三ノ輪銀は盟友である   作:すごい末期

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おまたせしました、第二話になります。
……待っててくれた人がいたかはわからないわけだが!

今後も更新はゆっくりめになってしまうとは思いますが、良ければお付き合いいただけると幸いです。



2,不吉なお告げ

「神にみちびかれし、迷える子羊よ……あら、ギンさん?」

教会の扉を開いた銀を迎えたシスター・イオリは、村で唯一の神職を務める女性である。

銀やシンイより三つ年上で世話好きな彼女には、この村に身を寄せてからずいぶん面倒を見てもらっていたものだ。

 

「ども、イオリさん。アバさまに呼ばれてるって聞いて今来たんだけど」

 

小さな村の建築物にしては頑丈な造りをしているエテーネの村の教会だが、間取り自体は基本に忠実、つまり扉を開けば礼拝堂、という構造になっている。

 

(教会入ったら即説教!って展開を予想してたけど……)

肩透かしを食らった形になってしまったが、馴染みのシスターと顔を合わせたことで教会に着くまでに抱いていた緊張感は解れていった。

 

「アバさまなら自室でお休みになっていたはずですが……」

「え、マジ?呼び出しておいてお昼寝?」

 

ともすれば傍若無人な振る舞いと受け取られてもおかしくないアバの所業に、思わず呆れたように呟く銀だったが……。

 

「おばあさまはカメさまのお告げを受けてお疲れだったのですよ、ギンさん」

 

二人の会話に割って入る形で参加してきた人物――シンイを認識して表情を引き攣らせる。

 

「よ、ようシンイ。いたんだ……はは」

「それはまあ、自宅ですからね」

 

――相変わらずやりづらいなあ、こいつ。

 

村の中では二人だけの、同い年仲間からの妙に棘のある物言いには慣れたつもりだったが、改めて顔を突き合わせて聞くとげんなりとしてしまう。

 

「シンイ、またギンさんに突っかかるような事を言って……」

「いいんですよイオリさん、こんなのいつものことだし」

 

弟であるシンイを制止するイオリを宥め、話を打ち切ろうとする。

 

(ここはおこちゃまシンイに大人の対応ってやつを教えてあげよう……やれやれ)

 

「また姉さんはギンさんを甘やかして……そんなだから彼女が野生児のようになってしまったんじゃないですか」

 

聞き捨てならないフレーズが聞こえた銀は反射的に口を挟む。

 

「おーっとシンイ、野生児ってのは誰よ?アタシか?」

「他に該当する人物がここにいるように見えますか?」

 

――決めた、こいつは絶対に泣かす。そう決心し指の関節を鳴らした直後、またしても闖入者が現れる。

 

「やめよギン、シンイもじゃ」

村の長にしてカメさまの巫女、シンイとイオリの祖母でもある老婆。アバその人だ。

 

 

 

 

「なるほど、川の上流にある洞くつの一番奥でその……テンスの花?とかって花を摘んで来たらいいワケね」

うむ、とアバは頷く。

 

「ギン、シンイの二人には準備ができ次第至急洞窟の最奥地に向かってもらおう。イオリは村の皆を教会の前に集めるのじゃ」

「私とギンさんとでですか!?」

 

シンイは自らの祖母が命じたテンスの花を銀と共に持ち帰るという使命に異論があるようだが、過去シンイの意見が通った実績は無く、今回もアバが考えを変えることは恐らくないだろう。

 

一方、銀は銀で魔物の巣窟と化している洞窟に送り込む人材として、村の中でも実力者である銀とシンイに花の確保を任せようというアバの意図を察したが、同行者の人選には少々不安が残る。

 

(シンイのやつ、前に洞窟探検に行ったときに鉢合わせた人魂みたいな魔物にビビってこっちにまで火球飛ばしてきたもんなあ)

 

その生真面目な性格故か、よく学び、よく働き、よく慌てるシンイは不測の事態に弱く、取り乱した彼自身がトラブルのもとになってしまうこともしばしばあった。

 

銀の懸念は拭われないまま、落胆した様子のシンイを連れてアバは教会の外へ向かう。住民たちのほとんどが教会の前に集まってきたようだ。

 

(あぁ、不安だ……)

 

この際一人で洞窟に向かった方が良いのでは?という疑問を押し殺して銀も二人に続く。アバにも何か考えがあっての人選だったのだろう、きっと対処し切れないようなトラブルなどそうは起こらないはずだ。

 

行き詰った思考に見切りをつけ、教会のある小高い丘から住民を見下ろすアバの脇に立つ。

隣で俯いていたシンイが不安げな視線を向けてくるが、銀は意識的にそちらには顔を向けずに小声で諫める。

 

「お前、そんな態度でばーさんの後を継ぐ気か?みんな見てるんだぞ」

「……そうですね、すみません」

 

殊勝なセリフと苦々しげな表情のギャップに笑いを堪え、アバがその場の全員を静まらせたのを確認したので表情を引き締める。

 

「よいか、皆の者。心して聞くがよい」

 

「わしはカメさまからのお告げを賜る巫女として、託されたお告げをありのままに伝える!」 

「まもなくこのエテーネの村は……」

 

続く言葉で住民たちからどよめきが起こる。

 

「大いなる災厄に見舞われ、滅びる!エテーネの民はひとり残らず死に絶えるじゃろう!」

 

 

 

 

アバの声明を受けて、住民たちは多少動揺していた様子だったが、日頃のアバによる統制とお告げの続きを聞いて一定の落ち着きを見せていた。

 

「村の滅びを回避するために霊草テンスの花が必要、か」

出発に備えて自宅で身支度を整える銀は独り言ちる。が、その表情は硬いものだった。

 

(大いなる災厄ってのがどういうものかは分らず仕舞いだったな……花一つでどうにかなるものなのかな)

 

どうにも胸騒ぎが抑えられない銀だったが、『人には生きている以上避けられない流れ』があることを彼女はよく知っていた。

 

(そうだ、考えてみればいつもと同じじゃんか。誰かが困っていたら助けるのが当然だった。だからアタシは)

「……勇者になった」

 

収納に仕舞われていた勇者装束――激戦を経て相応に痛んでいたものを毛皮や魔術的防護を用いて修繕したそれを着付ける。

 

(滅びのお告げがなんだ、ご丁寧に防ぐ手立てまでわかってる。村を守るために戦うことだっていくらでもあったんだ)

 

(村に侵入してきた魔物を倒した。行商路に居座る魔物の群れを追い払った。"向こうで"戦ってた時だって……)

 

そこで銀は回想を打ち切った。もうシンイも準備済ませて村の入り口で待っている頃だろう。

 

「……それじゃ、行っとくかぁ!」

 

そして銀は足を踏み出す。『清き水の洞くつ』を目指して。




まだエテーネの村から出てないじゃん……マジか。
とはいえまあ次かその次くらいにはまた大きく展開が動くと思うので色々気長に見てやってください。

それと感想だったり?いただけると?とても励みになりますので……ヘヘ
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