ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
※当日
「ふはははは私が来た! なんか完全に忘れ去られていたような気がするが、悪を蹴散らし正義を示すため、今ここに大・降・臨っ!」
うん、なんでこいつ来ちゃうかなあ。登場初っぱなからいきなりハイテンションに狂ってるヒーロー女――【ジャスティスガール】こと通称【ジャスティン】。彼女の後ろでは微妙に肩身が狭そうな様子を見せている蒼の子の姿があった。
「申し訳ありません、今手空きですぐ来られるのが自分とこの人だけで……」
「うん、ありがたいけど翌日即座に来て貰う必要はなかったんだが」
俺は2、3日中に様子を見に来られないかと打診した。そしたらお嬢が何か覿面に反応してこれだ。無理に人よこせとは言っていないんだけどな。
「ヒロコさんのやる気が荒ぶっているというか、隊長さんの頼みなら何でもするモードというか。当の本人は色々と忙しいので後から来るんですけれど」
「最近段々ダメな方向に進化してないか? あの子」
「……黙秘権を行使します」
蒼の子も思うところがあったのだろう。微妙に視線を逸らしている。
まあそれはそれとして。
「最高潮に絶好調っ! 今の私は大地を割り空を裂くほどに研ぎ澄まされた断罪の刃! いかなる無理難題艱難辛苦が待ち構えていようとも、すべて打倒し乗り越え勝利の栄光を掴んで見せようじゃぁないかっ!」
俺たちから白い目を向けられているのに気づいた風もなく、
……後で聞いた話だが、睨み付けていたのは
「なんでかこいつ相手に模擬戦やったら、本気で殺し合いそうな気配があるなあ。……ミナセちゃんよ、こいつの手綱握れる自信ある?」
「いざというとき後ろからしばき倒す事を手綱を握ってると言うのであれば」
小声で問うてみたらば、何とも心強い(皮肉)な答えだ。まあ実際火力属性であるジャスティンに優位が取れる技量属性のミナセ嬢はストッパー役なんだろう。とは言えこの様子だと仮想敵としても使いづらい、か。
「……ミナセ嬢、すまないが別枠でこいつの相手をしておいてくれないか? 訓練の相手は後から来るお嬢達に任せたい」
「そうなりますよね。了解しました、適当に言いくるめて組み手でもやってます」
申し訳ないがミナセ嬢に投げる。彼女もそうなると予想していたのだろう、ごねることもなく承諾する。もしかしたら今までも似たようなことがあったのかも知れない。
ミナセ嬢はまだ妄言を吐きまくっているジャスティンの肩を叩く。
『ジャスティンさん、絶好調のところ申し訳ありませんけれど、ちょっとこちらへ』
『いま良い流れに乗ってる感じなんで後にして……』
『ん?』
『ハイただいま参りますっ!』
ミナセ嬢の言葉をスルーしようとしていたジャスティンだが、彼女が小首を傾げただけでビビクンッっと反応。即座に従順になり媚を売り始めた。
……そういやこいつ、初手でミナセ嬢に徹底的にボコられてたな。どうやらそれがトラウマになってるらしい。ってかちゃんと手綱取れてるんじゃねコレ?
いや従順になりすぎたらなりすぎたで、
「そういうわけで自分たちは向こうの方に行っておきます。『ほら行きますよジャスティンさん』
『ハイヨロコンデー!』
ミナセ嬢に促され、ロボトミー手術を受けたようにカチコチになったジャスティンが去って行く。とりあえずあの二人はこれで良かろう。
この後俺たちがどうしたのかと言えば。
『では今回の訓練を説明する。基本は昨日と同じくエリーターズの相手をして貰う。強化フレームはフルスペック、模擬弾だが
簡易テントで設営された指揮所で、俺はマイク越しに指示を出していた。まずは普通の模擬戦闘である。初日にいきなりきついのを喰らわせたが、ずっとそんなことばかりはやってられない。
どの道後に、お嬢達との合同訓練が控えてるしな(邪笑)。
『それでは各員、状況を開始――』
そこから先の台詞は続かなかった。
何の前触れもなく、
轟音と衝撃が指揮所を襲う。何が起こったのかは分からないが、咄嗟に指示を飛ばした。
『総員状況を破棄! これは訓練ではない! 武器使用自由、後退しつつ場合によっては応戦せよ!』
まずはゲストである米兵を訓練場から逃がしたいところではあるが、何がどうなっているか分からない以上、あらゆる状況を想定しなければならない。こっちの手に負えない場合、彼ら自身で身を守って貰わなければならなかった。続いて俺はエリーターズに指示を飛ばす。
「エリーターズ各員、
言ってるうちに煙が晴れてくる。爆心地の中央にある影を確認して、俺は目を見開いた。
片膝と拳を地面についた、所謂ヒーロー着地と言われるポーズ。男装の麗人、その顔がゆっくりと上げられれば、そこにはメカニカルなマスク。ぎうんと不気味な光がセンサーに宿る。
テンドウ女史から送られてきた資料にあった物と同じ、強化装備のマスク。彼女が言った別口で契約した被験者という言葉。そして目の前の女が口にした先約。
全てがカチリと組み合わさると同時に、ヤツが口を開く。
「ミス・キチクドー、介入行動を開始するっ!」
「「そういうことかぁ!」」
やっとの事で状況を理解した俺と、やっとの事でイベントを思い出したトザマが、同時に吠えた。
ヤベェのとヤベェのが組み合わさって暴走している最悪の事態じゃねえか!
こうして、トンチキイベントの幕は切って落とされた。