コードギアス―謀略のキヨナガ   作:嫉妬憤怒強欲

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タイトル名はコードギアスの劇場総集編の主題歌から取りました。


STAGE16「赤だけが足りない」

 ガーフィールドの実力を測るための模擬戦だったのだが、面白いものを見させてもらった。

 

「………どう思う?クラウディオ」

「……ダミアン・ヘムワーズの実力は別に劣っていたわけではありません。父親、兄二人に並ぶ程で、貴族組の中で咄嗟の統率力にも長けていました。ですが………」

「Cクラス側にダミアンより一枚上手なのがいたことが一番の要因か」

「……仰る通りです」

 

 ガーフィールドの実力は、とても初心者とは思えないほど郡を抜いていた。

 それでも全体的に見て、AクラスとCクラスの実力差は圧倒的だった。

 

 だが、一人のイレヴンの采配がそれを圧倒していた。練度の低いCクラスを上手く使いこなして。

 

「……直接的な戦闘を避けての陽動と攪乱。予め決めていたコースを走らせ、追撃して来る敵を誘導。回避できないポイントまで来たところを、四方を包囲しての集中砲火。序盤からずっと彼のペースでした。お恥ずかしい話、彼の意図に気付いたのは終盤あたりです」

「それは私も同じだ」

 

 奴の戦略はゼロのそれに近い。だがどこか機械的。

 操縦のレクチャーを任せるついでに奴の指揮能力も試す意図もあったが………

 

「お前が奴と戦った場合、勝てる見込みは?」

「………難しいかと。正直、黒の騎士団側についていなくてホッとしています」

 

 クラウディオにそこまで言わせるとはな。

 まったく………

 

「………ギルフォードが聞いた噂、本当かもしれないな」

「噂、とは?」

「ここがエリア11として平定される前、旧日本政府の一部派閥が人工的に天才を作り出す施設を設立していたとか、奴がその被験者だとか、色々だ」

「そのような施設が……ですが天才を作り出すなんて、そんな都合よく………」

「単なる眉唾物、と言い切れないだろ?」

 

 新型ナイトメアの設計に操縦能力の高さ、そして今回見せた指揮能力………これまでの奴の実績を見ても異常だ。噂が本当だと仮定すれば納得できる。

 

「随分と楽しそうですね」

「…ふ、そう見えるか。それはそうと、ガーフィールドの配属先についてだが―――」

「ちょおっと待ったぁ~」

 

 突然呼んでもいない珍客が会話に割り込んできた。

 

「ろ、ロイド伯爵!?」

「貴様、今度は何だ?」

「いえね。将軍にちょ~とお願いがありまして」

「お願い、だと?」

「ええ。彼女の件で♪」

 

♢♢

 

 タチカワ駐屯基地での模擬戦を終えた翌日。

 

「あっ、キヨナガ。お、おはよう…」

「いや、もう放課後ですけど」

 

 放課後の時間帯に生徒会のクラブハウスに向かおうとしていると、アッシュフォード学園の正門の前でマーヤとばったり会った。

 

「遅い登校ですね。なにか用事が?」

「あっ、ううん。流石にこの前の試験で疲れちゃって……」

 

 まあそりゃそうか。

 クラブハウスまで並んで歩きながらこの前の試験のことを話す。

 

「この前の模擬戦では活躍してましたね。ナイトメアの騎乗経験があったのですか?」

「ううん、操作が似たゲームをやり込んでいただけだよ」

 

 社長令嬢がゲーマー?そんな風に見えないけどな。

 

「なんてゲームですか?」

「あっ……えっと、なんて名前だったかな」

 

 やり込んでるゲームをど忘れって、そんなことあるのか?

 

「それより、私はあの白いグラスゴーのパイロットが凄いと思ったな。開始から最後までずっと戦いの流れを支配されているような感じだった」

 

 その白いグラスゴーに乗っていたパイロット、オレですけど。

 模擬戦終了後、受験生達とは反対方向のルートを通ってその場から離脱したオレは特派のトレーラーへと直行。トレーラー内にグラスゴーカスタムを置いてから、何食わぬ顔でロイドと合流した。

 

「キヨナガはあのグラスゴーに乗っている人が誰か知っている?」

「………さあ。顔を見ていないので」

 

 話すと色々ややこしくなりそうなのではぐらかしておく。

 

「そっか……そういえば、あのグラウンドにナイトメアが置かれていたね」

「ああ。あの騎士みたいな感じの」

 

 今度はグレイズ・ナイトについて聞いてきたな。

 

「聞いた話だと、あのクラウディオ試験監督官の機体みたいだけど、新型かなにかかな?だとしても、あんな目立つ場所に置くなんてちょっと不自然かなって……」

「さあ。オレはなにも聞いていませんので……」

 

 おそらくあれは”餌”だ。

 軍の立て直しで新兵を募集しているのをゼロが見逃す筈がない。

 受験者の中に黒の騎士団の工作員、あるいは協力者が紛れ込んでいる可能性があるが、いたとしても特定するのは難しい。

 ナイトはいるかどうか分からない工作員をおびき寄せ、上手く釣れることを期待した『釣り』だ。

 新型ナイトメアの情報を得ようと不用意な行動を取れば、クラウディオがその場でその人物を抑える。

 慎重になって行動を起こさなかった場合、新型を見られたとしても『それらしいナイトメアがあった』という情報しか黒の騎士団には流れない。見ただけでは性能や細かい構造までわかるわけないし。

 

 まあ、入隊後に探りを入れてくる可能性もあるが……

 

「ところで、クラリスさんに入隊の話はしましたか?」

「うん。昨日、成り行きで。でもOKを貰った」

「……入隊試験を受けること、クラリスさんに言っていなかったんですか?」

「あー……うん。クラリスさん、最近忙しくて伝えるタイミングが……それにあまり心配させたくなくて……」

「バレた後の方が余計心配されるんじゃ?」 

「うっ……仰る通りです」

 

 オレの指摘に、マーヤはばつの悪い顔になる。まあ、事後報告になったとはいえ、マーヤなりに向き合っているか。

 

「合格したらアッシュフォード学園は?」

「受かっても辞めるつもりはないよ。そのために予備役採用に応募したんだ」

「確か、有事の際に召集されて軍務に服するために、平時は民間生活を送る兵役のことでしたっけ」

「うん。訓練には参加するけど、学校には通うつもりだよ」

「なら別々の配属になってそれっきり、なんてことはないわけですか」

「あー……それはどうかな」

「?どういう意味ですか?」

「な、何でもないよ」

 

 まあいいか。それ以上は聞かず、クラブハウスの生徒会会議室に入る。

 

「おっ、キヨポンにマーヤじゃん!なんか久しぶり!」

「もう放課後だよマーヤ。またサボり癖が出た?」

 

 そこにはいつもの面々がいた。しばらく休学していたシャーリーも復学していて、普段通り明るい。

 

「大丈夫かい?ここのところずっと休んでいたみたいだけど」

「?ロイドから聞いていないのかスザク。昨日タチカワ――」

「わー!わー!わー!」

 

 突然マーヤが奇声を上げながら、手でオレの口を塞いだ。

 

「き、キヨナガ、ちょっとこっち!」

 

 一同が目を丸くしている中、マーヤはオレを部屋の隅に引っ張り、他には聞かれないよう耳元で囁いてくる。

 

「ごめん。ブリタニア軍の入隊試験を受けたこと、今はまだ皆に言わないで欲しいの」

 

 それ先に言って欲しかった。というか近い。女子特有の甘い香りが………。

 取り敢えず了承のサインを送ると離れてくれた。

 

「おいおい。二人で何内緒話してるんだよ」

「な、なんでもないよ」

「というか…二人とも、いつもより距離が近いような…」

「ねえー」

 

 ニーナとシャーリー辺りから変な誤解を受ける。距離が近いって、確かにさっき物理的に近かったが。

 

「ほ、本当になんでもないって。休んでた体調が悪かったとかじゃなくて、ちょっと用事があって」

「そういえば、ルルーシュがそんなことを………」

「で?用事って何があったのさ」

「それは…」

「おい、リヴァル。あんまり他人のプライベートを詮索するもんじゃないだろう」

「え~でも気になんじゃんかよ」

 

 マーヤが返答に困っている中、ルルーシュが助け舟を出した。

 

「ほらほら男子たち。マーヤと久しぶりに会って嬉しいのはわかるけど、今は生徒会中よ!」

「へ~い」

 

 ミレイ会長曰く、近いうちにやる学園祭の企画について話し合っていたようだ。

 

「じゃあ全員揃ったことだし、始めますか」

「ほら、キヨポンも座って座って」

 

 あれ。ひょっとしてオレも頭数に入っているのか?

 

「さあ!今度こそ始めるわよ!私達の学園祭は待ってくれないんだから!」

 

 そうしてオレも生徒会の会議に参加する流れになった。

 

♢♢

 

 数日後、オレ達特派は軍司令部からの突然の命令でチョウフ基地に来ていた。

 命令の内容は、捕らえた日本解放戦線の残党、藤堂鏡志朗の死刑執行人役をスザクに任ず、というもの。

 なんでもスザクと藤堂は旧知の間柄で、エリア11が日本だった頃、スザクは藤堂から武術の稽古をつけてもらっていたとか。スザクの得意技であるくるくるキックの名付け親でもあるようだ。

 二人の関係を知ったコーネリアは、踏み絵としてスザクに藤堂を処刑させようと………ちょっと趣味が悪いな。

 

「え?また書くんですか?」

「コーネリア殿下のご命令といえど、手続きは踏んでいただく。刑の執行人変更は、特例中の特例なのでな」

「はぁ………わかりましたよ。わかりました!書けばいいんでしょ、書けば………」

 

 基地にある応接室。

 刑の執行の前に、執行手続きをしなければならないという理由で、特派の主任(一応)であるロイドが、放心状態にあるスザクに代わって書類にサインをしているがご機嫌斜めなのを隠さない。

 今日からロイドお望みの追加人員が特派に来る予定だったが、今回の命令で入れ違いになった。一応、こっちに合流するようロイドが事前に連絡を入れていたみたいで、今日中には来るということ。

 どんな人物が来るかロイドに聞いてみても「それは来てからのお楽しみ♪」とはぐらかされたが、大体予想はつく。

 

 それよりも今は………

 

「大丈夫かスザク?」

「………」

 

 スザクの精神状態が気になってついてきたが、駄目だこりゃ。

 今までみたい解放戦線掃討の時とは違い、直接日本人しかも知人に引導を渡すのだ。

 優し過ぎるスザクには、流石に荷が重い。

 

 でも何とかなるだろう。

 

 オレの予想ならそろそろ―――

 

 

 どおおおおおん!

 

 突然、凄まじい爆音が外から轟いた。

 

 ―――来たか。

 

「な、なんだ?なっ――!」

 

 基地司令が応接室にある窓から外の様子を見て啞然とする。

 基地の一番外側の壁に大きな穴が開いていて、複数のナイトメアが基地内に侵入していた。

 窓から見えるナイトメアの数は四機。どれもオレがナリタ連山で戦った青いナイトメアに似てはいるが、こっちは一つ目で色は灰銀色。チェーンソーのような刀と左腕部に付けた機銃のみを装備している。

 

「ロイドさん、あの機体………」

「黒の騎士団が来たみたいだね」

「く、黒の騎士団!?」

「……ゼロ!」

 

 狙いは藤堂の奪還か。

 七年前のブリタニアとの戦いに勝利した経験を持つ男を、ゼロが放っておく筈がない。

 救出後黒の騎士団の戦力に加えるつもりだろう。

 となると……。

 

「ロイドさん!」

「はいはぁい。書類地獄から解放かな?スザク君とキヨナガ君はトレーラーに向かって。セシル君、ランスロットとマリスカスタムの準備の連絡して」

「は、はい」

「お、おい!何をするつもりだ!?」

 

 部屋から退室しようとしたところを基地司令に呼び止められる。

 

「なにって、ナイトメアであれに対処しようかと」

「勝手なことはしないでいただきい!ここは我々だけでなんとかする!他所の部署が出しゃばるな!」

「!今は部署で揉めている場合じゃ――」

「いやぁ~、それはちょっと無理があるかと」

 

 窓の外では、格納庫から数機のサザーランドが出撃して迎撃に向かうが、四機のナイトメアの高い機動力で銃弾を易々と躱し、息の合った連携に圧倒されていた。

 

「なっ、馬鹿な。たった四機に……」

「やっぱり、ナリタと同じ第七世代相当の機体だから、サザーランドやグロースター以上の運動性能を発揮していても不思議じゃないね」

「それにあの四機の連携………操縦技能だけでなく集団戦術にも長けているみたいです。この調子では、基地内の戦力が全滅する恐れも…」

「それにこのまま受刑者をみすみす逃がしちゃったら、基地の責任問題になっちゃうだろうねぇ」

「そ、そんな」

「じゃ、そういうわけなので、ここは僕ら特別派遣嚮導技術部にお任せを♪」

「ぐっ……」

 

 応接室を出たオレとスザクはトレーラーに向かう。

 セシルさんがトレーラーに連絡を取っていたおかげで、着いた頃には出撃準備が出来ていた。

 

 後部のハッチが開き、ランスロットと新たに機体調整されたグレイズ・マリスが待機状態で待っている。

 オレが乗るマリスは新規装備の他、外見が前の時と違い頭頂部にあった長距離通信アンテナが一本だったのが、頭部側面に左右一対に変更。フレームにはホワイトブラウン、装甲にはワインレッド色の特殊な塗装がコーティングされていた。別のカラーになっているのは、ロイド曰く『別の色にしないと前とは違うってわからないじゃないの。こういうのは第一印象が大事だから』だそうだ。ランスロットの方は同じ白を使っているというのに。

 

「なぁ、この塗装で輻射波動にどれくらい耐えれるんだ?」

『そうだね。数回でも、精々四、五回くらいかな。理論的には』

「おい」

『だって輻射波動は敵の手にあるんだから検証しようにもできないからしょうがないでしょ?』

 

まあ、そうだが。

 

『ぶっつけ本番だから受け過ぎないようにね。あっ、でもデータが欲しいからやっぱり少しは受けて』

「どっちだよ」

 

 そんな電子レンジに自分から入るような真似、誰が進んでやるか。

 パイロットスーツに着替えた後、コックピットに乗り込んで機器をチェックする。

 

『嚮導兵器Z-01ランスロット、E-01グレイズ・マリス改め”マリスカスタム”は出撃後、基地内の敵の制圧を。くれぐれも無茶しないで』

『イエス、マイロード』

「了解です」

 

 常識人(料理スキル以外)のセシルさんとは凄い違いだな。

 

『ランスロット、MEブースト』

「マリスカスタム、出る」

 

 出撃したオレ達は高速移動で基地内を駆け抜けていく。

 

『キヨナガ、あの兜付きのグラスゴー………』

「ゼロも来ているみたいだな」

 

 指揮官なのに前に出るタイプならいるか。

 メインカメラからの映像で捉えたのは、新型の四機の他に、輻射波動を付けた赤いのと、ゼロが乗っていた兜付きの無頼、そして頭部から紅い髪みたいなのが付いている黒い一つ目の新型。

 合計七機に増えていた。

 ゼロが来ていると考えれば、やはり最初の新型四機の奇襲は陽動だったか。

 四機が基地内で暴れて注意を引きつけている隙に、別動隊が監房に突入。

 藤堂を救出後、陽動部隊と合流したと言ったところか。

 となると、あの黒い新型に藤堂が乗っている可能性がある。

 

 まだ脱出していないということは、このまま基地の残存戦力を叩くつもりか。

 

『戦いなんて…!』

 

 オレがどう動こうか考えている間に、スザクが先に動いた。

 

 仕方ない。

 ランスロットから黒の騎士団に向けてスラッシュハーケンが射出される。それに便乗し、オレも転がっているサザーランドの残骸からライフルを拾って発砲する。

 

『なっ!?』

『どうしてあの二機がこんなところに…なんか擬きの方、色とか変わってるけど』

 

 赤いナイトメアは兜付きの無頼を庇うように前に出た。ということはやっぱりあれにゼロが乗っているようだ。

 指揮官を失うわけにはいかないため、必ずゼロを守りに入る。

 操縦技能が一般兵より少し上程度のゼロは戦力外として、実質戦う敵は六機。

 部隊を半分に分けて叩くか、それとも………

 

『ゼロ、あの二機に関しての情報は持っているのか?』

『打つ手はある。ここは私の指示に従って欲しいが…』

『ああ……よかろう。ここは君に預けよう』

『全機、一旦距離を取れ!』

 

 黒の騎士団は散開する。

 バラバラに逃げるように見せて、赤い方がオレの方に。ゼロを除く他の五機がスザクの方へと距離を詰めていた。

 堅牢さと運動性を両立させたマリスには輻射波動で。スピードとマニューバで驚異的なランスロットには新型の連携で対応するつもりか。

 

「気を付けろスザク。新型の方は高性能な上、連携を取ってくる。死角からの攻撃に注意しろ」

『わかった。キヨナガも気をつけて』

 

 数機を同時に相手にするスザクの方がかなりきついだろうに。

 

『東京湾での借りをここで!』

 

 オレとの距離を一気に詰めてくる赤いナイトメアに向け、距離を取りながらライフルで弾幕を張るが、輻射波動を起動しているのか、あの右腕の掌の前で銃弾が全て霧散している。

 そのまま懐に入ってきて、輻射波動機構が内蔵された巨大な右腕を突き出してきた。

 ターンで避けるが、赤いナイトメアは勢いをそのままに今度は十手型の短刀を振るってきてライフルの銃身を切り裂いた。

 攻撃が届かなかったのを見るや、今度は回転蹴りだ。

 左右のアンバランスなゴツい見た目に似合わない、柔軟な稼動領域を有しているかのような軽い身のこなしを駆使して連撃を繰り出してくる。

 このままランスロットと引き離す気か。

 

「……厄介だな」

 

 ランスロットと渡り合える機体なだけに手強い。スザク同様フェイントがないのが唯一の救いだ。

 

 コックピットブロック下部にある鞘から新型のMVSを抜く。

 ランスロットが持っているロングソード型ではなく、刃渡りの短いグラディウス型。

 ランスロットの装備を、第五世代機でも運用可能なよう、エナジー消費の軽減を目指した試作武器である。他にもロイドの趣味で機能がついているが、使うのはまだいいだろう。

 鞘から剣を抜き放ち、迫り来る十手をいなす。

 

『これでぇ!』

 

 再び右腕を突き出してくる。

 後退して間合いを取ろうとしたとき、

 

 ガシャン

 

 右肘部分に伸縮ギミックを設けていたようで、長い五指が一気に伸びてきてマリスの頭部を掴んだ。

 

『捕まえたぁ!』

 

 東京湾の時のように装甲がパージされないよう、掴みやすい頭部を選んだか。赤いナイトメアはそのまま右掌から高周波を短いサイクルで照射してきた。

 普通なら他の機体のように一発で爆発四散するところだろう。

 だが、既に対策済みだ。

 

『えっ!?なんで爆発しないの!?』

 

うまくいったか。マリスカスタムは爆発することは無く、計器に『頭部損傷軽微』と表示されるだけで終わった。

 

『Q1、離れろ!』

 

 腰部に二基装備されているスラッシュハーケンを赤いナイトメアに向け射出する。

 だが直ぐ様手を離して後方へ跳び、脚部を掠る程度だった。

 輻射波動機構への対策方法は二つあった。

 一つはブレイズルミナスというエネルギー場で攻撃を防ぐエネルギー装甲システム。

エネルギー場の強大な反発力を利用するなら高周波の電磁波をはね返せるが、腕部に装備するとなると範囲が限られるし、エナジーの消耗が激しいため長期戦には向かない。

 もう一つは導電性塗料だ。

 内部の電子部品を外部からの電磁波から保護する電磁波シールドや、静電気による電子機器の誤作動防止など、一般家庭でも使われている。

 ナリタと東京湾での戦いで特定した輻射波動の固有周波数から、ロイド達が専用塗料を作成。装甲とフレーム、コックピットの表面に塗布した。

 テストなしのぶっつけ本番ではあったが、効果は確認できた。

 ただ指向性のある超強力な電子レンジなだけに、完全に防げているわけではない。あくまで効きにくくなっただけで、同じのをあと数回受ければ塗装が剝がれて効果が切れる。

 

 だから輻射波動の攻撃を受けるのは極力避けた方が良い。

 

「まずはあの右腕を潰すか………ん?」

 

 モニターの端に白いものが映る。

 後方へと跳躍するランスロット。

 その着地点に黒いナイトメアが待ち受けていた。

 

「後ろだスザク」

『え!?』

 

 黒いナイトメアにより繰り出される三つの刺突。三段突きと言う奴か。

 ランスロットは二回避け切ったが、最後の一突はコクピットブロックを貫通し、そのまま装甲を剥ぎ取った。そういえば、ロイドの奴脱出ブロック付けていたっけ?

 

「スザク、無事か?」

『な、なんとか』

 

 今のは危なかったな。だが装甲を剥がされ、コックピットの中が丸見えになる。

 

『なっ……』

『え!?』

『スザク君、なのか?』

 

 ん?ランスロットのコックピットに乗るスザクの姿に、藤堂が乗っているであろう黒いナイトメアだけでなく、ゼロが乗る無頼と赤いナイトメアの動きが止まっていた。

 

『よし、まだ動く』

『よせ、スザク君!』

『藤堂さん!』

 

 黒いナイトメアのコックピットハッチが開き、藤堂と思しき人物の姿が見える。

 というかあの男、前に会ったことがあるような………

 ファクトスフィアを展開して声を拾う。

 

『あなたは………筋を曲げてまで生きたいんですか?』

『失望したか。ならば予定通り、私を処刑したまえ』

『え……』

『どうした?そのつもりでここに来たのだろう?現状に甘んじるだけの腑抜けた小僧に成り下がるとは!』

『今の社会を否定しても、意味はありません!認められて、変えていける力を持つことこそが………』

『本気か?』

『当たり前です!』

『なら君はその道を行け!』

『え?』

『勝つにしろ、負けるにしろ、全てを出し切らなければ何も獲得できはしない。それは国でも個人でも同じこと!』

『はい!』

 

 話が終わったようで、藤堂はコクピットハッチを閉じた。

 

『ゼロ、捕まえますか?それとも………ゼロ!』

『白兜を破壊する。いいな!』

『待て!ゼロの指示を!』

『待てない!仙波大尉、旋回活殺自在陣を!』

『承知!』

『待て!』

 

 藤堂機と他の四機がランスロットを中心に旋回しながら包囲する。四方から同時に攻撃を仕掛ける気か。

 相変わらず赤いナイトメアの動く気配がない。

 

 なら…この隙にスザクの下へ移動する。

 機銃を撃ってるが、マリスカスタムの装甲には無意味だ。

 

『効いてない!?』

『なんて堅牢さよ!』

『後方から近づいてくる機体あり!数は一機!』

『なに!?』

 

 基地のハンガーから一機のサザーランドが出撃するのが見えた。

 

『今頃、増援?たった一機で?』

『気を付けろ、朝比奈!そいつ、さっきまでの敵とは動きが違う!』

 

 サザーランドが新型からの銃撃を避けつつ応戦する。かなりの操縦センスだ。

 

『同じサザーランドなのに、なんだこの動き!?』

 

 サザーランドの乱入で敵の陣形が崩れだす。好都合だ。

 

『せめてこいつだけでも!』

 

 一機がオレに近接武器で仕掛けてくる。

 オレはすぐさま腰部に装備している二基の強化型スラッシュハーケンを、地面に斜め60度の角度で射出。

 元となったランスロットと同様、射出の勢いを利用して機体を持ち上げ跳躍する。

 

『跳んだ、だと!?』

 

 横薙ぎの一閃を躱し、包囲を飛び越えてランスロットの傍に着地。ターンしてランスロットと背中合わせになる。

 

「スザク、動かせそうか?」

『うん、まだいける』

「一機はオレがやる。ハーケンブースターを使え。ロイド」

『パスワードは僕の好物!』

 

 マリスカスタムの四基のスラッシュハーケンと、ランスロットの四基のハーケンブースターが同時に射出し、藤堂機含む新型五機の武装を弾く。

 

『朝比奈、左側に回れ!今度は………』

『もうやめろ!目的は達成した。ルート3を使い。ただちに撤収する!』

 

 レーダーに新たな機影を確認した。周囲の状況を確認すると、政庁がある方向から、サザーランドを載せたVTOLが数機飛んできているのが見えた。

 頃合いか。

 

『勝てない戦と負け戦は別物だ。心得ているようだな、ゼロ』

『あ!待て!』

 

 撤退を始める黒の騎士団を追いかけようとするスザク。

 だが片脚に銃撃を喰らい、破損。ランスロットがスピンする。

 

『くっ、ランドスピナーが………!』

 

 そのまま前に倒れそうになったところを、先程のサザーランドが抱き留め、支えられる形になった。

 

『深追いはよせ。この戦力差では返り討ちにあうだけだ』

 

 通信の声、まさか……… 

 

 

 

 黒の騎士団はチャフスモークを展開し、チョウフ基地から撤退していった。

 戦闘が終了し、オレ達は例のサザーランドと共にロイド達がいるハンガーに戻る。

 

「二人共。よかった、無事で……」

「ああ~。僕のランスロットがこんな傷物に……」

 

 ロイドは相変わらずぶれないな。

 

「なに言ってるんですか、ロイドさん!いつまで経っても脱出ブロックを付けないから、スザク君がこんな目に遭うんですよ!」

「いえ。ランスロットを壊してしまったのは僕のせいなので………」

「スザク、そこは怒っていいと思うぞ。取り敢えず顔面を殴ったらどうだ?」

「ちょっ、僕は上司だよ。殴るのは勘弁して欲しいな……」

「それはそうと、あのサザーランドに乗っているパイロットはひょっとして……」

「そうそう。彼女はなんと、特派の新しい仲間なんだ~♪」

 

 ロイドに促され、サザーランドのコックピットから出てくるパイロット。

 

「サプライ~ズ♪紹介するね。マーヤ・ガーフィールド准尉。サブデヴァイサー。キヨナガ君と同じくスザク君の予備ってところかな」

「えっと……その、よろしくね二人共」

 

 なんかそんな気がしていたが………さて、どうしたものか。

 




マリスカスタムのイメージは某鉄血の○ルズハントに登場する赤い機体です。

来年からアニメよう実の二年生編がスタートとのことで、制服と同じ赤色に衣替えを………なんつって。
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