ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
「うう……書いても書いても終わらないよう……」
「確定申告よりは楽だ。きりきり書いとけ」
半泣きになりながら書類に記入しているハヤミ。彼が記入しているのは、数々の
GSとの契約、ネクストテクニクスとの契約、異世界対策機構との契約、その他諸々。何でこんなモン書く羽目になっているのかというと、
そんな面倒くさいことになっているのは色々と理由がある。まず転送装置の所在だが、これを各組織に持ち込むのは危険だと判断された。以前回収した残骸とは違い、アンビシャスが所有している転送装置は
生け贄、と言うわけではないが、アンビシャスに転送装置を使わせることによってワンクッション置いた調査を行おうというわけだ。それに専門の探索者であり、転送装置をトラップとして使用することを考えついたハヤミであれば、様々なシチュエーションでの使い方も思いつくだろう。調査に幅を持たせる事が期待されていた。
彼らは契約により、異世界対策機構とGS、加えてネクストテクニクスから転送装置の調査を依頼された、と言う形になる。定期的に転送装置の使用データとレポートを提出、その上で三組織からの出向要員を随行させる義務が生じるが、3つの組織のバックアップを受ける事が出来るようになった。色々と不便にはなるが、万全の体制でダンジョンに挑めるわけだ。
当然注目の的となるだろう。そんな彼らを周りの探索者達、特に
接触を図るか、あるいは自分たちもと売り込んでくるか、それとも妨害工作や嫌がらせに出るか。無反応と言うことはあるまい。言い方は悪いが、そう言った連中に対する釣り餌としても期待されていたりする。件の店舗周辺で行った聞き込みによると、商品を購入した者はそれなりの数がいそうだ。変な問題を起こす前にこっちに釣られてくれりゃ良いが。
こうしてアンビシャスはこき使われることが決定したわけだが、この状況をトザマはこう評した。
「過程は大分違いますけど、オチは一緒でしたね」
こっそり会話を交わしているときの彼女は、なんか遠い目をしていた。
「状況を変えても運命は変わらないと突きつけられた気分ですよ……やはりここは敵巻き込んで派手に散華を」
「だから何かあっちゃあ自爆を覚悟すんの止めなさい」
いちいちネガティブになってんじゃないよこの子は。トザマの頭をポコンとはたいて、俺は言う。
「結果は同じと言うが、今回お嬢達は欠片も関わらなかっただろう?
今回お嬢達は完全に蚊帳の外だった。それが良いことなのか悪いことなのかはまだ分からん……どっちかってーと、主人公に経験を積ませなかったという意味で悪いことなのかも知れん。
だがそれでも、大筋は変わらなくとも。
確かに変えられた物はある。
「ネガティブになっている暇はねえ。この件に関しては、
お嬢達の負担を減らすという意味でも、今回のイニシアチブを取れたことは大きい。ある程度はこっちで状況を回せると言うことだからな。そんな事を語りトザマを宥めた。
まだ不安はあるようだが、ひとまずトザマは納得したようだ。そのもにゃりとした表情を思い返して苦笑する俺。
「おい、そこ間違ってる」
「あ”あ”あ”あ”あ”、書き直しだああああああああ」
「修正テープでいいから。もうちょいだから頑張れや」
機密保持や何やらの関係で、この世界じゃ重要な契約書は未だ手書きだったりする。俺も色々書いたことがあるから面倒は分かるが、書かないと後で余計に面倒なんだよこれ。
ともかくハヤミとアンビシャスに関しては、契約で縛れそうだ。
あとは――
「思った以上に使い勝手は良さそうだね、
一通り基本的な調査を終えた室長は言う。
「市販のダンジョンナビアプリと連動して、正確な位置情報を算出する。効果範囲をある程度自由に設定できる。1回使用する毎に30分くらいのチャージ時間が必要になるけれど、それを差し引いても攻略の難易度が大分変わる。大規模な移動手段として確立が出来れば、ダンジョン対策の大革命になるね」
多少興奮気味な室長の言葉に、俺はふむと考える。
「……前にあった病院の転送設備、あれはその実験だったのかも知れんな」
「ふむ、あり得るね。あれだけの規模、しかも複数箇所の目標をそれぞれ別の場所に一斉転送できる。使い勝手はさらに上だ。多分一度に転送できる量も多いだろう」
これまでの状況から推測される連中の目的は。俺と室長は同時に口を開いた。
「「
利権に食い込むだけならば、GSや異世界対策機構に敵対し挑発する必要はない。むしろあれだけの技術や人材を抱えているならば、売り込みを図る。それをせず敵対行動に出ると言うことは、俺たちを邪魔と見なしていると言うことだ。最低でも仲良くしたいとは欠片も思っていまい。
ネクスティスみたいな前例があるとは言え、彼らだって積極的な敵対行動を取っていたわけではない。明らかな温度差という物があった。ダンジョン利権を全て手中に収め、支配しようと考えて、そのために俺たちを排除しようとしているならば、積極的な敵対、挑発行動にも納得は出来る。
微妙に腑に落ちないところはあるが。
「連中が単なる欲かいてるだけには思えんが。
「考え出したらきりがないよ。可能性として頭の隅に置いておけば良いんじゃないかな」
「分かっちゃいるが、性分でな。……話を戻すか。ネクストテクニクスのジャマーにはどう反応した?」
「破損しないよう低出力で作動させてみたら、リミッターがかかって作動停止した。妨害に対するセーフティは備えているようだね。今のところ一つしかないから踏み入った実験や分解は出来ないけれど。出来ればもう一つ二つ入手しておきたいところだ」
アンビシャスに装置を預けたままという状況には、当然デメリットがある。その上で転送装置が一つしか確保できていないのだ。調査も慎重になろうという物。出来れば多角的なアプローチで手数を増やしたいところなんだが。
「異世界対策機構も積極的に絡んでくれれば良いんだが……あちらさん、こう言った機械類に対するノウハウはないからなあ」
「ダンジョン攻略とテック関係に振ってるからねえ。情報とデータは流しているし、テック側の目線で物は見られるだろうけど、装置の解析で力になれるかどうかは微妙だしね」
異世界対策機構があまり絡んでこないのはそう言った事情があった。この件に関して彼らはあまり力になれない。ダンジョンや対テック使いに関してはエキスパートなんだが。
微妙にこう、手探りを
「こうやって俺らが頭悩ましている状況も、連中の思惑通りだったりしてな」
「……あり得ないと言い切れないところが、いやだねえ」
室長はため息を吐いて、懐から煙草を取り出した。(この部屋は室長の権限で喫煙可能だ)そして一本引き抜こうとして――思い直してこちらに箱を差し出してくる。
「吸う?」
「……やめとくよ。仕事中は吸わないようにしてんだ」
一服どころか一杯引っかけたい気分だよちくしょう。
じつは主人公達のストーリーを乗っ取ってた系。