ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
「それで、主要な面子は取り逃がしたのね?」
「はっ、力及ばず逃走を許しました」
あほな騒動が終結した後。俺はGSの本部に帰投し報告を行っていた。
相手はGSの統括責任者、【カミイ・ツカサ】。通称代表。俺の上司であり……かつて天狗になっていた俺の鼻っ柱をへし折った人物である。
妙に露出の多いタイトスカートのスーツを纏った彼女は、やたらと深い切れ込みのスリットから覗く長い足を、なまめかしく組み替えた。
「報告書では火力不足が主な原因とあるけれど?」
「自分はそう判断しています。特に今回は偶発的な遭遇戦だったので、拳銃以上の火器を携行しておりませんでした。根本的な火力不足であると愚考いたします」
有象無象は良いが、高位のテック使いになると防御力もかなり向上する。ボディアーマー無しで9ミリ喰らっても、大した怪我もしない。俺はともかく部下では豆鉄砲に等しい威力しか出せないだろう。不利なんてもんじゃなかった。
「ゆえに基本装備の見直し、ねえ。……あなたの
代表が俺の懐辺りを指し示す。俺の愛銃のことを言っているのだろう。確かにこいつの性能は折り紙付きだが。
「コスト面でお勧めしかねます」
「じゃあ何がお勧めだって言うの? まさか今更1911(ガバメント)とか言い出さないでしょうね」
代表が問うてくる。派生やコピーも大量に出回っているM1911なら、確かに色々な面で運用しやすいだろうが、うちで使うとなるとなあ。
「45口径であればHK45でしょう。ロングマガジンでの運用を推奨します。装弾数と貫通力を重視するのであれば、FNファイブセブンでしょうか。同社のP90と併用することで、弾丸の共通化も図れます」
どちらも俺の好みからは外れるが、性能と運用性で考えるとこういうチョイスになる。その答えに代表は眉を顰めた。
「戦力の底上げを図るのであれば、マグナムみたいな大口径の拳銃でもよくない?」
「装弾数と運用性に難があります。強いて挙げるとすればM&P R8ですね。357マグナム弾を使用できる8発リボルバーですが、オートマチックよりも信頼性と剛性に優れます。サブアームとしてならありかと」
要は弾数と威力のバランスだ。いくら威力が高くとも、継続戦闘力がなければ話にならない。弾の値段も違うしな。
代表はむう、と考え込む。頭の中で算盤を弾いているのだろう。経営者としてはできるだけコストを抑えたいだろうし、同時に隊員の損失を防ぎたいとも考える。採算的にどこまで許せるか。考えを巡らしているようだ。
ややあって彼女は再び口を開く。
「……いいわ。あとで資料を纏めて提出しなさい。で、拳銃だけじゃないんでしょう? 更新を求めているのは」
促されたようなので、俺は意見を述べることにした。
「はっ、アサルトライフルやサブマシンガン、ショットガンなど全般的に見直しを図るべきかと。……具体的な品目を述べても?」
「続けなさい」
「先ずはアサルトライフルですが……」
俺は前世からの知識とこれまでの経験、そして自分の好みを織り交ぜて語り出す。
※ツカサside
「……以上の理由から、5.56ミリでは火力不足となりつつあります。装弾数との兼ね合いを考えますと、300blackout弾の運用を推奨しますね。使用できる火器は……」
目の前の仏頂面の説明を聞きながら、ワタシはそれとなく足を組み替え姿勢をちょっと前屈みにして胸元を強調してみせる。
……ちっ、この男視線も向けやしねえ。心の中で舌打ちするけど、野郎はこっちの心境なんか知ったこっちゃない。
この男との付き合いも長くなった。先代からこの立場を継いだ時に顔を合わせたのが最初だ。当時のワタシはまだ学生で、生意気な小娘に見えたことだろう。実際自分でもクソガキだったと思う。
彼もまた己の才能を買われGSに属し、頭角を現し始めていた頃だ。当時のことは本人曰く、天狗になっていたと言うことらしいが、そうなっても仕方のない実績を挙げてきた。そこにいきなりクソガキが上司として現れたのだ。そりゃ不満も覚える。
よりによってワタシは、その男に対し挑発行為を行った。しかしこいつは歯牙にもかけなかった。「子供が粋がるんじゃない」と。この頃にはまだ、女子供に無闇に手を出さない、または手加減するという良心的な物が、こいつにもあった。
内心見透かされていると焦りを覚えたワタシは、権力を駆使し無理矢理こいつとの模擬戦闘を行った。勝てるという自信はあった。早くにテックを習得したワタシは、同年代と比べても頭一つ抜き出た能力を持っていたから。
本来ならばそこで詰みである。だがワタシは、一瞬でも死の恐怖を覚えてしまったワタシは、能力を暴走させてしまった。傍目から見れば逆転劇に見えただろうが、実際の所は反則負けだ。それはワタシ自身がよく分かっている。
そこからこいつはワタシの忠実な部下になった……ように見せかけて女子供にも容赦ないキリングマシーンになっちゃったよ! どうしてこうなった! ワタシのせいか!? ワタシのせいだったわ!!
今のこいつなら、先のように踏みつけた状態から躊躇なく気絶するまで模擬弾叩き込んでくる。間違いない。女子供でも引き金が引ければ人は殺せる。ましてやテック使いなら指一本動かさずにそれを成せるだろう。だから確実にとどめを刺さなきゃ。ってな感じに心境が変化したらしい。正直前の方が可愛げがあったくらいだ。
今現在も9ミリが火力不足だと言うが、ワタシはそうは思えない。確かにうちの平隊員が使えば高位のテック使いに対してダメージが通りにくいが、ゼロではない。弾数にてそれを補うことは可能だろう。多分こいつは本能的に、
殺意高すぎない!? めっちゃ怖くない!? 正直ワタシは内心ビビりまくっている。こいつは職務には忠実な方だが、
ワタシにできるのは、ビクビクしながらこいつを飼い続けることだけだ。だからなんだかんだ言いつつこいつの要望はできるだけ通すし、色気で籠絡しようとも考える。要望はともかく色気の方はすっとこ効果ないけれどな!
これでなかなか頑張っているつもりだが、こいつ眉の一つも動かしやがらねえ。スペシャルズみたいなピチスー系が好きなのか、それとも自分の部下みたいなパンツスーツに興奮する質か。いやそうじゃない。最早こいつの中でワタシは『上司という生き物』というカウントではなかろうか。
それはそれで非常にムカつく。いやこいつに思慕を抱いているとかは全く無い。しかし女としてみられないのはなんか屈辱だ。これでも結構モテてるんだぞ大概欲得尽くだけど! ともかくワタシ自身のプライドを保つのと保身のため、こいつの心は掴んでおきたい。そういった考えの基、ワタシはこいつと相対し続ける。
……なんかかつて持っていた自分の野心とか企みとかすっかり忘れているような気がするが、そんなことはどうでも良い。ともかくこいつ何とかしないと、ワタシは前に進めないのよっ!
人物紹介
カミイ・ツカサ
漢字で書くと【上位 司】。そのまんま上司からもじった。封印都市の治安維持を目的とした組織、GSの統括責任者を務める女性。幼少からそうなるように教育され、若くしてこの席に収まった。
就任当時は背伸びしたメスガキメンタルの持ち主で、周囲に、特に実績のあった主人公に突っかかり、挙げ句の果てに模擬戦闘を挑む。それにはギリギリで勝利したが、それ以降は態度を改めたように周囲からは見られていた。
人が変わったようになった彼女は有能なキャリアウーマンとなる。しかしその中身は結構ぽんこつ。自分との模擬戦がきっかけでキリングマシーンと化した主人公に内心ビビりまくっている。そして主人公と敵対しないように全力を尽くしているという本末転倒状態だった。本来結構野心家であったが、主人公という外部リミッターがついたおかげで健全に組織を運営している。彼がいなかったらGSは悪の巣窟と化していたかも知れない。
主人公を籠絡するために女を磨いたが、どうでも良い有象無象にアプローチをかけられまくるという弊害が生じた。そして肝心の主人公には全く通じていない。がっでむ。
主人公がキリングマシーンと化した原因であるが、彼自身は己の慢心を省みて反省するきっかけとなったと、感謝すらしている。彼からは多少の問題はあれど、要望を聞いてくれる良い上司であり恩人と見られているようだ。敵対したら容赦なく背中から撃つけど。
外観のイメージは漫画【暗殺教室】の【イリーナ・イェラビッチ】。スーツ姿、エロい、意外とぽんこつと考えたらこうなった。
イメージソングはブルゾンちえみのコントBGM。
はいなんか続きができてしまいました。ハーメルンの方が反応良かったのでとりあえずこっちに掲載です。
主人公と上司の関係性はこんな感じ。密やかな恋愛など皆無ですね、今のところ。ちなみに主人公、目線は向けてませんが視界には入っています。けれど「あんなちんちくりんだった代表が、ここまで成長するなんて……(ほろり)」という親目線で、エロい考えなど一切無い模様w
なお銃器関係の用語はググると幸せになれるかも知れません。適当言ってますが。