ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

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「はいそれ助かる方のフラグぅ!」

 

 姉っぽいのが空中で体勢を崩した丁度そのとき、俺は追いついた。

 即座に車を含む全てを全力増強。位置を合わせて車を強引に横滑り(パワースライド)させ、運転席側のドアを開き落っこちてきた緑姉を適当にひっつかんで無理矢理助手席に突っ込む。

 「ぷぎゃっ!」とかいう悲鳴のような声が上がるが無視。ドアを閉めシフトを入れ替え車の姿勢を立て直す。ぎゃぎゃ、とアルトのタイヤが悲鳴を上げ、追走を再開した。

 

「上手いこと1対1(サシ)の勝負に持ち込んだか。あの黒いの何が狙いなんだか」

 

 カワサキ嬢と黒いのが競っているのが彼方に見える。テールランプの動きから察するに良い勝負をしているようだ。黒いのが()()()()()()()()()()に出ないのが気にかかるが。

 

『たいちょーさん! ミドリさんは無事!?』

 

 お嬢がテレパスを飛ばしてきたので、助手席をちらりと確認してから返事を返す。

 

「目ェ回しているがとりあえず生きてる。あとで精密検査でも受けさせるんだな」

『ベルセルククリニックに突っ込んでおきます。なんかあっても確実に治りますから』

 

 助手席で変な体勢のまま「きゅ~」とか呻き声を漏らしつつ、ぐるぐる目になってる姉もどきの運命が決まった瞬間だった。

 まあそれはいい。いまはカワサキ嬢と黒いのを追うのが先決だ。

 

「見たところ互角か。戦闘していないとは言え、()()使()()()()()()()()使()()()()()、ね」

『テックを使っている気配はなし。やっぱりあの人、()()()()()()()()()()?』

 

 お嬢も察していたか。恐らくはサイボーグか生体強化。あるいは両方のハイブリッドではないかと見た。

 強化フレームの類じゃないのは確かだ。身体に装着する、あるいは着込むものである強化フレームは、言わばパワードスーツの小型簡易版であり、反応速度や反射神経まで強化されるわけではない 。あの運転技術からみて、能力を使ったテック使い並に反応が早いようだ。であれば()()が弄ってあると見て間違いあるまい。

 それにあのバイクも。外観はアメリカンスポーツだが、その性能は既存の物よりかなり上。単純に弄ってあるだけではない……というより、多分一から設計しているオリジナルの物だ。生身の人間が乗りこなすには難しい。

 乗り手もバイクも規格外。そんな輩が、()()()()()()()()()()、何を目的としているか。

 

「ただテック使いと力比べがしたいわけでも……いや、()()()()()?」

『どういうこと?』

()()()()()かも知れん、と言うことさ」

 

 どこかの勢力、あるいは個人が生み出した強化人間。その性能テストとしてテック使いのクランである失墜天使(とおまけの有象無象)を挑発し、挑む。直接戦闘でないのは、まだそこまで性能が安定していないから、と考えれば納得はいく。しかし。

 

「それに直接戦闘でなけりゃ色々言い訳は利く。……とは言えこの間の黒ずくめどもと所属が一緒なら、その言い訳も苦しいが」

 

 この間の連中は俺たちと交戦している。つまり実用段階にあると言うことだ。今更テストなどする意味はあるのか。まあそれもあの黒いライダーがこの間の連中と同じ所属であればの話だ。そうでない可能性はもちろんある。

 ……似ているスーツを身に纏い、多分同じように何らかの強化処理を受けていると言う共通点があって別物と考えるのも無理がある話だが、そういうことはまれによくある。下手するとこの間の連中とは何らかの因縁があるとかだったりするから、世の中油断できない。

 まあとにもかくにも、だ。

 

「できるだけ情報は集めておくか。……お嬢、前に出る。今更余所から横槍は入らんと思うが、フォローを頼む」

『りょーかい。気を付けて』

 

 がこ、とシフトを上げ加速。失墜天使以外の族がボコられているのを尻目に、先行している2台を追う。

 一応チューンしているとは言え、軽自動車であるアルトで競っている大型バイク2台に追いつくのは無謀と言える。全力で増強してるからこそできる事だ。

 じりじりと距離を詰めながら、サングラスの機能を使ってモニタリングを開始。黒いヤツのデータ取りを行う。

 カワサキ嬢はテック使いであることを差し引いても、プロレーサー並の技量を持つ。それと互角ということは、黒い方もそれなりの技量があると言うことだ。単純に身体能力を向上させただけで運転技術まではカバーできない。

 その上()()()()()()。これまでの話を聞いたところによると、黒いのは失墜天使など()()()使()()()()()()()()を様々な手段で振り切り、その追跡を断念させている。つまりまだ、全力じゃない。

 その能力の一端でも見ることができれば、後々役に立つ。敵に回すにしても何にしてもだ。ここまで来てこの先何の関わり合いにもならないなんて事はありえない。絶対絡みがあると断言できる。

 

「……うぐぐ、身体のあちこちがいたい……」

 

 隣で変な格好のまま気を失っていた姉らしいのが目を覚ましたようだ。もぞりと体勢を整えてから、彼女は俺に食ってかかる。

 

「あなた、この……もう少し丁寧に扱ってくれてもバチ当たらないんじゃない!?」

「緊急事態にそんな余裕はねえな。()()()()()になるよりマシだろ」

 

 さすがに間一髪の所を助けてくれたという判断はできたのだろう。一応言葉を選んで文句を言ってくるが、今は構っている余裕はないので適当に返す。

 

「それより、あの黒いヤツの記録取っておいたら、後でお嬢に褒められるんじゃねえの?」

「よっしゃあ待っててねひろこちゃん! おねえちゃんがじっくりたっぷりねぶるように細大漏らさず記録してあげるんだから!」

 

 サイドウインドウに張り付いて、装飾っぽいヘッドギアの録画機能を使って記録を取り始めた姉(偽)。これでしばらくは大人しくしてるだろう。

 と、先を行く2台がコースを変えた。確かその先に在るのは――

 

「なるほど、走りの勝負にゃおあつらえ向きってことかい」 

 

 かつて、首都高と呼ばれた残骸だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フラグはへし折って曲げるもの。
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