ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
封印都市の繁華街の一つ。
いつもならあまり足を向ける場所ではないそこに、俺たちは赴いていた。
で、何をしているのかというと。
「くっっっっはぁ~~~~! 昼間っから飲むビールは最高やぁ!」
一気に干し、カラになったジョッキをテーブルに叩きつけながら、感極まったように言うキネコさん。全くもって同意見である。
「そうだな、このために生きてるまである。……店員さん、飲み物同じのを二つと鶏の炙りレバ刺し、それと手羽先の唐揚げに親鳥の串を塩とタレで2本ずつ、追加で」
「いやちょお待ちよし」
先ほどと似たような流れでツッコミを入れるキヨシさんだった。
「なんや兄ちゃん。昼間っから飲むんは嫌いか?」
「むしろ大好きやがそこやないやろ。なんでいきなり飲み屋やねん」
明らかにデートコースちゃうやろと不満げなキヨシさん。対するキネコさんは口を尖らせて反論した。
「だって兄ちゃんの我が儘で半日の予定がパーになったんやんか。しゃあないから予定を繰り上げたんやで?」
「そこはこう、ウィンドウショッピングとか、デートらしいことすりゃええやん」
「しやかてウィンドウショッピングとか、男の人からしたら苦行やで。へたすりゃ荷物持ちとかにされるし。大体服とかアクセとか、隊長さんちんぷんかんぷんですやろ」
話を振られたので、傾けていたジョッキを置く。
「武器とか仕込まれてんなら、その限りじゃないが」
「……あ~、その手がありましたなあ。けどその手のモン扱ってる店、あちこちに散らばってますやん」
「だな。一通り回るだけで1日じゃすまん。そこまでして見て回る価値があるかというと……」
「仕込み武器って実用性のあるモンは半分いったらええ方ですしなあ。冷やかしで見て回るにしても、あんま楽しめそうにないような」
「かんざしやヘアピンの類いなら、まだアクセとして通用するか?」
「そもウチがかんざしやヘアピン使いませんやん。武器仕込むためにコス増やすとか本末転倒ですし」
「仕込み武器はキネコさんの趣味じゃないか」
「わざわざ専用に作るくらいなら、銃かカーボンナイフ隠し持ちますがな」
「ねえ何で君ら会話が殺伐としてくんねん。ワシの知ってるラブラブな会話とは、とてつもない次元の隔たりがあるんやが」
もうこいつらはダメかも分からんね。そんな表情でキヨシさんは言う。隣のお付きはもう、何もかもを諦めきった表情だった。
たしかにまあ、一般人からしたらおかしな会話のような気がせんでもないが。
「
キネコさんの言葉が全てを示している。おれらみたいな生き物に、真っ当な神経を期待しちゃいけない。何しろこちとら
……よく結婚できたな前世の俺。
「
「大人になるって、哀しいことやね」
実家で暮らしていた頃のキネコさんがどんなのだったか気にはなるが……ふむ。
「仕事で何度か享楽都市の方へ行ったことはあるが、実態は詳しくないな。キヨシさん、良ければそちらの話を聞かせてもらえないだろうか」
そう言いつつ、俺はにやりと笑って見せた。
「もちろん、キネコさんの昔の話も聞かせてほしいもんだ」
「ちょ! それはあかんて!」
俺の言葉に慌てるキネコさん。そしてキヨシさんは、得たりとばかりに悪い顔で笑う。
「……ええですやろ。ウチの妹の可愛ええとこ、包み隠さず語ったりますわ」
「あかーん! 兄ちゃんあかーん!」
必死の形相で止めに入ろうとするキネコさん。それを悪魔の笑顔で遮り話を続けようとするキヨシさん。諦めを通り越して完全な無になってるお付き。
なんというか、こう言う空気はこの界隈じゃなかなか味わえない物だが。
うん、悪くない。
……ホントになにも裏がなければ、だけどな。
【another side】
「むっちゃ楽しそう。むっちゃ楽しそうで……ああなんかこう、背筋から尾骶骨にかけてゾクッとするような、えも知れぬ新感覚が」
「ここで乱入して隊長君に軽蔑の眼差しで見下されたら……ンンンンンンンンンンン」
ついにそれぞれセルフで達し始めたぞこいつら。言うまでも無いが店の外から出歯亀してる変態2人と、それ見てため息はいてる推し豚である。
それにしてもと、トザマは思う。来慣れていない店、外から見やすい席に陣取る。普段の隊長なら絶対にやらないことばかりだ。当然外から観察しやすいようにという意図がある。実に――
「分かりやすくされてるねぇ」
「おかげで我々の嫉妬心+諸々が刺激されているわけだが」
不意にシリアスな表情になって、変態からヒロコとエイカに戻った2人が呟くように言った。その理由はトザマにも理解できる。
「それで、何か御用かな。
ヒロコの声と共に、3人は揃って振り返った。その視線の先、路地の奥から現れる人影がある。
こつ、こつ、と硬い靴の音が響き、露わになったその姿は。
「お世話になっております。マネ・キネコ商店副店長兼チーフマネージャー、【ミケ・ミア】でございます」
スカートの端をつまみ優雅で瀟洒な礼をして見せたのは、キネコの右腕と称される眼鏡のメイドさん。周囲でそれとなく知れる程度に気配を見え隠れさせていたのは彼女らだ。
メイドさん――ミアは、淡々とした様子で会話を続ける。
「そのご様子でしたら、薄々オーナーの思惑にお気づきかと思いますが、いかが?」
「我々も巻き込むつもり、と言うところかな? 先ほどから
にぃ、と不敵に笑むエイカ。商店のメイドさん
「それは話が早うございます。願わくば」
眼鏡を光らせ、ミアは薄く笑う。
「ご助力戴きたく」
あ”あ”~
昼間っから酒飲んで怠惰に過ごしてぇ~