ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
……そろそろ連載にした方が良いか?
走る。走る。走る。
走りながら手に持つ支給品の
周囲の音を気にしつつマガジンを抜き、残弾を確認。側面のスリットからまだ半分は残っているのを目視し、再び装填。障害物の間を縫って移動を再開する。
転生して良かったと思うことの一つが、国内で実銃を扱える事だ。ガンマニアの端くれとして、これほど心躍ることはない。もっともその分色々な意味で痛い目をも見てきたわけだが。
目的地まではさほど遠くないが、油断はできない。と言うか罠が張ってあることは確実だ。
俺は慎重に、だが手早く位置取りしつつ目的地へ向かう。倒壊しかけたビル。その一室までたどり着ければゴールだ。俺はそっと瓦礫の間から様子を窺うが。
「……あいつここぞとばかりに仕掛けやがったな」
俺の視界が悪いことを利用し、目に見えた罠は仕掛けないと踏んでいたが、ビルの出入り口付近に無数のドローンが滞空しているのが確認できる。ただのドローンではなく、手榴弾程度の爆発物を内装した自爆ドローン、通称【ハニービー】だ。
このようなあからさまに見える事をする、と言うことは、他の侵入経路には『見えにくい罠』が仕掛けてあるのだろう。そして正面の出入り口にも入念な罠が仕掛けてあるに違いない。
だがしかし。
「詰めが少々甘いな。……俺がそう見るとまで読んでいたなら大した物だが」
呟きながら、俺はM4のハンドガード下部に備えられたグレネードランチャーに弾を装填。そして銃を構え直す。
ドローン群の位置と動きを見定め、瓦礫から身を乗り出し射撃。ハニービーは墜落した程度では爆発しない強度がある。だが銃撃に耐えられるほどのものではない。俺が狙ったのは密集している集団のいくつか。全部墜とす必要は無い。なぜなら。
「ほらな。密集させすぎだ」
ぽぽん、ぽぽぽんと誘爆するハニービーの群れ。密集しているところに撃ち込んで一つでも爆発させればこのざまだ。ここぞとばかりに数をつぎ込むからこうなる。
連続で起こった爆発は多くのハニービーを巻き込み、そして生じた爆煙は残った物の視界を塞ぐ。
道は通った。
瓦礫の陰から飛び出し駆け出す。走りながら銃を振り空マガジンをイジェクト。新たなマガジンを装填しボルトキャッチを叩く。煙に紛れ入り口に接近し、中に向かってグレネードを放った。
ぽん、と間抜けな音を残して飛翔したグレネード弾は、入り口に飛び込み派手に炸裂する。これで入り口付近の罠は吹っ飛んだはずだ。間髪入れず中に飛び込みながら、俺はグレネードを再装填した。
「ここからは力押しだ。どんだけ仕掛けたか見せて貰おうか!」
そして再びグレネードが飛ぶ。
この後、数分で状況は終了した。
「あのときハニービーを滞空させずに物陰に待機させておけば、不意を突けただろうな」
「それやったら隊長周辺を丸ごと吹っ飛ばすと思ったんですよう」
訓練終了後のデブリーフィング。がっかりしてるライト4は今回立てた策に相当の自信があったようだ。
彼女は電子制御系のテックを所持し、ドローンなどを支配下に置いて運用することができる。もっともそのテックを使うと自身が動けなくなるので、前線に出る時は宝の持ち腐れだったりする。彼女の能力を活かせるシフトが組めれば良いのだが、うちはいつでも人手不足だった。
なにしろエリートの集まりだと思われてるうちの部署だが、実働メンバーは俺を含めて13人。ライト分隊6名(女性)とレフト分隊6名(野郎ども)、一個小隊にすら満たない人数だ。しかもその半分は持ち回りで通常部隊の隊長格として活動しているため、実質的には1個分隊で業務を回している。
……江戸時代の奉行所でも、もうちょっと人手あったんじゃない? ブラックじゃない? とか思わないでもないが、上位のテック使いに対応できる人間が少ないんだから仕方が無い。レフト分隊なんか数少ない男性の生え抜きである。これ以上の戦力増加は難しいと言わざるを得なかった。
だからこそ訓練を欠かさないわけだ。基本は大事。いいね?
「テック封印して
「常に万全で動けるわけじゃないからな。不利な状況を想定しておくのも大事だ」
疑念の目を向けるライト4に、俺は外した眼帯をくるくると玩びながら応えた。そう、今回の訓練で俺はテックを使わず、眼帯で片目を塞いで挑んでいた。理由は言ったとおり、不利な状況を想定してだ。
まあ俺のテックは【
しかしそんなしょぼい才能でも、鍛え上げりゃあ上位のテック使いとも渡り合える。創意工夫は相当に必要だし、苦労もかなりするけど。
ともかくエリートとして扱われるのは、こう言った普段からの努力があってこそのことだ。この前みたいな誘拐騒ぎを防ぐためにも鍛えておかねばな。(※なお手を変え品を変え誘拐される模様)
「何人かメンバーが揃ってたら、もっとやりようがあったんですけどね」
「俺達以外は外回りだからな。ま、一人であれだけトラップ揃えられるんなら、十分使いようはあるさ」
成長はしていると伝えれば、ライト4は「使いどころがあれば良いんですけどねえ」と肩を落とす。うん、それは俺も思う。できればエリーターズのメンバーを増やし、一般隊員の底上げもしておきたい。やりたいことは山とあるが、中々上手くは行かないんだなこれが。
と、そんなことを話していたら、訓練場に一人の女性が姿を現した。
「やってるねえ。どうだい調子は」
片手を挙げて気楽に言うのは、身体のラインがはっきりと分かるボディスーツの上にフライトジャケットを羽織った人物。GSの切り札とも言える特殊部隊【スペシャルズ】のリーダー、【ジョウ・ミスミ】。通称【大佐】。元軍属という経歴の持ち主だが、紆余曲折あってGSにスカウトされ属することとなった女傑だ。
豪快かつこざっぱりとした姉御肌で、テック使いとしても一流。戦術家としても有能な指揮官……というだけなら良かったんだがなあ。
「聞いたぜェ、お姫様みたいに攫われたんだってな」
にんまりと笑いながら言う大佐。この女、有能な人物ではあるのだが悪乗りが酷い。喧嘩っ早い部下を煽り便乗し、事態を予測不可能な方向へ導くなんてしょっちゅうだ。結果事態が解決しても、その過程で大損害が出るなんて事がよくあった。
まともにやってちゃ世の中面白くない。彼女は常々そう口にし、事態が面白くなりそうな方向へ舵を切る。多分そう言うところやぞ、軍を追い出された原因は。
俺はジト目で大佐を見る。
「そりゃあんたらと違って、車で轢かれたら気絶くらいするわい」
「いくらなんでもうちらだってただじゃすまないよ。つか死ぬよ。何だと思ってんだい」
「息の根止めるまで油断できないアレでナニな人たち」
「ちくしょう否定できねえ」
思い当たるところが山ほどあるのか、顔をしかめる大佐。
「ま、それはおいといてだ。武器の新調したいって話小耳に挟んだんだけど」
話を変える大佐。眉を顰めるしか無い俺。
「……一枚噛もうってのか?」
「おうよ。うちらの伝で良いブツがいれられるんだけど、どうだい?」
にんまりと笑って大佐が言う。俺は疑念の眼差しを向けたまま応えた。
「それ、俺達にモノ買わせておいて、後でいざとなったら倉庫からパチって行くつもり……とかじゃないよな?」
「さあ何の話かね?」
「こっち見ろや」
明後日の方向を向いて口笛を吹く真似なんかしやがる。まあ本人も話に乗るとは思っていないんだろうが、あわよくばとか考えてただろ絶対。最悪お勧めのモノってやつは盗品で、盗品売りつけとロンダリングの可能性とかあるからな。質が悪い。
「ともかく必要があったらいつでも声をかけてくんな。大概のリクエストには応えられるぜ」
そう言って手をひらひら振りながら大佐は去って行った。それを見送ったライト4は、ぼそりと呟くように言う。
「あの人何しに来たんでしょうか」
「冷やかしと様子見だろ。うちが機能不全に陥ったら自分らも困るからな」
誘拐された俺が調子崩してないか確かめたってところだ。さっさと帰ったと言うことは問題なしとみたんだろう。まあ実際あの程度で調子崩すようではこの界隈やっていけない。
「さて、それじゃあ訓練の続きだ。次は俺が防衛側やるから、使える技能全部使って攻めてこい」
「……この人はこの人で何でこんなに元気なのか」
ぼやくライト4を引き連れて訓練を再開する。簡単にくたばりたくはないからな、やれるだけはやっておくさ。
※ミスミside
訓練場から少し離れて、アタシは鼻を鳴らした。
「相変わらずヤベーなアイツ」
もちろんエリーターズの頭のことだ。いくら訓練つっても、片目の視界ふさいで実弾使う奴があるか。下手すりゃ両目塞いでも訓練こなすんじゃねえかアイツ。普通におかしいわ。
正直アタシは、アイツをこの界隈で敵に回したくない人間筆頭だと思っている。テックから見れば単一の、しかも増強という基礎の基礎しか使えない雑魚にしか思えないが、その雑魚い能力だけで上澄みに食い込んでくるってのはどういうことだよ。
いや理屈は分かる。テックってのは
それを踏まえてもアイツはおかしい。普通増強はパッシブ、つまり
もちろん欠点もあって、一極に力を集中させれば他の能力がおろそかになる。例えば極端に攻撃力を上げれば、身体能力や防御力は低下する。それを差し引いてもなお、脅威と言わざるを得ない。
言ってみれば、上位のテック使いが『ジェット戦闘機並の速度で機動し数千発の弾数を持ってマシンガン並の速度で砲撃してくる重戦車』だとすると、アイツは『そんな戦車を拳銃一丁で相手取ることができる歩兵』ってところか。どんだけおかしいか想像できると思う。
「つくづく敵でなくて良かったと思うよ。ホント」
うちらスペシャルズも大概やらかしちゃいるが、アイツに比べりゃ常識的だ。
アイツに鍛えられてるせいか、エリーターズの面子も地味にヤバい。集団対集団ならともかく集中して各個撃破されたら、うちらでも危ないんじゃないかね。まあアイツに比べりゃ能力的には高いのが揃ってんだが、それでも上澄みに比べたら見劣りはする。それを基礎訓練と経験で埋め、よく鍛え上げた。アイツ教官とかでも食ってけるんじゃない?
……しかし、そう考えると。
「アレを気絶させて誘拐してったクラハムって一体」
え? もしかしてあの女めっちゃヤベえ? 今更ながらそれに気づいたアタシは冷や汗を流すしかない。
しばらくどうしようか考えた末。
「……関わらんとこ」
すまない。アタシは力になれそうにない。大宇宙に笑顔でキメたアイツの幻影(死んでない)に向かって敬礼したアタシは、己の無力にただただ涙するしかなかった。
そして秒で忘れた。
人物紹介
ジョウ・ミスミ
漢字で書くと【娍 美澄】。とある海外ドラマの登場人物の名前を弄らせてもらった。
GSの特殊部隊、スペシャルズのリーダー。素晴らしいスタイルにぴっちりボディスーツを纏った、大変ありがたけしからん格好をしているが、どっちかって言うと格好良い系お姉さん。
豪放磊落で面倒見の良い姉御肌だが、同時になんかあっちゃあ派手にやらかす問題児。一応奇抜な戦術や派手な動きをして、周囲にこいつヤベえと一目置かせると言った目的があるようだが、半分以上はノリである。この性格のせいか国防軍から退職。GSにチームごと引き抜かれた。
特殊部隊のリーダやってるだけあって鬼のように強い。加えて奇策も使う戦術家であるため、総合力ではトップに近い。テック使い最強談義で必ず名前が挙がる一人。なお通称が大佐だが、軍での階級は大尉止まりであった。尊大とも思える態度と言動から大佐と呼ばれるようになったらしい。
主人公に対しては頼りにしていると同時に警戒もしている。理由は本文の通り。互いにヤベえ奴と思っているようだ。内心はともかく表面上はさほど仲は悪くない。なお男女間の感情とか皆無。そもこの姉ちゃんにまともな恋愛感情があるのかどうか。もちろん主人公の方はノーサンキュー。命がいくらあっても足りないとか言う。
外観のイメージはゲームFGOよりアベンジャーノッブ(大)。
イメージソングは【特攻野郎AチームOPテーマ】。
……もうこれでスペシャルズがどういう連中か、大体分かってもらえたと思う。
ハイそう言うわけで続きができてしまいましたねえ。
今回は比較的まともなキャラクターとなりました。そしてなんか主人公のヤバさを語ってます。基礎能力一点集中が極まって逆に汎用性が高まったという。なおテック周りの設定はふんわりしている上に、徐々に変わってきてる可能性が高いです。捻れ骨子の設定に期待すんなよ?
しかし……主人公の評価が上がっていくと、同時に痴女のヤバさが際立っていくという現象が生じております。ホント何なのあの女。最早筆者の手を離れつつあるんですがどうしましょう。
そんなこんなで今回はこの辺で。