コードギアス―謀略のキヨナガ   作:嫉妬憤怒強欲

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明けましておめでとうございます。
正月の間に令和版『銀○英○伝説』を見終えました。
世界観や人間ドラマがよくできていて滅茶苦茶面白かったです!
出てくる戦艦も『ブ○ュンヒル○』や『バル○○ッサ』、『ガン○ル○ァ』とカッコイイ名前がいっぱいで心躍りました。

見るのに夢中になって執筆が滞りましたが……


STAGE08「実地試験」

 河口湖のホテルジャック事件から二週間が経過し、シャーリー達にインタビューしようと学園の正門でたむろしていたマスコミも立ち去った頃、予定通りアーサーの歓迎会をやるとのことで朝一にクラブハウスに出向いたのだが……。

 

「ほら、スザク君そっちそっち!」

「馬鹿、やめろスザク!」

「ごめん、ルルーシュ…会長命令なんだ…!」

「顔が笑ってるだろ、おい!」

「動かないの!」

 

 なんか皆猫にちなんだコスプレをしていた。スザクとリヴァルは着ぐるみの様な格好、シャーリーとミレイ会長は身体の線が出るもの、ニーナは頭にかぶる程度とバラバラ。ルルーシュに至っては椅子に縛られメイクアップ中だ。

 ちなみにオレは執事服に猫耳カチューシャの組み合わせで妥協してもらった。

 

「えっと…」

「なに、これ…」

 

 登校してきたばかりの様で未だ制服姿のマーヤとカレンが生徒会室に入ってきてすぐ、今のこの状況に困惑していた。

 

「おはようにゃん」

「おは……ようございます。えっと、なに?これは?」

「あれ?言ってなかったっけ?アーサーの歓迎会」

「平和ですね」

「モラトリアムできるうちは楽しんでこうよ!」

「カレンとマーヤの分も用意してるから」

 

 二人の視線がハンガーラックにかけられている猫衣装に移る。

 

「え?」

「私達も着るんですか?」

「当たり前よ。ほら、キヨポンだってちゃんとコスプレしてるし」

「いやこの前の執事服に猫耳追加しただけじゃないですか」

「……執事服はある意味コスプレに含まれるので」

「そんなのあり?」

「なんかズルい」

 

 ズルくて結構。二人からジト目を向けられるが気にしない。

 

「カレンはいらないだろ」

「えっ」

「とっくに被ってるもんな?」

 

 ん?今のルルーシュの言葉、どういう意味なんだ?

 

「ふふっ、違いない」

「む……マーヤまで!ルルーシュこそテレビにでも出れば?人気者になれるわよ」

「どうですかテレビスターさん」

 

 テレビの人気者という言葉に反応し、リヴァルはシャーリーに話を振る。

 

「そういう冗談やめてよ!あの後大変だったんだから!」

 

 シャーリー達河口湖で助けられた面々は、学園内で他の生徒達に四六時中追い掛け回されて質問攻めされたようだ。

 

「皆……本当に無事でよかったよ…ぐすっ」

「なんだよスザク突然泣き出して。ここは笑うとこだろ」

「でも、そこがスザク君のいいとこよね」

「まあ、たまに空気読めって言いたくなるけどね」

「あっすみません」

「お前、それネタだろ」

 

 スザクが涙を流し出したのは無理もないか。

 オレ達がいたホテルが崩落する様を間近で見たのだからかなり肝を冷やしたのだろう。

 

「あっ、そういえばキヨポンも人気者になってるわよ?特に一部の女子の間で」

「そうそう。クラスの子に”クラブハウスによく出入りしてる執事さんだよね?どんな子か教えて!”って根掘り葉掘り聞かれたよ」

 

えっ

 

「オレが?なぜ?」

「そりゃああなたも事件の当事者なわけだし、新聞でもあげられてたでしょ?”軍職に就く若き名誉ブリタニア人、執事服に身を包み人質避難に尽力”って」

 

 あれか。

 黒の騎士団のデビューとなったホテルジャック事件で軍がなんの役にも立たなかったともなれば面子に傷がつく。イメージダウンを避けるため、政庁は不服ながらもたまたま居合わせた一応軍属のオレを功労者に仕立て、称賛することを選んだ。コーネリア総督が許可したのは意外だった。

 おまけに、人質となっていたサクラダイト分配会議の代表ジェームズ議長と握手している時のツーショットが新聞に載っているのだから凄く目立った。

 やり過ぎたか。顔を出して外を歩けないな。

 

「それほど大層なことしてませんが…」

「謙遜しすぎだって」

「でもあれはちょっとやり過ぎよ。”女子供に暴力を振るおうとするような奴を武士とは呼ばない。そう呼んで欲しければ腹を切るか新しい辞書でも作ることだな”とか」

「マジかよ。そんなこと言ったのか」

「記事に書いてあった”銃を突き付けられるも一歩も退かずテロリストの行動を批判”って、本当だったんだな……」

「まあだいたいは……」

「うへぇ、お前命知らずにもほどがあるだろ」

「一歩間違えれば死んでたわよ」

「そうですね。情けないことに危ないところをたまたまいたユーフェミア殿下に助けられましたし」

「そ、そんなこと……ない」

「ニーナ?」

 

 会議室の隅にいたニーナがいつになく大きな声ではっきり喋った。

 

「私のせいでミレイちゃん達も乱暴されそうになった時……キヨナガ、庇ってくれた。だから、その……えっと、情けなくなんか、ないっ……」

「はあ、どうも」

「で、でも……もうあんな無茶しないで欲しい…」

「そうだよ。見ていて生きた心地しなかったんだから!」

「私達を庇うためとはいえあれはやり過ぎよ」

「あっ、はい」

 

 心配せずとももうあんな柄にもないことはやるつもりはない。

 

「スザク…」

「ん?なんだい?」

「イレヴンだからってだけで…ずっと、怖がったりして…ごめんなさい」

「えっ」

 

 ニーナがスザクに向かって頭を下げる。

 

「まだ怖いけど、スザクとキヨナガが悪い人じゃないってこと…わかってるから。だから、その……ちゃ、ちゃんと友達としてやっていきたい」

「……うん。ありがとう。これからよろしく」

 

「……なんか、ニーナ少し変わったな」

「そうね。誰かさんのお陰かしら。ねえキヨポン?」

 

 ミレイ会長がニヤニヤしながらオレを見る。

 

「さあ、なんのことやら」

「とぼけちゃって。”どうせ味方するなら、見ず知らずの他人より、オレと普通に接してくれる友人の方が良い。キリッ”って、いやあお姉さん思わず感動しちゃったわ」

「うわあ、雰囲気に合わずキザなこと言うなお前…」

「キリッは言ってませんよ会長。勝手に捏造しないでください」

「あっ、前半のは正しいんだ」

 

 まだ少し怖がっているようだが、ニーナのオレやスザクに対する態度が少し変わった。どうやらオレの行動も無駄ではなかったようだ。

 

「ん?」

 

 ふと、ニーナのパソコン画面に映るものが目に入る。

 

 

 

 原子の結晶構造?

 

♢♢

 

 ハンガーにて、1機のナイトメアが組みあがっていた。

 といっても内部のフレームのみで、駆動モータやシリンダー、ナイトメア標準装備の球状オープンセンサーカメラ『ファクトスフィア』が頭部で剝き出しになっている。場所によっては電装機器や配線が露出している箇所もあった。

 全身のほとんどの箇所に外部ケーブルが繋がれ、胸部や手足の一部にわずかばかりの外装が装着されたその姿は、見るものに未完成と言う言葉を思い起こさせるものだった。

 

 その光景に眺めるプリン主任もといロイドが狂気的な笑みを浮かべていた。

 

「むふふふ、やっとここまで漕ぎ着けたよ……」

「…楽しそうだな」

「そりゃあ楽しいに決まってるよ。今までのとはまったく違う新しいナイトメアを自分達で作っているんだから。細かな部品を組み上げて少しずつ形にしていくこのワクワク感、わからない?」

 

 少なくとも、「うへへへへ」と今にも油がついている機体に頬擦りしそうな勢いにはついていけないな。

 技術者として新しい技術が形になることに至上の喜びを感じるのは別に問題ないが。

 

「……それで、今日は本格的な動作試験に入るのか?」

「あっうん。部分ごとの動作試験はもう終わったからね。今晩実地試験もかねてやるよ。お めぇでとぉう!」

「少し急すぎないか?スケジュール通りに進んでいるだろ」

「ほら、この前日本解放戦線がホテルジャックを起こしちゃったでしょ?あれでコーネリア総督もそろそろ動くだろうから、こっちも急いで仕上げちゃおうと思ってね」

「それ以前に総督が許可しなければ出番自体ないだろ」

 

 オレとしては出番がない方が大助かりだが。

 

「それで、実地テストはどこでやる?前に模擬戦をやったゲットーか?」

「いいや。租界内にあるコンテナふ頭でやるよ」

「コンテナふ頭?」

「もう使われていないところでね。障害物があって人の出入りが少ないところだからテストするのに最適だと思ってね」

 

 まあ確かに。真夜中なら誰にも見られない、迷惑をかけない場所としてもベストポジションなわけだ。

 

 点検を終えた試作機に頭部装甲やスラッシュハーケンなど、今できている一部のパーツを取り付けた後、ランスロットと共にトレーラーに乗せる。

 スザクが学園から戻ってきたところでトレーラーを発進させ、黄昏の街を移動して数時間後。錆びてボロい倉庫がいくつも建ち並んだ区域に到着した。

 試作機を外へと出すためにトレーラーの後部が開くと日は既に沈んでいて、辺りの景色は居住区の明かりが僅かしか届かない暗闇に溶けていた。

 

「……暗くて見えにくいな」

「だね。こういう人気のないところって、なんか幽霊とか出てきそうだよ」

「やめろスザク、縁起でもない」

 

 今回同行したスザクは試作機が不具合を起こして動かなくなったときに備えてトレーラーで待機となっている。

 この暗い中を今から一人で行くことになる人間にかける言葉ではない。

 

「幽霊じゃなくて黒の騎士団と鉢合せするかもしれないよぉ?」

 

 試作機の機体データをチェックしていたロイドが会話に加わってきた。

 

「ほら最近色々と活動しているみたいだしさぁ」

「あぁ」

 

 河口湖での宣言通り、弱者の味方として世間を騒がせていた。

 民間人を巻き込むテロ、横暴な軍隊、汚職政治家に営利主義の企業……法律では裁けない悪を次々と断罪していった。

 最近では政庁が行っているゲットーへの人道支援物資の横流しを暴露したとか。

 

「ネットじゃ黒の騎士団のことを”正義の味方”って称える書き込みが多いみたいだよ」

「正義の味方…ですか」

「ん?どうしたのスザク君」

「犯罪者を取り締まりたいなら、警察に入ればいいのに。彼らはどうしてそうしないんでしょうか?」

「そんなの僕に分かるわけないよ。ね、キヨナガ君はどう思う?」

 

 そこでオレに振るかプリン主任。

 

 まあこの際ロイドとスザクに説明しておいた方がいいか。変に隠して疑念を抱かれると後が面倒だし。

 

「ゼロがやってるのはそういう事じゃないと思うぞ?」

「じゃあどういうこと?」

「一種のプロパガンダのためだと思う。特にエリア11に住むイレヴン達に向けてのな」

「へぇ……」

「?どういう意味だい」

 

 ロイドはこれだけで察したみたいだが、スザクの方はまだわかっていないようだ。

 

「ゼロが粛清した連中は世間一般で言うところの”悪”。荒唐無稽な物語なら”正義”が”悪”を倒しハッピーエンドで終わるというのがお約束だ。人間誰しも正義というものに憧れるものだろ?」

「まあ…そうだね」

「ブリタニアに不満を持つ殆どのイレヴンが黒の騎士団の活躍を知ればこう捉える筈だ。”迫害と差別を肯定し、悪党を野放しにしているブリタニアこそ悪だ。悪党を粛清している黒の騎士団は正義の味方。黒の騎士団に加われば自分たちも正義の味方になれるし、日本を取り戻すことも夢じゃない”とな」

「えっ」

 

 ゼロは世間が注目する事件を利用して自己の力をアピールするのを好んでいる。悪党と呼ぶに相応しい連中を粛清し世間に暴露するという義賊紛いの行動もその一環なんだろう。

 今まで中立側だった連中も黒の騎士団の活躍に感化されて協力者や入団希望者が増えている頃だろうな。

 

 烏合の衆は、結束のために英雄を必要とするものだ。

 

「サイタマゲットーでの敗北から総督との組織力の差を思い知ったんだろう。だから今度は即席じゃなく自分の軍隊を作るのに専念しているに違いない」

「あはぁ、ゼロって随分と打算的な”正義の味方”だねぇ」

「そんな…それじゃあまるで日本人達を騙してるみたいじゃないか」

「ま、あくまでもオレの勝手な想像だ。奇天烈な恰好をした変人の実際の真意は違うのかもしれないぞ」

「……」

「奇天烈な変人って、はっきり言うね」

「だってあんな恰好変だろ。オレなら恥ずかしくて着れない」

 

 とは言ったものの、民衆の支持とそれによる戦力の増強以外の可能性は考えられない。

 打算無しに動く人間なんてそう多くはいない。

 ゼロという人物はとんでもない戦略家……と評価するのは早計か。

 これまでの活躍から、ゼロは頭が良くて応用力が高い人物なのがわかる。

 なのに、何故ゼロはクロヴィス前総督を殺した?

 すぐ傍まで近付けたのなら、人質として生かしておいてその間に戦力を整えるたり日本奪還の交渉材料にしたりと色々利用できたはずだ。

 警戒網を難なく突破できたのならクロヴィス一人くらいなら攫えるはずだ。だがそうしなかった。

 断罪するにしても相手は仮にも皇族だ。殺せばそれ相応の報復が返ってくるのは分かるはず……大胆さと巧妙さを合わせたゼロにしてはやることがいくらなんでも短絡的すぎる。

 それにコーネリアのあからさまな挑発にのってサイタマゲットーに現れたが見事に敗退。

 ゲットーにいるテロリストだけで勝てると高を括っていたと考えると、自己の能力を過大評価しているのかもしれない。

 

 弱点を突けば、意外と簡単に叩き潰せるかもしれないな。

 

「それはそうとキヨナガ君、そろそろテストを始めたいんだけど」

「ああ、わかった」

 

 ロイドに言われるまま、試作機のハッチを開いて操縦席へと乗り込む。

 

『んじゃあキヨナガ君、初期起動に入ろうか』

『初期起動、フェイズ20から始めます。エナジー・フィラー装着』

『プレスタート確認。エナジー・フィラー出力定格』

 

 インカムからセシルさんを含むスタッフたちの声が鼓膜に響く。

 エナジー・フィラーに貯蓄されたエネルギーがコクピットから動力源であるユグドラシルドライブへと伝播してゆく。

 一昔前のガソリン車と同じ理屈でエナジーという燃料を送られたエンジンに火がつき稼働を開始、サクラダイトを使用して作られたドライブの核であるコアルミナスが回転を始めた。 

 

『マンマシンインターフェースの確立を確認。ユグドラシルドライブ共鳴確認。拒絶反応微弱。デヴァイサーストレス反応微弱。すべて許容範囲内です』

『セカンドリコンファーム完了しました』

『全システムオールグリーン』

 

 駐機状態にあった機体が起動に入った。

 

『ようしキヨナガ君、まずは歩いてみて』

「了解」

 

 操縦桿を操作して前進を始める。

 同時にトレーラーから送られる映像でもゆらりと、一歩一歩と踏みしめるように金属の巨体が歩みを始めた。

 だがまだその動きは死者のように覚束なく、ゆっくりとしたものだ。

 

『動作差異の反映、OSによる制御の最適化を開始します』

 

 実際の動作から情報を反映し、機体を動かしながらも駆動の余計な動作を走査し、フィードバックで次々と修正を当ててゆく。

 数歩の歩みを刻む間に動きのぎこちなさは取れていき、人間の歩行のような滑らかなものになっていた。

 

『歩行動作に問題なし。姿勢制御と重心制御の機能にも問題なし』

『了解しました。歩行試験クリアとします。ではこれよりランドスピナーによる機動テストに移行します』

 

 向こうからの操作で、こっちのモニターにこの地区のマップと今回の走行コースが表示される。

 障害物となる倉庫の間を通り抜けながら一周してトレーラーに戻れということか。

 

『ランドスピナー、展開』

「ランドスピナー展開」

 

 脚部側面についている車輪(ホイール)を下ろし、タイヤ部をアスファルトに接地させる。

 

『ランドスピナー、展開確認。機動テスト、開始!』

 

 セシルさんの言葉を合図に、アクセルペダルを踏み込み発進した。

 キュイイイと高速回転するタイヤがアスファルトを擦る音を立てながら滑走する。

 

 速度はランスロット程ではないが、従来機の1.5倍だ。

 眼部と額部に並列したバイザー型のメインカメラの暗視モードが正常に機能しているおかげで、暗闇に包まれた景色がよく見え、シミュレータの時よりも速い速度で流れてゆく。

 直進から右折、左折と、入り組んだコースに従いながら、障害物にぶつかることなく倉庫の間の道をジグザグに走行する。

 

『ヒッグスコントロールシステム正常に作動。許容範囲内です』

『ここまではデータ通りだねぇ。よしそれじゃあこのまま―』

 

 パパパパパ

 

「ん?」

 

 ロイドの声を遮るように、突然集音マイクが銃声のような音を拾った。

 

「主任、今の聞こえたか?」

『うん。こっちも音を拾った。そっちで何が起こってるかわかる?』

「少し待ってくれ」

 

 操縦桿に付いているスイッチを押してファクトスフィアを起動させる。

 自動的に頭部の長距離通信アンテナがついたカバー上部とメインカメラがあるフェイス部それぞれの接続ジョイント部が可動し、鳥の嘴の様に上下にパックリと開いてランスロットにも使われている高精度のものが露出。即座に検知を開始した。

 

「……なぁ、このエリアの倉庫は誰も利用していないって言ってたよな?」

『そう聞いてるけど…』

「情報をそっちに送る」

『今取得したわ。でもこれって…』

 

 モニターのマップに検知した反応の位置情報が表示されている。

 一つの倉庫内に小さな反応が複数、中に二つ、外に七つナイトメアの反応があることから無人でないことは馬鹿でもわかる。小さいのは人間だろう。

 ついでにナイトメア反応の内七つからIFFの信号をキャッチした。

 

『なんで使われていない筈の場所に人が…』

『あのねスザク君、そんなの後ろめたいことをしているからに決まってるでしょ。あれ?』

「どうした?」

『こっちでIFFの信号を解析したんだけど、ナイトポリスのものみたいだね』

「ナイトポリス?」

『払い下げになったグラスゴーの改良型だよ。普段エリア担当の警察が使用しているんだけど…こんなところで何やってるんだろ?』

『この区画で警察の突入があるなんて話は聞いてませんが…』

『ちょっと待ってて。この区画で使われてる無線の周波数を警察のに合わせて…良し。向こうの通信が聞けるようにしたよ』

 

 早いな。

 

 ザザ…

 

『やっぱりリフレインの密売を潰しに来たか、黒の騎士団』

『待ち伏せして正解だったな』

『ナイトメアを持ってきたみたいだが、こっちに一機。中に一機だけか』

『数ではこっちが優位だ。簡単に叩き潰せる』

『軍の代わりに始末できれば俺達は表彰ものだな』

『馬鹿、お得意さんからここの倉庫のことは黙認しろって言われてるだろ?バレたらせっかくの小遣いが貰えなくなる』

 

 ん?これって

 

『黒の騎士団?リフレインって最近イレヴン達に回ってる麻薬のことかな?』

『今の会話…まさか警察が犯罪組織とグル?』

『そんな…』

 

 スピーカーから聞こえてくるスザクの声のトーンからして、かなりショックを受けてるようだ。

 人間が私利私欲にはしることは当然なため特に驚かないな。

 

『ウ~ン、面倒なところに鉢合わせしちゃったね』

「どうする?黒の騎士団も来てるみたいだが」

『どうしようかな~とりあえず巻き込まれる前にこっちに戻ってき―――』

 

 ザザ…

 

『おいちょっと待て。近くもう一機反応があるぞ!』

『連中の仲間か!?』

 

 えっ

 センサーマップを見ると、2つの反応がこっちに近づいてきていた。

 

「……見つかったみたいだ」

『あらら、これは不味いね』

『なに吞気にしてるんですかロイドさん!キヨナガ君、すぐにスザクくんをそっちに向かわせるわ。貴方はそれまで可能な限り逃げて』

「逃げるって、多分向こうは銃器を携帯してますよ?」

 

 試作機には標準装備であるランドスピナーとスラッシュハーケンが付いているだけで、スタントンファなどの格闘戦用の武装は装備していない。

 内部機器の保護のためのカバーと今できている外装を取り付けてあるが、フレームが露出している箇所もある。

 

『まあでもなんとかなるんじゃない?グラスゴーの改修機程度じゃ、キミが設計した機体に敵うわけないのは分かってるでしょ?』

「……まあ」

『ざぁんねんでしたぁ~戦闘データも取るいい機会がきたよ』

 

 緊張感が無いな。どれだけオレに信頼を置いているんだ。

 ロイドが『頑張ってねぇ~』と言い残して通信を切った瞬間、オレの目の前に白と青のツートンカラーにパトランプが装備されているグラスゴーが二機現れ、こちらにハンドガンの銃口を向けてきた。

 

 

♢♢

 

 最近トウキョウ租界内に“リフレイン”という違法薬物が日本人の間で出回っている話をゼロから聞いた。

 過去の幸せだった頃の記憶に浸れるという効果はあるが、中毒性や副作用もある麻薬。支配前の日本を懐古したい人々は格好の餌食だ。

 今はトウキョウ租界だけに蔓延しているけど、放っておけばいずれ日本中に広まる。

 そんなことになれば日本人は骨抜きにされてしまい、日本解放の夢が遠ざかってしまう。

 

 それを止めるため、私たち黒の騎士団は今夜、バイヤーの拠点であるコンテナふ頭の倉庫を襲撃することになった。

 

 拠点襲撃が始まる際、私は手筈通り青を基調としたグラスゴーのコピー機『無頼』に乗って外の警戒をしていると、ファクトスフィアでナイトメアの機動反応を検知した。

 

 まさかブリタニア軍が来た?

 

『百目木!聞こえるか!』

「ゼロ!丁度いい。倉庫外にナイトメア反応」

『やはりか。倉庫内にナイトポリスが待ち構えていた』

「ナイトポリス?」

 

 警察もグルってことなの!?

 

『中は紅月が戦闘中だ。外のはお前に任せる』

「…了解。一機たりともそっちには行かせない」

『頼む!』

 

 ゼロからの通信を切ってすぐに、メインカメラが複数のナイトポリスを捉えた。

 向こうもコッチに気付いたようで発砲してきた。

 

 警察が犯罪者と手を組むだなんて……

 

「やっぱりブリタニアは腐ってる!」

 

 私は応戦しながら、ファクトスフィアでナイトポリスの正確な数を確認する。

 反応は七つ。

 ビジネスの邪魔をしに来た私達を潰すつもりらしい。

 ナイトポリス単機の性能は無頼とそう変わらないけど、この数はキツイ。どうすれば……。

 

「ん?」

 

 おかしい。

 マップで二機が離れた場所にいる一機に向かっていく。

 そして、二機とも反応消失した。

 

「え?どういうこと?」

 

 コックピットブロックが二つ飛んでいったのが見えたことから、ファクトスフィアが壊れたわけではなさそうだ。

 

 ゼロから別動隊を用意しているとかの話は聞いていない。そもそも別動隊を作れるほど黒の騎士団はまだ大きくないはず…。

 ナイトポリスが仲間割れをしたとか?

 

 ナイトポリスが四機発砲しながら距離を詰めてくる中、マップで二機撃墜したと思しき反応がこっちに向かってきていた。

 徐々に近づいてきて、その姿が脇の道から出てくる。

 

「あれは…?」

 

 変わったナイトメアだった。

 シルエットはシンジュクや河口湖に現れたあの白兜に似てはいるが、メインカメラがデュアルアイではなく二重のバイザーで、フレームが露出している箇所がいくつもある。

 あまりの奇妙さにナイトポリスも動きを止めていた。

 

『こちらは軍の特殊部隊である。全ナイトポリスの搭乗者は直ちに機体から降りて降伏せよ』

 

 白兜とはまったく別の機体なんだろうと考えた時、白兜擬きの搭乗者がスピーカーでナイトポリスに向けて降伏勧告をしだした。

 軍の特殊部隊?

 

『お前たちが犯罪組織と繋がっていることは既に総督閣下の耳に入っている。降伏勧告に従わない場合、お前たちの処遇を保障しかねないぞ』

 

 コーネリアは既に警察の癒着に気づいていた?

 ゼロよりも先に?

 それにしても、この声どこかで…

 

『お、おい。どうするんだ!?軍にバレてるみたいだぞ!』

『落ち着け!あんなのハッタリに決まってる!軍がここのことを知ってるわけないだろ!』

『だがもし本当だったらどうする!?総督はあのコーネリア殿下だぞ!抵抗したら殺されちまう!』

『さっさと降伏した方が身のためだ!』

『馬鹿、よく見ろ!軍のナイトメアがあんなフレーム剥き出しで丸腰で来るなんておかしいだろ?』

『あっ』

『言われてみれば確かに…』

『黒の騎士団の奴が俺達を騙すためのハッタリに決まってる!やっちまえ!』

 

 ナイトポリス達が一斉に白兜擬きに向けて一斉掃射し始めた。対する白兜擬きは回避動作をするわけではなく、剥き出しのフレームを庇うように身を屈めて腕をクロスするだけだ。

 リボルバータイプのハンドガンから発射された弾丸が狙いを外さずに白兜擬きの装甲に当たる。

 

『なっ…』

『嘘だろ…』

『効いていない!?』

 

 信じられない…

 

 ナイトポリスが扱う暴徒鎮圧・対テロ用の装備のハンドガンでも、ナイトメアにダメージを与えるだけの威力はある。

 なのに、どれだけ当たっても白兜擬きは健在だった。

 

『……警告はした』

 

 

 

「…やっぱり撃ってきたか」

 

 予定通り、これで正当防衛が成立したな。

 

 2機のナイトポリスを撃墜し、降下予測地点の座標データをトレーラーに送った後、オレは残るナイトポリスに向けて降伏勧告をした。

 ファクトスフィアでもうこっちの存在を気付かれてしまった以上逃げ場はない。仮に逃げ切った場合、後で軍上層部から敵前逃亡などなんだの文句をつけられるリスクがあった。

 偶々埠頭で実証試験中に現場に居合わせてしまった事実は変える事ができない。

 後のためにも、オレはこの状況で上手く立ち回る必要がある。

 

 ロイド曰く、リフレインの蔓延の影響で生産ラインに支障が出ているとのことで、コーネリア総督は一刻も早く密売組織を潰したがってるそうだ。

 被害の殆どがイレヴンであることから、黒の騎士団も同じ組織を潰したがっている。

 つまり共通の敵だ。

 となると、オレができることは此処にいる汚職警官達を捕らえ、録音データと共に軍に引き渡すくらいだ。手柄は全部スザクにくれてやるが。

 

 未完成で殆ど丸腰の試験機が、降伏勧告したところで誰も軍の特殊部隊の機体とは思わない。

 だがオレはその心理を逆に利用し、汚職警官が降伏勧告を無視して軍の機体に発砲という既成事実を作りあげた。

 捕縛命令は嘘でも結果的に戦闘する口実ができてしまえば、後はどうとでもなる。

 

 加えて、従来機に比べて飛躍的に向上した防御力と耐久性を連中に見せつけて精神的動揺を与えてやった。

 

 

 後は連中を片付けるだけ。

 

「……警告はした」

 

 ランドスピナーによるローラーダッシュで一気に距離を詰める。

 

『速い!?』

 

 ナイトポリスが発砲してくるが、すぐにカチッカチッと音を鳴らして空撃ちとなる。

 連中が使っているハンドガンはリボルバータイプ。マガジンタイプより装填できる弾の数が少なく、再装填にも時間がかかるものだ。

 

 一機目が次のアクションを行うよりも先に、試作機の左腕に装備されたスラッシュハーケンを射出させる。

 

『モニターが!?』

 

 頭部に直撃させ、怯んだところにハーケンのワイヤーを巻き取っていく。距離を詰めながらこっちに引き寄せていき、ゼロ距離のところでがら空きの胴体に右ストレートを打ち込んだ。

 

『ぐああー!!』

 

 ボシュッ!

 

 胴体が大きくひしゃげたのを機に脱出装置が作動し、ナイトポリスのコックピットブロックが飛び去っていった。

 

「まずは一機」

『こいつぅ!』

「ん?」

 

 ライオットシールド状の盾を構えたニ機目がハンドガンを放り捨て、ナイフに持ち替えて迫ってきた。

 残骸からハーケンを引き抜き後退する。距離を取れば、予想通り距離を詰めようと追いかけてくる。

 

 倉庫と倉庫の間にある、ナイトメア一機分はギリギリ入れる隙間まで後退したところで、

両方の壁面にランドスピナーをつっかえ棒のようにくっつけ、そのままローラーを高速回転させることで手を使わずに駆け上がっていく。

 一番上に上がったら屋根を大きく蹴り、追ってきた二機目に向けて飛び降りる。

 

『なぁっ――』

 

 盾で防御を取ってくるが意味がない。

 

 グシャッ

 

 上からくる機体の質量に盾を持っていた方の腕は耐えられずにひしゃげ、そのまま盾の下敷きになる。

 コックピットブロックは軽く凹む程度で脱出機構が働いていないが生きてはいるだろう。多分。

 これで残り二機。

 

『何なんだよコイツは!?』

『まさか本当に軍のナイトメアなんじゃ!?』

 

 踏んづけていた盾を手に取り、さっきから発砲してきている三機目に向かって突進する。

 盾を押し出したこっちに対して向こうも盾を構え、激突する。

 そのまま前進しようとすれば向こうも押し返そうとランドスピナーを稼働させている。

 同じグラスゴー同士ならここで拮抗状態になるだろうが、生憎こっちの機体の運動性の方が高い。

 抵抗もむなしく、三機目はアスファルトに摩擦による火花を散らせながら押し返されていく。

 

『くそう!』

 

 三機目を押していく中、四機目が左側面からナイフを振り上げて迫ってきた。

 位置からして直接コックピットを潰しに来たか。

 

 なら押すのはやめて、三機目の右側面に回り込む。

 

『うおっ!?』 

 

 突然押し返す力がなくなって前に出てしまった三機目が盾になり、オレの代わりに四機目のナイフに刺された。コックピットは避けて頭部の方に刺さったが。

 

『ば、馬鹿!俺に攻撃してどうする!』 

『わ、悪い…』

『それより早く――』

 

 四機目がナイフを抜くよりも先に攻撃する。

 

 

 

 

 残骸からハーケンを抜こうとワイヤーを巻き取ろうとしたとき、左側面から二機目がライオットシールド状の盾を構えたまま迫ってきていた。

 

 分かりやすいな。

 

 ランドスピナーの左右の車輪を互いに逆方向に等速回転させて超信地旋回をする。回転でジャイロ効果が発生する瞬間に右脚を上げて三機目にぶつける。

 

『『ぐあああああ――!!』』

 

 回転蹴りを受けた三機目は四機目を巻き込んで大きく吹き飛んで転倒した。

 

 

 三機目は脱出装置で飛び去ったが、下敷きになった四機目の方は地面すれすれの状態で飛び、倉庫の壁に激突してクラッシュした。

 

 

『キヨナガ!無事かい!?』

 

 ナイトポリスを制圧したところで、スザクの乗るランスロットがやってきた。

 

「こっちは終わった。そっちは?」

『ああ、うん。例のポイントの近くにいた警官は拘束してトレーラーに運んだ。ここのことはロイドさんがもう軍に伝えてる』

 

 上出来だ。スザクが汚職警官を確保したという既成事実ができた。

 

『黒の騎士団は?』

「ん?ああ……」

 

 周囲を見渡すが、既にあの青いグラスゴーの姿は消えていた。

 

「…逃げられたみたいだな」

 

 倉庫にいた他の連中も既に撤収してるだろうな。

 ……ま、別にいいか。

 

「それより、残った汚職警官達と倉庫にいる密売人を確保した方がいいんじゃないか?」

『えっ、でもゼロを捕まえないと―――』

「今はリフレインの摘発が優先だ。このまま放置して大勢のイレヴンが廃人になるのは避けたい。そうだろ?」

『あっうん……そうだね』

 

 どうもスザクは黒の騎士団、特にゼロをどこか敵視してる節が見られるな。

 変に執着し続ければ、いつか痛い目を見ることもある。

 

 その時、今のスザクは果たして心の平衡を保てるだろうか?

 

 

――――ま、壊れてしまうのならコイツもその程度ってことか。

 

 





??「ユーフェミアを助けた奴らに、民衆はなぜ協力する?」
??「キョウトまで黒の騎士団に、紅蓮弐式を回すと言ってきた」
??「あんな義賊気取りに?」
??「奴らはレジスタンスじゃない。その証拠に草壁中佐を殺している」
?「中佐は自決されたのだろ?」
??「止めなかったという噂もある。藤堂中佐、いずれにしろこのままでは――――」
藤堂「……」
??「中佐?」
藤堂「ん?ああ、すまない。考え事をしていた」
??「新聞なんか見たまま浮かない顔をされてますがどうされたのです?」
藤堂「いや、大したことない」



藤堂「(人質救出に尽力したと挙げられているこの少年……以前どこかで見た気が――――)」

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