ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
数時間後、俺たちは店を出た。
「いや~飲んだ飲んだ。たまにはこういうのもええなぁ」
ん~と伸びをしながらキネコさんが言う。兄妹の過去暴露合戦から俺の方に飛び火し、そこからお付きも巻き込んで、俺らの世代であるあるネタに移行して、結構話は盛り上がった。結果キネコさんも上機嫌になってる。
「いやいやどうなることかと思っとったけど、まあこれはこれでええわな」
呟くようにキヨシさんが言う。彼には彼の思惑があるようだが。
「さあて、ほいたら次はカラオケにでも……って言いたいところやけど」
ぴたりとキネコさんの足が止まった。その眦は鋭い物になっている。
「ちょいと
俺たちの周囲。目立たないようにしているが、群衆に紛れた気配がいくつかある。テック使いの気配は少数な上、どうにも低位の者のようだ。それ以外は目線や仕草で判別するしかないが……20人は下らないか。
キネコさんの言葉に、キヨシさんは肩をすくめる。
「まったく、
彼の声に応えるかのように、群衆の中から一人の男が歩み出る。
壮年の男。品の良いスーツを纏っているが、全体的に厳つく強面だ。ぶっちゃけヤクザにしか見えん。
男は不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
「ボンボンは口が達者やなあ。状況分かっとるんか」
「
外部から隔離されている封印都市とは違い、関西の享楽都市は解放されている。これには色々と理由があるが、この都市は民間企業の連合によって管理権が握られており、行政は彼らの傀儡と言っても良い状態だから、と言うのが最大の理由だ。企業の利益を潤滑に回すために、隔離などはされなかった。その代わりテック使いや犯罪者、反社組織などはごく僅か……
実際の所、企業間ではバッチバチに暗闘が繰り広げられており、そのために警備会社やボディーガードの名目で傭兵が雇われ争い続けている、封印都市よりよっぽどサイバーパンクしている所だ。目の前の男はその傭兵組織の一人。キヨシさんの敵対企業か何かに雇われたのだろう。地元の勢力圏から離れたのを幸いと、彼の後を追いかけてきて始末しようと企んだようだ。
まあ、つまり。
「最初っからウチらを巻き込むつもりやったな兄ちゃん。相変わらず性格の悪い」
「ははは、身内巻き込むんは商売の基本やで。お前がどれだけの即応力とコネクション持っとるかも、見てみたかったしな」
ジト目になるキネコさんに、堂々と返すキヨシさん。キネコさんの顔を見るついでに、命を狙ってきた傭兵の殲滅を図っていたらしい。それだけの戦力をキネコさんが保有、あるいは集められると読んでいたのだろう。
当然ながらその頭数には俺も入っているわけで。
「キネコさんも最初からうすうす分かってただろ」
「さあ何のことですやろか」
今度は俺がジト目で見てやれば、キネコさんはそらっとぼけて目をそらす。やっぱりなんかあったわ。思ってたよりは平和だったが。
「……で、いい加減現実見ろや坊ちゃんら。腕が立っても多勢に無勢。しかも酔っ払いとなりゃあ勝ち目もないやろが。……ま、土下座くらいしたら、そっちの姉ちゃんは
下品に笑う男――御駄とやらは最後まで台詞を終えることは出来なかった。俺とキネコさんが同時に銃を抜いてぶっ放したからだ。
残念ながら、キネコさんは欠片も酔っていない。世の中には
「が、ぐ……おどれら……っ!」
御駄が呻きながら身を起こそうとする。さすがは鉄火場慣れしてる。防弾は標準装備というわけだ。まあ分かってて胴体撃ったんだが。
「なめくさりよって酔いどれがぁ! 野郎ども、畳んでまえ!」
御駄の声に応え、包囲網の中から幾人か飛び出しキヨシさんに向かって襲いかかろうとする。しかし。
轟、と風が唸った。渦巻く大気に阻まれ、襲撃者達は後退させられる。
「ワシのこと忘れてへんか? まあ地味な自覚はあるけどな」
キヨシさんを護るように立つのはお付き。上位のテック使いだと分かっていたが、予想以上の大物か。
御駄は目を見開き、お付きを指して叫ぶ。
「お、おどれ【タデ・マモル】か! 最強の護衛屋が、いくら積まれよった!」
「レンガ2つと義理人情や。ワシは安うないんでな」
なるほど、
とか思っていたら。
「ン待てェィ!」
澄んではいるが遠慮の無い大声が響く。見ればちょっと離れた位置にあるバス、その屋根の上に、佇む3つの影がある。
「誰が呼んだか恐らく正義の味方! コンビニ仮面1号っ!」
びしすとポーズを決める、目の部分だけ穴の空いたコンビニ袋を被っている、女子高生じみた人物。
「同じくコンビニ仮面、2号」
クールにポーズを決める、同じようにコンビニ袋被ったメイド服。
「そしてコンビニ仮面、ブィ、スリャァッ!!」
ノリノリでポーズを決める、コンビニ袋被った上に中折れ帽乗せた、男装の変人。
加えてバスの影に隠れ、「すいません止められませんでした」と言うジェスチャーを送ってくる推し豚。
周囲の空気が凍った。突然の奇行に、皆の思考が停止したのだろう。
ややあって。
「「「「「なんでやねん」」」」」
呆けたような声でのツッコミが、一斉に響いた。
さもありなん。
享楽都市のイメージは、トニたけのADポリス(ギャグ話)で大体あってる。