ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
※前日
「大佐たちが休暇? こんな時にか」
休暇届が提出されていることを確認した俺は、眉を顰める。
現場の出勤管理は俺が纏めて担当している。スペシャルズも例外ではない。だから休暇届が出されるのは不思議でも何でもないのだが、こんな時期に、そして全員纏めてというのは珍しい。
しかし有休取得は正式な権利だし、何より代表直属の彼女らは契約上かなり自由な判断と行動を許されている。それを止める権限など俺にはなかった。
……これも何かのご都合主義かね。
「とは言え後で文句言われるのもいやだしな。普通に承認しとくか」
タッチパネルをタップし、休暇届を承認する。あとは代表と人事部の承認待ちだ。これでこの件は俺の手から離れる。
恐らくはこの先起こるイベントかストーリー展開で、スペシャルズは参加できない流れなのだろう。彼女らがいれば攻略がヌルゲーになる、とかそう言う理由じゃないかと睨んでいる。実際彼女らが参戦したら、しっちゃかめっちゃかになる代わりに全て片付くだろうからなあ。ゲーム的にはナーフ処理されている(トザマ談)らしいが。
「教導には影響がないスケジュールなんだが、いやな予感しかしねえな」
トザマの記憶はイベントなどの事が起こる直前にしか解放されない。だからなんか起こるだろうという予測は出来ても、何が起こるかは蓋を開けてみにゃ分からんわけだ。そんなときにスペシャルズという鬼札が使えなくなるのは……むしろどこにいるか分からないって状況は、不安だな。
「こっちの都合に合わせてくれるような連中じゃないし、はてさてどうしたもんかな」
いざというときに緊急連絡すりゃあ良いという話もあるが、都合悪く動けないってこともある。であれば
「隊長、午前中のスケジュール、滞りなく終わりました」
報告してきたのはライト1。昨日から始まった米兵の教導は、エリーターズ中心で指導を行っていた。今日の午前中はライトメンバーの担当だったな。
「もうそんな時間か、ご苦労。お客さんの様子はどうだ?」
「ほとんどの人員は従順になりましたねえ。一部折れていないのもいるようですけれど」
「ガッツのあるのは結構なことだ。問題起こさなきゃな」
またしても師匠呼ばわりするようになった米兵達だが、一部の人間はどうやら虎視眈々と俺たちに一泡吹かせる機会を狙っているようだ。
……ふむ、そう言った連中がやらかしてイベント勃発のきっかけになるかも知れんな。ひょんな事から接触があるとも限らんし、テンドウ女史には釘を刺しておくか。
それと
「ああ、流石にそっちの教導に割り込む予定もつもりもない。貴方の教育には興味はあるが」
連絡を取ったテンドウ女史の言葉に一安心する。彼女はぶっ飛んだ人間だが嘘は言わない。天然でアレでナニだが。
「すまないな、ないとは思うが一応釘を刺させて貰った」
「このところピリピリしているから用心するのは理解できるとも。安心したまえ、すでに別口で被験者と契約している。余所には手を出さんよ」
「ほう? 昨日の今日で早いな」
「善は急げというしね。それに誰とは言わないけれど被験者の方も乗り気なのだよ。なんでも伸び悩みというか行き詰まりを感じていたようでね。渡りに船と言うことさ」
「……そうか。言うまでも無いがくれぐれも」
「安全性は十分考慮しろ、と言うことだろう? 当然だとも、そちらの手を患わせることがないよう、留意しよう」
自信満々に言うテンドウ女史。……これはフラグかなあ。教導中に呼び出し喰らっても良いように準備しとくか。俺は自分が諦観の表情になるのを自覚していた。
「すまない。本当にすまない。先約が入っているんだ」
本当にすまなそうと言うか残念そうな声で言うのはエイカ。保険として、教導の
「このクラハム・エイカ一生の不覚っ! 隊長君からのお誘いがあると分かっていたらば、万難を排して駆けつけた物をっ! しかしながら己の欲望のために一度交わした契約を反故にするなど僕の矜持が許さないし何より人道に外れた行いっ! そのような道を選ぶなどできようものかっ!」
なんか血涙流してんじゃねーかってな勢いで訴えてるエイカ。そこまで苦悩する物かとも思うが、彼女にとってはそれだけ苦渋の選択なんだろう。俺みたいなろくでなしに惚れ込みすぎじゃないかってのは置いとくとして。
「今回は間が悪かったと諦めるさ。……しかし、安心した」
「神は我が身に七難八苦を――って、何が安心なんだい?」
独り言に反応していきなり素に戻るなよ。いいけど。
「お前さんが感情よりも契約を優先し守ろうとする義理堅い人間で良かった、って話さ。機会があったら安心して仕事を任せられる」
「……っ!」
息を呑んだような気配。そして僅かな沈黙。
ややあって。
「……いや、その。……あれ? え? ……もしかして隊長君、僕を褒めてる……?」
戸惑うような声。褒めたんじゃなくて事実なんだが、否定することもないか。
「ま、見直したのは確かだ。今回は残念だが、今の仕事をきっちりこなして実績を上げてくれや。そうしたらうちからも声をかけやすくなる」
少し冗談めかして言ってみたらば。
「……その言葉っ! 万の援軍にも勝るっ! このクラハム・エイカ、全身全霊を持って契約を果たすと断言しようっ!」
なんかやたらと張り切りだした。どんな仕事か知らんが、大丈夫かこいつ。そう思いつつも頭の隅で、今回こいつと関わらなくて良かったかも知れんと考えていた俺。しょうがない、他の傭兵、ギンボシ姐さんのところとか高いし、共同訓練の名目でホープブリケイドにでも声をかけるか、なんて算段していた。
……ここで、察しときゃ良かったんだよなあ。
はいフラグ成立。