ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~ 作:捻れ骨子
「なるほど、プレイアブルっぽいんだな?」
「多分! ですけど! そういう記憶がありますっ!」
勤務が終わり、俺は訓練場でトザマと自主練を行っていた。ついでに内緒話も。
「どういう経緯でとか! 話の流れはどうだったか! なんてのはさっぱりですけどっ!」
「プレイアブルだからと言って完全な味方というわけでもなさそうだ。精々が呉越同舟って所かな」
「ところで! 自分かなり本気で! 打ち込んでるんですけど! なんで小揺るぎもせず! しれっと捌いているんですかっ!」
「そりゃ鍛え方が違うからなあ」
トザマと行っているのは組み手だ。トザマが使う武術は軍隊式格闘術を基にしたもので、本来は打撃から組み技へと繋げる。だが俺は彼女の打撃を捌き、ある程度の間合いを保って組み付きを阻止していた。
トザマは小柄だが、その打撃は重く響く。相当に修練し鍛え上げている証拠だ。その動機が推しを間近で見るためというのはどうかと思うが、鍛え上げた実力は本物。テック無しなら十分エリーターズに食いついていける。
もっともそれだけで、届くほど容易くないがな。
「ふっ!」
「くぁっ!」
腹部に撃ち込まれてきた下段の突きを、トザマの横に回り込みながら跳ね上げ、同時に彼女の踵へ足払い。ひっくり返ったトザマは地面に背中から倒れ、何とか受け身を取りつつ小さく呻いた。
「あつつ……今のは自信あったんですけど……」
「リーチと位置が悪かった。一つ前の一撃を引くときに間合いを詰めて、正面を避けて入れたら当たったかも知れん」
「それでも
「当たり前だ。前世から合わせりゃ軽く
「……ゑ?」
立ち上がりかけてたトザマがぎしりと動きを止めた。それからぎぎぎと軋み音を立てつつこちらを向いて問うてくる。
「あ、あの、つかぬ事を聞きますけど……隊長が前世でお亡くなりになったのって、いくつぐらいの頃だったんでしょうか.……?」
いくつぐらい、ねえ。俺は少し考え込む。
「……正直晩年はほとんど覚えてないんだが、
「おじいちゃんだった!?」
うむ。多分事故死とかじゃなくて天寿全うしたような気がする。まさかそんなんでゲーム世界に転生することになるとは思わなかったが。
「え、いやでも、ゲームとかもやってて!?」
「じじいでもゲームくらいはするさ。
「しかも妻帯者!?」
最早顔も声も覚えていないが、死ぬまでこんなろくでもない男に付き合ってくれたんだ、いい女だったんだろう。そんな女房いたのに夜の店とか行っていいのかって? 今は独身だからノーカン。
……まあ、とは言っても。
「前世は前世、だなあ。経験と記憶は引き継いでも、意識はこっちの身体年齢に引っ張られてる感じさ。長い夢を見ていたようなもんだ」
やたらと記憶に残る夢を、しょっちゅう見ている。感覚としてはそんなもんだ。俺の人格形成に多大な影響を及ぼしちゃいるが、歳食って死んだ続きとは言いがたい。昔は昔、今は今ってな。
「……良く考えてみたら、自分も前世から合わせたら50過ぎてるんだった……」
ずうんと落ち込んでorzってるトザマ。うん、ああその、女性としては色々思うところがあるんだろうなあ。中々割り切れん所も出てくるか。
「どっちにしろいずれじいさんばあさんだ。深く考えても仕方ねえぞ」
「切り返し方が年の功っぽく感じてきましたよ。……それはそれとして、隊長の武術って合気道がベースですか? なんか打ち込むたびに手応えがなくなるって言うか、吸い込まれるような感じがして」
気持ちを切り替えたらしいトザマが聞いてきた。それに応える。
「まあ派生みたいなモノだ。お前さんの前世にあるかどうかは分からんが、【天舞流】という」
技の基本は合気道とルーツを同じくし、また【合気道】という言葉に関して独特の考え方を有する。【気】とは不可思議な力でなく、物理的、意識的な力の流れそのものと定義し、【気】を【合わせて】【道引(導)く】。これすなわち合気道であり、思考と技の基であると。
相手の力、自分の力、周囲の状況。全てを利用し物理的、意識的な駆け引きに用い、己の有利を作り出す。己が流派の技に拘らず、取り入れられる物は取り入れ変化を続ける。俺自身が(多分)他流派の技である震破掌を取り入れ用いたように。ある程度鍛練を積めば、最早1人が一つの流派となると言って良いほどに千差万別となる、悪く言えば節操のない武術。それが天舞流だ。
「テックに比べれば微々たる力だ。だがこれからテックが封じられる可能性もあるんなら、役に立つ場面も出てくる。人に教えられるくらいには、ある程度体系づけとかんとな」
今俺が使っている素のままだと、他人が学ぶには不向きすぎる。エリーターズや一般隊員達に学ばせるには、それこそ一般の武術と同程度には型や動きを落とし込んでおく必要があった。だからトザマ相手に組み手を行い、技の簡略化や効率化を図っているわけだ。
同時に俺自身も技を磨き上げておかねばならない。テックが使えない状況下でも、勝率を上げ、生き延びるために。
「最低でもビーム躱せるくらいには仕上げときたいもんだ」
「テック無しで来訪者を爆散させたりビーム躱したりとか、最早それは別の作品なのでは」
「作品の途中でジャンルが変わるのはよくあることだ。いいね?」
「アッハイ」
実はじじいだったという、最近密かにブームなタイプの転生者チューおじ。