ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

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 こうして、騒動を終えたキヨシさんは享楽都市へと帰って行った。

 

「結局兄ちゃんの手のひらの上やったってのは、ちょおムカつきますけどなあ」

 

 店のカウンターで接客しているキネコさんは、すっかりいつも通りだ。胡散臭い雰囲気の表情も復活している。

 改めて気がついたんだが、どうもこの胡散臭い雰囲気、()()()らしい。私生活のキネコさんは表情豊かで、肩の力を抜いているように見えた。そう言ったところはキヨシさんにも垣間見える。最後に2人で言葉を交わしたとき、本気で妹のことを思いやる兄という面があった。最後のオチはアレだったが。

 

「ほんで、とっ捕まえた警備会社(傭兵)の人たちはどないしましてん?」

「いつも通りさ、保釈金払わせて放免。この街で生きていけるかどうかは本人達次第だな」

 

 言ったとおり御駄を初めとする傭兵連中は、保釈金という名の借金を押しつけられて解放されていた。当然連中、再起を図るため封印都市を出て享楽都市に戻ろうとしたのだが……前にも言ったとおり封印都市は、入ることは容易いけれど出るのは難しい場所である。GSに捕縛された経歴なんぞあった日にゃあ、その難易度は爆上がり。真っ当な手段ででることはほぼ叶わない。

 連中の後ろ盾の企業が何とか……できるはずもない。享楽都市の企業が封印都市のルールをねじ曲げられるような影響力を持っているはずはないし、仮に持っていたとしてもそれだけのコストをかけて傭兵たちを取り戻すメリットがあるのかと言えば、そこまですることのほどでは無いと判断するだろう。間違いなく連中は切り捨てられる。

 加えて連中に保釈金を貸し付けた金融業者は、GS(うち)の後ろ盾の()()()が大本だ。要するに連中の動向は俺たちに筒抜け。何かやらかそう物なら即座に知らせが飛んでくる。つまり目を付けられた状態で、この街で生きていくしかなくなったってわけだ。

 

 ここでも傭兵やるか、あるいは探索者にでもなれば一旗揚げられるかも知れんが、どうかね。連中の実力はこの辺じゃ精々中堅止まり。コストかかるサイボーグを多く抱えてるんで、資金繰りは大変なんじゃないかね。まあ連中がどうなっても知ったこっちゃないけど。キネコさん達に八つ当たりで逆襲? 返り討ちじゃね?

 

「まあ心入れ替えて真面目に働いて、ウチに銭落としてくれるんやったら、見逃すのもやぶさかやありませんけど」

「機嫌が良いな? 随分と寛大じゃないか」

「なに、兄には上手いことされましたけど、隊長さんが偽彼氏ちゅうことはバレへんかったみたいやし、しばらくは男関係でやいのやいの言われんですみますからなあ」

 

 くっくっくと、わっるい顔でほくそ笑むキネコさん。

 ……大変残念なことだが、十中八九バレてんぞキヨシさんには。

 

 彼と最後の会話。キネコさんに手を出してくれて構わないと言っていたが、あれは()()()()()()()()()()と理解しているからの言葉だろう。俺もキネコさんもいい歳こいた大人だ。付き合ってるんなら放っときゃ勝手にそういう関係になるもんだ。最低でも俺は本気で付き合えば、一ヶ月もすりゃ誘うぞそういう方向に。

 手を出すような関係じゃないからこそ、本気で口説いてくれても良いよというお墨付きを出したと、俺は判断している。義兄弟になっても良いってくらいには気に入られたと見える。妙に好かれたもんだ。

 

 ともかくキネコさんの思惑はバレてるはずだ。今は良くても後に突っ込まれて、再びテンパるキネコさんの姿が目に見えるようなんだが。つーか今回のことがイベントらしい(トザマ情報)ので、また同じようなことが起こって、俺が引っ張り出される可能性大なんだが。

 

 ……トンチキイベントに関しては、諦めるしかないかあ……(悟り)

 

 遠い目になるしかなかった俺の前で、キネコさんは高笑いを始めてる。多分しばらく後には泡食うんだ。そっとしておこう。

 

「まあそれはそれとしてですな」

「切り替え早いな」

 

 すっと普通の態度に戻ったキネコさん。彼女はにかりと笑って言う。

 

「この間のデート、結局中途半端で終わったんで消化不良やと思うんですわ。特にタクトレ」

「ははあ、なるほど」

 

 言わんとしていることは分かった。タクトレ(タクティカルトレーニング)のタイムアタックが途中で終了させられたのが不満だったんだろう。もちろん俺もまるっと同意だ。

 

「隊長さんのちょっとええとこも見せて貰いたかったですしなあ」

「調子が良かったから良い勝負になると思ったかい? じゃあリベンジといくか」

 

 挑発的な笑みを浮かべるキネコさんに、俺もにやりと笑って応える。

 

「それなら今度は俺の休みに合わせて……」

「「ちょっと待てぇぃ!!」」

 

 再デートの予定を組もうとしたら、いきなりエイカとお嬢が生えてきた。

 

「店長ばかり贔屓とか全くもって承服しかねる! 公平を期すためにも我らも逢い引きを所望する! お泊まり付きで!」

「お、お泊まり付きとかまだ心の準備が出来てないからそれはそれとして、不公平は是正しなければならないと思いますです!」

 

 要するに自分たちもかまえと訴える2人。下手するとまた拉致監禁しかねないからなあこいつら。適度にガス抜きせにゃならんかとと思い、口を開こうとすれば。

 

「せやったらみんなでタクトレしません? ウチとしては別に二人っきりのデートでなくてもええですし。競技人口増やすためにもここは是非」

 

 笑顔ながら、目の奥に商売人としての計算を秘めてキネコさんは言う。上手いな。2人の不満を解消すると同時に、ちゃっかり競技を体験させてあわよくば銃器の購入を勧める気満々だ。

 その言葉に、2人の反応はそれぞれ違っていた。

 

「うぬぎぎぎ……魅力的な誘惑であるが、このクラハム信念を試されているというのか……聖ワイアット・アープよ、我にお導きを……」

 

 なんか苦悩してるエイカ。

 

「もちろんたいちょーさんが手取り足取り教えてくれるんだよね?」

 

 ここぞとばかりにぐいぐい来るお嬢。

 

「そして自分はその様子を撮影しつつ腕組みして後方理解者顔で頷く仕事に務めますが何か」

 

 突然生えてきて意味の分からんことを言い出すトザマ。お嬢達を止めることなど無駄と悟り、開き直って便乗することにしたらしい。まあいざというときは戦力になるから良いが。

 わちゃわちゃする店内。にこにこと対応するキネコさん。生暖かく見守るメイド店員。

 はっきりと何かが変わったわけではないが、これまでとは違う関係性になってきた。そんな気がする。良いことなのか悪いことなのかは分からんがね。

 そんなことを考えていた俺は。

 

「このままでは後れを取る……何か打開策を講じねば」

 

 などという小さな呟きを、聞き逃していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イベントのエピローグ的な。
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