ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
沈黙したクワガタの背中から、俺は降りながら空マガジンを捨てる。
「残弾無し。いよいよじり貧だなこりゃ」
そう言ってからスリングを使ってMCXを背負う。アカサカ嬢はそれを見て問うてきた。
「破棄しないの? それ。弾が切れたんなら邪魔でしょ?」
「棍棒代わりにゃなるさ。それに簡単に捨てたら、後で財務にグチグチ言われる」
……帰れたら自費で買っとくか。
「で、お前さんのバッテリーはどれだけ残ってる?」
「あと一つ。バッテリーが切れても使えるけど、威力は落ちるわね。最低でもさっきみたいな一撃は出せないと思って」
「そうか。……C13、そっちの残弾は?」
「は、はい。マガジン変えてから撃ってませんので、50発丸々残ってます。節約すれば後1回くらいは」
「いざというときのため取っておけ。『あんたはどうだ?』
『……大分刃が欠けちゃったけど、何とか使えるわ。帰ったら買い換えなきゃだけど』
カティナが鋏を確かめて応える。得物のダメージだけではなく体力も消耗しているはずだが、それを言う様子がない。そういう状況ではないと気をつかっているのか、余裕がないのか。どちらにしても本心を口にすることはないだろう。
もう1回全力で戦闘するのは厳しいか。次があったら何とかこの子らを逃がさにゃならん。先ずはこの場から移動……。
「っておい、マジか……」
新たな気配。明らかに、つい今し方倒したクワガタと、同じ物。
「……アカサカ嬢。2人を連れて先に行け」
「ちょっと!?」
「隊長!?」
MCXに手をかけながら言った。アカサカ嬢とC13が驚きの声を上げる。
「もう1回クワガタとやり合うのは難しいだろ。逃げるにしても誰かが殿をやらにゃいかん」
『なんのつもりよ。かっこつけるだけなら……』
『俺一人の方が生き残れる可能性が高いんだよ。さっきと同じ働きができるのか、お前さん』
『うっ』
食ってかかってきたカティナに応えてやれば、彼女は一瞬たじろぐ。やはり消耗しているらしい。
「なあに、フラグへし折るのは慣れてる。お前さんらが逃げたのを確認したら、こっちもケツまくるさ」
「っ!」
俺の言葉に、なぜだかC13が息を飲む。そうしてから彼女は意を決したかのように言葉を発した。
「……行きましょう。『貴女も、早く』
「行くって、貴女」
「隊長がああ言ったら、てこでも動きませんよ。素直に従った方がマシです」
分かっているな。それがGS職員としての経験から来る物か、
アカサカ嬢は頭をガシガシとかいて、やけくそのように言い放つ。
「~~っ! ああもう分かったわよ! 行けば良いんでしょう行けば!」
『くっ……覚えてなさいよ貸しだからね!』
「言ったからには死なないでくださいね隊長! 絶対ですよ!」
口々に言って駆け出す。彼女らが去ると同時に、新たなクワガタがのそりと姿を現した。
「命助けた方が借りを作るってどういう理屈だよ。……ま、精々踏み倒さないようにするかね」
苦笑しながらMCXを手に取る。
ここが2階層ってのも大分怪しくなってきたなあ。頭の隅でのんきなことを考えながら、俺はクワガタに向かって歩き出した。
クワガタはクラッシャーを鳴らして、前足を横に振り回し叩きつけてくる。
反応速度、思考速度を全力増強。ゆっくりと振るわれた前足をMCXで殴りつけ……たりせず、
ゆるりと流れる世界の中、俺の身体は横方向へとすっ飛ぶ。その勢いを殺さず、僅かに地面を蹴って方向を調整。クワガタの側面に回り込む。
ヤツからすれば、殴ったと思ったら横に瞬間移動していた、とも見えるだろう。泡を食ったように俺の姿を探して頭を巡らすが、そのときには後方に回っている俺。身体の増強を解いて、今度は引き抜いたハンドガンの威力を増強し、後ろ足の関節を狙う。ダメージは与えられない。俺の存在を察知して慌てて振り返ろうとするクワガタだが、そのときには再び身体能力を増強して、クワガタの動きに合わせ回り込んだ。
俺の切り札、と言うか奥の手。
考えてみて欲しい。ぶん殴るのと銃ぶっ放すのと、どっちがダメージでかいかって話だ。テックという特殊能力を計算に入れた上でそれを天秤にかけ、俺は早々に格闘技術で上り詰めるのを諦めた。事実この状況でクワガタにダメージを与えることは不可能に近い。
……いや、言い訳だな。
「要するに
足を止めMCXを投げ捨て、ずしんと震脚を踏んで構え直す。通用しないから鍛えないなんて甘えがこの状況だ。
思いを新たに向き直ったクワガタと相対しようと――したところで。
どがむ、と言う音が響き、
「……ゑ?」
何が起こったか理解できないうちに、どがむどがむと連続した
……えぇ~。
「僥倖と言うべきかな。この幸運に感謝しよう」
そう言って現れたのは、硝煙をたなびかせたモデロ6を携えたクラハム。その後にそーっといった感じで逃がした3人がついてきていた。
……いやその、助かったんだが。助かったんだけど。
「水を差したかも知れないが、居ても立っても居られなかった心境は理解して欲しい。僕も乙女なのでね」
ウインクしてみせるクラハム。うん、俺も同じ状況だったらそうするわ。理解は出来る。
でもこの、なんて言うか。どーよ。
覚醒フラグがへし折られた感w