骨折もあったんでしょあんた」
「病院のベッドで治癒力を全開増強しただけですが」
呆れたような顔の代表に、むっつりとした表情で返す俺。こっちとしちゃむしろ不満だ。
ここまでのダメージを受けたのは今生で初めてだった。そのことに関して俺は不快感を覚えている。どうやら俺にもいっちょ前にプライドがあったらしい。
俺の表情をどう見たのか、代表は眉を寄せる。が、それについて何を言うことも無く資料を差し出した。
「……ともかく、あんたとやり合った女だけど、身元が割れたわ」
差し出された資料に目を通す。久しぶりに見た、日本語オンリーのものだった。……ふむ、公安関連から回ってきたようだな。
「【神到 瑪芽】。……古武術神到流の
付属しているのは現在よりも若いヤツの写真。学生――特専時代の物だ。幼少の頃から才覚を現し、将来を有望されていたらしい。その上でテック使いの素質に目覚め、爆発的に能力を向上させていった。
だが、その性根に問題があった。武の才に恵まれたせいか、常に闘争に飢え、強者との戦いを望む戦闘狂へと成長していったのだ。
学生の頃はまだそれでも良かった。見た目だけなら美女だし、勝負を挑んでくる有象無象を軽々と蹴散らしていく様は爽快で、男女ともに絶大な人気を集めていたようだ。しかしその内心では、常に不満を抱えていたとある。
そして特専卒業直前に、突如「ワタシより強いヤツに会いに行く(意訳)」とか言い出し、すったもんだの末、止めようとした特専の校長含む教師数名と十数人の学生、神到流の門下生一同と自身の父親。全員叩きのめして出奔し、そのまま行方をくらましたという。
その後は裏社会に潜ったらしく、封印都市外で密やかに生き残っていた反社組織間の抗争などで、時折ヤツの姿は見かけられたようだ。その精神性と戦闘能力の高さから当局はヤツを危険視し、公安に目を付けられその存在を追われていた。封印都市に現れるのは時間の問題であるとみられていたらしい。
「要するに、あんたと同じヤベーのってことよ」
「自分は公費で弾撃ち放題だぜヒャッハーするためにGSに入る程度の分別はありますが」
冗談めかして応えたが、言わんとしていることは分かる。本質的にヤツは
まあそれはいい。ヤツの経歴よりも、気になるところがある。
「テックの種別が
「そこに書いてあるとおり、初めは強化系のテックだと思われてたみたいね。詳しく調べたら全く別物、どれにも当てはまらないとしか分からなかったみたい」
「なるほど。相対した身で言わせて貰うと、強いて言うなら全てのテックを内包しているような感覚がありました。それと一つ、違和感……というか
「矛盾?」
疑問符を浮かべる代表に、頷いてみせる。
「ヤツの再生能力。あれは明らかにおかしいかと。治療回復系のテックでは、ああはなりません」
治療再生系――に限らず、テックを使用するには精神力とスタミナを消費する。高度な物になればなるほど、負担も増大するのだ。だがヤツは、
俺の話を聞いて、代表はふむ、と考え込む。
「……仮の話だけど、回復するんじゃなくて
「あり得ませんね。それも矛盾が生じる」
代表の言葉を即座に否定した。例えば時間を巻き戻して負傷する以前の状態の戻すような物だったとしよう。そうであれば
そもあれだけ血を流しておいてピンピンしてるってのもおかしい。人間ってのは何割かの血液を失えば死ぬのだ。そこまでいかなくとも、ヤツは明らかに献血の数倍は軽く流血していた。最低でも貧血くらいは起こす……様子なんか全然見られなかったんですけどういう事だよ。
「来訪者だって、ある程度体液を失えば能力低下。悪けりゃ機能停止に追い込まれます。それすらないって言うのは矛盾とか以上とか言う以前に、存在そのものが卑怯って言うしかありませんな」
「生体強化とかサイバー化……ってのも無いわね。どんな高度なものでも、そこまでのトンデモ再生能力ってのは付与できないはずだから」
いくらおかしな技術が流通している封印都市でも、そこまでのトンデモ技術は無いと思いたい。
しかし……ヤツの再生能力、な~んか
「なにか思い当たることでもあるの?」
「いえ。気になることは山とありますが」
はっきりとしたことは言えないので、代表の問いを適当に誤魔化す。確証も何もない、もやりとしたものだ。だがどうにも小骨が喉に引っかかったような感覚がある。
……公安に伝もあるし、後でもうちょっと詳しく調べるか。
これはチーターですねえと言われても仕方が無いでたらめさ。