ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

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「堪能しました」

「何を言っているんだお前は」

 

 すっごく満足したという様子で呟くトザマに対し、思わずツッコミを入れる俺。異世界対策機構支部に向かう途中での一コマだ。

 

「そりゃ最推しと女性キャラ最推しとの格好良い会話ですよ? 普通に眼福でしょう?」

 

 この女真顔だった。そこまでのことか?

 そう思ってたら、トザマは真顔のまま、すぴしと人差し指を立てた。

 

「隊長に分かり易いように例えたら、リーブスとイェンが武器ソムリエのところで銃を弄りながら格好良い会話を交わしている光景を目の前で見ているような物です」

 

 ……言わんとしていることは分かった。それにしてもこいつの世界でもジ●ン・ウ●ックは普通にあるのな。

 

「……まあ自分は立場的に、たまたまコンチネンタルに宿を取ってしまったガンマニアの一般人的なものですけどね」

 

 微妙に分かるような分からんような例えだな。つーかどっちかってーと、一般人だったくせにあっさりとドンパチに適応したデス●ラードのバンデラスじみた雰囲気があるんだが。

 

「にしても、クラハムが推し、ねえ」

「格好良い女性が嫌いな女子はいません。言動が時々突飛ですが、隊長に目を付けたところは流石と言わざるを得ないかと」

「あの突飛なところが全てを台無しにしているような気がするんだが」

 

 若干引きつってたのは推しとやらを前に緊張していたからだったらしい。こいつの好みも変わってるな。俺が最推しって時点で推して知るべし、か。

 とか何とか話しているうちに、目的地にたどり着く。

 城塞のような異世界対策機構支部の建物は、実際ダンジョンを巡る流れの中で要塞として使われていた物だ。ダンジョンの対処が決まり23区の大部分が封印都市となった際に破棄され取り壊されるところであったが、最前線での活動拠点を必要とした対策機構が買い上げ、それから今日まで運用している。

 いざとなったら再び要塞として機能することになるんだろうなあ、などと考えつつ、アポを取っていたお嬢の元へ向かった。

 そういえば、なんかお嬢も推し的な事言ってなかったかこいつ。どういう反応を見せるのやら。

 

「……そういうわけで、エリーターズのオペレーターになったトザマだ」

「トザマ・ミユです……よろしくお願いします?」

 

 で、対面したらばトザマは戸惑った様子を見せた。実は俺も似たような物だ。

 なぜならば。

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 普通に挨拶してくるお嬢は、いや彼女含めたホープブリケイドと米ヴィランどもは。

 なんかボロボロだった。

 いや格好とかは普通に小綺麗にしてるんだけど、包帯巻いたり青アザ作ってたりで、満身創痍五歩手前くらいな感じだ。激しい戦闘やらかしたとか聞いてないんだが何やらかしたんろうか。

 聞いてみたらば。

 

「いやあ、エイカさんに教えて貰った2階層の狩り場で、ちょっと頑張り過ぎちゃって。そして今更気がついたんですが」

 

 そこでお嬢は真顔になった。

 

うち(ホープブリケイド)にはヒーラーが居ません」

「ホントに今更だったな」

 

 最大の欠点というか、一組織に一人は欲しいヒーラーが、このクランには居ない。これまでは誰も大怪我することなくダンジョン探索をこなしてきたので、ヒーラーの確保は後回しにされたようだ。で、ちょっと()()()()()()()()()()()時にやっと思い出したらしい。

 

「色々と突っ込みたいところはあるが、何でまた限界にチャレンジするようなマネを」

 

 半ば呆れて聞いてみたら、お嬢は真面目なままの顔で答えた。

 

「そろそろ()()()を知っておこうかと思って。……今まで私たちはさほど苦戦したことがなかったし、大規模な諍いでも常に()()()()()()()()()()。このままだと本当に危機が訪れたときに乗り切れるとは思えなくて」

 

 なるほど、だからこそ自分たちに追い込みをかけたと言うことか。ホープブリケイドの面子は特に不満もなさそうだし、覚悟の上なのだろう。ヴィランどもはなんで自分たちまで、と言った表情を隠していないが。拒否できないという事情はあるんだが。

 

「とりあえず急ぎヒーラーの確保が必要だと痛感しました。ひとまずはベルセルククリニックから誰かしばらく出向して貰うことになりそうです」

「気を付けろよ? 気がついたら検体にされてたなんてことになりかねないからな」

「……死ぬより安いのでは?」

 

 相変わらず根性座っていた。トザマが小さく「やっぱりガンギマリだぁ」とか呟いていたので、原作でもこんな感じらしい。

 ともかく彼女らも鍛え直しを図っている。忍び寄る不穏な気配。誰もがそれに足掻こうと動き出し始めた。逃れられないなら、立ち向かうしかない。覚悟があろうと無かろうと、時間は待ってくれないのだから。

 

「ところで」

 

 シリアスな方向に思考を振っていたら、お嬢が口を開く。

 

「トザマさんだったかな? まさかとは思うけど……たいちょーさんと深い関係とか?」

 

 唐突におどろおどろしい雰囲気を纏うのやめてくれないかなあ心臓に悪い。なぜかいきなりおっかないモードに入ったお嬢――

 

「解釈違いです」

 

 物怖じもせずどきっぱりと、言葉を放つトザマ。なんかスイッチ入ったぞこいつ。

 

「いいですか? 推し活と恋愛感情は違う物です。愛から生じる物と言うことは同じですが、その目的は根本から違います。恋愛感情は報われることが目的の中にありますが推し活にそのようなものは必要ありませんむしろ邪道。ただあふれんばかりの萌えの魂に導かれるまま全てを賭けるのが推しの道。あるいは影から後方理解者顔で腕組んで推しの生き様を見守るのもありです。決して推しと自分とのカップリングなどと言う解釈違いかつ勘違いな妄想に身を委ねるなどとあってはならぬ事。推し活とは死ぬことと見つけたりと葉隠にも書いてあります」

「「「「「お、おう」」」」」

 

 真顔で淡々と推し活を語るトザマに、お嬢だけでなく全員引いていた。おっかないモード入ったお嬢をたじろがせるとは……こいつもしかして大物かも知れん。(←現実逃避)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ自重という言葉を忘れ始めているかも知れない女トザマ。
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