ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

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 やっと諸々の用事が終わり、GS本部に帰り着いたのは日も暮れかけた頃だった。

 隊員達は当直の者以外は帰宅したり宿直室で休んだりしているだろう。代表に報告は……明日で良いか。俺は帰りのついでに寄ったコンビニの袋を手に、演習場へ向かう。……ん? 明かりがついているな。誰か居残りで自己鍛錬でもしているのか。

 最低限の明かりが灯っている演習場に足を踏み入れてみれば、そこには模擬銃を持って走り回っている人影が一つ。

 コンバットウェアのズボンにブーツ。上半身はタンクトップの小柄な女性。未成年にも見える幼げな容姿だが、ショートカットを乱し走り回る姿には鬼気迫る物がある。そんな彼女に声をかけてみた。

 

「自主練か? 精が出るな」

「……へ? あ、へぁ!? 隊長!?」

 

 突然声をかけられた彼女は、泡を食った後直立不動で敬礼した。

 

「お、お疲れ様であります! 大変お見苦しいところを!」

 

 その声に態度、彼女が誰であるか悟った。

 

「C13かお前さん。ゴーグルとメットが無いと、誰か分からんかった」

「すみません貧相で見てもつまらない物を!」

「別に貧相でもつまらなくもないと思うが。……C(チャーリー)大隊は通常勤務だったな? 自主練はしんどいだろうに」

「はっ! この間のこともありまして、やはり自分は力量不足であるかと思いまして! すこしでも鍛錬を積み重ねておかねばと!」

 

 フル装備に荷物満載のリュック背負って、軽機関銃担いで走り回れると考えれば十分な体力はあると思うが、テック無しの一般兵だとそれでも力不足だと思ってしまうのは分かる。特に彼女は中型との戦闘経験者だ。このままでは立ち向かえないという危機感は強かろう。

 

「ま、無理はせん程度にな。……それに、そうだな……」

 

 丁度良い機会かも知れん。いずれ折を見てと思っていたが……あるいはやはり何か作為的な物なのか、このタイミングにシチュエーションは。

 探りを入れる意味でも、踏み込んでみるか。

 

「休憩がてら、一つ頼まれてくれないか?」

「? は、はい、自分でよければ」

 

 きょとんとするC13に向かって、コンビニの袋から取り出した1ℓのミネラルウォーターのペットボトルを放る。

 

「それを俺に向かって、軽く投げてくれ。胸に当たるくらいの高さで良い」

「分かりました。……行きます!」

 

 よく分かっていないであろうC13が、ペットボトルを放る。空中を舞うそれに向かって、俺は右脚を踏み込んだ。

 右脚を軸に、コンパスのようなイメージで下半身を回しながら左脚を踏み出す。脚から腰。腰から背中。捻りながら十全に力を伝達。踏み出す脚に力は入れない。軌道を安定させ、支えるだけ。

 身体が反転するのに合わせて伝達した力を左腕に乗せ、内側にひねり込むように掌底を放つ。それは狙い違わず、ペットボトルを捉えた。

 ばんっ! と音が響き、くの字に折れ曲がったペットボトルが吹っ飛ぶ。それは空中で蓋を吹っ飛ばして中の水をまき散らし、落下してボコンボコンと音を立て転がっていった。

 ……理想の7割。いや6割半ってところか。今のじゃ人に当てても、精々ゲロ吐いてのたうち回るくらいだな。実戦で使うには程遠い。最低でも当てたその場でペットボトルが破裂するくらいじゃなきゃ、話にならん。

 

「……は!? え!? 何!? いまのなんです何が起こったんです!?」

 

 唖然としていたC13が再起動して、驚愕した様子で俺と吹っ飛んでったペットボトルを見比べている。俺は残心の構えを解いて答えてやった。

 

「【震破掌】。中国拳法とかで言う、勁打とか通背拳とか通しみたいなもんだ」

 

 所謂浸透打撃。殴る衝撃を内部に行き渡らせダメージを与える技だ。当然普通に殴るより、技術的にも使うタイミング的にも難しい。

 本来俺が前世で学んでいた武術の技ではないのだが、なんかひょんな事から習得する機会があった……ような気がする。この辺も記憶がおぼろげだ。それはそれとして前世ではついぞ全力で使う機会が無かったため、完全な習得には至らなかったという記憶があるが、今生ではそうも言ってはいられない。焦らず、だが確実に、物にしなければな。

 

「隊長って、そんな技も使えたんですね。ガンアクションだけじゃなかったんだ……」

 

 呆けた様子で言うC13。

 

「しばらく使ってなかったんで鈍ってるがな。ところで――」

 

 ()()()()()()()()

 

「このゲームでお前さんの推しは誰よ」

「あ、はい。本人目の前にして言うのも何ですけれど1番はやっぱり隊長、チューおじですね。実物見ても思いますけれどやっぱ実質上主役でしょう。なんですかあの特殊効果無しのアクションリーブスですかステイサムですか。映画化希望ですドラマでも可。そして個人的にはレフト6きゅんが捨てがたいですね。癒やしの天使と思いきやその中身のえげつなさ加減が実にたまらんですよ大好物です。可愛い笑顔から罵られたい。実際罵られたら何日か凹んで寝込む自信がありますが、それを差し引いても罵られたい。お金出したらやってもらえますかね無理ですかダメですかそうですか。あとここだとヒロコちゃんなのでいないんですがヒロオくんも良い感じです。ほやんとしているように見えてガンギマリ最高ですか。いやヒロコちゃんもガンギマリヤッターなんですが、やはり同性だといまいち盛り上がりに欠けるというかときめきという物がちょっとこう……」

 

 長々と続く台詞がピタリと止まり、同時に身振り手振り激しく熱く語っていたC13も動きを止めた。

 そこから軋んだ機械のように、ぎぎぎとぎこちなくゆっくりとこちらを見る。

 俺は皮肉めいた笑みを浮かべ、こう言ってやった。

 

「そういうことだよ、【転生者(ご同輩)】」

 

 僅かな沈黙。そして。

 

「え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”!!??」

 

 C13の悲鳴が、薄暗くなった空に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい大体予想通りであろう展開。
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