コードギアス―謀略のキヨナガ   作:嫉妬憤怒強欲

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STAGE14

 格納庫で部隊の配備が進む中、呼んでもいないのにあの幕僚が意見具申しに来た。

 

「なに!?片瀬は放っておけだと!?」

「はい総督、先の戦いで既に日本解放戦線は瓦解しています。あのような無能を放置したところで、実害はないかと」

「害があるかないかの話ではない。奴にはキョウトとの繋がりについて色々と聞かねばならんのだ!」

 

 仮にオーベルシュタインの言うように既に黒の騎士団と繋がっていたとしても、資金源のキョウトさえ潰してしまえばエリア11でのテロ勢力の弱体化も望める。

 日本解放戦線のリーダーである片瀬が唯一の手掛かりだ。これがキョウトの情報を掴むチャンスと言っていい。

 

「ですが総督、これは罠の可能性があります」

 

 罠だと?

 

「貴公の目には、全て罠のように映るようだな?」

「姫様、観測員が日本解放戦線のものと思われるタンカーの動きを捉えたとのことです」

「よし」

 

 ギルフォードからの報告を受け、すぐに海兵部隊に出撃準備をするよう指示を出す。

 

「総督、どうかお聞きください」

「話なら片瀬を捕らえた後にゆっくり聞いてやる。ここもすぐ戦場になる。貴公はG-1で己の職務を果たせ」

 

 この時の私は焦っていたのだろう。

 ナリタの時と同じ轍を踏んでしまったことに気付いたのは、このすぐ後だった。

 

♢♢

 

『なんなんだこいつ…化け物かよ!?ぐああ!』

『吉田!こいつぅ!!』

『くそっ、銃がまったく効かないぞ!』

『ハーケンだ!ハーケンを使え!』

 

 オレは今、手早く黒の騎士団の無頼を片付けながら、スザクが向かった本隊のところへ向かっている。通すまいと数機の無頼が妨害してくるが、高い防御力を誇るマリスの装甲を前に、オレの進行を止められないでいる。

 

『ゼロ!悪い!そっちに白カブト擬きが向かった!』

『なにっ⁉』

 

 コンテナの上に乗り、状況を確認する。

 コーネリア総督の部隊は無頼に足止めされ、総督本人が乗っていると思われるグロースターはスザクの乗るランスロットと共に、頭部に兜のような装飾が施された無頼と、指の一本一本が鋭利な爪状になっている巨大な右手を付けた赤いナイトメアと交戦している最中だった。

 あの青いのは見当たらないな………まあ、好都合か。

 

「スザク」

 

 ランスロットに通信を繋いで呼びかける。

 

『キヨナガ、来たんだね。そこにいるのがゼロだ』

「兜を被った無頼がか?」

『ああ』

 

 指揮官が前に出るとはな。リーダーが動かないと部下が付いて来ないから、という考えなのか?総督も似たようなもんか。

 なんにせよ、連中とは何のつながりもありませんとアピールするためにも、攻撃をくわえておくか。

 

「援護する。いらないかもしれないが」

 

 ゼロの乗る無頼に向けてライフルを発砲する。

 

『ええい!どいつもこいつも邪魔ばかり!』

 

 当然ゼロは回避行動をとる。動きを見る限り、戦略家のゼロの操縦技能は一般兵より少しは出来る程度、か。意外と簡単にスザクの前へと誘導できた。

 

『ゼロ、これで!』

 

 スザクもゼロに向けて集中砲火を浴びせる。

 

『ぐああああ!うわあああ!』

 

 ボシュッ!

 

 オレとスザクの挟撃に、ついに敗れたゼロの無頼からコックピットブロックが射出された。

 だが角度が悪かったため、障害物であるコンテナにぶつかりながら夜の闇へと消える。

 ヒッグスコントロールシステムがあるとはいえ、結構なダメージがあるだろうな。

 

『ゼロ!こんのぉぉぉぉ!』

『ランスロット、後ろだ!』

 

 ゼロを追いかけようとしていたスザクに、赤いナイトメアが背後から飛び掛かってきた。

 コーネリア総督の呼びかけもあり、スザクはすぐさま横跳びで回避して、輻射波動の手から逃れる。

 やはりあれは至近距離じゃないと効果を発揮しないか。

 

『赤い奴の右腕には気を付けろ!距離を取って応戦する!』

 

 いや総督、指示するのはいいが大将は下がって欲しいんだが。

 

 一応命令通りライフルで発砲するが、ランスロットと互角の戦いが出来るポテンシャルを秘めているだけに、赤いナイトメアの動きが早くて弾が当たらない。

 

『ゼロは私が守る!』

 

 赤いナイトメアはオレとの距離を一気に詰め、左手で握る十手型の短刀でライフルを破壊し、至近距離で右腕の輻射波動機構を突き出してきた。

 流石に避け切れないと判断したオレは、胴体を庇うように左腕部を前に出す。

 すると案の定、赤いナイトメアはマリスの左腕部の装甲部分を掴んだ。

 

『キヨナガ!!』

『弾けろ!ブリタニア!』

 

 かかった。

 オレはすぐさま緊急ボタンを押す。

 

 パシュッ

 

 輻射波動対策として追加された機能が問題なく作動し、左腕部の装甲がパージされる。

 

『なっ、装甲を外した!?』

 

 膨大な熱量で装甲が赤く膨れ上がって爆散する間に、自由になったオレは赤いナイトメアの頭部に右ストレートを放った。

 

『うあああああ!』

 

 カウンター攻撃をくらった赤いナイトメアは後ろに大きく吹き飛びつつも、地面に上手く着地して後方へ下がる。

 

『キヨナガ、大丈夫?』

「ああ。なんとかな」

 

 装甲パージは一箇所一回しか使えない。次に直接フレームから輻射波動を喰らっていたら逃げ場はない。

 

『ッ、やってくれるじゃないの』

 

 自分でやっておいてなんだが、赤いナイトメアの左側のフェイス部が凹んでいて痛々しい。

 乗っているパイロットは傷をつけられてご機嫌斜めなのか、殺気の様なものがひしひしと伝わってくる。

 

『――ン!撤退だ!このまま混戦が続くのはまずい!』

『扇さん!?でもゼロが!』

『心配ない!さっきC.C.からゼロを保護したって報告がきた』

『C.C.が?』

『だから皆と一緒にそこから逃げろ!』

『了解!』

 

 赤いナイトメアは青いのと同様、白い煙のような物を噴出した。

 他のところも同じようで、辺りが一面煙に覆われる。

 

 煙が晴れた時には、赤いナイトメアや無頼の姿はどこにも見当たらなかった。

 

『キヨナガ、黒の騎士団は………』

「逃げたみたいだな…」

 

 ということはゼロも既に撤退済みか。

 

 

 コーネリア総督の作戦目標であった片瀬は流体サクラダイトでの爆死により失敗。軍の方にもかなりの損害が出た。

 その混乱に乗じて総督に奇襲を仕掛けたゼロはスザクとオレに返り討ちにあい、黒の騎士団共々退却。

 こうしてトウキョウ湾での戦いは、双方にとっても苦い結果で終わったのだった。

 

♢♢

 

 トウキョウ湾での戦いから数日後、現在私、アンドレアス・ダールトンはブリタニア政庁にてギルフォード卿と共に姫様へ謁見を行っている。

 

「黒の騎士団の活動状況はどうなっている?」

「先日の戦い以降、黒の騎士団に目立った動きは見られません。黒の騎士団に関与すると思われる人間の検挙数も極端に低下しております。これは………」

「戦力を整えていると考えていいな」

 

 ギルフォードからの報告に、姫様はふうとため息を吐かれた。

 

「ゼロめ、次なる手を考えているということか」

「姫様。今回の作戦といい、ナリタ連山といい、明らかに姫様を狙った行動です」

「頭を叩くのは戦の常道だ」

 

 そうお思いなら前に出ることを控えて欲しいが……聞かないであろうな。

 

「クロヴィス殿下のこともあります。ゼロは、ブリタニア体制よりも、ブリタニア皇族に対する恨みで動いている可能性があります」

「皇族に対する恨み……」

「そうなるとユーフェミア副総督の身にも危険が及ぶかと」

「なんだと……?」

 

 私の発言に、姫様の視線が鋭くなる。姫様は妹であるユーフェミア様を溺愛されている。ホテルジャックの一件から以前よりも過保護になるほどに。

 

「でしたら、騎士を持たれてはいかがでしょうか?」

「騎士?ユフィ……ユーフェミア副総督にか?」

「ええ。警護役をユーフェミア様の専任騎士とすれば、その者を中心に、親衛隊を構築できます。ユーフェミア様は副総督ですから、既にその権利はお持ちかと…」

「ふむ……騎士か」

 

 ギルフォードからの進言に、姫様は指を自身の顎に添えて数秒考え込み、口を開く。

 

「わかった。副総督には私から伝えよう」

 

 黒の騎士団に関する報告が終わり、次はわが軍の再編の議題に移る。

 

「ではダールトン」

「はっ。現在進めている軍の再編計画ですが、80%の進行度といったところです。ナイトメアならびに、装備は本国より補充がありましたが、如何せん………」

「兵が足りぬか」

「はい」

 

 先の戦いでナイトメアに騎乗していた騎士も多く失ったが、それ以上に兵員に大打撃を受けた。兵を補充しようにも、降って湧いて出るようなものではない。

 

「私からも本国に兵員の補充を申請したものの……」

「補充なし、か。そういえば、本国では大貴族連合がユーロピアに攻め入るそうだな」

「はい。なんでもユーロ・ブリタニアと名乗っているとか…その編成に兵員が回されていると聞きます」

 

 神聖ブリタニア帝国の国家としての源流は、テューダー朝期のイングランド王国だった。

 エリザベス3世の統治時代、ヨーロッパの大部分を征服したナポレオンは、イングランドへの上陸を目論むと、トラファルガーの海戦に勝利して制海権を掌握し、12万の軍勢と共にロンドンへと進軍した。

 エリザベス3世はエディンバラへ追い込まれるも、ブリタニア公リカルドとその腹心リシャール・エクトル卿の尽力によって今の大陸へと逃れ、東部に首都を定めた。

 その後、エリザベス3世に子が無く、テューダー朝の血筋が途絶えた際にブリタニア公リカルドが王位を継承し帝政を施行。国号を「神聖ブリタニア帝国」に変更し、リカルド・ヴァン・ブリタニア1世として皇帝に即位し、今に至る。

 

 大貴族連合の殆どは、エリザベス3世達と共に亡命した貴族の末裔である。

 ユーロ・ブリタニアと名乗るあたり、彼らの戦いの目的はおそらく”奪われた父祖の土地の奪還”だろう。

 

「私の方でもシュナイゼル宰相に掛け合ってみたところ、今とまったく同じことを言われた。ただ、グラストンナイツの方は条件付きで派遣してくれることとなった」

 

 おお…!クラウディオ達が来るのか。それは心強い。

 

「して、その条件付きというのは?」

「新型ナイトメアに乗せる、というものだ」

「新型、ですと?」

「詳細は語ってくれなかったが、性能はグロースターを超えた折り紙付きだと」

 

 シュナイゼル殿下がそう評される程の新型を息子たちに供与するとは。

 どんなものか気になるな。

 

「もうすぐこちらに着く頃だろう。久しぶりに家族との時間を過ごすと良い」

「姫様に気遣って頂けるとは、感謝の極みです」 

「ふっ………さて、グラストンナイツが加わるとはいえ人手不足であることには変わりない。とはいえ、ナンバーズを使うつもりもない。新兵の採用スケジュールを繰り上げよ。手は打ってあるのであろう?」

「はっ。近々採用試験を行います。それで、入隊試験には私が立ち会おうかと」

「ほう?」

「ダールトン将軍自らがですか?」

「兵の実力は、書類だけではわからんからな。この眼で直に見てみたいのだ」

「確かに仰る通りです。その姿勢、頭が下がります」

「そんな大それた話ではない。単に見てみたいのだ。若い力と言う奴を」

 

 それにオーベルシュタインの言っていた通り、黒の騎士団のスパイが紛れ込む可能性がある。

 採用試験にはオーベルシュタイン自身が出向くことになっているが、あの男のみに任せるとどうも不安だ。

 

「ふっ、良いだろう。腕の立つ者がいれば親衛隊に加えることも考慮する。しっかりその目で見定めろ」

「イエス・ユア・ハイネス!」

 

 ナリタで相対したあの新型のパイロット、声からして若かったが、かなりの腕だった。

 奴のような兵が我が軍にも欲しいものだ。姫様をお守りするためにもな。

 

♢♢

 

 ある日。

 ナリタでの借りを返すため、ロイドから与えられた課題をこなしていく中、格納庫に来たお客と出くわす。

 

「えっ、会長?どうしてここに?」

「それはこっちの台詞よ。どうしてキヨポンがここに?」

 

 なんと客はアッシュフォード学園の生徒会会長ミレイ・アッシュフォードだった。制服ではなく派手な貴族風のドレスを着ている。

 確か今日はどこかの貴族とお見合いすると生徒会で言ってたが………

 そういえばロイドも今日ここでお見合いするとかセシルさんが言ってたような………

 

「もしかして会長の見合い相手って………ロイド・アスプルンドという名前だったり?」

「え?確かにロイド・アスプルンド伯爵とお見合いすることになってるんだけどどうして知ってるの?」

「………その人、オレとスザクの上司です」

「はいぃ!?」

 

 人を揶揄うのが好きな会長が、珍しく素っ頓狂な声を上げた。

 

「そ、それじゃあずっと大学からクラブハウスに通ってたの?」

「そうなります」

「ええ、軍属とは聞いていたけど……いやあ、世界は狭いわね」

 

 そういえば軍の機密に関わるとかで、どこに寝泊まりしているとかは伝えてなかったな。

 この前ここに泊まったマーヤには他言無用をお願いしたし。

 

「あっ、来たね。はじめましてぇ~ミレイ・アッシュフォード君。僕がスザク君とキヨナガ君の上司で、君のお見合い相手のロイド・アスプルンド伯爵だよぉ~」

 

 そこへロイドが間延びした口調で奥から現れた。お見合いだというのに普段着のままだ。

 いつも通りすぎる。

 流石にオレがここにいたら邪魔だろうと思い退室しようとしたら、ロイドにそこにいてと止められた。

 

「ささ、取り敢えずどこか適当なところに座って」

「あっ、どうも…」

 

 一応ここは元々アッシュフォード家所有の設備だったはずだが、ロイドはすぐそばの椅子にアッシュフォード家の令嬢を座らせた。

 

「いやあ驚いた?お見合いっていったら、普通はホテルかレストランだものね」

 

 あっ、その辺の常識は持っていたのか。

 

「いえ、ロイド伯爵は大変ユニークな方だと聞いていましたから」

「ユニーク!なかなか素敵な表現だね」

 

 単に変人って意味だろ?

 

「ええ、爵位を捨てて、落ち目のアッシュフォード家の女を貰おうだなんて」

「あは。どうでもいいじゃない。爵位なんてさ」

 

 確かに少し変な話だ。そもそもあの変態がお見合いすること自体違和感がある。

 なにか狙いがあるんじゃないかと疑ってしまうくらいだ。

 そういえばアッシュフォード家はナイトメアフレームの誕生と深い関わりがあったな。

 確かナイトメアフレームという「戦闘用ロボット」として終着するこの概念は、系統の異なる2つの技術をベースに開発が開始された、とか。1つは軍用二足歩行兵器「ナイトメア」であり、もう1つはアッシュフォード財団の後援で福祉用途に開発された民生用機「フレーム」。その2つを統合した結果、「ナイトメアフレーム」の名称が誕生したんだった。

 ということは、アッシュフォード家が所有するナイトメア関係の何かが欲しくて、今回の見合いをセッティングしたんだろうか?

 

「どうぞ」

 

 考え込んでいるうちに、セシルさんがティーカップを持って来て、二人にお出しする。

 

「お手数おかけします」

「どうぞごゆっくり」

「しなくていいよ。時間の無駄だ。結婚しよ」

「え?」

 

 はや。もっと順序みたいなものがあるだろ。

 

「んじゃ保留?」

「ええと………」

「あとは好きにして。僕はどっちでもいいから」

 

 断るという選択肢はないのか。

 ロイドに振り回され、流石の会長も困惑しているな。なんか見てると会長が不憫に思えてくる。

 

「ってことで、もういいかな?僕ちょっと行きたいところがあるんだぁ。ほら、キヨナガ君も」

 

 は?

 

「オレも行くのか?」

「そうだよ。言ってなかったけ?」

「いや、一言も聞いてないが」

「じゃあ今言った。ほら、準備して」

「おい……」

 

 このモヤシプリン伯爵、事前通告もなしか。

 

「な、なんかキヨナガ君と伯爵、かなり砕けた感じね………」

「あ、あはは……主任があんな感じなので」

 

 会長に会釈し、外出用の軍服を着てからトレーラーに乗り込む。

 

 

「それで、どこに行くんだ?」

「ん?どこってブリタニア軍タチカワ駐屯基地だよ」

 

 駐屯基地?

 

「そこで新兵の採用試験があるんだよ。受験者の中に良いパーツがいないか探そうと思ってさぁ」

「パーツ…ああ、テストパイロットか。オレとスザクがいるだろうに」

「そうだけどさ。キミのおかげで色々インスピレーションが湧いてきてね。試すならそれ相応のパーツが多いと良いでしょ?」

「……確認だが、そも新兵の募集対象は?」

「ん?ブリタニア人がメインだろうね。ほら、黒の騎士団のことがあるからさ」

 

 だろうな。スパイの可能性があるイレヴンを歓迎するわけがない。もっとも、ブリタニア人は必ずそうではないとは言い切れないが。

 

「………ちゃんとまともな奴を選んでくれよ」

「アハッ、それは保証しかねるねぇ~」

 

 ブリタニア人となると面倒くさくなりそうだ。主にイレヴン蔑視とかで。

 

 

 そういえばマーヤは軍に入りたいとか言っていたが、あれからどうなったんだ?

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