ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

176 / 178
10

 

 

 

 

 

 気配を辿った先。瓦礫に山の上で佇むのは、紅の子ことアカサカ嬢。いつでも飛び出せるような体勢で構え、テックの力を練り上げているように見える。

 大技を放つつもりのようだが、彼女は火力属性。ヒーロー女(ジャスティン)と同様に、技量属性であるエイカとは相性が悪いはず。いくら大技でもダメージを与えられるとは思えない。

 

「お嬢、何を考えている!?」

 

 普通に考えればメインのダメージソースは、弱点である黄色(イワモト嬢)とラウディのパワー属性となるはずだ。だがイワモト嬢は本来不得手であるはずの接近戦を挑み、ラウディはデバフをかけ続けることに集中している。セオリー無視どころではない、完全に悪手にしか見えないんだが?

 

『これでいいんです。なぜなら――』

 

 テレパスの向こうで、お嬢が不敵に笑む気配がする。

 

『この編成なら、エ(・)イ(・)カ(・)さ(・)ん(・)を(・)殺(・)す(・)可(・)能(・)性(・)は(・)低(・)く(・)な(・)り(・)ま(・)す(・)』

「っ! そういうことか」

 

 やっとお嬢の思惑が理解できた。彼女はエイカを生かして制圧するため、わざとパワー属性の2人を主軸に置かなかった。イワモト嬢が中核となって接近戦を挑んでいるのは、エイカの本能的な闘争心を引きつけながらも、不得手な間合い克つラウディのテックの影響下に置くことで致命打を出しにくくし、足止めの確実性を高める意図がある。当人ノリノリでゼロ距離射撃を狙っているように見えるが、演技なんだろう、きっと。

 だが、火力属性のアカサカ嬢ではエイカにまともなダメージを与える事は出来ない。制圧するにしても意識飛ばすくらいはしなきゃいかんはずだが、そのあたりはどう考えているのか。

 

「さあて、本邦初公開の新技。ちょっとばかり派手にいかせて貰うよ!」

 

 どん、とアカサカ嬢の気配が膨れ上がる。彼女は腰の電磁ブレードを抜き――

 そのまま天高く放り投げた。

 

「はぁっ!」

 

 次いで自身も天高く飛ぶ。その身に炎を纏わせ、己のテックを推進力とし、彼女は空中からエイカに向かって一直線に蹴りを放つ。その途中で電磁ブレードの柄尻を捉え、蹴りの先に刃を乗せた状態で空を駆ける。

 

「おおおおおおおおおっ!」

 

 咆吼と共に炎を纏ったアカサカ嬢は、どっかのライダーな人を彷彿とさせる錐の先端かドリルのごとき様相でエイカに向かって突っ込む。当然エイカも迎撃しようとするが。

 

「結構しつこいと言いましたわよ!」

「おねえちゃんマシンガンパンチ!」

『押さえてあげるからちゃんと当ててよね!』

 

 黄色と姉とお水が、一斉にエイカに襲いかかりその動きを阻害する。動きを止めたのは一瞬。だがそれで十分。

 

「これがあたしのっ! 紅い一撃(クリムゾンインパクト)だっ!」

 

 その一撃は狙い違わずエイカ――が装(・)着(・)し(・)て(・)い(・)る(・)マ(・)ス(・)ク(・)を捉える。

 

『本人ではなくその装備品なら――』

「――属性の優劣は関係ないでしょうがっ!」

 

 お嬢のテレパスとアカサカ嬢の声が重なり。

 

「オ、ノーレーっ!」

 

 マスクに亀裂が入った。

 やるな。最初からマスクの破壊が目的だったか。その上でアカサカ嬢がエイカ本人に与えるダメージは極小。上手く考えたもんだ。

 これは流石に決まったか。

 

「あ、ヤバ」

 

 ……ってちょっと、テンドウさン? 突然こぼれた声に、いやな予感しかしない。ぎょっとした周囲の目線が彼女に向いた。

 そしてテンドウ女史は、絶望的な事実を告げる。

 

「元から機能しているか怪しかったリミッターが、完全に壊れたねこれは」

 

 そんな台詞が吐かれると同時に、どかんと莫大なテック波動が生じ、ホープブリケイドのメンバーは悲鳴を上げながら吹っ飛ばされた。

 最早災害級の吹雪が吹き荒れ、その中央にあるエイカはマスクの亀裂から炎ような燐光を放ちつつ哄笑する。

 

「ははははは! マスクは僕に無限の力を与えてくれる! これからはマスクの時代なのだっ!」

 

 決まったどころかパワーアップしてんじゃねえかっ!

 

「くっそ、振り出しに戻るどころじゃないぞ」

「隊長、これだけ力を出してるって事は」

 

 トザマの言葉に、テンドウ女史が応える。

 

「うむ、時(・)間(・)が(・)な(・)い(・)。このままでは最悪自爆紛いにテックの力をまき散らし力尽きるぞ」

 

 一刻も早くエイカを止める必要性が出てきた。だが近づくどころかまともに射線も通らない。通ったところで氷付けだ。アカサカ嬢達も体勢を立て直すどころじゃなさそうだし、どうする。

 考えを巡らせている最中、お嬢が反応した。

 

『……仕方ありません、この手は使いたくなかったんですが』

「お嬢、打つ手があると?」

 

 ホープブリケイドも立て直してないのに、何が出来るってんだ。そんな俺の疑問を余所に、決意の籠もった言葉が響く。

 

『これからやることが上手くいこうがいくまいが、私はしばらく使い物にならないでしょう。……後は、頼みます』

 

 止める間もなく、お嬢の全力のテレパスが、エイカに向かって放たれた。

 

 

 

 

 

『突然送られてきたたいちょーさん寝取られ動画』

「アフン」

 

 

 

 

 

 べちゃあ、ってな感じで崩れ落ちたエイカが、尻カチ上げた状態で突っ伏しビクンビクンいってる。当然テック波動と吹雪は瞬時に消え去り、嘘のような静けさを取り戻した。

 

 若干の間。そして。

 

「「「「「…………えェ~~~~?」」」」」

 

 何とも言いがたい、力の抜けた声がお嬢以外の全員の口から漏れる。いやあの、いやあの。どうなのよコレは。この盛り上がりがしゅしゅしゅって消え去ったこの空気。どうすんのよホント。

 唖然としたまま戸惑うしかない俺たち。そこでお嬢のテレパスが響く。

 

『ふふふ今のはわたし自身も腰砕けで動けなくなるという重大な欠点で下半身が凄いことにタスケテ』

 

 ……危機は去ったけどさあ。なんか解決しちゃった感じだけどさあ。

 

 何一つ納得がいかないんだが!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 シリアスシーン? やっこさん死んださ。俺が殺した。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。