コードギアス―謀略のキヨナガ   作:嫉妬憤怒強欲

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アニメでスザク達が空を飛ぶアヴァロンに気付かなかったのは、島の地形の高低差とか、見晴らしの悪い場所にいたからだと思います。


STAGE21「神根島の邂逅・続」

 扉が閉まる。彼がロイドと共に部屋を出た後、バトレーに作業を任せ、残ったのは私とカノンだけとなった。

 私は紅茶を一口飲み、息をついた。

 

……予想以上だった。

 

 久しぶりにそう思った。

 

「かなり興味を持たれたようですね」

「ああ。予想以上だった」

 

 私はカップを置いた。

 正直、ただ優秀な少年を想像していた。多少観察力があり、少し頭が切れる程度の。

 だが違った。

 あれは、“教育された人間”だ。

 

「君から見た彼の印象は?」

 

 カノンは少し考え込んでから答えた。

 

「感情の希薄さからして空虚な少年、ですかね。ですが、人間理解だけが異様に深い」

「的確だね」

 

 普通は逆だ。感情豊かな人間ほど、他者の感情も理解できる。

 だが彼は、感情を削ぎ落としている。それなのに、人間心理だけは驚くほど正確に読む。

 矛盾している。……いや。矛盾しているように見えるだけか。

 

 世界は人が作るものだ。経済、思想、技術、軍事など。様々な方面の人が集まり、国家を、世界を作り維持したり新しくしたりする。そこにそれぞれの欲望や理想、偏見が混ざるものだ。バトレー将軍やロイド伯爵も含まれる。

 普通の技術者は『新しい未来を作る』と言う。そこにそれぞれの感情を混ぜて。バトレーの場合は人類進化を夢見るタイプで、ロイドは好奇心で進むタイプだ。

 だけど彼は違う。

 彼は機械を設計しているようで、実際には人間を見ていた。

 普通の技術者なら性能を優先するが彼は違った。彼は最初からそこにあるものを前提に設計していた。

 つまり「人体はこう動く」を「なら機械もそうする」といった感じで自然法則として技術を扱っているのだ。

 結果として、神経電位接続方式と噛み合ったのは必然。本人はそこまで意識していないだろうが。

 

 問題は自分の技術を特別視していないことだ。

 周りが軍事革命、技術革命、人類拡張レベルと受け取っても、当の本人は当然の結果くらいにしか思っていない。

 本人の言葉を借りるなら、いわゆる合理性の帰結という認識だ。

 そしてそれは国家に対しても同じ。

 

 先ほどの彼の言葉を思い返す。

 

「国家とは人間集団を維持するための管理構造。そして人はその環境へ適応する生き物、か。あの口ぶりからして、彼は国家を理念で見ていない。感情ではなく構造として認識しているようだね」

「かなり異質ですね。ナンバーズ出身者なら怒りや劣等感、復讐心が強く出てもおかしくないでしょうに」

「ああ、だが彼にはそれがほとんど見られない。まるで人間社会を外側から観察しているようだった」

 

 あの口調。理想論ではない。反抗心でもない。

 ただ観察結果を述べているだけのようだった。

 まるで国家という存在を、 最初から“外側”から見ているような感覚。

 あの年齢でそこへ辿り着くのは普通ではない。

 

「彼には我々の常識というものが通じないかもしれない」

「危険では?」

 

 僅かに眉を寄せるカノン。

 

「場合によるね。少なくとも扇動はしにくい。幸いなのが現時点で我々への敵意が薄いことだ」

 

 愛国心。民族意識。正義感。

 そういう熱量で動く人間ではない。だからこそ、扱いが難しい。

 彼は国家に忠誠を誓わない。思想や理念、野望は優先順位が低いから。

 従うとすれば合理性だ。そこにロマンや支配欲、進化思想がない。

 そして合理性だけで動く人間は、権力者にとって最も便利で、最も危険でもある。

 

 窓の外を見る。夜の海は静かだった。

 あの少年も、表面だけなら静かだ。

 だが内側には異様なものがある。

 若者特有の未熟さがほとんど見えない。

 代わりにあるのは、徹底的に最適化された思考。

 まるで人格を設計された人間だ。

 

「教育の匂いがするね。徹底的な選別。徹底的な合理化。感情より効率を優先する環境」

 

 カノンが静かに尋ねる。

 

「ロイド伯爵が聞いた噂の施設出身であると?」

「噂は事実かもしれないね。“優秀な人間を作る”ことだけを目的にした場所……そんな印象だ」

 

 未知の人材を見るとどうしても興味が湧く。悪い癖だ。

 

 だが、本当に興味深いのは能力じゃない。

 変化だ。

 ロイドからの報告ではアッシュフォード学園によく出入りしているようだ。そこの生徒でもあるガーフィールド准尉とも最近距離が近いとか。

 おそらく彼は観察している。友情も。信頼も。恋愛感情でさえも。自分に存在しなかったものとして。研究対象のように。

 だが同時に、少しずつ影響も受けるだろう。

 そこが重要だ。

 完全な合理主義者なら、むしろ扱いやすい。

 だが彼は、既に揺らぎ始めている。

 日常、他者との関係、居場所。

 そういう非合理なものが、内側へ入り込んでいる。

 

「誰かに居場所を与えられた時、彼は変わる。合理性だけでは動かなくなる」

「弱点になりますか?」

「同時に強さにもなる」

 

 人は矛盾してからが面白い。完璧な機械より、迷い始めた人間の方が遥かに予測しづらい。

 そして――強い。

 

「監視をお付けには?」

「いいよそのままで。何か問題を起こしたわけでもないし」

「…ナリタ連山での独断行動のことがありますが?」

「あれは例外だよ。コーネリアの作戦に影響を与えたわけではないし、それどころか民間人から死傷者を出さずに済ませた点は称賛すべきだと思うよ」

 

 彼にはこれまで以上に特派の………いや、私の下で働いてほしい。

 技術士官に昇進させたのもその一環だ。

 ロイドは本当に面白い人材を見つけてくれた。

 私は今、純粋な好奇心にかられている。

 あの少年が、どこへ辿り着くのか見てみたい。

 姉小路清永。

 君は国家の駒になるのか。

 それとも、盤面そのものを俯瞰する側に立つのか。

 今はまだ分からない。

 たぶん、君自身にも。

 

「そういえば、彼はチェスをするのかな?」

「はい?」

「いや、ただの独り言だよ」

 

 

「なんだこれ」

 

 宛がわれた部屋でゆっくり休んだ翌朝。

 アヴァロンの格納区画。

 湿った空気と金属の匂いが混ざる中で、その機体は異物のように立っていた。

 ランスロットやマリスカスタム、傍にあるサザーランドより一回り大きい黒と金の巨体。

 周囲のKMFとは明らかに設計思想が違うのが見てわかる。

 

「IFX-V301ガウェイン。次世代KMF用技術の実証の為に僕らが設計した実験機だよ」

 

 ロイドの軽い声が響く。

 楽しんでいる。状況そのものを。

 オレは機体を見上げる。

 まず目につくのは、両肩に付いている嘴みたいな突起だ。

 次に構造。そして、その歪さ。

 

「次世代の技術実証ってことは、ランスロットみたいに特殊な装備でも搭載しているのか?」

「そうだよ。例えば両肩に付いているハドロン砲。荷電粒子(ハドロン)を小型高出力加速器で光速近くまで超加速させて、超高エネルギー状態(粒子の塊)にした後、一方向に収束させて、目標に向けて撃ち出すんだ。要するに、高エネルギー粒子ビームを放つエネルギー砲だね」

 

 ビーム?

 

「ひょっとして式根島で船から発射されたビームはコイツが?」

「そうだよ。いくらランスロットでも、直撃すればただじゃすまなかったよ。なにせ、光速の粒子が持つ極めて高い運動エネルギーと、目標の分子を破壊する熱エネルギーの塊だからね。着弾した物質は融解・粉砕されちゃうんだ」

 

 絶対受けたくないな。

 

「まあ、まだ収束制御部分が未完成だったおかげでまともに当たらなかったけどね」

 

 不幸中の幸いか。

 

 砲門の構造。エナジーライン。冷却系統の配置。

 火力と出力に振っている設計か。聞いた話からエナジーの消費が激しそう。持続運用を捨てているようだ。

 つまり――持久戦には向かない機体か。

 

「で、次が搭載されてるシステムについてなんだけど」

 

 ロイドに促されるまま梯子を上がり、六本の突起が生えたコックピットの周辺に移動する。

 コックピットは前後上下段二席の複座式になっていた。

 役割分担をしているのか?

 

 ロイドが起動キーを二つ挿し込むと、上側の操縦席に付いているモニターに情報が表示される。

 ただ、流れるその情報の量が異常に多い。

 

「ドルイドシステムって言ってね。世界に数台も無い最新鋭の超高性能演算処理機構がこの機体に搭載されているんだ。未来予測、気象・地形データ解析、複雑な照準計算とか、パイロットの認知能力を超える膨大な情報を処理し、機体の戦闘・防御能力を極限まで引き上げる性能を持っている」

「かなり凄そうなシステムに聞こえるが、使える奴は?」

「殆どいないね。このシステムを完全に使いこなすためには、極めて高い並列思考能力と演算能力が要求されるから」

「ダメじゃん」

 

 確かに画面に流れる情報量は軽くない。

 オレは表示された情報を一瞬だけ追う……人間の反応速度では追いつかない領域だ。それに表示される情報の優先順位がつけられていないよう。

 システムは止めて機体の出力データのみを表示させる。

 実戦に投入されたとしても、一人でこれらを処理しながら戦うのはかなり負担がかかりそうだ。

 だから複座か。片方が操縦し、もう片方が戦術判断する前提の指揮官機。

 

 とはいえ、使いこなせるのは限られるだろうが。

 

「他にも、この機体にフロートユニットが付いているんだ」

「こいつ飛べるのか?」

 

 ナイトメアが空も飛べるとは。スペックデータに確かに書いてあるな。

 

「どう?すごいでしょ、この機体」

「どうって聞かれてもな…」

 

 コックピットから離れて機体全体を見回してからオレが出す評価は…

 

「ランスロットとは別ベクトルの規格外機…いや、欠陥機だな」

「えぇ?飛べる上にビーム撃てるんだよ?ロマンの塊だよ?」

「機能を詰め込みすぎだ。これじゃあ運用が難しい」

 

 ハドロン砲と飛行機能だけでも負荷が大きい。そこにドルイドシステムまで載せてる。

 

 過剰な出力。情報処理の問題で複雑化した制御系。そして機動力。それらを単体で突き抜けさせた結果――人間側の限界が先に見えている。

 これは完成品じゃない。完成を目的にした機体でもない。

 考えうる新技術全てをボディに詰め込み過ぎた結果、そのまま大きな形になってしまっただけだ。

 だ。

 兵器としては歪。戦場そのものを変える可能性はあるが、ぶっちゃけプリンの趣味の産物なため扱える人間が限られる。

 この機体は強いだろう。ただし、ランスロット同様“扱える側”が前提の兵器だ。

 それ以上でも、それ以下でもない。

 

「というか一機に依存しすぎると思うが」

 

 オレは続けない。必要以上に話す理由がない。

 だが不貞腐れた態度をとるロイドの方から食いついてくる。

 

「じゃあ君ならどうするの?」

 

 少し間を置く。

 

「……分けたらどうだ?」

「分ける?」

「ああ、それぞれに役割分担する。全部一機でやる必要はないと思う」

「へぇ……」

 

 オレはそれ以上話さない。技術論を披露したいわけじゃないし、また無茶振りされるのも困る。ただ見えたことを言っただけだ。

 

「ほう…面白い話をしているね」

 

 下を見るとシュナイゼル殿下とバトレーとかいう肥満男がいた。昨日みたいにバトレーが「第二皇子を見下ろすなぞ不敬であるぞ!」とか怒るのをシュナイゼル殿下に制されている。まあ確かに不敬だろうから、梯子を下りる。

 

「さっきの話、聞いていたんですか?」

「これは失礼。頼み事があって声をかけようと思ってたけど、たまたま興味深い話が聞こえたものでね。つい立ち聞きしてしまったよ」

 

 たまたま、ね。

 

「そんな合理的な発想はできる君の質問だが、昨日見せた神経電位接続方式についてどう思ったんだい?」

「で、殿下?」

 

 直球で聞いて来たな。まあいいや。

 

 神経電位接続方式――。

 人間の神経信号を機体制御へ直結し、操縦反応を極限まで短縮するシステム。

 合理的だ。少なくとも表面上は。

 

「悪くないと思います」

「ほう?」

「反応速度は上がるので。特に近接戦では有利でしょうね」

 

 それだけ答える。本当は問題点もいくつか見えている。だが、自分から並べ立てる理由はない。

 

「欠点は?」

 

 ……聞かれたか。

 

「操縦者依存が強いところです」

「具体的には?」

「適性が必要になる。人体改造のことも含めると量産向きじゃない」

「うっ…」

 

 バトレーがバツの悪そうな表情をする中、シュナイゼル殿下は静かに笑った。まだ続けさせる気だ。

 

「では、君ならどうする?」

 

 普通なら、ここで神経接続を強化する方向へ行く。

 だがオレは違う。

 

「……直接つながなくてもいいかもしれません」

「ほう?」

「人間は動く前に反応を出すので」

 

 それだけ言う。

 数秒の沈黙。

 だが――。

 

「――あはぁ、なるほどねぇ!人間を機械に合わせるんじゃない。機械側が人間を先読みするのかぁ!」

 

 後ろにいたロイドが食いついた。

 

「どういうことだいロイド?」

「人は視線、筋肉、呼吸、重心。完全に動く前でも、次の行動はある程度出るものなんですよ。ならその意図を直結した神経で読むんじゃなくて、“次に動こうとしてる兆候”を拾えば良いわけです!」

「つまり、機械でその予兆を読むことで意図を先読みするわけだね」

 

……二人とも理解が速い。

 

「そういうこと。病院で使う検査機器みたいなのを使えばいいので非侵襲型で済みますよ」

「ほう?」

「だ、だがそれでは接続方式に比べて精度が落ちるぞ」

「そこはシステム側で補正できると思いますよバトレー将軍?」

「そ、そうかもしれないが…」

 

 口を挟んだバトレーの様子からして、昨日のあれはバトレーの担当だったみたいだ。

 

「いやぁ面白いねぇ……!筋電位!視線追跡も使える!重心移動も取れるなぁ!!反応予測もできるし、これ下手すると操縦桿いらなくなるかも?」

 

 ロイドの早口が止まらない。

 オレは何も言わなかった。

 言う必要がない。

 このマッドサイエンティストは勝手に先まで辿り着く。

 

 シュナイゼル殿下がこっちを見る。

 

「君はそこまで考えていたのかい?」

「さあ、そう言うことになるんでしょうか」

 

 曖昧に返す。別に否定はしない。ただ、説明する気もない。

 だがシュナイゼル殿下は静かに笑った。

 

「……なるほど。君は本当に面白いね」

「普通ですよ」

 

 即答する。それ以上は要らない。

 おそらく、この男は会話から相手を分類するタイプの人間だ。

 今の時点では、オレが機械より先に、 人間を見るタイプだということを分かっているだろう。

 そういった相手には、“優秀さ”すら情報になる。

 

「…ところで、自分に頼み事とは?」

「おっと、そうだった。実は少し手伝って欲しいことがあってね……」

 

 

 

 シュナイゼル殿下からの頼み事は運搬作業だった。

 とある調査に必要な測定機材などを、島の中央部にある洞窟の奥へと運び込むというもの。

 洞窟の内部はなにかの古い遺跡だった。

 壁に彫られた紋章や天井を支える柱はどこか神殿を思わせるような造りで、なんか見覚えのある羽ばたく鳥のような紋章が刻まれた巨大な石扉の周囲に、照明や記録媒体、ガウェインまで置かれた。

 

「思考エレベーターねえ。考古学は得意じゃないんですが。特に超とかつきそうなのは………」

「貴様!無礼であろう!」

 

 シュナイゼル殿下達も遺跡内部に来ていたが、ロイドだけかなり嫌そうな顔をしていた。

 

「こんなことならセシル君に頼めばよかった」

「そんなに嫌がらないでくれよ。父君もこの手の物にご執心らしくってね」

 

 父君?ブリタニア皇帝のことか?機器を運びながら会話に聞き耳を立てる。

 

「そうなんだろ?バトレー」

「はい。同様のものが世界の数か所で見つかっており、私が発見したここを除き全てが天領とされております。これは推測ですが、各国に対しての侵攻計画は、これらのポイントに沿って行われているものかと」

 

 つまり、七年前の日本への侵攻はサクラダイトが目的じゃなかったってことか。

 占領はあくまでカモフラージュ。本命はこの遺跡の確保。

 

 だが何のために?

 

「ん~で、そんなオカルトのデータ解析に、ガウェインのドルイドシステムを使うんですか?まだ未調整の試作機を………」

「だから君を呼んだんだよ。ロイド」

「あは~」

 

 成程。第二皇子は皇帝の目的を探るためにここへ……。

 

 

 運搬作業が終わり、ガウェインのコックピットに幾つものケーブルが繋がれる。

 解析結果が表示される電子機器の用意ができたところで、それは起こった。

 

「な、なにこれ?」

「お、お下がりください!我が君!」

 

 突然天井が崩れ始め、同時に遺跡が眩い光を放ち………。

 

「―――っ」

 

 なんだ?左目がうずきだした。

 赤く光る鳥の紋章の耀きが強まると共にうずきが大きくなっていく。

 オレの力が、まるで遺跡に呼応しているかのようだ………。

 

 石扉の手前にあった、天井を支えていた柱も崩れ、土煙が舞う。

 

「く、枢木少佐!それと……まさか、ゼロ!」

 

 土煙が晴れると、瓦礫の上に四人の人影があった。

 スザクとカレン、ユーフェミア副総督とゼロの姿もあった。

 そこで遺跡の耀きが消え、同時に左目のうずきがようやく治まった。

 

「ば、馬鹿者!ユーフェミア様がおられる!確保だ。確保しろ!」

 

 突然のことに周囲にいた歩兵達の対応が遅い。

 

「ゼロ!あそこにナイトメアが!」

「よし、あれを使うか、行くぞ!」

 

 ゼロが近くにあったガウェインに乗り込み、カレンは歩兵から奪った機銃で起動までの時間を稼ごうと足止めしている。

 

 スザクの方は何故か立ち尽くしたまま微動だにしないでいた。

 もうその場は滅茶苦茶だった。

 

「ああ!ガウェインが!」

 

 ガウェインが動き出し、出口の方へ移動を始めた。カレンはすぐにガウェインの首横に乗っている。

 

「ゼロ、出口にサザーランドが────!」

『───問題ない!消えろ!』

 

 ガウェインの両肩部に付いている嘴状の突起―――未完成のハドロン砲が開いた。

 散弾のように撃ち出された赤いエネルギーが、洞窟の出口付近の砂煙や岩石を飛ばす。

 

 それからガウェインの背中にあるフロートユニットを起動させたのか緑色の翼のような物が発現し、機体が陸から離れた。

 本当にナイトメアが飛んだ。

 

 飛び上がったガウェインを撃ち落とすことができないまま、ゼロとカレンの逃亡を許すブリタニアの部隊。

 シュナイゼル殿下達が空を飛ぶガウェインに注意がいっている間に、オレはスザクとユーフェミア副総督の下に行く。

 

「スザク、返事をしてください。スザク」

「あ、あれ?僕は………」

 

 どうやらユーフェミア副総督の呼びかけで、スザクはようやく放心状態から戻ったようだ。

 

「無事みたいだな」

「あっ、キヨナガ。君もこの島に…?」

「ああ、どういうわけかな」

 

 昨日スザクとカレンを見かけたことは黙っておく。

 

「あれ?左目を閉じてどうしたんだい?もしかして怪我を……」

「いや、目にゴミが入っただけだ」

 

 うずきは収まったが、今左眼を誰にも見せるわけにいかない。

 この左眼に浮かびあがっている、上下逆さまの青白い紋章は――――

 

 

 

 それからすぐスザクが命令違反の容疑で逮捕されたり、式根島の方で所属不明機の襲撃に遭い、マーヤが重傷を負ったという報せが伝えられた。

 

 




キヨポンの琥珀色の瞳に、上下逆さまの鳥の紋章が………色は青白く、光っているのに冷たい印象を与えます。
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