ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
ベルセルククリニックからGS本部へ帰還した俺は、技研へと顔を出していた。
「やっぱ医学方面から考えても、上手くいく話じゃなかったかぁ」
予想通りだったが残念だ。そう言いたげな顔で茶をすする室長。テック使いの強化に関しては、この御仁とも散々意見を交わした。
「あの暴走を意図的に起こすのは、な。その他のアプローチはないかと考えてはみたが」
「そんなに上手い話があるなら誰かが飛びついてるよね」
「そういうこった」
最低でも現段階でテック能力を劇的に向上させる手段はほぼない。と言うかテンドウ女史のマスクが初の実例なのではなかろうか。それも偶然の産物で危険性もあってコントロールがきかない、という実用性のなさだ。事実上そう言った手段は存在しないと思って良いだろう。
「となれば、外的要因の方向で考えるか…………」
室長が眉を寄せて考える。
ややあって。
「……その系、ネクストテクニクスが一番進んでるんだけど」
「だよなあ」
外的要因、つまり装備の類いだが、ネクストテクニクスが最先端を独走している。空飛ぶ上にパワードスーツに変形するバイクなんて、実用化してるのは連中だけだ。
あの装備群は、正直魅力的ではあるのだが。
「実際連中とは仮想敵同士。現状呉越同舟状態なんだよ。テストに付き合うぐらいはしても、本格的に取引するわけにゃあいかんだろ。
最終的にしがらみの問題である。元々がテック使いに対する抑止力として設立されたのがネクストテクニクスおよびネクスティスだ。ダイチ氏やテンドウ女史はどちらかというと好意的ではあるが、いざというとき上から命じられたら従わざるを得ない。そうでなくとも普段から何か仕込みをしていないとも限らないわけだし、彼らに装備を依頼する、というのは悪手でしかない。
「と言うわけで、自前で何とかならんか?」
「無茶振りすんなし」
無理を言っているというのは分かってる。うちは治安維持組織で装備もそこそこ良い物を揃えてはいるが、それはあくまで市場で流通しているもの。独自開発した装備は少ないし、それも直接戦闘力に影響が出るものではない。(例を挙げれば、俺たちが使っているサングラス状のデバイスがそうだ)
新たに専用の装備品を開発できるような技術力はないし、予算も無限じゃない。最初から装備開発ありきで結成されたネクストテクニクスとは状況がまるで違うのだ。
十分理解した上で、言うだけ言ってみただけだ。
「もうスペシャルズに丸投げしたら?」
「今回みたいに席を外してることもあるし、第一あの状態のエイカ相手にどこまでやれたか。頼りにはなるが任せっぱなしにはできまいよ」
大佐達は恐らく世界でも有数のテック使いであろうが、絶対無敵というわけじゃない。特に今回、技量属性であるエイカは暴走し、絶大な力を持っていた。さしもの大佐といえど、火力属性である以上まともに勝負になったか怪しい。訓練場ごと吹っ飛ばしたとしてもエイカにとどめを刺せたかどうか。トザマもゲームでは役に立たなかったと言ってたし。
そうでなくとも個人に頼った戦術は危ういものだ。主軸となった個人が存在しなくなれば破綻する。スペシャルズに頼り切りという状況は避けたい。
「つまるところ、簡単に戦力を確保することなんかできはしない、ってことだよね」
「分かっちゃいたがね」
「でもさ、君鍛錬とか積み重ねてそこそこ戦力上がってるじゃない。このまま鍛練積めば良い感じに大物食いできるんじゃない?」
「だから個人に頼った戦術は取れんと言うとろうが。個人的には大物食いの域まで行きたいところだが、それとこれとは話が別だ」
俺自身がどれだけ強くなろうとも、個人としては限界がある。必要なのは組織として全体的なランクアップだろう。戦力の底上げは図っているが、すぐさま効果が出るものではなく、じっくりと腰を据えてかからなければならない……んだけど、どんどん厄介な事情と敵が増えていくんだよなあ。強化が間に合わず後手に回っているのは紛れもない事実だ。
手詰まり、とまでは言わない。だがどうにも伸び悩みというか、焦りのようなものがある。エイカもこんな感覚だったのだろうか。だとすればテンドウ女史の話に飛びついたのも分からんではない。
まあ上手い話にゃ裏がある。今回のことでよく分かった。トンチキなイベントですむなら良いが、致命的なことになったらしゃれにならん。あのときのエイカレベルになった敵がしょっちゅうポップするようになるとか……。
「いや、待てよ……」
あの暴走したエイカを止めたのは、お嬢に率いられたホープブリケイドだ。確かにホープブリケイドの戦力はGSよりも上の少数精鋭である。だが暴走したエイカに届くほどではない……はずだった。
しかし蓋を開ければ、
全てはお嬢の指揮と判断。最後の最後で間抜けを曝したが、エイカを無力化したのは間違いない。
「さすがは主人公、と言ったところか」
「ん? なんか言った?」
「いや、ちょっと明光が見えてきたかも知れん」
きょとんとした室長に言う。ゲーム的には主人公が事態を解決するのは当たり前なんだが、現実でそれを成し遂げたお嬢の指揮能力は図抜けている。とは言え先も言ったとおり、彼女に全てを押しつけるわけにはいかん。
俺が思うに目標となるのは、
「丁度、米兵達の教導って仕事もあることだしな」
「いやその笑顔怖いんだけど」
どう見ても極悪人が悪巧みしている笑顔だったと、後で室長が言った表情で、げっげっげっと笑みを漏らす俺。
エンジョイとは別の意味で面白くなってきたじゃねえか。
だからどうしてこのおっさんは、石橋をたたき壊して鉄橋を架けようとするのか。
(答え:普通に石橋が壊されそうな状況ばかりになるから)