コードギアス―謀略のキヨナガ   作:嫉妬憤怒強欲

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ナイトメアの構造に関してですが、以前『亡国のアキト』のドラマCDでユーロピアのとある天才科学者兼昆虫マニアがグラスゴーを独自に解析したという話で、昆虫よりも簡単な構造だったという台詞を言っていました。
昆虫は外骨格構造なので、ナイトメアもそういう解釈で行きたいと思います。


STAGE04「模擬戦と反省会」

 アッシュフォード学園高等部の生徒会との邂逅から数日が経った。

 現在特派によるランスロット用の装備の実証試験を行なわれている。

 試験は試験でも行っているのは、まごうことなきナイトメアの試験機同士による模擬戦闘。

 大学の敷地内でやるのは不味いため、以前純血派同士が内輪揉めをしていたシンジュクゲットーの会場の廃墟を使っている。

 

 オレが駆る試験機はグラスゴー・カスタム(特派仕様)。

 大学から買い取った払い下げの機体であるMR1に、再びグラスゴーの装甲用外装と頭部を取り付けた、白のカラーリングが基調の機体だ。

 外見はそれまでのグラスゴーと大差ないが、第5世代機で使われる駆動モータに付け替えてチューンアップされている。ちなみに装甲や駆動モータは、シンジュクゲットーでの戦闘で放置されたサザーランドや紅いグラスゴーの残骸を特派が回収、再利用している。

 左腕部と背部のコックピット両側面に装着されたランスロット用の装備が、既存の機体との差異を声高に主張している。

 

 対するオレの対戦相手は――

 

『はあああ!』

 

――第7世代機ランスロットを駆るスザクである。

 

 おかしい。絶対おかしいだろ。何のいじめだこれ。

 ハンデでこっちは模擬弾入りのライフルを使っているのに全く当たらない。

 

 足首部分に標準装備されている高速移動用のホイールでジグザグに移動しながらの連射で弾幕を張っても、驚異的な運動性能を駆使したアクロバティックな挙動で軽々と避けていくのなんか化け物じみている。

 バック転やバック宙とかシミュレーターではなかったぞ。

 

『そこっ!』

 

 ランスロットの両手首に装備されていたワイヤー付きアンカー『スラッシュハーケン』が射出される。

 ナイトメアに共通で標準装備されているのとは比較にならない凄まじい速度でそれらが迫り、片方は左肩の装甲へ、もう片方は右手に持つライフルへと突き刺さった。

 

 左肩は装甲が剝がれただけで、モニターの表示でも駆動モータの損傷は軽微だったが、それでもライフルを失ったグラスゴーは体勢を崩し、同時に高速移動の勢いを失う。

 そこへハーケンを収納したランスロットが一気に距離を詰めてきて、自身の背中の鞘に収納されていた西洋風の赤い剣を脇の下から抜刀し振り上げる。

メーザーバイブレーションソード(Maser Vibration blade)通称MVSというそれは、剣身を高速振動させて切れ味を上げる高周波ブレードだ。

 

 工夫などとは無縁の勢い任せの一撃。しかし自身の速度を乗せ、威力抑え目でも鉄をバターのように簡単に斬り裂いてしまう程切れ味抜群の一撃は生半可な工夫を凝らした一撃より遥かに恐ろしいものとなる。

 

 オレは即座に左腕部の籠手部分に装備されている発生器から緑色のシールド『ブレイズルミナス』を展開、押し出してランスロットの一撃を受ける。

 ナイトメアの動力源として使われる超電導物質レアメタル『サクラダイト』によって発生したエネルギー場の強大な反発力を利用し、物理攻撃を「捻じ曲げる」ことで辛うじて攻撃は防いだものの、ランスロットの剣戟の威力にオレの駆るグラスゴーはほとんど吹き飛ばされるように後ろへと下がった。

 

「っと」

 

 吹き飛ばされた衝撃に襲われながらも、操縦桿を操作してなんとか両足の着地に成功する。

 

「…本当に厄介だな」

 

 ユグドラシルドライブの搭載で得られる高出力のパワーと運動性能。

 基本構造は同じ人型ロボットで装備もライフルを除いて同じだというのに、第4世代機と第7世代機とでは雲泥の差がある。

 さらにそこに搭乗者であるスザクの高い操縦センスが加わることで圧倒的な力を発揮していく。

 始めから模擬戦なんてものが成立していないのだ。

 

「……弱い者いじめは勘弁してほしいな」

 

 モニターに映るランスロットはグラスゴーを追撃すべく、2本の剣を手に迫ってきていた。

 オレも背中の鞘から剣を1本抜き、両手で握って構えながら、ランスロットの猛撃から逃れるべく移動を開始した。

 

♢♢

 

「ランスロット、エナジー大幅に減少!稼働時間が残り10分と推定!」

「グラスゴー・カスタム、駆動モータに負荷発生!許容範囲内のため戦闘継続可能!」

 

 白熱を見せる2機の戦いを、少し離れた場所で観測している面々がいた。

 特派の技術スタッフ達がモニターに映る機体のデータを読み上げたり記録したりと忙しい中、スタッフとは別に静かに戦いを分析する、赤い軍服を着た三名がいた。

 

「…あれが特派が開発した試作嚮導兵器ランスロットか」

 

 3人のうちの1人、赤い軍服姿をした紫色の髪の女性はコーネリア・リ・ブリタニア。

 新しくエリア11の総督に就任した神聖ブリタニア帝国第2皇女。ユーフェミアの実姉にあたる。

 皇女でありながら最前線に立っており、高度な指揮能力とKMF操縦技術をもって、エリアの拡大や各地の反乱鎮圧と勝利を収めてきた帝国きっての女傑。他国からは「ブリタニアの魔女」と恐れられている。

 コーネリアの左右に控えている二人の男性は彼女の腹心の部下である。

 額に大きな傷がある厳つい外見が特徴の巨漢アンドレアス・ダールトン。コーネリアの元では参謀格を担っており、エリア11総督となった彼女に従ってエリア11の幕僚長の役職に就任。

 眼鏡をかけ、黒い長髪を後ろに纏め上げた紳士風の男性はギルバート・G・P・ギルフォード。コーネリアの専任騎士して、親衛隊隊長を務める。

 

「どう思うダールトン?」

「凄まじい運動性ですな。サザーランドどころか、グロースターすら比べ物にならない。次元そのものが違います」

「……ギルフォードは?」

「私の目から見ても出力の差は歴然としています。親衛隊が束になったところで正直勝てるかどうか…」

「並の乗り手なら数分も経たずして勝負がついているということか。だが……」

 

 三人の視線の先では、実戦に近い状態で動く2機が正面からぶつかっている。

 剣同士を組みあい鍔迫り合いにいくかと思われたが、ランスロットがパワーに物を言わせてグラスゴー・カスタムの剣を押し込む。グラスゴー・カスタムはパワーで敵わないことを分かっているとばかりに剣を引き、左右のランドスピナーを利用して左脚部を軸に右半身を後ろに流す。右腕部に握る剣の剣先をランスロットに向けたまま肘関節を曲げ、ランスロットが剣を振るい終わってから次の動作に入るまでの僅かな瞬間を狙うように突きを放った。

 だが運動性の高いランスロットは反射的に動くようにもう一本の剣でそれを防いだ。

 グラスゴー・カスタムの赤い剣先がランスロットの剣の腹と衝突し、火花が散る。

 

「カウンターを狙ったのか………」

「ほう。防ぐのではなく、流しながら次の攻撃を仕掛ける。力負けするなら技量でその分をカバー…上手いですな。しかし、何故剣を1本しか使わないのやら」

「確かMVSは使用すればエナジーを大幅に消費するという欠点があったために実用化が難航していたかと」

「成程。グラスゴーのエナジーの容量と消費具合を考えてのことか」

 

 ダールトンの言葉通り、第4世代の改造機であるグラスゴー・カスタムのサクラダイト使用量は第7世代機のランスロットに比べ少ない。そのためエナジーの容量で劣るグラスゴー・カスタムが威力は高くともエナジーの消費が激しいMVSを二本同時に使用すれば一気に稼働時間が短縮されてしまうのは必然。戦場の真っただ中でエナジー切れにより動きが止まってしまえば命取りになる。

 旧世代機がその諸刃の剣を使用するとなると一本が限界という欠点を抱えながらも、グラスゴーはランスロットが振るう2本の剣をギリギリ回避するか受け流すかで剣の直撃を避けている。

 それでもランスロットはその高い運動性により開始直後より優勢を保ち続けていた。

 

♢♢

 

 ランスロットの一挙手一投足を観察、分析してみたところ、フェイントの動作が一切ない。

 出力の差は歴然としているから、その有利を最大に生かす方法を取っているのだろう。

 単にスザク本人が脳筋なだけかもしれないが。

 なんにせよ、次の動きは読みやすい。

 

 下手に組み合ってはパワー負けが確定している。だが勝ち方はないことはない。

 旧日本時代の剣道では相手を『予測・読む』力は重要だった。

 『0.1秒』で面を打つ選手がいたとして、全員がそこまで速くないとしても、少なからず速い動きの中で、目で見て判断することには限界がある。目で見て「面に来た!」と思った時には打たれてしまうのだ。

 だが「面にくることを予測」していれば、その最速の面にも応じる事ができる。

 つまり、パワーやスピードが相手より劣っていたとしても相手に勝てない道理はない。

 

 また、どんなに強いパワーでも一直線ならば横合いからの力で軌道をずらすことが可能だ。

 的確な位置へ剣をぶつけ、ランスロットの剣を自身の機体から外せばいい。

 ランスロットが振るってくる2本の剣を一本の剣で対応するためのコツは握り方にある。

 剣道において、剣を持つ時の悪い例がバットを握るように両手とも間隔を空けずに握ることだ。これだと腕の振り幅+αしか剣は動かないし動きも読みやすい。片手で持つなら尚更だ

 剣を持つ時には右手を鍔に付け、左手は柄の端にかかるように柔らかく握る。

 右手を支点に、左手を力点にして剣を振る。

 人間が振るう場合、梃子の原理でわずか数センチ動かしただけで切っ先は数十センチから1メートルも動く。さらに腕や体捌きを加えることで剣は自在に変化し、切っ先の可動域を一平方メートル以上まで広がる。

 それを人間の何倍もの大きさがある人型ロボットであるナイトメアがやるとなると、剣を握る両腕部の幾つもの角度変化パターンを組み合わせて使用できるOSが必要になってくるが、あのマッドな開発者には一からそのOSを作成することなど朝飯前だったそうだ。

 

 オレは鞘からの抜きあげの形になるように、左腕の肘の折り目辺りに剣身を縦に乗せる。

 

ギャリィッ!

 

『なっ』

 

 振り下ろされたランスロットの剣とグラスゴーの剣が僅かに擦れると共に、ランスロットの剣の軌道が逸れてグラスゴーとすれ違った。

 一撃目を受け流すと同時に剣先を右上に回し、カウンターで袈裟に振り下ろす。

 そのまま一撃、と行きたかったが、ランスロットは反射的に動くようにブレイズルミナスでそれを防いだ。

 

『凄いよキヨナガ。まるで藤堂さんと相手しているみたいだ!』

「誰だそれ?」

『日本だった頃、枢木神社の麓の武道道場で一緒に教えを受けた人で、兄弟子に当たる人だったよ』

「だった、か」

 

 計器をちらりと確認すると、MVSの使用でエナジーの残量がかなり少なくなっていた。

 武器の起動にはナイトメアの動力エネルギーを使って発生させているため、あまり使いすぎれば稼働時間が一気に短くなり、エナジー切れで戦闘不能になるのは避けられないか。それは向こうも同じだが。

 

 まあ、今回の模擬戦は装備の実証試験が目的なのだから別に勝つ必要はない。

 一定の成果さえ出せればそれでいいのだ。

 

 押し返さる前にランドスピナーで後方に下がって大きく間合いを取ろうとするが、ランスロットはすぐに距離を詰めてきて空中でクルクル回転によるローリングキックを放ってきた。

 

「…そんなのありか」

 

 理不尽すぎる。

 すかさずブレイズルミナスを構えて防ぐが、衝撃の勢いをまともに受けた左腕部のフレームが歪み、砕けた装甲や内部の部品の欠片が飛び散る。

 

 左腕は深刻なダメージを受け、ろくに動かない状態だ。ランスロットの脚部は驚異的なことにこの衝撃を受けてもなお稼動しており、オレを横へと大きく吹き飛ばした。

 

 グラスゴーはその勢いに完全によろめいてしまい、完全に体勢を崩したところにランスロットが迫ってくる。オレはランスロットに向けてハーケンを射出するが、剣でいともたやすく切り伏せられた。

 

『これで終わりだ!キヨナガ!!』

 

 ランスロットが雄叫びと共にオレへと斬りかかる。

 グラスゴーにその攻撃を避ける術はなく、左腕の損傷によりブレイズルミナスによる防御もままならない。

 

 

 無防備のグラスゴーに振り上げられた剣が襲い掛からんとし――

 

 

――その剣は振り下ろされることなく、その場でランスロットが膝をつき、倒れていった。

 

 

「どうした?」

『あっ、うん…エナジー切れみたい』

「このタイミングで?」

 

 そりゃあエナジーを大幅に消費する装備を二本も同時に使えば稼働時間も大幅に短くなるのは当然か。

 しかし最後の最後で締まらないな。

 

『え、えっと…ランスロットエナジー残量ゼロにより機能停止。勝者、グラスゴー・カスタム』

 

 

♢♢

 

「…勝ったな」

「…第7世代機に勝ってしまわれましたな」

「…強力な装備の多用がかえって仇になったみたいですね」

 

 戦いが最高潮に達し、そして決着せんとした瞬間に訪れた、誰もが全く予想だにしない結末に、コーネリア達も何とも言えない空気になっていた。

 

「え、えっと…如何ですぅコーネリア皇女殿下?僕が作ったランスロットの戦いぶりは?」

 

 気まずい空気を壊そうとロイドがコーネリアに話しかけた。

 

「…まあ、最後のあれを除けば、貴公の言う通り凄まじい性能だな」

「でしょでしょ?」

「だが乗っているのはイレヴンだとか?」

「名誉ブリタニア人です。グラスゴー・カスタムの方に乗っているのも」

「聞いた話ではそのグラスゴーに乗っている方は最近まで収容所に入っていたとか?」

「はい。僕が彼を外に出しました。デヴァイサーとなることを条件に」

 

 あっけらかんとした態度で答えるロイドを切れ長の目で睨むコーネリア。

 

「……どうかしているぞ。試作機のデータを取るためとはいえ、犯罪者を使うとは」

「いいえ。彼は犯罪者ではありません。イレヴンにしてはとてもレアな才能を持っていたという理由で確保されていただけです」

「レアな才能?確かにナイトメアのパイロットとしての素養があるみたいだが…」

「いえいえ。彼にそんなものはないみたいですよ」

「?」

「彼の驚異的な強みは極めて高い吸収力で、勉強面や運動面で一度学んだ技術はすぐに自分の能力に昇華させることができて、基礎を学び終えたら今度は類稀な応用力を使い初めて触れるものに対処する技術も身につけ始めている程です。一例としては、シミュレーターでナイトメア操縦のコツを掴んだらたった数日で腕を上げた他に、大学レベルの研究分野を理解できるようになっています」

「…イレヴンがそんな才能を持っていると言うのか?俄かには信じられないな」

「事実ですよ。まあ、イレヴン以前にあれが人間なのかどうか怪しく感じる時が時々ありますが」

「…流石に言い過ぎではないか」

 

 へらへらしながら失礼なことを言うロイドを尻目に、コーネリアはグラスゴー・カスタムのコックピットから降りる少年をしばらく見据える。

 

「…兄上直属の機関に命令する立場にはない、が敢えて言わせてもらう。ナンバーズの手綱はしっかり握っておけ。なにか問題が起きた場合、全て貴公の責任になるのだからな」

「はい。肝に銘じておきます…あっ、ところで今度のサイタマゲットーでの作戦にランスロットを――」

「枢木を一等兵から准尉に特進させただけで満足せよ。ナンバーズに頼らずとも、私は勝ってみせる」

 

 

 それだけ言い残し、コーネリアはダールトンとギルフォードを連れてその場から立ち去った。

 

 

♢♢

 

「えー…それじゃあね。今回の実証試験における反省会を始めるよ」

 

 シンジュクゲットーから撤収した後、仮拠点としているアッシュフォード大学の格納庫で、特派の全スタッフ揃っての反省会が始まった。

 

「…なんだかロイドさん、模擬戦が終わってから元気無いですね」

「サイタマの作戦に同行できなかったから拗ねちゃってるのよ」

「はいそこ、私語は慎むように」

 

 ヒソヒソと話しているスザクとセシルさんを咎めてから、ロイドは本題に入る。

 

「まず今回の悪かった点…キヨナガ君が空気も読まず勝っちゃったことだね」

「ちょっと待った。なんでオレが悪いことになってるんですか」

「だって総督に僕の傑作とも言える嚮導兵器のランスロットを宣伝するチャンスだったのに台無しになっちゃったし…」

「知りませんよ。後先考えずに二本使ったスザクが悪い」

「うっ…ごめん。キヨナガが思ってたより強いからつい白熱しちゃって」

「あの…真面目な話、やっぱりランスロットと使う装備の燃費の悪さが問題なのでは?」

 

 スザクがしょんぼりと縮こまる中、セシルさんがまともな意見を言う。

 機体の高い出力と、燃費の悪い装備の多用による消費速度の増大が稼働時間の大幅な短縮につながるという問題が、今回の模擬戦の結果で浮き彫りになった。

 

「シンジュクゲットーの時みたいに敵を排除できるならまだしも、持久戦に持ち込まれたら正直致命的じゃないですか?」

「うっ…で、でも消費を抑えようにも、せっかくの運動性や威力を抑えたんじゃ実験にならないでしょ?」

 

 ロイドはこればっかりは譲れないと言わんばかりに、ランスロットのスペックダウンの案を頑なに拒否する姿勢に、セシル含むスタッフ全員が呆れてため息を吐いていた。

 

「…とするとエナジー貯蓄量の増量ですか……。エナジフィラーの改造はどうします?」

「そりゃあ専門家に頼むよ。幸いこっちでエナジーフィラーを軍に供給する企業の社長をやっているみたいだし…」

「ああ、彼女ですか。わかりました。後で連絡を取っておきますね」

 

 会話の内容からして、セシルさんとロイドが知っている女性に丸投げもとい依頼するようだ。

 

「さてと、取り敢えずランスロットの問題点は置いといて…今度はこっちの方もいこうか」

 

 整備台に設置されたグラスゴー・カスタムは、左腕部のフレームがひしゃげており、白い装甲表面が所々凹んでいたり擦り切れていたりとあまりにも痛々しかった。

 

「乗り手のキヨナガ君からなにか意見ない?」

「いや…「ちなみに実戦に出てもらうから」は?」

 

 今なんて言ったコイツ。

 

「データを多く取るなら実戦に出た方が効率いいでしょ?」

「…そんな話聞いてませんが?」

「そうだった?じゃあ今言ったから問題ないねぇ」

 

 大アリだ眼鏡。

 適当に答えたらこのままの状態で戦わなくちゃいけないってことだ。冗談じゃない。

 

「…もう少し機体に強度が欲しいですね。いくらブレイズルミナスの防御力が高くても、伝わってくる衝撃に機体が耐えられないんじゃそれこそ本末転倒でしょ」

「まあそうなんだけどさ…装甲を厚くしたら嵩張って関節の可動範囲を狭めてしまうよ?」

 

 まあそうか。いくら重装甲化で防御力が高くなっても、重くて嵩張る兵器は歓迎されるわけがない。

 応急処置ではなく、相当根本的な部分での対策が必要となる。

 

「では、フレーム自体の耐久性を上げれないのですか?」

 

 至ってシンプルな対策を述べたオレに全員の視線が集中する。

 

「どういう意味?」

「前にテレビでMR1の動きを観て思ったんですが、フレームだけの状態だと歩けばふらついたり、ハーケンを射出すれば反動でよろけちゃうくらいバランスが悪いんですよね。ひょっとして、グラスゴーは装甲も骨格の一部として機体を支える構造をとっているんですか?」

「そうだよ。自重のすべてを内部のフレームだけで支えることができないから、装甲材に自重を分散して外骨格構造の形で強度バランスを保っているんだ」

「がい、こっかく?」

「昆虫やカニの殻と同じ理屈だ」

 

 良くわかっていないスザクに補足説明しておいた。

 

「骨は動物の身体を支える基本構造で、骨にもさまざまあるが、カニの甲羅のような外から支えるものを外骨格、哺乳類などの骨のように内側から支えるものを内骨格という」

「へえ、じゃあ人間は骨で体を支えているから内骨格になるのか」

「!…ああ、成程」

「そういうことね」

 

 ロイドとセシルさんがオレの意図に気付いたようだ。

 

「つまりこう言いたいんでしょ?自重のすべてを内部のフレームで支える内骨格構造に変更すれば、機体の耐久性が上がるかもって」

「…そう言うことになるんでしょうか」

 

 ザワザワと、周囲のスタッフ全員が色濃い困惑を表情に乗せている。

 

「ナイトメアが“人の形をした”兵器なら中身の構造も人に似せようって話か。いやぁ、面白いこと思いつくね」

「オレはそこまで言ってませんよ」

 

 口にはしていないが、考えていることは当たっている。

 フレームを骨、各種電子機器の配線や動力パイプを人間の筋肉や血管に見立てて配置、装甲は外装として装着する形式だ。

 

 どのくらい耐久性が上がるか分からないが、まあマッドな開発者ならいとも簡単に――――

 

「それじゃあ構想設計はキヨナガ君が担当ということで」

 

 は?

 

「今なんて?」

「だから、その内骨格構造の構想設計はキヨナガ君に任せるって言ったんだよ」

「ちょっ、ロイドさん…!?」

「セシル君、こういうのは言い出しっぺがやらないと」

 

 言ってないが。

 

「だとしても、無茶ぶりがすぎますよ!」

「そこはほら、大人がしっかりサポートすればいいよ」

「…子供に無茶ぶりするアンタは大人じゃないのか?」

「あーあー聞こえなぁーい。それじゃあ来週までに最低一つお願いねぇ。反省会はこれで終わりィ」

「おい無視するな眼鏡」

「ロイドさん!」 

 

 マジかよ…。

 憎たらしい笑顔を浮かべながら、手をひらひらと振ってどこかへ去っていくロイドをセシルさんが追いかけていき、その場は気まずい空気を包まれる。

 

「えっと、頑張ってねキヨナガ」

 

 スザクが労いの言葉をくれたが、オレの気は全然晴れなかった。

 





グラスゴー・カスタムはシンジュクゲットーでの戦いで出たサザーランドやグラスゴーのジャンクパーツを流用したもの。
サザーランド・カスタムだとロスストのと被ってしまうので、名前をグラスゴーにしました。
ちなみにグラスゴーの頭はテロリスト側が使っていた紅い機体を利用という設定です。
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