ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

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病院でもネットがつながるようです


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 正直狂っているとしか思えない戯れ言をほざく男。こっちがしらけた目を向けていることに気づいた様子もなく、男は勝手に盛り上がって語り続ける。

 

「見れば貴様も第三帝国の信奉者。ならばかの遺産の話は聞いていよう。その謎を解く鍵がこの銃には刻まれているという。その謎を解き明かせばかの遺産は我が物となる!」

 

 第三帝国の遺産とか言う都市伝説(すごいデマ)を本気で信じているらしい。それがどうして件のC96に暗号が刻まれているという話になるのか。多分どっかで妄想と戯れ言が悪魔合体したんだろうが。

 さて、そんな阿呆の話を聞いたマウザ嬢はと言うと、大きく頷いてこう言った。

 

「うむ、ぶっちゃけ貴様あほだろう」

「あ、あほ!?」

 

 あんまりにもざっくりとぶった切る言葉に、男はショックを受けたようだ。が、マウザ嬢は構わず続ける。

 

「その銃は()()()()()()()作られたものだ。シリアルナンバーを調べれば明らか。そして作られてすぐにこの国に渡っている。つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。当然そのありかが示されているなんてことが、あるはずもなかろう」

 

 ぐうの音も出ない事実だった。「あ、な!?」とか呻いている男に対し、さらなる追撃を行うマウザ嬢。

 

「それに我がこのような格好をしているのは、()()()()()()()。第三帝国自体の存在とか復活とかどうでもよいわ。ただのコスプレロマニストに何を期待するのやら」

 

 ふーやれやれと、わざとらしく肩をすくめてかぶりを振るマウザ嬢。挑発をかねてだろうが色々とぶっちゃけすぎる。

 そして堂々と胸を張り、彼女は宣う。

 

「我が望むは世界の覇権。しかしそれは第三帝国などという過去の遺物に頼るものではなく、我ら渦巻く十字団が、このマウザ・チナという女が、己が力で成すべきもの。過去の遺物と妄想にすがるしかない狂信者風情と一緒にされるのは、実に不愉快である」

 

 自称ただのコスプレロマニストが言う台詞じゃない。そして無駄に格好良かった。

 ぷるぷると震えていた男は、やがて顔を赤く染め上げる。マウザ嬢の言葉を理解し、怒りがこみ上げてきたのだろう。男は空いてる手をずは、と上げて攻撃の指示を出そうとした。

 

『ラウディさん!』

『おうよ! アタイの咆吼(シャウト)を聞きやがれええええ!!』

 

 瞬時にエレキギターを取りだしたラウディが、爆音に乗せ死と破壊を歌う。途端に男たちはとてつもない重圧を感じたようだ。

 

「な、これは、テック!」

 

 そう、ラウディのテックは、敵集団に対して強力なデバフをかけるものだ。ミナセ嬢と同様のものだが、ラウディの方が強力な分、使用するために歌わなければならないという欠点がある。

 だが役割は十分果たした。

 こちらの攻撃が再開される。動きが鈍った相手に電動のこぎり(MG42)の弾雨が容赦なく降り注ぎ、レールガンやスナイパーライフルが正確に伏兵を射貫き、手近な建物に突入した姉が殴る。

 そんな中駆け出した俺は、男の護衛に銃弾を浴びせる。左右の護衛にきっちりヘッドショット。しかしサイバー化された護衛たちは数発頭に弾丸を喰らった程度では倒れない。

 MCXの全能力を全力増強(フルブースト)。体勢を崩した護衛が立ち直る前に再びの銃撃。強化された弾丸は今度こそ護衛を貫き、彼らはどう、と倒れる。次は軍服の身柄を確保――しようとしたところで、俺の隣から小柄な影が飛び出た。

 マウザ嬢だ。彼女は電光のような速度で軍服に迫る。軍服は今更反応し、己の腰に提げていたサーベルを引き抜こうとした。

 それを抜いたところで銃声。マウザ嬢が己の銃でサーベルの柄を射貫いたのだ。

 得物を取り落とした軍服が反応する前に、その眼前でマウザ嬢が跳ぶ。

 

「大人っ!? ぶべらっ!」

 

 一瞬動きを止めた軍服男に回し蹴り。横っ面に直撃を喰らった男の手からアクリルケースが真上に飛び、派手に回転しつつ男は吹き飛ばされ建物の壁に激突し沈黙した。

 なお何が大人なのかは……マウザ嬢がミニスカートだったところから察して欲しい。

 回し蹴りを放った方は危なげなく着地。その手に吸い寄せられるかのように、アクリルケースが落ちてきて収まった。

 

「サービスだ。冥土の土産にしても過分だぞ? 喜べ」

 

 そう言ってマウザ嬢は、不敵な笑みを浮かべる。

 それとほぼ時を同じくして、敵勢力は制圧された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして予定外のアクシデントはあったものの、目的の銃はマウザ嬢の手に戻った。当初の予定では裏オークションを襲撃し、ついでに主催者や参加者の組織を二つ三つ潰しておくつもりだったが、まあ仕方あるまい。

 その代わりにオークションを襲いC96を強奪したテロリストの首魁――軍服男が拘束された。この男、国際指名手配されていたようで、情報を吐くだけ吐かした後当局に連れて行かれた。まあ都市伝説を鵜呑みにするようなアンポンタンが迷惑かけなくなったというのは、それなりに世の中のためになったのではなかろうか。

 そしてマウザ嬢は取り戻したC96を実家に送り返した……りせず、なぜか改めてストックホルスターを購入し、それに収めて左腰に提げるようになった。

 彼女曰く。

 

「キネコ店長の言うことにも一理あると思ってな。祖父に話を通して実用することにしたのである。祖父もなんか喜んでいたわ」

 

 骨董品扱いだったから盗まれやすかった。肌身離さず持っていればその危険も少なかろうと言うことらしい。

 

「それにそのうち骨董品扱いされるのであれば、第三帝国の遺産などという与太話が纏わり付くより、世界に覇を成した女が携えていた得物と呼ばれる方が、この銃のためにもなろうさ」

 

 そう言って格好良く笑う彼女は、美少女と言うより男前であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな感じで、一連の騒動は幕を閉じた。……んだが、一つ気になることがある。

 それは闇オークションを襲撃し、件の銃を持ち去った実行犯、黒ずくめどものことだ。

 連中は軍服男が率いるテロリストに雇われた外部の者だったようで、銃を渡した後即座に姿を消したらしい。つまり軍服男がべらべらと妄想を宣っている間に、こっそり逃げのびたわけだ。

 手際の良さ、見切りの速さ。そしてことを起こす寸前まで俺たちに悟らせない隠形。相当に()()()連中だが、今までそんな輩の話を耳にしたことはない。最近この街に現れたのか、それとも今まで潜んでおり、活動を活発化させたのか。

 いずれにせよ、この街で騒動を起こすのであれば、俺たちと関わることになる。

 やれやれ、また面倒な(面白い)ことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




入院中に投稿! 
なんか背徳感
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