ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
【アユミside】
「むう、まさかここまでとはな」
思わず声が漏れ出る。我々の視線の先で繰り広げられるダイチ君とGS隊長氏との戦い。テック込みで五分、ジャマーがあればダイチ君優位だと思っていたが。
「これは……」
「おいおい、予想外だな」
居並ぶギャラリー、GSの面々も驚いた様子でざわついている。テックジャマーの影響下でダイチ君と互角の戦いを繰り広げている隊長氏。それが意外だったのだろうか。
と思っていたのだが。
「「「「「
「そっちなの!?」
ギャラリーが一斉に上げた声に、思わずツッコミを入れてしまう。
「いやおかしいだろう。どう考えてもおかしいだろう。通常の状態ならともかく、テックが使えない状態で、強化装備を纏った
「だってたいちょーさんだし」
私の訴えを、軽く一蹴するのは……異世界対策機構所属の、ヌシビト氏だったか。ともかくほんやりとしているのに妙な圧が感じられる少女だ。まるで人間は息をする物ですよってな感じで至極当然のことのように言い放っていた。
それに続いて。
「まああいつ、低位テック使いのくせに、上位の連中シメて回るような輩なんでなあ」
くく、と苦笑しながら言うのは、GSスペシャルズのリーダーか。元特殊作戦群の出で、一癖も二癖もある人物と聞いているが。この女傑をしてそういう評価か。
さらに加えて。
「大変残念なお知らせ……でもないけど、アレ前々からテック使えない状況想定して対処してんのよ」
頭痛が痛いといった様相でこめかみを人差し指で押さえつつ言うのは、GS代表。
……確かにそういう状況もあり得ると言うのは分かるが。
「最終的にはテック無しの素手で、中型来訪者爆散させること目論んでるわよアレ」
「それは明かに無理筋だろう!?」
何言ってんの。ホント何言ってんの。戦車砲並みの威力を素手で出そうと考えるとか、正気の沙汰とは思えない。それ以前にできるはずもなかろう私が設計した戦闘用重サイボーグでもあるまいし。
だと言うのに。
「あ~……」
「やりかねねえなあ」
「一度腹に一撃を食らったが、技が昇華されれば……さもありなん、か」
「…………」
「慣れれば素手でも何とかなる物だと、頭目は申しております」
「Oh……ニンジャのタイコバン確定演出デスヨ」
なんで素直に納得されているのか。まるで私がおかしいみたいじゃないか。いや大分おかしいのは自覚しているが。
「それにしても大したもんだ。軍隊式の格闘術か。よく練り込まれている」
うんうん頷きながら言うのは、迷彩タンクトップにカーゴパンツ姿の……確かシルベスタ・ファミリーとか言う傭兵集団のリーダ、だったと思う。ともかく彼女の言ったことは確かだ。ダイチ君は現役時代軍の格闘術で最高評価を得ている。任務によって重傷を負い、強化手術を受けてからリハビリするまでブランクこそあったが、現在はむしろ技量を上げ、その上で強化装備を纏っているのだ。テックの有り無しを差し引いても、彼が接近戦で後れを取ることはないと思っていた。
だが実際は、互角の戦いを繰り広げている。目まぐるしく攻防が入れ替わり……いや、
だが、
「
思わず口から言葉がこぼれ出る。高速のやり取りの中で分かりにくいが、身体の動き、反応速度、総じて手数はダイチ君の方が上回っている。もちろん膂力も同様だ。それなのに隊長氏を押さえつける事が出来ない。どういうからくりだ。
その疑問に答える声がある。
「
そう言ったのは、モニタリングをしているGSの隊員。スーツを着ていると言うことはエリーターズか? その小柄な隊員は、こちらを見向きもせず続けた。
「相手より後に動いて相手より先に手を届かせる。そういう技術です。隊長曰く気を合わせる――相手の動きを読み相手の動きに合わせ、結果を導く。全ての相手に勝てると言うわけではありませんが、大概の武術家になら五分まで持って行けるんじゃないでしょうか」
「……そういやトザマ、あんたアレに格闘技で食らいつける数少ない人間だったわね」
GS代表がため息を吐きながら言った。つまりこの女性も達人。武を極めると、最新技術とでも十二分に渡り合えるとでも言うのか。
ふむ、考えつつ視線を戦う男2人に向ける。激しいやり取りは、いつ果てると無く続くかと思われたが。
がっ、と音を立てて、2人の動きが突然止まった。
2挺の銃が絡み合って動きを止め、足は中途半端に打ち合った状態で停止し、そして互いの刃が相手の首元ギリギリで止まっていた。
しん、と場が静まりかえる。そして。
「相打ちね。これは」
賭けの胴元をやっているらしいオネエの人が、ぼそりと言った。その途端ギャラリーが、「あ”あ”あ”あ”あ”」とか吠えつつ崩れ落ちる。
「相打ちはなかろう相打ちはぁ!」
「しまったぁ! それがあったかぁ~」
「この僕が、隊長君に関して読み違えるとは……」
「おほほほほ! 総取りよぉ! ……まさか誰も賭けてないなんて思わなかったわ」
喧々囂々。どうやら大穴どころではなかったらしい。私も予想外ではあったが。
……賭けなくて良かった。
まあそれは良い。喧噪を背後に、私は鼻を鳴らす。どうやらまだまだ見通しが甘かったようだ。この世界の科学技術だけでテックに匹敵する物を生み出す。私はそれを目標としている。しかしテックどころか生身の人間の技術で並ばれるとは思わなかった。
GSエリーターズ隊長。さっき誰かが言っていたが、海千山千のテック使い達に一目置かれるのは伊達ではないようだ。同時に彼に追いつき、超えていけるのであれば、この界隈において一流以上と見なされるのは間違いない。
面白いではないか。乗り超えていかなければならないことは多くあるが、ひとまずの目標としては悪くない。逆に彼を制せずして、テックを悪用し常識外のことをやらかす連中と渡り合うなど、蟷螂の斧を掲げるも同然というもの。
では挑ませていただく。ダイチ君と何やら言葉を交わしている隊長氏を見据えながら思う。まずはその武の技術から、とくと解析し分析し対策を立てさせて貰おうか。
人が生み出した
※キャラ紹介
【テンドウ・アユミ】
漢字で書くと【天道 歩美】。そのまんま天の道を往く美女。
筆者大好きマッドサイエンティストな女。
多数の博士号を持つ万能の天才だが、テックに関する才能は無い。それ故か、テック能力を科学的に再現、あるいは超える技術の開発を目指すようになった。その発想と才覚がテックに対抗する術を求めてていた勢力に目を付けられ、スカウトされることとなる。
その勢力の後ろ盾を受け技術工房ネクストテクニクスを立ち上げ、同時に技術実証試験をかねた実践組織ネクスティスを設立。封印都市に本拠を置く。設立当初は犯罪まがいの活動をしていたが、これはアユミたちの思惑ではなくスポンサー達の意向が強い。封印都市のテック使いを危険視してのことだが、アユミ本人が倫理観に欠けているためさほど抵抗なく行動に移したようだ。
目を惹く美女だが研究開発に明け暮れているためか全体的にだらしない。性格はお手本のようなマッドサイエンティストで、先にも言ったとおり倫理観に欠ける。その上正直者なので危険な言動を垂れ流し周囲を冷や冷やさせている。そのためかネクスティスの実質的な代表はキズクであり手綱を取られている模様。高性能なポンコツ。
実は開発した技術のパテントなどのおかげで大層稼いでいる。別にもう働かなくてもいいご身分で、研究開発を続けているのは趣味で道楽に過ぎない。実は非常に厄介な人物。
外観のイメージはガンダムSEEDアストレイの【プロフェッサー】。ああいうお姉さんも好きです。
イメージソングはドラマ【猫侍】から【我が道よ】。
またチューおじ殿が厄介なのに目を付けられておられるぞ