コードギアス―謀略のキヨナガ   作:嫉妬憤怒強欲

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前編後編に分けました。

最近の私の好きなアニメの台詞は「怒気あって真の勇気なき小人め。語るに足らん」です。


STAGE10「ナリタ連山攻防戦(前編)」

 数日後、運命の週末を迎えた。

 日本解放戦線を殲滅すべくコーネリア総督の部隊がナリタ連山に向かって行く中、オレ達特派はその後ろをトレーラーでゆっくりとついて行く。

 

「すごい規模だね…」

「上はそれだけ本気だということなんだろう」

 

 おかしい。爆撃機を積んでいるようには見えない。

 不意を突いて山ごと空爆すれば簡単に済む話だというのにこの包囲作戦…日本解放戦線の殲滅だけが目的じゃないのか? 

 

「殲滅、するんだね…」

 

 日本人が殺されることに心を痛めているのか、スザクの表情に陰りがあった。

 

「連中が河口湖でしたことをもう忘れたのか?」

「もちろん忘れてないよ。でも同じ日本人が死ぬのは…」

 

 同じ日本人、ね。

 河口湖でのホテルジャック事件で、連中は自分達の死刑執行書に自らサインしたようなものだ。

 オレ的には連中が最後どうなろうが、同情の余地は一切無いと思うがな。

 

「…だとしても今さらどうすることもできない。まあ、出番がないならそれで死ぬのを見ないですむだろ」

「…」

 

 あまりにも不器用すぎる男にこれ以上なにか語ったところで無駄みたいだな。

 それ以上は言わずにスザクから離れ、運転席にいるロイドとセシルさんのところに移動する。 

 

「…本当にスザク君にあのことを話さなくていいの?」

「あくまでもオレの想像ですし、それに話したところであいつに余計な負担をかけるだけかと」

「確かに彼はその辺を上手く割り切れなさそうだしね」

 

 オレの考えについてスザクとスタッフ達には話していない。 

 これからやることに関わる人間は極力少ない方が良いからだ。

 

「大丈夫かな。これバレたら問題になっちゃうんじゃない?」

「バレなければ良い話だろ?違ってたら違ってたらで子供のイタズラで済む」

「うへえ、前から思ったけどキミ結構性格が悪いよね?」

「マッドサイエンティストに言われたくないな」

「あはは…あっ、ロイドさん。例のポイントに到着しましたよ」

「仕方ないな…」

 

 ロイドが渋々ながらも、最寄りの駐車場に入ってトレーラーを停車させた。

 

「はぁ〜い。それじゃあここで二十分の休憩に入るよぉ。長時間の作戦となるとトイレやランチを買いに行く暇は無いからね。今のうちにチャッチャと済ませちゃおうか。というかゴメン、ちょっとおトイレに」

 

 スケジュール通り二十分の休憩に入る。我先にとロイドがトレーラーからそそくさと降りると、「なんだ主任が一番に行きたかっただけか」と苦笑しながらスザクやスタッフ達も降りて各々別行動を取り出した。

 

「な、なんか遠足みたいなノリだね」

「そうか?」

 

 オレは行ったことないから分からないな。

 軍の車両はオレ達に構わず先を進んでいく。オレ達が勝手についてきている形だから特に気にしていないのだろう。

 

 その方がこっちには好都合だが。

 

「そういえばナリタだとどんな名物があるんだ?」

「名物か…温泉以外だと確か日本の頃はウナギ料理や和菓子が有名だったかな…」

 

 僅かな休憩時間の間、オレとスザクはナリタ市の観光に時間を潰すのだった。

 

♢♢

 

 移動中のG-1ベースのコンダクトフロアにて、一人の幕僚が意見具申に来た。

 長身痩躯で、オールバックにした黒っぽい頭髪に若白髪が目立つ二十代後半の男。落ち着いていると称するよりはむしろ冷淡さを色濃く感じさせる物腰の人物。

 

 最近情報分析官から幕僚に昇進した優秀な人材のようだから登用したわけだが…

 

「私に出撃するなと?」

「はいコーネリア皇女殿下。出てはなりません。作戦の指示はベースで行うことを進言します」

 

 淡々とした口調でそう告げてきた。

 

「…理由を聞かせてもらおうか?」

「無論黒の騎士団、ゼロが現れる可能性があるからです。サイタマゲットーでの奴の行動から、殿下の殺害あるいは身柄の確保に執着していると言わざるを得ません。であるならば、解放戦線との戦闘に乗じて仕掛けてくるのではないかと将官は懸念しております」

 

 成程、黒の騎士団を警戒しての主張か。

 

「だがサイタマゲットーでの作戦と違い、今回はマスコミには流していない。それに作戦開始と同時に周辺道路と山道を封鎖する手はずとなっている。ゼロといえどこの包囲網は突破できまい」

「恐れながら、情報などはいずれ漏れるものです。特に知る人間が多ければ多いほど隠蔽は困難を極めます。殿下直属の親衛隊はともかく、命令系統の異なる特派やゼロを見逃した純血派といった部外者達が従軍しているともなればなおの事。既に黒の騎士団が入手し、作戦域内に潜んでいるのではと将官は懸念しております」

「…大胆な発言だな」

 

 暗にこの包囲作戦自体に穴があることを言っているようだが…この際目を瞑る。

 

「作戦域内に潜んでいると貴公は言ったが、黒の騎士団がこの戦力を前にどう渡り合うというのだ?日本解放戦線と手を組んだとしてもこの劣勢は覆せまい」

 

 いくら黒の騎士団がナイトメアを配備したところで、使ってくるのは精々グラスゴーのコピー。

 対する此方は第五世代による四個師団、数的にも性能的にもこちらが有利だ。

 

「姿を現せばまとめて叩き潰すまで。その時がゼロの最後となろう」

 

 それに私は武人だ。部下たちの先陣を切ってこその私なのだ。

 

「ですが殿下。将官の考えでは――」

「くどいぞ。作戦に変更はない。作戦開始まで下がっていろ」

「…イエス・ユア・ハイネス」

 

 その参謀はそれ以上何も言わず、静かにフロアから退室した。

 

「…姫様、あの男はどうも得体の知れませんな」

「ああ。頭は切れるようだが出過ぎるところがある…」

 

 それに私と傍に控えていたダールトンに向けていたあの無機質な眼光……威圧的で冷徹な印象を抱かせた。

 今まで色んなブリタニア軍人を出会ったが、あんな目つきの輩は初めてだ。

 

「…何にしても、奴の指摘通り既にナリタ連山に黒の騎士団が潜んでいることも考慮に入れておくべきか」

「では各隊に警戒するよう通達を」

「頼む」

 

 さて、ゼロよ。

 もし来ているのなら遠慮なく来い。

 義弟クロヴィスの仇、今日こそ取らせてもらうぞ。

 

 ウゥー

 

 ん?

 

 突然外からサイレンのような音が聞こえてきた。

 

「…なんだ?」

「麓にある街からですな」

 

 ダールトンが街に展開していた部隊に連絡して確認を取ると、突然街全体に避難警報が鳴りだしたとのことだ。

 作戦行動開始前に誤作動か?いやそれにしてはタイミングが良すぎる。黒の騎士団の攪乱作戦か?情報が少なすぎる。

 

「いかがいたしますか?」

「…偶然で片付ける事はできないが、今から転進して街に戻るわけにもいくまい。まだ街に残っている住民達の避難なども含めて現地の部隊に伝えよ」

「イエス・ユア・ハイネス!」

 

◇◇

 

 休憩を終えて本隊に追いついたオレ達特派は、当初の予定通りトレーラーより後方の位置に待機となった。

 

「何だったんだろうねさっきの避難警報…」

「…さあな。単なる誤報かもしれないし、そうじゃないかもしれない」

「僕らも避難の手伝いをしないといけないんじゃあ…」

「爆発とかが無いという事は誤報でほぼ間違いないだろう。なら避難程度街にいる部隊だけで十分だ。なら命令通りオレ達はここで待機するしかない」

 

 とはいえしばらくは暇だ。オレは不測の事態が起こらないことを願いながら、時間潰しに読書に耽る。

 

「…キヨナガ、いったいなんの本読んでいるの?」

「ん?素粒子物理学の教本だが?」

「いやタイトルを見ればわかるけど…なんでその本なの?」

「単純に化学に興味が湧いたからだが…」

「湧いたからって…」

「知っておいて損は無い。例えば太陽がどうやって輝いているのか説明できるか?」

「それは…熱を発していて…」

「どうやって発生しているんだ?」

「えっと…ゴメン分かんないや」

 

 脳筋のスザクには難しすぎる内容だったか。

 普段当たり前の様に存在する故に、なんでそうなっているのか疑問を抱く人間は数少ない。

 そういった仕組みに興味を抱き探求するのが科学者だ。

 

「あはぁ、なんか面白そうな話をしてるね」

 

 そこにマッドな科学者が話に入ってきた。

 

「特別にこの僕が科学に疎いスザク君のために分かりやすくするよ。まず太陽っていうのは七十パーセントが水素ガスでできているんだ」

「水素…確か元素で一番軽い気体でしたっけ?」

「そうそう。宇宙で最も多く存在している原子番号一番の可燃性ガス。最近の研究では宇宙空間でその大量の水素ガスがお互いに引っ張りあって、くっつき合って少しずつ塊になっていく特性があって、塊が大きくなると発生する重力も大きくなって収縮がかかっちゃう。その際、圧力が加わる影響でもともと低温だったガスの温度が高まっちゃうらしいんだ」

「高くなるってことは燃えるんですか?」

「その認識で合ってるよ。明るく輝いているのは内部で水素が燃えているからなんだ。でもね。地上でよく見る燃焼とは違って、中心部で水素の原子核同士が合体しているんだって」

「合体?」

「融合っていう表現が正しいかな。細かい説明を省くと、四つの水素原子が合体して一つのヘリウム原子になるんだ」

「え?別の元素に変わるんですか?」

「どんな物質も元をたどれば皆原子と電子からできているからね、構成する電子と原子の数を変えればその元素の性質も同じ様に変える事は理論的に可能だよ。だけどね?水素原子四つ分の質量に対して、ヘリウム原子の一つ分の質量は軽いんだよね。じゃあ余った分の質量がいったいどこに行くのかって話になるんだけど…キヨナガ君わかる?」

「そこでオレに振るか」

「ちゃんと会話に参加しないと」

「…まあ、パッと消えてしまうわけじゃないから、余った分の質量はエネルギーに変換されているんだろうな」

「おめでとう大正解~失った質量より大きなエネルギーが生み出されて、光や熱が出るんだ。太陽はそういった反応を継続的に効率よく行うことで、光と熱を放ち続けてるってわけ」

「そうだったんですか。初めて知りました」

 

 成程。その辺りは知らなかったな。

 本来プラスの電子を帯びている関係で原子同士は磁石みたいに反発し合うが、重力や気圧などの条件が揃って起こる熱運動により、プラスとプラスの反発を上回る速度で激しくぶつかり合ってそうなるわけか。

 地上でそれを再現するとなるとかなりの規模の施設が必要になりそうだが、こういうのは専門家に聞いた方が早いかもな。

 

「ちなみにこの原理を発表した科学者はまだキミ等と同じくらいの十代の女の子で、ユーフェミア皇女殿下直々に表彰を贈られたくらい凄いんだよ」

「ユフィに?なんか凄いですね」

 

 おいスザク、人前で皇女を愛称呼びするのはマズイだろ。

 

「名前は確か…ニーナ・アインシュタインだったかな」

「「えっ」」

 

 思わずスザクとハモってしまった。

 

「ん?何どうしたの二人とも」

「えっと…実は学校の生徒会で一緒の友達に、ニーナ・アインシュタインという女の子がいまして…」

「え?」

 

 パソコンのモニターのを見て科学オタクか何かだと思っていたが、まさか本物の科学者だったとは…人は見た目によらないな。

 

「そうなんだアッシュフォード学園に…確かあそこを運営しているアッシュフォード家はガニメデを所有してたっけ。むふふ…」

 

 なんかロイドがブツブツ言いながら気持ちの悪い笑みを浮かべた。

 こういう時碌でも無い事をするつもりなのだと最近分かってきた。

 

 

『―――総督、時間です』

「よし。作戦開始だ!」

 

 コーネリアの合図を機に進軍が開始された。

 上空を飛ぶVTOL機から、麓から、下流から、ナリタ連山を囲むように四方八方から百を超えるナイトメアと戦車の部隊が山頂に向かって進み出し、包囲網を狭めていく。

 コーネリア軍の正面戦力はアレックス将軍、ダールトン将軍、そしてコーネリアが率いる部隊の3つに分かれている。

 日本解放戦線の拠点は山中にあるはずだが、正確な位置は掴めていない。

 とはいえエリア11の反ブリタニア勢力を裏で支援していると思しきキョウトというグループに繋がる証拠を確保するためにも、空爆で本拠地ごと潰すわけにもいかないため、大規模な白兵戦による包囲殲滅作戦となった。

 

 ダールトンの部隊は岩場の多い急な斜面を第五世代ナイトメア『グロースター』に騎乗して上がっていく。

 

『ダールトン将軍、センサーに乱れを検知しました。敵のECM(ジャミング)のようです』

「間もなく敵の部隊が出てくるはずだ。こちらはECCMを展開。チャンネルをアルファ4に接続。敵の…なんと言ったか…」

『無頼ですか?』

「ああ。グラスゴーモドキにだけは気をつけろ」

『イエス、マイロード』

 

 

 

 そしてアレックス隊とコーネリア隊は森の中を突き抜けていく。

 

「…ほう。この山を要塞化していたか」

 

 コーネリアが進む道の先で、地面の下に隠されていたハッチが開き、中から日本製ナイトメア『無頼』が数機現れた。

 

『姫様、お下がりください』

「ギルフォード。私をそこらの女と一緒にするなよ!」

『コーネリア殿下!』

 

 専属騎士であるギルフォードの制止を聞かず、コーネリアは前に出る。

 頭部に二つの大きな角を付け、白いマントをたなびかせる赤紫色のグロースターの姿を無頼越しに捉えた日本解放戦線の戦闘員は慌てて応戦を開始した。

 

『あれはまさか!コーネリア!』

『おじけるな!大将首ぞ!』

「亡霊が!」

 

 コーネリア機は臆することなく、速度を落とすことなく飛び交ってくる弾丸の雨をすり抜けていき、突き出した金色の長大なランスをもって進路上の無頼へと突撃する。

 サザーランド(第五世代機)の上位機種であるグロースターのパワーと機動性に、グラスゴー(第四世代機)の改修機である無頼の抵抗など、何ほどのものもなかった。

 胸部の装甲を易々と貫き、勢いのままに吹き飛ばしながら、コーネリア機は戦場へと踊りこんでゆく。

 主の行動にギルフォードは「やれやれこれは聞く耳を持たないな」と諦め、コーネリアの援護に回った。

 

「さあ、コーネリアはここにいるぞ!挑んでくる者はいないのか?」

 

 

 

 

 コーネリア軍の侵攻は着々と進んでいき、包囲網が狭められていく。

 降伏勧告を拒否した日本解放戦線は、包囲網の一角を崩し脱出を図ろうとナイトメアを展開して抵抗しているものの、まるで歯が立っていなかった。

 

「駄目です!第二次攻撃も通じません!」

「なんという制圧力か…!」

 

 ナリタ連山山中の地中に建造された日本解放戦線本部の司令室にて、解放戦線のリーダーを務めている片瀬少将は次々と告げられる報告の内容に愕然としていた。

 

「ナカムラ隊通信途絶」

「第三区画、反応ありません」

「タバタ少佐、戦死」

「クロダとクラタもやられました!」

「くっ…」

 

 モニターでは敵が拠点に刻一刻と迫ってきており、味方機の反応が一つ、また一つと消失していく。

 日本解放のため、日本人の誇りを取り戻すために抵抗の道を選んだ旧日本軍時代の同志たちの命の灯が吹き消されていっていることを物語っていた。

 敗北の二文字が、片瀬達の頭上に重くのし掛かる。

 

「藤堂なら…藤堂さえいれば、神風が吹くものを…」

 

 藤堂鏡志朗中佐。

 先の日本へのブリタニア軍侵攻の戦いで、日本軍が唯一勝利した『厳島の奇跡』と呼ばれる戦い。

 その時指揮した彼を旧日本軍人たちは「奇跡の藤堂」と呼ぶようになった。

 片瀬は彼さえいれば『奇跡』をもう一度起こせると過剰な期待をしてはいるが、残念ながら彼はここにはいない。

 キョウトまで無頼改の受け取りに向かっている最中だったため、彼の部下の四聖剣共々不在のタイミングでこの包囲網である。

 

「拠点の入り口付近に複数のナイトメアの反応!」

「これでは突破が――」

「くっ、藤堂は間に合わんか!」

 

♢♢

 

『ダールトン将軍の部隊が敵本拠地の入り口と思しきポイントを発見。予備部隊は将軍の援護に向かうよう』

『イエスマイロード』

「圧倒的だな」

「…まるで戦いになっていないね」

 

 現在オレ達は特務のトレーラーにあるモニターで現在の戦況を見ていた。

 ロイドはあからさまにつまらなそうな態度を取る。このままランスロットと新型機の出番無しに終わるかもしれないと不満そうだ。

 センサーが検知した日本解放戦線側のナイトメアの配置を見た限り、急な斜面の辺りに戦力が集中しているな。包囲網に対して部分的な突破を狙ったつもりだったみたいだ。

 だがそんなことはコーネリア軍も予測していたようで、一番抵抗の激しい箇所に予備部隊が集まり始めている。

 

 ん?

 

「なんか外れに動いていない部隊がいるが…」

「ん?ああ。純血派のところだね」

「あれだけやらかしておいてまだ軍にいたのか…」

「ジェレミア卿も汚名返上に必死なんだと思うよ。いい迷惑だけど」

 

 ロイドも純血派に対して辛辣だな。まあランスロットのパイロットであるスザクを勝手に犯人に仕立て上げたあげく謀殺しようとしたからな。

 オレンジ疑惑は一応晴れたみたいだが、作戦に参加できたとしても置物みたいにじっと立っているだけとは…。

 シンジュクゲットーでの内輪揉めのことから、他の連中から厄介者扱いされているだろう。特にキューエル・ソレイシィとかいう奴から。

 

 ま、ブリタニア人からの支持さえ失った連中を眼中に入れる必要ないか。

 

 今の所殲滅は順調のようだ。

 包囲網がかなり狭まり、敵勢力の反応が少なくなってきている。

 一見コーネリア軍が有利に見える。

 だが黒の騎士団、もといゼロにとってこの状況は必ずしも不利ではない。

 もし黒の騎士団が今回の作戦を察知してここに来たとしても、正義の味方が丸腰の相手への危害も厭わない日本解放戦線(悪者)と手を組む可能性は限りなく低い。

 組んでいれば連中は正面戦闘を避けたゲリラ的戦術を取って、コーネリア軍をある程度翻弄している筈だ。

 ゼロがオレの思った通りの奴なら、河口湖でホテルジャック事件を起こした幹部を殺害したとはっきりと公言したのは、日本解放戦線に利用価値がないと判断したのだろう。

 利用するとしても、精々コーネリア軍の注意を惹きつけるための囮か捨て駒程度の扱いか。

 

 障害物の無い平地ならまだしも、山という地形上、高台を抑えた側に地の利はある。

 あとは奇襲を仕掛けるタイミングだ。

 

 願わくば、オレの想定したいくつもの戦術の中で最も最悪な一つをゼロが選ばないことを切に――

 

―――ゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

 そんなオレの願いを一蹴するかのように足元が突然揺れ始めた。

 

「な、なんだ!?」

「地震!?」

「何かに掴まれ!」

 

 突然の揺れにスタッフ達が戸惑いつつも、軍属なだけあってパニックまでには至らない。

 すぐに揺れが収まり、すぐさまセシルさんがコンソールを操作して状況を確認する。

 

「揺れの震源はナリタ連山の中央!大規模の山崩れが発生しています!」

「あららあ。このままじゃ麓までいっちゃうよ」

「熱反応が異常です。このタイミング…誰かが山の水脈を利用して水蒸気爆発を起こしたとしか…」

 

 モニターを見てみると、山の頂上辺りからまるで水があふれ出たような絵が土石流のようで、それが急な山岳部の斜面を下りながらその辺りにいたコーネリア軍の部隊と日本解放戦線を吞み込んでいっている。

 

「あの、いったい何があったんですか?」

「ん?さあ、なんだろうね。なんにせよ参謀府が情報を集め次第、こっちも対応決めるしかないから。君はまだそのまま待機しててね」

「はあ…」

 

 ロイドはランスロットのコックピットから顔を出したスザクに詳しい説明をすることなく、スタッフ含めて持ち場に戻るよう促した後、小声でオレに話しかけてきた。

 

「おめでとう。キミの予想通りの展開になったね」

「いや、オレにとっては全然めでたくないんだが」

 

 さっきまで不機嫌だったのに、一転していつも通りニヤニヤと笑みを浮かべている。

 少しは隠せよ。

 

♢♢

 

『こちらマルソー隊。アレックス将軍と連絡が取れません。第二師団は壊滅したとしか――』

「くっ、アレックス隊は駄目か」

 

 私、アンドレス・ダールトンはなんとか高所に避難したものの、予備部隊も含めた大勢の味方が土石流に吞まれてしまった。

 

「我が軍の被害は?」

『信号の返りは20パーセントを切っています』

「20パーセント…これでは指揮系統が成り立たん」

 

 いったい何がどうなっているというのだ。

 これは日本解放戦線の仕業なのか?

 これだけの被害、ただ事ではない。一刻も早く姫様と合流せねば…!

 

「残存する部隊は全て私に続け!コーネリア総督をお守りするのだ!」

『イエス・マイロード――ぐわあ!?』

 

 残存部隊に指示をした矢先、どこからか銃弾が飛んできてを一機が爆散した。

 

「攻撃だと?日本解放戦線か…!?」

 

 山頂の方向から途轍もない速さでこちらに急接近するナイトメアの反応をファクトスフィアで検知した。

 

 バズーカで迎撃するが容易く回避され、距離を詰めてきて三機やられた。

 

「なんだ、あの機体は…」

 

 無頼ともサザーランドとも違う。

 丸みを帯びた青い装甲に双眼型のセンサーがついたやや大型の頭部。

 

『該当するデータがありません!おそらく新型かと思われます!』

「新型、だと!イレヴンどもめ、いったいどこからそんなものを!」

 

 と考える隙も与えず、青いナイトメアが距離を詰めてきた。

 懐に入られる前に身を翻して回避する。

 

「速い!」

 

 今までのは旧世代機が中心で、カスタム機であっても性能は原型に毛が生えた程度だったが、こいつの運動性能と突破力はグロースターより上だ。

 

 その上穂先がチェーンソー状となった槍で薙ぎ払い、左肩についたシールドの先端にある二本のクローで貫くといった戦法をとって追撃を仕掛けてくる。

 

 フッ、いかんな。こんな状況なのに面白いと思ってしまった。

 

「良い動きをする…しかし、姫様の元へ行かねばならんのでな!」

 

♢♢

 

 機体の点検を終えた後も、戦況はあまり好転していないようだ。

 混乱に乗じて山頂から黒の騎士団が現れ、散り散りになった残存部隊が奇襲を受けており、コーネリア総督も下から日本解放戦線の奇襲を受けているとのことだ。

 下から来た奴が現れてから、山奥にいた日本解放戦線が息を吹き返したかのように攻勢に出始めたな。

 あっちが指揮官だったのか?まあいいや。

 

「…スザク。もし出撃することになったら真っ直ぐ総督の所に向かえ」

「え?」

「黒の騎士団…ゼロの目的は総督の殺害、あるいは身柄の確保の可能性がある」

 

 この奇襲は各個撃破戦法…いや、この場合足止めが正しいか。

 どんな戦いでも大将首を取られてしまえば終わりだ。

 戦力差関係なく、大将でもあるコーネリア総督さえ抑えてしまえば黒の騎士団側に勝機がある。

 加えて足止めを受けている残存部隊の方は、総督が追い詰められればたとえどれだけ攻められようとも総督救援のために戻らざるを得ない状況になる。

 まるでチェスをやっているみたいだな。

 

「あはぁ。それなら一番足の速いランスロットがコーネリア総督の元にいくのが最適解だね。で、キヨナガ君の方はどういう方針で行くの?」

 

 トレーラーで待機、はないだろうな。

 ま、ナンバーズがナイトメアに乗って出撃すること自体を参謀府が許可すればの話だが。

 

「…さあな。無難に立ち回るさ。それより、そろそろ参謀府に連絡してみたらどうだ?」

「おっと、そうだね。それじゃあ――」

 

pipi

 

「あれ?」

「どうした?」

「なんか向こうから連絡が来たみたい」

 

 え?

 




字数が多くなったのでここいらで。

アニメの放送時期を調べてみると、コードギアスのアニメが放送された翌年にガンダムダブルオーが放送されたみたいですね。
なんかダブルオーに出てきた可変モビルスーツみたいなのがコードギアスに出てきてもまったく違和感を感じません。
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