ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
「ステンバーイ」
ふわふわ浮いているドローンが、ちょっと間の抜けた声を出す。
僅かな静寂。そしてブザーが響いた。
瞬時にヒップホルスターから引き出されるのはグロック26アドバンス。グロック26にコンペンセイターと延長マガジンを追加したモデルだ。それをオーソドックスなウィーバースタンス――利き手側の足を引いて半身になった構えで狙いを付けトリガー。
リズミカルな射撃音。金属音と火花を散らして、ターゲットプレートが次々と倒れる。全てを1発ずつで倒したことを確認するやいなやダッシュ。グロックをホルスターにしまい次のセクション。テーブルの上のショットガン、ベネリM3を手に取り構えた。
オートマチックモードにセッティングした銃のコッキングレバーを引き初弾を装填。反動を物ともせず連射。5発のショットシェルを撃ち尽くし、イジェクトポート付近に備えられたホルダーから1発装填してリロード。そこからストックを右肩に押しつけたまま銃を反転。あらかじめ腰に巻いていたホルダーから4発のシェルをとって
移動しながらの射撃。的確にターゲットを倒し、弾が切れてボルトストップがかかると同時にマガジンをイジェクト。間髪入れずに左の腰に下げてあったポーチからマガジンを取り出し装填、リロード。残りのターゲットを撃ち倒す。
最後のセクションで再びハンドガンに持ち替え移動射撃。スライドストップがかかって、瞬時に手首をひねりマガジンイジェクトし新たなマガジンを差し込みリロード。最後のターゲットまで、ミス無く全てを倒してみせる。
再びのブザー。そしてタイマーが止まった。
「良いタイムだ。やるじゃないか」
ドローンの後部に備えられたモニターに表示された数字を見て、俺は感嘆の声を上げる。
ここは俺が贔屓にしている射撃場。そこでタクティカルトレーニングのスコアアタックを行っているわけだ。当然今挑戦して見せたのは。
「へへ、ウチもなかなかのもんですやろ」
いつもと違い、屈託のない表情でにかりと笑ってみせるキネコさんだった。こう言う表情になるのもちょっと驚きだが、思った以上に銃を使いこなせている。普段のうんちく語りは伊達ではないと言うことだ。
「そうだな。鍛錬と経験を積めば十分
「そら鉄砲勧める立場の人間が、なんも知らん出来んでは話になりませんからなあ。これくらいは嗜みですわ」
ジャケットを脱いで目立つ胸を得意げに張り、上機嫌にドヤ顔。自信はあっただろうし、実際自慢するだけの技量もある。それが俺に認められたというのが素直に嬉しいようだ。気持ちは分かる。
ふむ、目の前でこういうのを見せられると、な。
「じゃあ、今度は俺がちょっと格好良い所見せようか」
「お、やる気ですなあ。やったらお手並み拝見と……」
「いやちょお待ちよし」
続いてタイムアタックに挑もうとジャケットに手をかけたところで、ツッコミが入った。見れば眉を寄せたキヨシさんが、疑念と呆れの中間のような声で言う。
「確かワシ、ラブラブデートって聞いてたんやけど……ラブラブか? これ」
その言葉に俺とキネコさんは顔を見合わせ、応える。
「せやかてこれ、2人の共通の趣味やしなあ」
「そもきっかけが店での銃談義だし」
「お互い1日中やってても飽きひんしな」
「十分デートと言えるのでは」
事前の打ち合わせ通りの受け答えだ。動きやすい格好をしてきたのはこう言う理由があった。共通の趣味を絡めれば、言動も自然になるだろうと考えた末のことである。実際楽しいので、まあ間違いではあるまいと思うんだが。
「確かにこう、仲ええんやけど。……ワシが思とったんと大幅に違うなぁ」
こめかみに指を当てて、渋面となるキヨシさん。どうも不服なようだな。
「こう、もうちょお何か、普通のデートらしい方向でどうにかならん?」
「なんやもう、注文の多い料理店か。……しゃあないなあ。したら予定より早いけど、次に行きましょか」
キヨシさんの提案に、不承不承を装ってキネコさんが応えた。このあたりも想定の範囲。俺たちのデートはまだまだこれからである。
【another side】
「うぐぐぐぐぐ……混ざりたい。取って代わりたい」
「銃を逢い引きの道具に使うなど、この僕の信仰が試されているとでも言うのか……っ!」
今にも血涙を流しかねない形相で出歯亀を続けているお嬢と痴女であった。
今にも飛び出しかねない2人。その2人に向かって、トザマはぼそりと呟くように言った。
「拘束猿轡状態の目の前で騎乗位」
「「オウフ」」
一言で2人は腰砕けになった。キャラ崩壊の進みが激しすぎる。もうダメかも分からんね。何もかもを諦めた表情になるしかないトザマであった。
「これが終わったら後でデートに誘えば良いじゃないですか。特にクラハムさん、貴女も銃好きっていう共通の話題があるのに、その武器を使わないのは勿体ないですよ?」
「いやしかし、銃は口説きに使わぬと、幼き日に聖ボブ・マンデンへ誓ったのだよ」
まあそういう返答だと思った。つーか誰だよボブ。(※実在したヤバイ級ガンマンです)
いずれにせよ、この2人が
そして爆発するときは。トザマはちらりと
まあもう決定づけられている惨劇はさておいて。
(たしかこのイベントから、隊長×キネコさんのカップリング物が増えるんだよね。推し豚としては歴史的瞬間に立ち会ったという感動と、いや他のカップリングも見てみたいという欲望が絡み合って複雑な気分に)
そんな感じで思考していると、ヒロコから声がかかる。
「ところで……トザマさんは、あの2人に思うところはないの?」
なんかジト目でそんなことを聞かれる。疑いを向けつつあわよくば味方に引き込んで協力させようという腹だろう。トザマはため息を吐いてから、それに応えた。
「良いですか前にも言いましたがこの身は推し豚。推しの幸せを願うことはあっても己が幸せになるなど思考の端にもありません。そして究極の所推しが幸せになるのであれば相手は自分以外の誰でも良いのです。つまりこの件に関して自分は中立の立場を貫くと断言しましょう。同時にヌシビトさん達の行動を強くとがめ立てすることも出来ないわけですが。っていうか色々なカップリングを見てみたいという欲望があるのは紛れもない事実。願わくば2人には後日改めて隊長とデートしていただき出歯亀させて欲しいと切に願っているわけで……」
止まらない語りが始まった。お嬢と痴女は「「お、おう……」」と若干退き気味で応えるしかない。
トザマ・ミユ。所詮この女もおかしい枠であった。
普通()に楽しそうな2人。
そして普通にデートより面白くなりそうな背後。