ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
そして、いよいよご本人とご対面の時が来た。
「お初に。【マネ・キヨシ】言います。よろしゅうに」
愛想良く挨拶してくる青年。全体的な印象を言うと……チャラい。チャラくて胡散臭い。
服装はカジュアルなスーツ。髪は茶髪、顔は整っている方で糸目だ。何というか、他人を嘲笑しつつ煽りまくったり、肝心なところで裏切りそうな雰囲気がある。
なるほど、キネコさんの身内だわ。
「――こちらこそ、よろしく」
名乗って握手。手の感触から、本格的ではないにしろ何やら武術を学んでいる形跡がある。このご時世だから当たり前の範疇だが……どうにも警戒心は上がるな。
俺の内心など知った風もなく、青年――キヨシさんと呼ぼうか。彼は無遠慮に俺の姿を上から下まで見て言う。
「いやあ、話には聞いてましたけど、格好ええお兄さん捕まえましたなあウチのは。見る目は確かなようで安心しましたわ」
ちなみに俺の格好は長袖のTシャツ(防弾)にライダージャケット、カーゴパンツに足首までを覆うトレッキングシューズ(鉄板入り)。顔にゃあシューティンググラスってな格好だ。キネコさんのラフな格好でって言うリクエストからこうなった。
対するキネコさんはというと。
「せやろ。自慢やけどこの街でもトップクラスのええ男やで。見た目的にも実質的にも」
フンスと胸を張ってる彼女の格好は、タンクトップに薄手のジャケット、デニムパンツに踵の低いパンプス。いつもシニョンに纏めている髪を一本の三つ編みにして背中に流し、ベースボールキャップ(タイ○ース)を被った活動的なものだ。
うん、よく似合ってる。つーか元が良いので大概の格好は似合う。
それはまあさておいて。
「ほんで、ウチの彼氏に来て貰ったわけやけど、これからどないする? 親交を深めに食事でも行くけ?」
不敵に笑んで言うキネコさん。一応、前もってキヨシさんの性格は聞いていたが、果たしてどう反応するやら。
ちょっと考え込む風に見えたキヨシさんは、にやりと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「せやなあ……折角やから、
お付きの男(上位のテック使いらしい)が、何言ってんのこの人とでも言いたげな表情になった。実際に恋人らしいところを目の前で見せてみろと、そう言っているわけだ。
その判断も
「ふっ……そう来ると思っとったで。ええやろ、その挑戦受けたろやないかい」
そしてキヨシさんに向かってびしりと指を突きつけた。
「刮目して見さらせや! うちらのラブラブデートを!」
……なんだろう、キネコさんが段々ポンコツになってきているような気がする。身内の前で、テンションが上がっているのだろうか。
まあいい。
【another side】
マネ・キネコ商店の前でわちゃわちゃやってる人たち。その様子を少し離れた物陰から見守っているトザマは、口の中だけでこっそり呟いた。
(これキネコさんのピックアップイベだぁ……)
浮かび上がった記憶。それは現状が、原作ゲームでのイベントに相当すると告げていた。
まあ大体トンチキに類するヤツである。主に
「やはり僕は我慢弱い。こういう所が隊長君に読まれているのだろうな」
にゅん、とトザマの背後から生えているのは、もちろんエイカ。隊長のバックアップに駆り出されたトザマに堂々と合流し、彼らを出歯亀する気満々であった。
まあそれは良い。大体イベント通りであるし大方予想していたことである。トンチキな展開になるのは決定づけられているので、そこはもう諦めるしかないのだし。
問題なのは
「ギギギ……くやしいのう、うらやましいのう……」
恨みがましい声を出すのは二人のさらに背後。電柱に半分身を隠したヒロコである。なぜだかトレンチコートにサングラス、ハンチング帽という格好で、手に提げたコンビニの袋からあんパンを取り出し囓っていた。もうどこからツッコミ入れたら良いのか分からない。
(本来であればヒロコちゃん巻き込まれるはずだったんだけどなあ)
原作イベントでは不本意な形で巻き込まれる流れだったのだが、現状ではどこからか隊長達のことを嗅ぎつけ、有無を言わせぬ感じで参加してきた。この時点でもういやな予感しかしない。自覚無し(信じがたいことだが)に隊長に心惹かれているという、同人誌でもマイナーな方の事情からの行動だろうが。
(うう……推し豚としてはこれはこれでときめく展開だけど、実際に関わってると厄介ごとでしかないという二律背反……っ!)
トザマはトザマで妙なジレンマに陥っていた。余裕あんじゃねえかこいつ。
「おのれおのれ……なんか今すぐ乱入してしっちゃかめっちゃかにしちゃいたい気分……」
「落ち着きたまえヒロコ君」
暗黒のオーラを纏って呟くヒロコ。そんな彼女をエイカが宥める。
「何なの何で邪魔するのエイカさんつーか悔しくないの悔しいでしょう一緒に地獄へ堕ちよう?」
「ハイライト消した状態で迫るのやめてくれないか。その心境、察するにあまりあるが」
エイカはすぴしと人差し指を立て、真剣な表情で言う。
「想像して心落ち着かせるんだ。身動き取れず手出しも口出しも出来ない自分。その目の前で、存分にイチャイチャするあの2人」
しばしの沈黙。そして。
「「アフンッ!!」」
2人揃ってビビクンッと身を震わせてから、ちょっと内股中腰になってもじもじし始めた。
「ああ、なんともいえない、この、もどかしさというか何というか」
「ふふ、下腹にクるだろう?」
「気持ちは分かるけど性癖壊すのはやめてあげてください。あと心落ち着いてないでしょうそれ」
なんでNTRに目覚めようとしているのか。原作にないどころではない展開に、トザマはもうど~にでもな~れ~と言う気持ちになりつつあった。どの道トンチキイベントなんだし死人は出ないだろうから良いんじゃなかろうか多分。
そんな彼女らを監視する目があることをトザマは
いずれいやでも関わらなければならないのだから。
兄のキャラが吹っ飛ぶ痴女の止まらない進化。