ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
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今回推奨BGM、ディープ・パープルで【ハイウェイスター】。
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【another side】
夜のしじまを叩き割るかのように、エンジン音と怒号が響く。
「クソ! 速えぇ!」
「こっちは最新鋭だってのに!」
半ば瓦礫の山と化した街中を、数台のバイクが駆ける。そのほとんどがバイクや着込んだ服に、翼の折れた天使のエンブレムが施されていた。
【
その傍ら、新旧入り交じったバイクを駆り、走り回ることを怠らない。なんでそんなことをと言う問いは無意味だ。それが彼女らという生き物だからだとしか答えようがない。
ともかく普段は本能の赴くまま、盗んでないバイクで走り出し窓ガラスを壊して回らず気ままに走り回って、時には治安維持のまねごとをしたり困っている人の手助けをしたりしてる彼女らだが、今回はやたらと殺気立ち普段は滅多にやらない全力全開で愛車を走らせていた。
そんな彼女らが追っているのは、黒き鎧のようなフルプロテクターを纏い、漆黒のバイクを駆る何者か。追いつけそうで追いつけない、挑発するような走りだ。いや、実際挑発されていると構成員達は考えている。
ここ最近、失墜天使の構成員や同じようにバイクで走り回る者たちの前に現れ、散々煽った挙げ句振り切って走り去るという行為を繰り返しているのが、黒いバイクの乗り手だ。その目的は定かではないが、明らかに友好的ではなく、むしろ喧嘩を売っているとしか思われないだろう。そして喧嘩を売られているとなったら、受けて立つのが失墜天使という女達であった。
そんなわけで、今日も今日とて彼女らは黒いバイクを追い回しているわけだ。
「見たことのないバイクだけど……そこまで性能の差があるはずが!」
一人の構成員がスロットルを開け、果敢に挑みかかる。一度文明がめちゃくちゃとなり、化石燃料が希少となった現代では、合成燃料のレシプロエンジンが主流だ。電動? 電気インフラが通っていないとクソの役にも立たないゴミ(偏見)がなんだって?
それはそれとして、構成員の彼女が駆っているバイクは、最新鋭のネイキッドタイプだ。リッターを超える排気量に過給器を追加したカスタムを施されており、直線であるならばピュアレーサーにも引けを取らないという自負があった。
対する黒いバイクはアメリカンスポーツタイプ。決して遅いわけではないが、空力を考えたレーサーなどに比べれば、どうしても一歩劣る。それは構成員の
加えて増強のテックによる強化がある。どこぞのチュートリアルおじさんの有様を見て、自身で創意工夫し鍛練を重ねた彼女らは、自身と乗っているバイクに対して同時に強化を施すことが可能であった。もっともバイクに乗ってるとき限定なので、どこぞのチューおじに比べ汎用性に乏しいのだが。
「捉えた! いける!」
先を行く黒ずくめに迫る。過給器と増強により著しく速度を増したネイキッドバイクは、猛るように咆吼し限界を超えて駆けた。
ぐんぐんと黒ずくめの背中が迫る。これなら追いつき、追い越せると、構成員はほくそ笑んだ。
だが。
黒ずくめの背中は無機質で無表情。しかし確かに。
どんっ、と大気が爆ぜ割れた。いや、爆ぜ割れるような音が響く。
黒いバイクが、圧倒的なまでの加速を見せたのだ。それは強化されたはずの構成員のネイキッドバイクを置いて、瞬く間に小さくなっていく。
「馬鹿な! あんな加速!」
「死ぬ気か!」
構成員達が声を上げるのは、黒いバイクが常識外の加速を見せたから……
自殺行為にも等しい。だが放っておくわけにもいかず、気に食わないどころではないがいざとなれば救助を、などと考えつつ。構成員達もギリギリの速度で後を追う。
弾丸のような速度で駆ける黒いバイク。すぐそこにカーブが迫っているのに減速する様子もない。死んだ。アレは死んだ。やっちまうぞ確実に。絶望にも似た心持ちで、構成員達が見守る中、黒いバイクはカーブに突っ込み――
「「「「「……は?」」」」」
予想外のことに、構成員達は間の抜けた声を上げる。
彼女らが唖然とする間にも、カーブの手前で高く跳躍した黒いバイクは、その先に点在するビルや建物の残骸を足場に、蚤やバッタのように器用にはね跳んで、夜の闇に消えていった。
どぎゃぎゃぎゃぎゃ、と派手にスライドしながら停車する構成員達のバイク。 彼女らは呆然と、黒いバイクが消えていった闇を見るしかなかった。
ややあって。
「……なんなんだよアイツは……」
黒いバイクに迫っていた構成員が呟くように言う。
しかし誰もそれに応えることはできなかった。
決してバイクの買い換えを考えてるからこの話を思いついたわけではない。(強弁)