ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
かつてトウキョウが壊滅的な被害を受けたとき、首都高もまたその暴威に曝された。
かろうじて全壊は免れたものの、各所で寸断され、また再建などしている暇も余裕も無かったため放置するしかなかった。それから長い年月が経った現在、その残骸はかろうじて形を保ったまま、未だ存在している。
「あれを勝負に使うって事は……あの黒いの、
ただの走りの勝負では終わらない。それを確信しつつ俺は2台の後を追う。
程なく高速に上がる
当然だが手入れも何もされていない状態で何十年も経った高架道路は、ひび割れ剥離は当たり前で、中には大きく欠落しているところもある。しかし2台は臆する事もなく全開で駆け抜けていく。
「こりゃ増強してなきゃ即座にパンクだな。……激しく行くぞ、舌噛むなよ!」
「ちょっとそれせくはぎゃひぃっ!」
「言わんこっちゃ無い」
俺の言葉に難癖付けようとした姉的存在が舌を噛んで悶絶しているのを余所に、運転に集中する。
増強していようが、この路面状況だと一瞬の油断が命取りだ。速度を維持しつつ危機を回避していくのは骨が折れるが、やらなきゃなるめえよ。
『たいちょーさんごめん! この車じゃ流石に高架はついていけないって』
「下から追跡か。無理はしなくていい」
『下でついて行ける限りは食らいつくってツタエさんが。……でも何で首都高跡へ? 崩れかけてるのに』
「だからこそ邪魔が入らない、じゃないかね。それに
黒いのの狙いはそれだという確信があった。でなきゃ普通に逃げられるのにわざわざ崩れかけの高速使うもんかい。
先を行く2台は高速で、かつ危なげなく走り続ける。技術もそうだが大した度胸だ。この一瞬先に何が起こるかも分からない状況で、スロットルを緩める様子もない。瓦礫をすり抜け陥没した穴を躱し、踊るように駆けていく。
「
「口閉じたままだからなに言ってるのか分からねえが、文句言ってるのだけは分かるぞ」
舌噛むのが嫌なのだろう。姉グリーンが口を塞いだ状態でなんか言ってる。それに構ってやってる暇は……っておおっと!
2台が駆け抜けた後の道路が崩れ落ち、俺はそれを回避する。こういうことがあるからもう誰もここを使わないんだよな。いつどこが崩れるか分からないから、下を通るのも忌避されるものだ。お嬢達は大丈夫かね。
とか人の心配している場合じゃねえな。
「ちいと派手に行く。足踏ん張ってシートに身体押しつけてろ」
「
アクセルを全開。限界近くまで加速し2台に食らいつく。彼女らの直後につくことによって、道が崩れる前に走り抜ける作戦だ。同時に2台にプレッシャーをかけてしまうことになるが、その程度でどうにかなるようなら最初からこんなことはしない。
「良いねェ、ひりつくじゃねェか!」
カワサキ嬢の気配が膨れ上がったかに見えた。スロットル全開のまま、動きが鋭い物となる。
ほんの僅か無駄をなくしただけ。それだけで、じりじりと黒いバイクより前に出て行く。だが必要とされる集中力は並大抵のものではない。勝負に出る気か。
確かに
『たいちょーさん! この先
「
黒いライダーは首都高へ向かうことでそれを誘い、カワサキ嬢は受けた。命がけと分かった上で。
そして夜中ゆえに、
唐突に終わりを迎える。
「っ! ここでっ!」
最初にブレーキを踏んだのは俺。ライトが届くギリギリ、崩壊した箇所が目に入ったと同時にフルブレーキング、そしてブレーキそのものを最大増強。けたたましい音と白煙を上げ、アルトはみるみる減速する。
が。
「2人とも止まらない!? 月までぶっ飛んじまうぞ!」
完全に停止限界を超えても2台はアクセルを緩めなかった。意地張って死ぬ気かと思いきや。
「ここだァっ!!」
なんとカワサキ嬢は、全速力からジャックナイフターンをかまし、
ただのブレーキングではなく、逆走することによってより強力に制動する。増強が使えるテック使いならではの無茶。
しかし黒いのは。
「マジで止まらねえのかよオイ!?」
「勝負ふっかけといて死ぬ気かァ!?」
止まるどころか全速のまま、崩壊地点へ突っ込む!
そしてそのまま宙を舞い――
がきん。
「「……へ?」」
ぎゃぎゃぎゃがぎゃとカワサキ嬢のZⅡレプリカと俺のアルトが停車する。ZⅡは崩れ落ちた縁のギリギリ手前、絶妙な位置で停車しているが、これは勝ったと言えるのだろうか。
呆然としたまま車を降りた俺は、暗闇の空に消えていくテールランプを見送りつつ言葉をこぼす。
「
そしてカワサキ嬢は、しばらく俯いてふるふる震えていたが、不意に天を向いて吠えた。
「ふざけやがってあンのやろオ!
今度あったら絶対に死なすうううううううァ!!」
勝負を台無しにする酷いオチ。