ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

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 マネ女史の店の次に訪れたのは、マッドな医療関係者の巣窟。ベルセルククリニックである。

 ……俺もホントはこんなとこ来たくなかったんだけどなあ。俺(・)の(・)疑(・)問(・)に答えてくれそうなのが先生しかいないんだから仕方が無い。受付でアポを取っていることを告げ、この街では信じられないほどの清潔さが保たれた廊下を進む。そして。

 

「テ(・)ッ(・)ク(・)能(・)力(・)が(・)消(・)え(・)る(・)可(・)能(・)性(・)? ……考えたこともないけれど、ありうる……のでしょうか」

 

 俺の問いに、ナガバヤシ先生はう~むと考え込んだ。

 

「確かにテック能力はダンジョンに由来する物。いえ、正確に言えばダ(・)ン(・)ジ(・)ョ(・)ン(・)の(・)発(・)生(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)誘(・)発(・)さ(・)れ(・)た(・)物(・)だと考えられていますが。……ちょっと待ってくださいね」

 

 そう言って先生は立ち上がり、部屋に備えてあった本棚から分厚いファイルを取り出し俺の前で広げた。

 

「これはテック使いの脳をスキャンしたものです。脳の中枢、この部分が明るくなっているでしょう? テック使いはこの部分が発達していて、ここがテック能力を発生させている元になっています」

 

 ファイルに載っている脳の写真には、確かに一部変化している箇所があった。テック能力に関する概要は習ったが、詳細は知らなかったので新鮮ではある。

 

「この部分から周囲に物理的な干渉を及ぼす波動が発生し、それが連鎖反応を起こして様々な現象を発する。これがテック能力です。この部分の発達自体が、ダンジョンの発生した時期から確認された物ですので、先ず間違いなくダンジョンの存在が影響を及ぼしている物と考えられるのですけれど」

 

 とんとん、と彼女は写真をつつく。

 

「この部分の発達は、す(・)で(・)に(・)人(・)類(・)の(・)遺(・)伝(・)子(・)に(・)刻(・)ま(・)れ(・)て(・)い(・)ま(・)す(・)。現状では新生児の数割が、この部分が肥大した状態で生まれるようですね。最低でもすぐさまこの部分の発達が消え去るという事は考えにくいと思いますよ」

「たかだか100年で、人類という種の遺伝情報が書き換えられていると?」

「放射線や電磁力の影響で、一世代で遺伝子に変異が起こるのはあることです。全世界にダンジョンが発生したのですから、全人類が影響を受けてもおかしくはないでしょう?」

 

 なるほど。テック能力の基本となる部分は、遺伝子レベルで全人類に広がっている、と。

 

「ともかく機能を司る部位は、簡単に消失する物ではなさそうです。であればあとは、テック能力がジャミングされる可能性でしょうか。これはすでに一部のテック能力で可能な話ですので、あり得ることなんですけれど」

 

 先生は腕を組んで椅子の背もたれに体重を預けた。

 

「全(・)世(・)界(・)の(・)テ(・)ッ(・)ク(・)使(・)い(・)を(・)封(・)じ(・)る(・)の(・)に(・)ど(・)れ(・)く(・)ら(・)い(・)の(・)出(・)力(・)が(・)必(・)要(・)か(・)。それを考えるといささか非現実的かな、と。先も言ったとおりテック能力の基本は連鎖反応を誘発する物。つまり発生させる時点のエネルギー量はそう多い物ではありません。人間のスタミナで十分まかなえる程度。ですがその程度のエネルギー発生量でも、全人類全世界のテック能力となれば、とんでもないエネルギー量となるでしょう。それを封じる力がどれほどのものか。……ダンジョン内に限れば不可能ではないでしょうけど」

 

 鼻を鳴らす先生。

 

「ですがダンジョン内に限定されても、今度は来(・)訪(・)者(・)の(・)能(・)力(・)も(・)制(・)限(・)さ(・)れ(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)という問題が生じますね。何しろ来訪者が使うのも基本はテック能力。こっちのテック能力だけ封じて来訪者は使い放題、なんて真似ができるのかどうか」

「まあ広範囲のジャミングってのは、得てして敵も味方も影響を受けるものだしな」

 

 ジ(・)ャ(・)ミ(・)ン(・)グ(・)自(・)体(・)は(・)不(・)可(・)能(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。そうなるとある種の切り札として使われる可能性はある、か。

 先生は益々難しい表情となって話を進める。

 

「そも人(・)類(・)が(・)テ(・)ッ(・)ク(・)能(・)力(・)を(・)得(・)た(・)の(・)は(・)、向(・)こ(・)う(・)側(・)の(・)思(・)惑(・)に(・)あ(・)っ(・)た(・)の(・)か(・)? という問題もありますね。普通に考えたら、わざわざ砦まで作って警戒するような相手に、自分たちと渡り合える能力を与えたりしますか? ダンジョンの発生による余波、偶発的な物と考えた方が辻褄は合いますね」

「普通に考えれば、確かに」

 

 俺(・)た(・)ち(・)が(・)普(・)通(・)に(・)考(・)え(・)れ(・)ば(・)、な。俺は先生に言う。

 

「が、向(・)こ(・)う(・)側(・)の(・)連(・)中(・)が(・)こ(・)っ(・)ち(・)の(・)常(・)識(・)と(・)同(・)じ(・)物(・)を(・)持(・)ち(・)合(・)わ(・)せ(・)て(・)い(・)る(・)か(・)は(・)分(・)か(・)ら(・)ん(・)。力を与えておいてそれを取り上げ、絶望に叩き込んで悦に入るとか、強者と相対することが喜びみたいな考えとかかもな。そうでなくとも我々がテック能力を得るのは織り込み済みで、対策を取っているかも知れん。こうやって思いつく以上の最悪が待ち構えていることだってありうる」

「そう言われるとぐうの音も出ないのですが」

 

 先生は苦笑した。

 

「よくもまあそこまで悪い状況を思いつく物です。大概はそういった物は見て見ぬ振りをするのに」

「見て見ぬ振りをして問題が消え去ってくれるんなら苦労はせんだろ。こっちは現場で現実と相対せにゃならんのだ。いきなりテックが消え去って何もできないまま死ぬ、なんてのは御免被るんでな」

「これまた否定できないお話で。……ですけれど、テック能力の消失やジャミングに関しては打つ手がないのもまた現実なんですよ」

 

 ふうむと再び考え込む先生。

 

「次善策としては強力な武器を使う、強化フレームやパワードスーツなど身体能力を補う装備を使う、などが挙げられますが……貴方のことです、もうその辺は手を打っているのでしょう?」

「まあな。根本的な解決策とは言えないが、手っ取り早くて確実な効果が見込める。問題は予算だけだ」

「世知辛い世の中ですね。……それ以外の対策となると、こっち由来の技術である生体強化やサイバー化は影響を受けませんから、それを施すというのも有りですね」

 

 そう言ってから虚空を見上げ、先生はまたう~んと考える。

 ややあってこっちを向いた彼女は、良い笑顔でこう言った。

 

「施術しときます?」

「再起不能な大怪我したら考えるよ」 

 

 そんときにゃあ、引退考える方が先だろうがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実はテックに関する説明係だったせんせー。
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