ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
そして予想通りに、お嬢から協力の要請があった。
「むやみやたらに首を突っ込もうってわけじゃないんです。ちょっとこれを見てもらえませんか?」
GSに乗り込んできたお嬢は、説明しながらタブレットの画面をこちらに向けてきた。
「おっかけっこしてた失墜天使のメンバーが撮影した、噂の走り屋さんです」
「……なるほど、
タブレットに示されたいくつかの写真。複数の角度で捉えられた謎の黒いバイクとその乗り手。その乗り手が着込んでいるフルプロテクターのスーツに既視感を覚える。
すぐに記憶を探り当てた。以前こじらせた第三帝国オタに雇われていた謎の黒ずくめ達。連中が着ていたスーツに似ているのだ。
「連中の所在、所属、一切不明。そして
「もし彼らと同じ所属であれば、なぜ今になってこんな動きに出たか。探りを入れたくなるのでは?」
上手いな、お嬢も。こっちの職務的な意識と興味の両方をくすぐってきやがる。
いずれにせよ乗る気だったんだ。便乗させて貰うとしようか。
で。
「結局来たのかヨ」
「まあな。お膳立てされてる感はあるが、せっかくのお誘いだ。乗らせて貰うとするさ」
失墜天使がたまり場にしている、古いコンビニ跡の駐車場。俺たちはそこにいた。
大型トラックなどの使用を前提としていたらしい広めの駐車場には、数多くのバイクが居並んでいる。全てが失墜天使の物というわけではなく、噂を聞きつけた腕に覚えのあるヤツも参陣を決め込んでいるようだ。
俺はいつものアルトワークス。そして今回連れてきたイカレたメンバーは。
「ふむ、ガトリングガン付きとか、ロマン溢れるバイクはおらぬようで」
ロマニストという名の奇天烈武器オタ、レフト4。
「…………」
がっしりとした体格の、いかにも軍人といった風情の男。鉄面皮むっつりスナイパー【レフト5】。
「うわ、何でこんな人集まってんの。みんな暇人?」
見た目かわいい系の童顔男子。その実態は毒舌サディストヒーラーという業の塊【レフト6】。
丁度手が空いてたんで連れてきたんだが、直接的な戦闘よりもバックアップが得意な面子になっちまった。まあ装甲車でバイクの競り合いに追いつけるとは思えんしな。脱落者や怪我人の対処をして貰うとしようか。
「
「気になることがあったからね。邪魔するつもりはないよ。獲物を横取りする気も」
「OK面倒ごとってわけだ。ただの走り屋じゃねえとは思ってたけどナ」
お嬢も例の走り屋をこの場でどうこうする気はないようだ。俺たちからしても身柄の拘束とかは考えていない。ただ走ってるだけなら、この街じゃやんちゃのうちにも入らない。何しろ道交法なんざまともに機能してないし、
状況次第じゃどうなるか、分からんがね。
「うう、ひろこちゃんが不良になっちゃうぅ~」
「ダンジョンで殴り合いの指揮を執ってる時点で何を今更」
なんか滝のような涙を流してる緑と、それにツッコミ入れる黄色が居るが置いておこう。 ともかく用意はできた。後はそこら辺を走り回って誘いをかけている失墜天使の連中からの連絡待ちだな。
「てめーやんのかコラァ!」
「ジョートーだ泣かしてやんよクラァ!」
端の方で諍いを起こしてるのもいた。奴らも黒いライダーの虚仮にされたのだろう。随分といきり立っているようだ。
しかしアレだ、失墜天使以外にも暴走族の伝統を受け継いでるのって結構いるのな。具体的に被害が出ないと俺らは動かんから、そういう連中がどれ位いるのかは把握していない。ただ夜中に走り回ってるくらいなら目こぼしくらいはするさ。
とまあ妙にほっこりした気持ちでいたら。
「総長! 出ましたヤツです!」
連絡を受けたらしい失墜天使のメンバーが声を張り上げる。それを受けて屯ってた連中の目つきが一斉に変わった。
「征くぞ女郎ども!」
「「「「「おおっ!」」」」」
カワサキ嬢が吠え、メンバー達がそれに応える。エンジンに火が入り、鋼鉄の愛馬を駆る女達は次々と飛び出していく。そして有象無象のバイク乗りたちもそれに続いた。
交じってホープブリケイドの戦闘指揮車も出る。お嬢がそのテックを使って指揮を執りやすくするためだ。黒いのを目の当たりにする気満々だった。
「隊長、我輩達は?」
「後を追う。お前さんらは手はず通り、脱落者や怪我人の対処を」
「「「了解」」」
言葉を交わしてそれぞれ車に乗り込む。オレはシートについてベルトを締め、キーをひねりアルトワークスを起こす。慌てる必要は無い。別に黒いのと追いかけっこをする必要は無いのだ。必要なのはヤツの目的を測ること。やる気になったカワサキ嬢と、それをフォローするお嬢にどう相対するかで見えてくる物があるだろう。
「さて、どんなバックボーンがあるのやら」
呟いてからギアを入れアクセルを踏む。やたらと重いどシリアスな背景があるのかも知れないし、あるいはどちゃくそしょーも無い理由なのかも知れない。どちらもあり得るから現時点では何とも言えんな。
いずれにせよ、楽しませてくれりゃあいいんだが。そう思いながらギアを上げ、アルトを加速させた。
ここで過去の伏線を拾って辻褄を合わせようとする筆者であった。