ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
俺からのバレンタインデープレゼントだ。
方向を変える。
もちろん破れかぶれになったわけじゃない。テックジャマーがどれほどのものか。そしてその影響下でどれだけのことができるか。そう言ったことを確かめようというのだ。
俺の思惑に気づいたのだろう。物陰を伝いながら、ダイチ氏が間合いを保持しようとする。普通に考えたら向こうとしちゃ優位な距離にわざわざ踏み込んでくるんだから、願ったり叶ったりだろうが、もちろん油断なんぞしちゃくれない。何か仕掛けでもあるかと用心しているはずだ。
生憎と、今回は仕掛けなんざない。俺としては非常に珍しいことだが、伏兵もない真っ向勝負を挑んでいる。
「テックジャマー、どれほどのものか体感させて貰おうか!」
言うが早いか増強を使い身体能力を強化して駆け出す。地を這うように障害物の間をすり抜け、ダイチ氏に肉薄せんと試みる。
この間のレース中では、ダイチ氏にさほど接近していなかったので、テックジャマーの
ダイチ氏も瓦礫の合間を動き回り、有利な位置を取ろうとしている。こっちの仕込みを疑い用心しているため、真っ向勝負は避けようと考えているはずだ。不意打ち、あるいは優位を保って一方的に攻撃がたたき込める状況を作りたかろう。
だが無理矢理にでも、真っ向勝負をさせて貰う!
「おおっ!」
気合いを入れるため咆吼し、縮地を使う。この技術は
しかしあえてやる。普通に追いかけっこしてたんじゃ、なかなか間合いは詰められない。であれば多少の無茶でもやってやるさ。
一瞬にして瓦礫が迫る。俺はそれに向かって殴りつけるように掌底を叩きつけた。
十分に速度が乗った身体は、反動で横に吹っ飛ぶ。そのまま間髪入れずに並び立つ瓦礫の間を、殴りつけ蹴りつけピンボールのようにすり抜けていく。
地表すれすれでやる変則的なパルクールのようなものだ。増強で身体能力と反応速度を上げていたからこそできる。ここでテックジャマーを使われたら厄介だったが、そうなる前にダイチ氏の間合いに入り込む。
「無茶をするっ!」
俺の姿を確認したダイチ氏は、横っ飛びに瓦礫の間へ飛び込みつつ銃を射撃。俺も同様にMCXを撃って瓦礫の間を縫い、彼の後を追う。
「【CP33】……いや、それをベースにしたモンか」
CP33。ケルティック社というニッチな銃を作っている会社が生み出した、多装弾ハンドガン。33発という驚異的な装弾数を誇るが、22口径という小型弾を使うため、防弾がしっかりした相手に対するには心許ない。
しかしダイチ氏が使っている物は、明らかに22口径より威力が上だ。恐らくはMP7やP90のような小型高速カービン弾が使えるようになっているのだろう。多分ネクストテクニクス製なんじゃなかろうか。それなりの防弾効果を持つ装備に対しても、十分に対応できると見た。
使っているのはお互い模擬弾だからダメージは通らないが、当たり続ければ判定負けだ。機動力を生かした間合いの取り合いでは、ハンドガンメインの向こうに分がある。
「
動きながらマガジンをイジェクト。次いでボルトを引いてチャンバーの弾を抜き、MCXと外したマガジンポーチをそこいらに放る。弾を抜いたのは暴発を防ぐためと、相手に即座に利用されるのを防ぐためだ。懐からインフィニティを抜き、構えを取って速度を上げる。膂力は身体の強化とパワーアシストの分ダイチ氏に軍配が上がるだろうが、これで小回りはこっちが上。速度も増強で底上げされた分、俺の方が優位。いつまでも逃げ続けられまいが。
「思い切りが良い! 乗せられるしかないなこれは!」
距離を取れないと悟ったか、瓦礫の合間のダイチ氏が動きを変えた。距離を取るのではなく優位な攻撃ポジションを確保するように。そして。
がしゃりと、装甲スーツの各部が展開する音が響いた。
「っ! これが」
不快感とも威圧感ともちがう、なんというか『感覚がずれた』ような、何とも言いがたい感触がある。そしてそれが、テックを使おうとすると靄がかかるように邪魔をしてくる。なるほどこれが、ジャマーを直接喰らった影響か。確かにテックを使うのは無理っぽいが。
「想定していたよりはやりやすい!」
瓦礫の合間に見え隠れするダイチ氏に向かって射撃。身体の動きに支障は無い。むしろいつもの訓練でやっているように自らテックを封じている状況より、制御に気を回さなくて良い分動きやすい。色々想定していたかいがあるってもんだ。
瓦礫の合間を駆け抜けながらの撃ち合い。テックが使えない俺の速度、身体能力は落ちたが、ダイチ氏も簡単に距離を離すわけにはいかなくなった。何しろ離れてテックジャマーの効果範囲から俺が出てしまったら元の木阿弥だ。かと言って懐に潜り込まれたら何をされるか分からないという警戒心もある。つかず離れず。それがベターな選択と判断しているようだ。
「やはり軍隊仕込みはクレバーだな! このまま引き分けに持ち込むかい!?」
挑発するように言いつつ、瓦礫の影で弾が切れた銃のマガジンを交換する。スライドしチャンバーチェックを行う一連の流れの中、ダイチ氏が答えを返した。
「そうしたいのはやまやまだが、実際の対来訪者戦闘では引き分けなどあり得ない」
言いながら彼もマガジンを交換しているようだ。
「それにギャラリーも納得しないでしょうよ」
「そりゃそうだ!」
なあなあの終演にするつもりは欠片もなさそうだ。
良いじゃないか。俺も暖まってきたところだ。
「それじゃ精々、派手にやり合おうか!」
再び瓦礫の合間を駆けながら、互いの銃が火を噴く。
能力が封じられてからが本番。