ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
黒船襲来から2週間。俺が思っていた以上に教導は上手く進んでいた。
受ける方も教える方も大分こなれてきたようで、もう俺が直接指導しなくても訓練が行えるようになった。やれやれ、一安心といったところかな。
『ほぎゃあああああああああ!!』
なんか遠くで悲鳴が上がってカラフルな全身タイツの女が天高く打ち上げられているが、そんな光景も見慣れてきた。各クランの主要メンバーが持ち回りで連中を鍛えているんだが、そろそろダンジョンに放り込んでも良い頃合いだ。フェバリット女史に提案してみるか。
あの4人、ダンジョン向けの人材だ。もちろんそうなるように選ばれたんだろうが、戦闘のスタイル、使用できるテックの構成、そういった物がダンジョンで来訪者を相手取るのに適していた。正直感情と思考が矯正されれば、すぐにでも探索者としてやっていけるだろう。
問題はそう簡単に矯正されないだろう性格とアクの強さだが……ま、探索者なんて性格に問題があってアクの強いのばっかりだ(偏見)。慣れるか諦めるかすりゃやってけんだろ。知らんけど。
そんな感じで教導をこなし、通常の仕事もそれなりに回していたんだが。
「失せ物探し? この街でか?」
GS本部に訪れた客に対して、俺は訝しげな声を出した。
「そういうのはおまわりさんの仕事だろうが」
「たいちょーさんおまわりさんじゃない」
俺の言葉に小首を傾げて返すのはお嬢。どっちかてーと看守なんだがそれはさておき、うちが警察と違うとか分かってて言ってるんだろうなあ。単純に話を持ち込む口実だろう。
で、彼女と共に現れたのは。
「無理なことを言っているのは重々承知である。しかしGSはコネが多かろうと思ってな。話だけでも聞いては貰えないだろうか」
眼帯軍服コスプレのちみっこ、マウザ・チナである。この2人仲が良いから連むのはよくあることなんだが、GSに頼み事とは珍しい。やるやらないはともかく、興味は引いた。
「一応聞くが、期待するなよ? それで、失せ物ってのは?」
「ああ、先ずはこれを見てくれ」
そう言ってマウザ嬢はタブレットの画面を指し示した。映し出されたのは写真。幼いマウザ嬢らしき幼女を抱きかかえた壮年の男性。その傍らには額縁に飾られた1挺の銃が在る。
「この写真は?」
「幼い頃の我と祖父である。そして捜し物とは、この銃だ」
「この銃は……モーゼルのM712……いやC96、か?」
M712の前身。弾倉が脱着式ではなくクリップでの装弾のみという、当時のボルトアクションライフルと似た装填方式の銃だ。M712との差は間違い探しレベルだが、よく見れば区別はつく。
写真のC96は、装飾が施されたカスタムメイドのようだ。200年ほど前の銃(この世界は22世紀だ)だが、生産数が多く派製品やコピー品も多量に出回っていたので、現存して実用可能な物も多い。そのうちの1挺と見える。
「我が家系は先祖代々銃職人でな。この銃は第2次世界大戦の前、先祖が銃の技術を学びに欧州に渡った際、向こうの職人から友情の証として贈られたものだ」
マウザ嬢の話によると、この銃は彼女の家で大切に保管されていたらしい。当然戦後は個人の銃の所有は難しい物となったが、何とか誤魔化し骨董品として押し通して、所持し続けたのだという。
「だが、10年ほど前か。我が家を巻き込んだ火事があり……そのどさくさに紛れて盗難された」
火事に巻き込まれた際、家財道具を退避させるため持ち出したらば、その際に他の骨董品と共に盗み出されたようだ。火事自体も盗みを目的とした放火だったらしい。
「そのときの下手人は捕らえられたのだが、この銃は売り払われた後だった。アンダーグランドに流れたようで追跡もできず、最早取り戻せまいと諦めていたのだが……これを見てくれ」
今度はネットにつながったブラウザ画面だ。封印都市内では通常のネットワークは使えず、独立した固有のネットワークが構成されている。それは外のネットワークと違い規制無しの何でもありな無法地帯だ。現実もネットもここはろくなもんじゃない。
それはともかく画面に映し出されたのは、メールマガジンのように見えるサイトだ。何やらオークションのような催しがあると知らしめて……。
「こいつは」
「目玉商品の一つ、だそうだ」
広告で出品予定の品がいくつか紹介されているが、その中に件のC96があった。装飾のデザインからいって同じ物のように見える。
「この装飾を持つ銃はこの世に1つだけ。コピーした可能性もあるが、このレベルの装飾を施すのは相当の技術力を要する。簡単に真似できるとは思えん」
「本物と見て間違いなさそうだな。見たところ、これは会員登録が必要なサイトか。オークションの日時は記されているが、詳しい場所や参加資格を知るためには会員からの紹介が必要、と。よく見つけたな」
「この街であればもしや、と思ってダメ元で探っていたのだ。まさか見つかるなどとは我も思っていなかったわ。……しかしこのサイトでこれ以上探ることはできず、開催の場所に心当たりのある知り合いもおらん。手詰まりというわけではないが、なんぞ心当たりがあれば力を貸して欲しいといったところだ」
いざとなれば力に物を言わせて強引に探るくらいのことはやるだろう。だがそれをやれば色々と敵に回さなきゃならん人間がでてくる。
手伝ってくんなきゃ暴れちゃうゾ♡っていう事実上の脅迫じゃねえか? これ。などと思いつつ、俺は言葉を吐いた。
「ふん、治安維持の一環だと思えばいいか。いいだろう、手伝ってやる」
「ご協力を感謝する。……それで、何か伝手のようなものはあるか?」
協力するのが当然といった態度で話を続けるマウザ嬢。いい性格してんなオイ。
まあいい、やるんだったらちゃっちゃと話を進めようか。
「俺たちに伝手はないが、知ってそうなヤツに話を聞くとするさ」
イベントの始まり始まり