三ノ輪銀は盟友である   作:すごい末期

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ちょっと前に投稿した短編の本編にあたります。
たぶん投稿間隔は結構空いてしまうと思いますが失踪しないよう頑張っていきたいと思います。


1,はじまり

「こっから先は!通さない!」

一閃、二閃と重く鋭い斬撃を繰り出し、着実にバーテックスに損傷を与える。

 

刹那、左の脇腹に今まで感じたことのないような激痛が走り――後方に控える別個体に撃ち抜かれた。

 

体勢を崩した銀は蠍型の尾による追撃を受けて地面に倒れ伏す。が、立ち上がる。その瞳に未だ衰えぬ闘志を宿して。

 

「させるもんか、絶対……!」

敵の侵攻を咎めるように、己に言い聞かせるように、反復して決意を口にする。

 

バーテックスの放つ光の矢が豪雨の如く襲い来る中、銀は捨て身の構えで敵陣に切り込む。

「化け物にはわからないだろ、この力!」

横凪ぎに振るわれた蠍型の尾を節から斬り飛ばし、勢いそのままに蟹型に躍りかかる。

 

今度は右の脇腹に風穴が空く。視界が火花を散らすように明暗を繰り返す。

 

(痛いけど!それでも!)

「これこそが人間様の、気合と!根性と――」

(みんなを守って、それで……!)

 

右の上腕が撃ち抜かれる。それでも斧を握る指は緩まず、振るう腕は、なおも止まらない。

 

「――魂ってやつよぉぉぉ!!!!」

 

もう何も見えない。聞こえない。痛みもほとんど感じず体もどう動いてるのかもよくわからない。

それでもきっとバーテックスを壁外に追い返すまで彼女の体は動き続けるだろう、大切なものを守るために。

 

――そこで銀の意識は途絶えた。

 

 

 

 

「んっ……」

 

渇き切った喉の痛みで目を覚ます。

戸口から漏れる日差しを見るに、どうやら昼近くまで眠ってしまっていたようだ。

 

(イタタ……寝過ぎたかな)

軋む四肢を叱咤して水瓶から水をひと掬い、喉に流し込む。

 

(またあの時の夢か……嫌になるね、ホント)

 

樹海での死闘で意識を失ったあと、この村――住民たちはエテーネの村と呼んでいた――で保護され、二年の月日を過ごしていた。

 

どうにも生活に余裕があるようには見えないこの『清貧、というよりシンプルに貧乏集落』と表現するのが適切に思える村の人々は、素性の知れない銀を温かく迎え入れてくれた。

 

誰もかれも能天気ともマイペースとも言える者ばかりだが、この村の空気とそこに生きる彼らとの共同生活を銀は気に入っていた。

気に入ってはいるのだが……。

 

四国での暮らしとは文明のレベルが、というよりも世界観がかけ離れていた。

 

(ガスも水道も電気もない。おまけに人を襲うモンスターに魔法ときた)

 

隣家のご夫人が掌から火球を撃ち出した場面を初めて目撃した銀は、古典的なファンタジー世界を舞台にしたゲームかマンガの中に放り込まれてしまったのかと錯覚してしまったものだった。

 

「おやギン、ずいぶん遅いお目覚めだねぇ」

「あ、タララさん、おはよ」

 

この世界における魔法とは、ごく一般的な技能であるようで、洗濯物を干しながら銀に声をかけたこの女性も『初級火球呪文(メラ)』を火起こしに活用しているらしい。

 

ちなみに銀も見様見真似で両手を薪に向けて突き出してみたものの、火の玉どころか火花ひとつ発することが出来ず、村の大人たちに助言を求めれば擬音語の大合唱が始まってしまい、銀は魔法の習得を早々に諦めてしまっていた。

 

「昨日も遅くまで結界周りの警備かい?頑張ってくれるのはありがたいけど、無理して体を壊したら元も子もないんだよ」

「アハハ、体力とコイツの扱いには自信があるからね、へーきへーき」

 

軽い調子で銀は腰に下げた二振りの戦斧を指先でコツコツ、と弾く。

村の周辺は手付かずの原生林や草原が広がり、魔物も多く生息しているため、土地勘のある者や腕に覚えのある者以外は往来を避ける。

 

そんな中、銀は早くから村の周辺の警備や行商人の護衛、魔物の討伐を自ら買って出ており、勇者として戦い抜いた実戦経験を活かして村の守りの一端を担っていた。

 

「村のみんなには世話になりっぱなしだし、何かおかえししなきゃなって思って」

「あんたは真面目だねえ」

そしてそうだ、あんたに伝言があったんだよ、と続ける。

 

「アバさまからギンを呼び出すよう頼まれてたんだよ。今までに見たこと無いほど真剣な表情だったけど……またシンイさまを泣かせたりしてないだろうね?」

「いやいや……シンイねえ」

 

生真面目で口喧しい彼の態度はどこか神樹館の級友を思い起こさせるが、何度も取っ組み合いの喧嘩にまで発展するほど敵対心を向けられたことがある以上、さすがの銀としても積極的に交友を深めたいとは思えなかった。

 

タララと別れた後、気が進まないながらもアバの自宅でもある村の教会へ向かうことにした銀。

 

「おーうギン、昨日はお疲れさん!」

「ギン!またアバさまに怒られるようなことしただか?相変わらずだなおめえさん」

「ギンちゃん、またケガしたりするような事してない?無理はダメよ、いい?」

 

(なんていうか……あったかいな)

 

我ながらよく村に馴染んだものだな、と銀は思う。村の住人たちはある意味第二の家族と言ってもいいかも知れない。

 

そんなことを考えているうちに、教会は目の前に迫っていた。

身に覚えこそ無いが、銀はおろか住民全員に厳しいアバからの呼び出しに戦々恐々としつつ、正面の大扉を開くのだった。




セーフ!
……じゃないのはわかってるんですけどね、はい。
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