ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
クワガタは甲虫類のような外観と構造を持ち、ほぼ同様の機能と弱点を併せ持つ。
ようは甲殻類に酷似した関節構造を持つと言うことだ。構造は比較的単純で強度もあるが、内側は案外脆い。
案外と言うだけで、簡単に突ける弱点ではないが。
「そう容易く懐にゃあ潜り込めねえわな」
走り回りながらMCXを
無駄撃ちを控えるためには有効打を与えておきたいところだが、先も言ったとおり銃撃で関節を集中的に狙うなんて芸当は難易度高いなんてもんじゃない。四肢よりは胴体の関節の方が狙いやすいが、向こうも動き回っている以上狙いを一点に集中することは至難の業。正直まともなダメージは期待できないだろう。
普段人間ばっかり相手にしていると、こういうときにぼろが出る。俺は攻性のテックを持たないため、銃火器の能力を増強することによって攻撃力を補っていた。人間相手なら十分に通じるが、中型以上の堅く体力があって弱点を中々突かせないタイプの来訪者には、途端に歯が立たなくなる。クワガタよりも1ランク落ちるような相手ですら単独で倒すのは難しいのだ。
手段はないでもないんだが。
「これで生き残ったら対来訪者用の訓練追加するか。生きて帰れればな」
呟いて、振り下ろされたクワガタの前足を回避。俺に注意が引かれたところで、アカサカ嬢とカティナが攻撃を入れる。しかし彼女らも有効打を入れることができないでいる。
「こいつ、攻撃型か! ダメージが通る分マシだけど!」
『堅い! 全然通じないじゃないのよォ!』
来訪者にもテック使いと同じ属性がある。クワガタはそのほとんどが攻撃型だ。同じ属性のアカサカ嬢はまだしも、速度型であるカティナは相性が悪い。ダメージはほぼ与えられないと考えて良いだろう。
アカサカ嬢を中心軸に、攻撃を組み立てていくしかない。クワガタのクラッシャーを躱して反撃を行い、指示を飛ばす。
『カティナ、攻撃は通らなくて良いから、ともかく注意を引け。「アカサカ嬢、
「50、いえ30秒頂戴!」
戦闘型の高位テック使いは、大体は切り札的なテック攻撃を持つ。大佐のムスペルヘイムパーティーなんかがそれだ。そして大抵は使用するのに精神の集中などの
アカサカ嬢は戦いながら気力を高め、技を放つタイプ。攻撃が緩まないのは流石だ。
「リロードします! 残弾50!」
C13がM249のボックスマガジンを交換した。牽制のために撃ちまくり、もう1マガジンしか残っていない。テック使いではない彼女の攻撃はほとんど通じないが、それでもクワガタの注意を引くことはできる。弾を惜しんで攻撃に参加しないという選択はとれなかった。
『注意を引けとか、簡単に言ってくれちゃってェ!』
一撃離脱を繰り返すカティナが吐き捨てるように言った。相性の悪い彼女の攻撃は通用しないが、C13とは違いテックによる強化のおかげで戦えている。牽制としては十二分な役割を果たしていた。
クワガタの方もダメージがないとは言え、ちょこまかと動き回りちょっかいをかけてくるカティナは鬱陶しいのだろう、ハエを追い払うかのように前足や頭部を振り回し、彼女を追い払おうとする。が、速度で遙かに上回るカティナを捉えることはできない。
彼女一人であったらば、いずれ体力がつき餌食となっていただろう。俺かC13でも同じ事だ。そう考えればまだ運が良かったと言える。
などとやっていれば。
「やるわよ! 離れて!」
『カティナ! 下がれ!』
アカサカ嬢からの合図を受け、俺はカティナを下がらせる。アカサカ嬢は電磁ブレードを肩に担ぐように構え、駆け出す。
「斬鎧っ、一閃っ!」
所謂兜割の一撃。それはクワガタの頭部の付け根に深々と食い込んだ。
黒々とした体液が噴き出す。しかし。
「浅いか!」
ぎぃ、と唸るような軋み音を上げて、クワガタはまだ動きを見せた。致命傷には届かなかったらしい。
「やっぱ属性が同じだと通りが悪い! もう一度……」
「いや十分だ!」
再び技の準備に入ろうとするアカサカ嬢を制し、駆け出す俺。身体能力を全力増強し、真正面からクワガタに挑む。
『ちょっと正気!?』
カティナが悲鳴のような声を上げるが構わない、迫り来るクラッシャーを――
跳躍して踏みつける。
「踏んづけてった!?」
C13が上げる驚愕の声を背に、俺は一気にクワガタの頭部へと駆け上がる。多量の体液を失って動きが鈍くなったからこそできる芸当だ。そして都合の良いことに
「中身に直接ぶっ込みゃあ!」
強化した腕力に任せ、傷口にMCXの銃口をねじ込む。
「さすがに効くだろうがよ!」
そのまま威力を全力増強してフルオートで撃ち込む。クワガタの外殻は頑丈だ。表から撃ち抜くのは至難の業である。だが中に直接撃ち込むことができたらば。
その頑丈さゆえに
最後のマガジン。1秒にも満たぬ間に撃ち尽くされ、弾丸を吐き尽くした銃はボルトを開いて停止する。
硝煙がたなびく中、クワガタは動きを止め。
ややあってゆっくりと崩れ落ちた。
「こっちの方、こんな展開だったんだ……」
辛勝気味。そしてなんかありそう。