ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

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【医者】

 

 

 

 

 

【ヤエ side】

 

 

 エリーターズの隊長が退出し、私は一息吐いた。

 

「コーヒーを淹れてくれる? 濃いのを」

 

 私の助手を務めている看護師長に頼む。彼女は淡々と用意をしてくれた。

 

「それにしても、テック能力が使えなくなる可能性ねえ。……よくもまあそんな最悪の状況を考えつくこと」

 

 いえ、正確には誰かが考えついても口には出さなかったんでしょうね。ダンジョンや来訪者への対策が、根本から崩れるに等しいのだから。

 彼に言ったとおり、テック能力そのものが消え去る可能性は低いと私は見ている。全てのテック能力が封じられる可能性も。しかし彼の言うとおり、可能性はゼロではない。ゼロではない以上あり得ることとして考慮に入れなければならない。言われてみればごもっともな話だ。

 そもダンジョンなんて代物が出現するなんて、100年以上前は誰も想像すらしていなかっただろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()わけだ。可能性だけで論じるのは愚かな話といえる。

 とはいえ一介の医学研究者にできることなんてたかが知れている。学会でも異端児扱いされていた私だ。何か言っても聞く耳を持つ者などあまりいない。同様の人間なら興味を持つだろうが、それが世の中にどれだけの影響力を与えるか。微々たるものでしかないだろう。

 

「それでも一応、知り合いには言っておこうかしら」

 

 幸いにして私の知り合いは、彼の意見を一笑に付すような人間はいない。その分数は少ないし、私が言うのも何だがまともな人格を持っているとは言いがたい面々だ。塵が綿埃になった程度のものだけど、やらないよりはマシなんじゃないかしらね。

 

「どうぞ先生。……それにしても、彼の発想には驚かされるというか呆れるというか」

「普通の考え方ではないことは確かね。興味深いわ」

 

 コーヒーを手渡しながら師長が言う。受け取りながら私は小さく笑った。

 変わり者という自負がある私でも、口に出すのは二の足を踏む発想だ。いや、思いついてもそんなまさかと頭の隅に追いやっていただろう。

 しかし、件の話を聞かされ改めて考えてみれば、笑えるものでもなかった。件の話がどうこうと言うだけではない、この街ではそれを笑い話にできないほど()()()()()()()()()()()。テック使いを狙う勢力の介入然り、転送装置なんて代物が持ち込まれること然り。向こう側の関係でなくとも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、なんてことは起こりうる話だ。……あらやだ。私も割と最悪の状況思いつくじゃない。人のことは言えないわね。

 

「こっちでも意見や発想纏めてレポートにしておこうかしら。彼に恩を売っておくのも……うん、悪くないわね」

「検体になって貰うのではなく?」

「彼の場合、特異なのは身体の機能ではなく精神性よ。解剖してもその本質を調べることはできないでしょうね」

 

 どちらかと言えば精神科医の領域でしょうね。彼、隊長は老獪な暗殺者のような用心深さと、柔軟な発想が同居した精神構造を持つ。そして機械のようでいて情がないわけではないのだが、なすべきを成すと決めたら人間性を即座に捨て去ることができる、言わばこの街に適した有様。大なり小なりこの街で生きる人間にはそういう部分があるけれど、彼のようにはっきりとした人間は数人ほどだ。

 これで何か強い目的のような物があると、良くも悪くも危険な方向に向かいそうだけど、幸いにして彼は生きて楽しむ以外の明確な目的はなさそうだ。彼と同種の者たちもそんな感じだし、今のところ危険性は少ない。()()()()()()、だけど。

 

「なんかGSが全滅したりして、復讐者になったりしたら、全技能使って淡々と敵対者滅していきそうなのよねえ」

「それは今とあまり変わらないのでは」

「……そう言われるとそうね。なんだ危険性とか全く変わらないって事か」

 

 敵対はしたくないんだけれど、彼の立場的にこの街のテック使いほぼ全てと相対しなければならない可能性はある。そうなったら絶対逃げるわよ私。全技能使われて淡々と追い込まれたくないもの。

 

「この街から逃げ出す手はずを整えていた方が良さそうね」

「検体が増えると喜ばれるかと思いましたが」

「命あっての物種だもの。ま、すぐさまどうこう言うわけでは無いでしょうけど、万が一のために、ね」

 

 どれだけ少ない可能性であろうとも用心はしておく。彼に見習うことにしよう。

 逃げる算段だけじゃなく、色々と考えられること、思いつくことはある。忙しくなりそうだわ。私は笑みを浮かべているのだろうが、それは苦笑いかそれとも別種の物か、判別はつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※キャラ紹介

 【ナガバヤシ・ヤエ】

 

 

 漢字で書くと【永林 八重】。モデルになった某ゲームのキャラの名前を弄った。

 医者枠にしてテック能力関係の解説役。外見はまともに見えるが、何かあっちゃあ人を検体にしようとするエキセントリックな性格をしている。同時にクレバーであり目的が果たせないとなるとさっさと撤退するような思い切りの良さもある。GSの暗黒面に気づいている一人。

 

 元々医療関係の研究者であったが、実践的な研究と調査を行いたすぎて出奔。似たような連中を集めて封印都市に赴きベルセルククリニックを立ち上げた。もちろん違法。

 テック能力とそれを医療に応用する研究が専門だが、大概の治療行為はできる。一人総合病院。当然並の医師より技術が有る上、テック能力が加わることによってとんでもない名医となった。

 

 テック能力は【修復】と【再生】。これを医療技術と組み合わせることによって、完全に生命活動が停止していない限りは心臓ぶち抜かれた人間でも治す。彼女自身は戦闘力がさほど高くないが、仲間に加えるとほぼ不死身の軍団ができあがる。

 またなんかあっちゃあ検体になれとかいうが、なってしまうと生きたまま解剖され、そこからあらゆる不調や持病などが取り払われた完全健康体で治される。もっとも生きたまま解剖されるのが怖くて誰も検体になりたがらない。

 

 外観のモデルはゲーム東方シリーズから【八意 永琳】。彼女のカラーリングが大人しくなって白衣纏ってる感じ。無駄にエロい。

 イメージソングは東方……ではなく【Never Google Your Symptoms】。よつベで和訳して見たら全てが分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




美人の女医さんなんだがなぜか嬉しくない枠。
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