ランペイジ・バレット ~ソシャゲみたいな世界に転生した俺が必死で生き抜いていく話~   作:捻れ骨子

91 / 155
6

 

 

 

 

 

 距離を詰める。先ほど使った歩法、縮地ではなく通常のダッシュだ。対するアルトウ嬢は、さほど速度を上げない。先手ではなくカウンター狙いのようだ。

 悪くない判断だ。アルトウ嬢が持つのは長物。この状況で先に攻撃を叩き込めば隙が出来る危険もある。こちらの出方に合わせる方が確実だろう。何しろリーチに差がある。間合いの取り合いでは彼女の方が有利となる。

 俺は彼女の攻撃をかいくぐり間合いに飛び込む必要がある。先ほどのやり取りで縮地は警戒されているはずだ。迂闊に使えば真正面からカウンターを喰らいかねない。実のところ縮地は間合いを詰めることに特化していて回避に移るのが難しい。できなくはないが大きな隙を作ることになるだろう。それを見逃すアルトウ嬢ではない。

 鞘をベルトから軽く引き出し、鯉口を切る。抜くにはまだ早い位置。当然アルトウ嬢は、警戒する。何の狙いがあるのかと。

 もちろんありまくりだ。俺は鞘から刃を引き抜き――

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 投げつけるのではない。軽く、宙に浮かせるように。強く投げつければ不意を突く攻撃か、回避などのリアクションを期待しているか。どちらかだろう。

 この行動は、強いて言えば後者のためである。攻撃ではない、だが無視できるものでもない、()()()()()()()()()()()()。俺は武器を失うが、その代わり一瞬でもアルトウ嬢の意識を逸らせる。

 彼女が意識を逸らし迷ったのは、ほんの刹那。結果的に脅威となるものではないと判断し、目の前へ浮かぶように飛んできたそれを、次の動きの支障にならない程度に軽く、左手で払いのけるという行動を取った。

 

 そしてそこへ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 トンファー脇差しに次いで、()()()()()()()()()()放ったのだ。刃に気を取られた一瞬の間に、刃の影に隠れて彼女から見て死角になるように。

 さすがのアルトウ嬢もこれには虚を突かれたようだが、慌てず騒がず首を傾げるだけで鞘を回避。これで完全に俺は素手となった。

 同時に()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!」

 

 アルトウ嬢が気づいたときにはもう遅い。鞘を放ると同時に俺は縮地を使い、彼女の懐に飛び込んでいる。

 ひたりと、俺の手のひらがアルトウ嬢の腹に押し当てられた。

 どん、と衝撃音。極至近距離から震破掌を放った音だ。それは狙い違わずアルトウ嬢の身体を吹き飛ばす。

 だが敵も然る者。彼女は後方に吹き飛ばされながらも踏ん張り、手に持つ槍を地面に突き立て支えとし、堪えて見せた。

 

「ぐっ、くう……」

 

 しかしそこまでだ。地面を滑り下がりきったところで、アルトウ嬢は苦悶の表情を浮かべ呻き、重々しく片膝をつく。掌底を放ったまま残心の構えの俺。しばし沈黙が続いた。

 ややあって。

 

「……こんなところか」

 

 すぐさま立って反撃に移れないと見た俺が、構えを解いてアルトウ嬢に声をかけた。

 

「手加減はしたが、どうだ。立てるか?」

 

 手を差し出す俺の言葉に、アルトウ嬢は苦悶の表情浮かべつつも応える。

 

「……なんとか、な。臓腑がえぐられたかと思ったぞ」

 

 俺の手を取り立ち上がるアルトウ嬢。手加減したとは言え、タフだな。

 

「本来であればそうなってもおかしくはない技さ。まだまだ練り上げが足りんよ」

「そんな技を軽々しく……いや、()()()とはそう言うことか」

 

 苦悶とは別の意味で顔をしかめるアルトウ嬢。俺が()()()()()()()()()()()()()()()()()。それがどういう意味を持つか、理解は出来るはずだな? 

 ちらりと観客気取ってる連中に視線を向ける。今のを見せたんだ、どう反応する?

 

「あ~あ、やっぱ本命じゃないの」

「くっそ、逆張りすんじゃなかったわ」

「4分以上5分以内か。我もう少し早いかと思っていたのだが」

「ああちくしょう、もうちょっと粘れヨ!」

「…………」

「どうしよう、お小遣い全部賭けちゃったと、頭目は申しております。だから大穴全賭けは止めておきなさいって言ったじゃないですか」

「う~ん、絶妙に外してるところ来ましたか。残念です」

「まあ仕方ないデス。見応えのあるショーブでしたカラ、十分楽しめマシタ」

「やった、予想通り~♪」

「隊長君のことを理解しているならば、容易いこと」

「的確に当ててくるなよ。儲け減るだろ」

「まあいいわ。……これ新しい商売になりそうね」

 

 ……おい。

 おい。

 

 お前らね、ホントにね。いつも通り過ぎておじさんがっかりだよ。(←何やってもおかしくないと思われてるから、いつも通りだと言うことに気づいてない)

 アルトウ嬢も拍子抜けだったようで、軽く鼻を鳴らした。

 

「ふむ、直に喰らわなければああいう反応にもなるか。……まあいい。小生にとっては良い経験となった。これは肥やしにさせて貰う」

「盗んだモンはしっかり持って帰れよ? ……さて、そんじゃ」

 

 放り投げた得物を回収して、俺は言う。

 

()()()()()()()

「「「え?」」」

 

 俺が目線を向けたのはナイトブレイズ幹部3人娘。面食らってる顔してるが、なんだ話聞いてなかったのか?

 アルトウ嬢も、呆れたような様子で言う。

 

「何のために卿らを連れてきたと思っている。彼との戦いを経験させるために決まっておろうが。……流石に連戦やるとまでは思わなかったが、隊長殿のことだ、それくらいでは大して堪えんだろうよ」

 

 3人は覿面に狼狽えた。

 

「え? え!? ……じゃあミトリちゃんからで!」

「へ? ……へぃやあ!?」

「さっき「やってやる! やってやるぞ!」って言ってましたしね。ここはやる気のある人を優先した方が良いかと」

「言ってない微妙に言ってない! あんた達明らかにミトリを人身御供にする気満々でしょォ!?」

「ああまあ、慣れてないだろうから別にテック有りで構わんぞ。つーか身体増強も使えん状態じゃ、まともに戦えんだろうお前さん」

 (カチン)「言ったわね言ってくれちゃったわねトサカに来たわよ! やってやるわよミトリの意地見せつけてあげるわよ!」

「「……チョロいなあ」」

 

 で。

 

「ぴきゃあああああああ!!」

 

 ハバシ嬢は、化鳥のような悲鳴を上げながら宙を舞った。

 

 

 

 

 

 もちろん、残りの2人も逃さず、宙を舞わせてやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




正解はトンファー掌底突きでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。