ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
そして、ダンジョンに拠点を作ろうとしていた勢力は一掃された。
「流石にダンジョン慣れしてやがった。お前さんらに協力仰がなかったら討ち漏らしがあったかも知れんな」
MCXのマガジンを交換しつつ、俺は紅の子に言う。彼女は電磁ブレードを鞘に収め、肩をすくめて応えた。
「感謝してよ? 人斬りは本分じゃないんだから」
そう言うが動じた気配は微塵もない。相当に修羅場をくぐってきたことは容易に窺える。常日頃来訪者相手に斬った張ったしているのだ、今更この程度ではということだろう。
『お前さんも見事なもんだ。やはりダンジョン向きだよ』
『……ふん、褒めても何も出ないわよ』
得物の鋏をハーフコートの内側にしまいながら、カティナが鼻を鳴らす。いや実際不意打ちに関しては、俺が知る誰よりも優れている。正面切ってなら俺でも十分相手できるが、ダンジョン内であれば手こずるどころじゃない。苦戦は必至、やもすれば負けるんじゃないかね。
ともかく彼女らの活躍もあって、確保した逃走経路から撤退しようとしていた連中も片付けられた。とは言っても楽な仕事じゃなかった。MCXもインフィニティも残弾が半分を切っている。相手が手強かった……と言うよりは逃げ隠れするのが上手かった。随分と手こずらせてくれたもんだ。
「ともかくこれで裏口は押さえたが……エリーターズリーダーよりオペレーター。こちらの状況はクリア。他はどうなっている?」
「こちらオペレーター。各グループの状況もクリア。いまCグループがそちらに向かっています」
「了解。合流し周囲を探索する」
今回の勢力が拠点を作ろうとしていたのは、地下構内のショッピングモールを模した区画。どういうわけだかダンジョンは、触媒となった施設や建造物の構造を模して形成される。シンジュクダンジョンの場合、荒廃した地下施設や駅構内がベースだ。なぜ
ともかく、どこから来ているのか分からない電源とか、原形を保っている設備とか、拠点として使うための最低限のインフラは生きている。来訪者対策さえできればしばらく籠もることもできるだろう。そういう意味じゃ目のつけどころは悪くなかったが。
「ちょっとメインで探索や採取やってるあたりから距離あるわね。それに袋小路に近いから、裏押さえられたら逃げらんないよね。実際あたしたちがそれやってこのざまなんだから。なんかちょっと間が抜けてるというか」
周囲を探索しつつアカサカ嬢は言う。俺たちがショッピングモール廃墟から逃げ出そうとしていた連中を押さえたのは、施設のバックヤードらしきところだ。俺たちはさらにその裏側、通用口から複雑につながった細い路地を利用して侵入した。確かにこの通用口を押さえたら袋のネズミだ。便利は良いが、今ひとつ拠点には向かないような気がする。
といったところで。
「隊長~、いますか~? レフト3と愉快な仲間たちが来ましたよ~」
「「「「「誰が愉快な仲間たちですか」」」」」
現れたのは
「こっちも派手にやらかしたようで……結構手練れだったみたいですな?」
「ああ。指揮をとってた連中かも知れん。装備もいいもん持ってたし、テック使いもそれなりだった。最初から真っ先に逃げ出す算段だったか?」
脱出経路を確保する人員にしては豪勢だった。裏取られることを予測していたのかも知れんな。
「1人か2人生かしておくべきだったかも知れんが、手加減する余裕もなかった。こいつらを送り込んできた勢力は結構本気だったようだな。何を企んでたんだか」
「アレじゃないですか? 前お嬢ちゃん誘拐しようとしてた騒動あったでしょ、あの関係」
レフト3の言葉にふむ、と考える俺。あり得ない話じゃないな。あの手の連中は頑固な汚れ並みにしぶとい。香港の組織を焚き付けて利用しようとしたとも考えられる。
「そのあたりは背後関係洗ってる上の連中に任せるとするか。俺たちはこの辺の物を接収しよう」
「随分と持ち込んだもんで。
血まみれの機材を見てげんなりするレフト3。このダンジョンは所々電源こそ来ているが、存在する機材や何やらはほとんど残骸で、まともに機能する物はない。つまりそうでない物は、よそから持ち込まれた物だと言うことだ。そしてこの場にはそう言った機材があちこちに散らばっている。拠点を作るつもりだったんだから当然だが、それにしてもいつの間にこれだけ持ち込みやがった。
「面倒だがやらにゃならんだろ。Cグループ、誰かこっちのめぼしい物見繕うの手伝え」
「あ、じゃあC13、君いけ」
「私ですか!?」
レフト3に指名された隊員――C13は、驚きの声を上げた。
「結構細かいところ気づいてたからな君。隊長のお眼鏡にもかなうだろ」
「は、はい! できるだけ頑張ります!」
緊張した様子で、びしすと敬礼するC13。確か入隊して半年くらいの隊員だ。俺の手伝いするくらいでそこまで緊張するもんかね?
「す、末永くよろしくお願いいたします!」
「何がそこまでお前さんを緊張させるのかが分からんが……まあいい。モバイルとかメモリーとか、情報の抜けそうな物をピックアップしていく。分かるな?」
「はいっ!」
緊張しながらもやたらと張り切っているC13と共に、俺は周囲の機材と死体を調べ始めた。
「ちょっと手持ち無沙汰ね。けど優先順位とか分かんないし」
端っこの方で紅の子が眉を顰めている。素のダンジョンを探索することには慣れていても、こういった捜査のようなことはやったことがないだろうからな。しばらく待ってもらうしかない。一方カティナの方は落ち着かない様子で周囲をキョロキョロ見回していた。2人とも手持ち無沙汰のようだが、来訪者が寄ってくるかも知れないからな。終わるまでは付き合って貰わにゃならん。
そんなときだった。
『ん? 何これ』
カティナが声を上げた。彼女が見ている方に目をやれば、俺たちが突入した裏口付近。死体が折り重なった下に、チカチカと点滅する小さな明かりが見えた。
「タブレットか何かか? 『ちょっとどいてくれ』
紅の子とお水がのぞき込む中、俺は死体をどかしてみる。するとそこに現れたのは、小型の発電機とデスクトップのパソコンを組み合わせたような、奇妙な機械だった。よく見ればそれから床に向かって、何かの配線が伸びているように見える。
「なんだこりゃ? 発電機付きのパソコン……か?」
「何が見つかって……あ」
訝しがる俺の背後からのぞき込んできたC13が小さく声を上げる。心当たりがあるのだろうか。
「お前さんこれが何か知って……」
俺の台詞は最後まで放たれることはなかった。
件の機械からピポ、と言う音が小さく鳴り、点滅していたランプの色が変わって。
俺たちは閃光に包まれた。
おおっとテレポート!