コードギアス―謀略のキヨナガ   作:嫉妬憤怒強欲

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やっと第6章に入れました。
ロスストで雨が降っていた時狂犬ちゃんが傘を持っていたかの描写がなかった為、持っていなかったという方向で書きました。


STAGE09「雨に打たれる少女」

「情報にあった売人の各拠点の制圧は着々と進んでおります」

「責任者達の方は?」

「殆どは身柄を拘束済みです。ナイトポリスで抵抗した者はグロースターで即座に無力化しました。逃亡した者も確保にそう時間は掛からないでしょう」

「そうか。ご苦労…」

 

 ダールトンからの報告を聞いた後も、思わずふうとため息を吐いてしまう。

 今回黒の騎士団が世間に暴露した情報はエリア11に衝撃を与えた。

 麻薬の密売に警察が関与していたというスキャンダルにメディアは大きく騒いだ。

 統治者としての義務を果たすため、残る売人の拠点と汚職警官達の一掃とマスコミへの対応に追われることとなった。

 

「……まさかテロリストの前に身内を相手する羽目になるとはな」

「エリアの治安維持に従ずると誓った者が目先の欲に奔り、自ら治安を乱したのです。生産性を落とす原因となった代物ともなれば、致し方ないかと」

「それもそうだが…問題は奴らの方だ」

「黒の騎士団ですね……」

 

 特派から提供された情報と投降した汚職警官達の証言のおかげ(不本意だが)で、密売に関与していた他の警官達を芋づる式に一斉検挙できたのはいいが、既に黒の騎士団が暴露した後だった。

 

 民衆の支持はゼロに傾きつつある。

 警察の腐敗が奴らの正当性をより高めるのに拍車かけただろう。

 

 エリア11の総督に就任してからどんどん悪い方向に進んでいる気がするな。

 

「お疲れでしょう姫様。どうぞ、疲労回復に効く紅茶です」

「ああ……すまないなギルフォード」

「いえ、姫様の騎士として当然です」

 

 我が騎士ギルフォードに心配されるとは、顔に出てしまってたか。総督として上に立っているというのにいかんなこれでは。

 

 リフレイン騒動に一区切りがつけば次にやらなければいけないことがある。

 

 

「……それで、日本解放戦線の拠点の位置が判明したというのは確かか?」

 

 

♢♢

 

「え~それじゃあお堅い形式は無しで、新型試験機の完成と予算ゲットを祝って!」

『かんぱぁ~い!』

 

 ふ頭での不幸な巡り合わせ(ふ頭での戦闘)から数日後。

 その日は特派のスタッフ全員参加で、当日貸切にした高そうな店を舞台に宴会が開催された。

 いつもロイドに振り回されているスタッフ一同、ビールの入ったジョッキを片手にお祭り騒ぎ。特に主任補佐のセシルさんは酒が結構進んでいて、周りに空のジョッキがいっぱいあった。

 勿論未成年であるオレとスザクはノンアルコールのジュースである。

 

「いやあ、二人共大手柄だったよ。キミたちが例の警官達を捕まえたおかげでコーネリア総督は他の売人の拠点を摘発することができたから、いくらか予算を貰えることになったよ。良いデータも取れたし良いことづくめだね!」

 

 酔いが回ったのか、顔を真っ赤にしたロイドがオレ達に絡んできた。酒臭い。

 オレが乗る試験機が一通り完成したのもあるが、こっちが捕まえた汚職警官達を生きたままコーネリア軍に引き渡したことが大きかったようで、少しだが特派の予算が増えたことにロイドは大喜びだ。

 

「そういえば、なんかナイトポリスを撃破したことも僕がやったことになってたみたいですけど…」

「あれ?キヨナガ君から聞いてないの?彼、今回の件スザク君が対処したことにして欲しいって僕に頼んだんだよ」

「えっ」

 

 オレは今回の手柄を全てスザクに譲ることにした。

 別に手柄に興味はないしこれ以上目立つのは勘弁だったため、眼鏡に頼んで報告内容を少し改竄して貰った。

 ただでさえ新聞のせいで外を出歩きにくかったし。

 

「そんな、悪いよ。なんかズルをした感じだし……」

「ズルもへったくれもない。上の連中に認めてもらいたいなら、この際いいとこ取りをすることも考えろ。人の厚意で譲られたモノなら尚更な」

「そう、かもしれないけど……」

「お前にはなにか成し遂げたいことがあるんだろ?内容は知らないが、変に遠慮してせっかくのチャンスを逃すなんて勿体ないことするな」

「えっと、わかった。なんかごめん……じゃなかった。ありがとうキヨナガ」

「そうそう。そんな感じでどんどんいいとこ取りしちゃってぇ。スザク君が認められれば僕のランスロットも認められて、特派の予算が増えることに繋がるならいいねぇ~」

「…欲が駄々洩れですねロイドさん」

 

 酒が入っても入らなくても言動に問題があるのは変わらないなこのマッドサイエンティストは。

 

「あっ、そうだキヨナガ君。キミが乗る試験機だけどさ、名前とかもう決めてる?」

「名前?グラスゴー・カスタム改とかでいいんじゃないか?」

「いやいや。あれもうグラスゴーとかサザーランドとはまったく別物だよ。外来種だね外来種」

 

 外来種って、確かに構造が違うが…いや、考えたのがイレヴンだからという理由もあるか。

 

「型式番号はE-01で決まったけど、機体名の方は作った本人がつけてあげた方がいいと思ってね」

「実際に作ったのはスタッフ全員だろ?」

「開発と組み立てはね。でもあそこまでの構想を練ったのはキヨナガ君だよ。しかもたったの一週間で」

「誰かさんに急かされたからな…」

「そうだけどさ……僕が言うのもなんだけど、本当は凄いことなんだよ?勉強したんだから知ってると思うけど、ひとつの完成形であるグラスゴーに至るまで、何人ものブリタニアの天才が関わって作られたんだ。基礎を掴んだだけで全く新しいナイトメアをここまでの短期間で形にしちゃうなんて並の天才じゃ不可能なことなんだよ。やばいね」

 

 そんな大げさな…。

 

「そうなんですか。キヨナガは凄いな」

「……ちなみにどれくらいヤバいんだ?」

「本国にいるナイトメアフレーム開発者達が嫉妬に狂っちゃうくらいじゃないかなぁ。おぉめでとぉう~」

 

 マジかよ。オレはただ自分の身を護るためにやっただけなのに、余計なやっかみは勘弁だ。

 

「まあなんにせよ名前の方考えておいて。思いつかなかったら僕の方でもカッコイイのを考えてみるけど…」

「…わかった。考えておく」

 

 後になって後悔するような変な名前を付けないようにしなきゃな。

 

「それはそうと主任、あれ止めなくて良いのか?」

「ん?あれって?……うえぇ!?」

 

 オレが視線を向けた先で、主任補佐のセシルさんがスタッフ達になにかのドリンクを飲ませており、殆どが顔を青くさせて次々と倒れていた。

 

「く、口から泡を吹いているよ…」

「…ひょっとして飲ませてる飲み物って自作、なんじゃ?」

 

 あり得る。

 いつも差し入れのおにぎりの具にブルーベリージャムを使ったりとか料理のセンスが独特過ぎるからな。

宴会の席に自作のを持ち込んできたのか?この場で速攻でブレンドしたのならもはや天才の域だ。

 

「…あんたの補佐が酔って盛大にやらかしてるぞ。どうする?」

「どうするって、あの空間に入ったら飲まされそうなんだけど…」

 

 巻き込まれるの嫌だなって言ってるが一応上司だよなアンタ?

 このまま放置して特派が謎の飲み物によって壊滅なんて洒落にならない。

というかこっちにまで飛び火するのは勘弁だ。

 

「とりあえずセシルさんを何とかして止めるぞ」

「何とかって、どうにかできるのかい?」

 

 酒の席だからできる方法と言えば一つしかない。

 

「もっと強い酒を飲ませて酔い潰すしかない」

「えっ!?大丈夫なのそれ?」

「祝いの席でちょっとはしゃいじゃったな程度の笑い話で済めば問題ないだろ」

「そうだね。この際記憶が飛んじゃうレベルのを飲ませようか。財布は僕持ちでいいから」

「ろ、ロイドさんまで…」

 

 主任の許可が下り、生き残っているスタッフ総動員で作戦を決行した。

 

「ほらほらセシル君。皆に勧めるのも良いけど、キミも飲まないと」

「主任の言う通りですよ。今日は無礼講ですから」

「ほら!グイッといっちゃってください」

「あらそう?それじゃあ遠慮なく」

 

 ロイド達が追加注文できた滅茶苦茶アルコール度が高い酒をセシルさんに勧めている隙に、オレがこっそりと危険なドリンクを回収し、トイレに流す。

 シンクが少し溶けたのには流石に驚いたが、とにかくこれで危険物の処理は完了だ。

 

 宴会場に戻ると酔い潰れたのか、危険物の制作者は顔を真っ赤にした状態でテーブルに突っ伏していた。

 

「ふう、あっお疲れ。こっちは五杯でやっと潰れたよ」

「五杯って…」

「えっとロイドさん…セシルさんは大丈夫なんですか?」

「ああ彼女なら平気だよ。大学時代からこのくらい二日酔い程度で済んでたし」

 

 ええ…。

 何はともあれ、なんとかセシルさんの無力化に成功し、特派の壊滅は無事回避できた。

 とはいえ何人かのスタッフに被害が出たことで、この日の宴会は少し早めのお開きとなった。

 

♢♢

 

 トレーラーで大学に戻る帰り道、外は天気予報通り雨が降っていた。

 

 大人が全員酒を飲んで酔い潰れていたため、幸い運転免許を持っていたスザクにトレーラーの運転を任せ、しばらく窓越しに外を眺めていると、広場にある噴水の傍に人影が見えた。

 誰かを待っているようだがこの雨の中傘を指しておらず、花束を持ったまま佇む女性に見覚えがあった。

 

「スザク、停めろ」

「えっ、どうして」

「いいから」

「わ、わかった」

 

 停車してすぐトレーラーから降り、傘を差して噴水の方へ駆ける。

 待つのを諦めたのか、花束を地面に投げ捨てて公園から立ち去ろうとしていたがなんとか間に合った。

 オレが走るたびに立つバシャバシャと水溜りを弾く音に気付いたようで、女性はこちらを振り向いた。

 

「えっ…キヨ、ナガ?」

「…どうも」

 

 思っていた通り、雨に打たれる女性はアッシュフォード学園の生徒で生徒会のメンバーでもあるマーヤだった。

 

「どうしてここに…」

「それはこっちの台詞ですが…それよりも風邪、引きますよ」

 

 取り敢えずマーヤに傘を差し出す。

 濡れた長い黒髪が顔に張り付き、彼女の頬を伝って流れる雨水が涙の様にも見えた。

 

「…えっと、取り敢えず家に送りましょうか?」

「………帰りたくない」

 

 ……事情は分からないが重傷だな。身体の方ではなく精神の方が。

 どうしたものか。

 

 そのまま放置しておくわけにはいかないため、とりあえずトレーラーに乗せて大学の宿舎に連れてくことに。

 風邪を引かないようシャワーで温まってもらっている間に、オレとスザクはロイドといつの間にか復活していたセシルさんに事情を説明していた。

 

「そう、学校のお友達なの…」

「すみません勝手なことを」

「気にしなくていいわ。こんな雨の中女の子を一人にするわけにもいかないし」

「それにしても女の子を連れ込むなんて、いやぁキヨナガ君草食系に見えて大胆だね」

「誤解を生むような発言はやめろプリン」

「…ねぇ、最近僕に対して辛辣じゃない?」

 

 何を今さら。

 しばらくしてシャワーを終えたマーヤが部屋から出てきた。

 温まったばかりで頬が赤く火照っており、オレが貸した替えの服もサイズが違うため手首・足首の部分が袖や裾で隠れていたりと、学校で会う時と少し印象が違くてなんか新鮮だ。

 

「着心地はどうですか?」

「うん、問題ないよ。服を貸してくれてありがとう……えっと、この人達は?」

「ああ、紹介するよ。二人は軍の人で、僕らがいる技術部主任のロイドさんと補佐のセシルさん」

「どうもぉ。スザク君とキヨナガ君の上司だよぉ」

「あっどうもマーヤ・ディゼルです……あれ?でもここってアッシュフォード学園の大学部だよね?」

「あはは…まあちょっと、ね」

 

 まあそうなるよな。軍の人間がアッシュフォード学園大学部に仮住まいしてるなんて誰も思わない。

 

「それで、マーヤはどうしてあの公園にいたの?」

 

 スザクの直球の質問に、マーヤは顔を曇らせながらも口を開く。

 

「その、今日は久しぶりに家族と食事に行くことになったの。今までの感謝を伝えようと花束を用意して。だけど……」

「時間になっても来なかったってこと?それすっぽかされたんじゃもがぁ!?」

 

 余計なことを言おうとしたロイドの口をセシルさんが塞いだ。

 

「…きっと仕事で何かトラブルがあったんだと思う。クラリスさんはいつも忙しいから」

 

 ん?

 

「「「クラリスさん?」」」

 

「えっと、確認だけどマーヤ君。ひょっとしてそのクラリスさんってクラリス・ガーフィールド君のこと?金髪で童顔で眼鏡かけた女性の」

「えっ、どうして知っているんですか?」

「彼女、僕のアカデミー時代の後輩なんだよ。というかこの前エナジーフィラーの件で来てもらったし」

「ええ!?」

 

 こんなことってあるのか。凄い偶然だ。

 

「そっか、クラリス君の言っていた恩師の娘ってキミのことだったんだね」

「私も驚きました。クラリスさんが言っていた……えっと、プリン先輩って貴方だったんですね」

 

 少し躊躇ったあたり、きっと人でなしだのなんだの言ってたんだろうな。

 

「それじゃあ、全く新しいナイトメアを設計しちゃうくらい頭のいい日本人の男の子ってキヨナガのことだったんだ……」

「…そこで真っ先にオレだって察するのか」

「あ、あはは。日本人は僕たち二人だけだしね」

 

 スザクは特に頭が良いとは言えないから、暗に消去法でオレだと思ったのかもしれない。というかクラリスさん喋りすぎだろ。とりあえずそれに関してはひとまず置いておいて話を元に戻そう。

 

「……それで、この後はどうするんですか?」

「この後って……」

「質問を変えます。この後、貴女はまっすぐ家に帰るつもりですか?」

「……っ」

 

 オレからの問いに、マーヤはなにも答えずに目を逸らした。

 

「……ひょっとして、クラリスさんとは上手くいっていないのですか?」

「…!どうして」

「遅れている理由を理解しているのに用意した花束を投げ捨てたというのに引っかかってなんとなく。違ったら謝りますが」

「……ううん、合ってる。私が一方的にクラリスさんを避けてたの」

 

 なんでも友達が母親との問題に向き合ってるのを見て自分もクラリスさんに向き合おうと決心したのはいいが。

 

「でも、私は失望してしまった。歩み寄ろうとした気持ちを裏切られたと思ってしまった。私は、クラリスさんが私の気持ちを裏切ったって言い訳にして、向き合うことから逃げてしまったの……」

 

 成程な。その上クラリスさんが悪いと考えてしまったという罪悪感で家に帰り辛くなってる状態か。相当重傷だな。

 

「……セシルさん、確かここの宿舎はまだ空き部屋がありましたよね?」

「え?ええ。キヨナガ君の部屋の隣が…」

「まさかキヨナガ、彼女をここに泊める気なのかい?」

「えっ?そんな…悪いよ」

「このまま放っておくわけにはいかないので」

 

 今頭の中を巡っているであろう後悔や罪悪感に踏ん切りをつけるにしても休む場所が必要だ。

 見送ってもちゃんと家に帰るとは限らないし、無理矢理引き合わせようとすれば余計こじれるのは目に見えている。

 これに関して他人が強制するわけにはいかない。

 気持ちの整理がつき、もう一度クラリスさんに歩み寄るか否か決めるのはそれからだ。

 

「うーん…でもここ一応軍の施設になってるから、いくらクラリス君の娘でも、部外者に機密情報とか見られるのはまずいと思うけど…?」

「機密情報があるのは技術スタッフの個室と格納庫だ。そこに近づかないよう制限をかければギリギリ問題ないだろ。というかここで放っておいたらクラリスさんにぶん殴られるかもしれないぞ」

「そ、それは嫌だな…確かに宿舎までならギリギリ問題ないね。うん、そういうことにしておこう」

「セシルさんはどう思います?」

「…そうね。女の子が出歩くにはもう遅い時間帯だし、今夜だけでも泊まっていって」

「でもご迷惑なんじゃ…」

「迷惑だなんて思わないわ。それにクラリスさんの娘さんなら尚更放ってはおけないし」

 

 よし、ロイドとセシルさんの説得に成功した。

 

「上司の了承は得られました。後は本人の意思次第ですが、どうします?別に嫌だったら明日出て行っても構いません。そこまで強制する権利はこっちにはありませんし」

「……」

 

 マーヤは暫く考え込む。

 

「わかった…それじゃあ、お言葉に甘えさせていただくね亅

 

 

 その後、スザクと二人がかりでマーヤが泊まる部屋も準備を行った。と言っても空き部屋だった隣室の掃除をしたり、予備の布団や枕などの寝具を貸したりだが。

 

「こんなところかな……」

「ごめんね、部屋の用意までさせちゃって…」

「これくらいお安い御用だよ。何かあれば僕かキヨナガ、セシルさんに言ってくれればいいよ」

「わかった…」

「それじゃあおやすみ」

「うん、おやすみスザク」

 

 挨拶してすぐスザクは自室へと戻った。

 

「では、おやすみなさい」

「キヨナガ…」

「はい?」

 

 オレも自分の部屋に戻ろうとしたとき、マーヤに呼び止められた。

 

「ありがとう。その、色々と………それだけ」

 

 最後に「おやすみなさい」と言ってマーヤは隣の部屋へと引っ込んでいった。

 

♢♢

 

 姉小路清永……不思議な男の子だ。

 スザクと同じ部署に所属している日本人。

 初めて会った時は自己紹介が下手であまり社交的ではなさそうという印象だったけど、最近はそう思わなくなった。

 

 河口湖でのホテルジャック事件で会長達を庇うために日本解放戦線を挑発・論破したこと。

 私より二歳年下なのにクラリスさん曰くナイトメアの設計ができちゃうくらい頭が良いこと。

 執事姿がとても様になっていること。

 少しずつではあるけど、キヨナガの意外な一面が浮き彫りになってきている気がする。

 

 もし学園に通っていればきっと女の子たちにモテるだろうな。

 

 雨で濡れた私に服を貸してくれたり泊まる部屋を用意してくれたりと優しいところがあるし。

 そう言えばクラスの子が自分の服を女性に貸すのは本命以外にはしないって言ってたよう、な……

 

「いやいやいやいやいやいや…」

 

 キヨナガが?私のことを?

 ないない流石にそれはないって。

 そんなドラマみたいなベタなこと…。

 これ以上は変なこと考えるのをやめよう。

 

「もう寝よう…」

 

 私は布団の中に入って目を閉じる。

 いつもより早い時間帯だけど、そのまま眠りにつけた。

 

 

◇◇

 

 翌朝、マーヤの姿はなかった。

 部屋にお礼が書かれた書き置きと貸した服が綺麗に畳まれて置かれていたことから自分の意志で出ていったのだろう。

 セシルさんがクラリスさんに連絡したのを察知したのかもしれない。

 朝イチに宿舎に来たクラリスさんが「私は本当に駄目な母親だ…」と泣き崩れてしまい、落ち着くまでしばらく介抱することになって大変だった。

 その後はなにを勘違いしたのかロイドが「振られちゃったね。残念でしたぁ」とニヤニヤ気味の悪い笑顔を浮かべたり、話を聞いた二日酔い状態のスタッフ達から「まあ元気出せ」と慰められたりと面倒くさかった。

 まあ別に行方不明になっている訳では無い。

 学園には普段通り来ているようで、生徒会(クラブハウス)にもちゃんと顔を出していた。

 なんか時々オレにチラチラと視線を向けてきたが、きっとオレがクラリスさんに密告してないか気になっているのだろう。

 

「なあなあ、週末って空いてる?」

「こらリヴァル、口じゃなくて手を動かせ。なんのために昼休みまで使って作業していると思っているんだ」

「確かに、この作業量は尋常じゃない…」

 

 現在オレは生徒会の書類処理の手伝いをしていた。

 いつも通り放課後の時間帯にクラブハウスに来てみると、待ってましたと言わんばかりの笑顔を向けてくる生徒会役員たち、そして天井にまで届きそうなぐらいの高さはある書類の束が待ち構えていた。

 回れ右をして退散しようとすると、「お願いだキヨナガ!今回だけでいい。僕たちに力を貸してくれ!」と全員に懇願され、仕方なく手伝うことになった。

 

「どうして、こうなるまで放っておいたんです会長」

「…せめてもう1日早く思い出してくださいよ」

「メンゴメンゴ。ちょい~っと忘れてて」

「ちょい~のレベルじゃないですけどね」

「あはは…」

 

 カレンとシャーリーが口を尖らせながら文句を垂れると、流石の会長も苦笑いで誤魔化すしかないようだった。

 いつもこんな感じなのか。

 

「だからさ、開き直って遊びに行こうと思ってさ」

「却下だ。生憎週末は予定が入っていてな」

「私も」

「同じく」

「私も研究があるから…」

「私もパス、かな。週末は寮から出ないようにしてるし…」

 

 リヴァルの提案にルルーシュ、マーヤ、カレン、ニーナ、シャーリーは却下する。特にシャーリーはホテルジャック事件の一件で父親が過保護になっているとのことだ。

 

「スザクとキヨナガは?」

「ごめん。僕たちはその日軍の仕事が入ってて…」

 

 そう。週末に起こる軍の作戦に同行できるようロイドが手を回したのだ。

 詳しい内容はまだ聞いていない。後で聞いておくか。

 

「え~。じゃあ、みんな駄目なのかよ。だったら、ミレイ会長が責任をとって、俺とデ、デ、デー…」

「却下よ。私もお見合い入れられてるの」

「そんなぁ~」

 

 振られたなリヴァル。ロイドの言葉を借りるなら、『残念でした』だ。

 

「それにしても外出禁止だなんて、お父さんはよっぽどシャーリーのことが可愛いのね」

「過保護すぎなんですよ。そのくせ、自分は忙しいからって休日まで仕事に行ってるんですよ」

「そんなこと言う割には、あんまり怒っていないんだね」

「まあ、それは私たち家族のために働いてくれてるわけですから」

「シャーリーは本当にお父さんと仲が良いのね」

 

 成程、これが理想的な親子関係か。

 オレのところとは全然違うな。

 

「そういえば、マーヤは最近どうなんだ?」

「私?」

「ほら、この前言ってたじゃん。家族と食事だって」

 

 リヴァルは何気なく聞いたつもりだろうが、今のマーヤには地雷の案件だ。

 

「…そんな―――」

「会長、これらの確認をお願いします」

 

 そこにずっとペンを走らせていたオレは少し不機嫌になっていたマーヤの言葉を遮り、終わった書類の束を会長に渡す。

 

「早?!」

「早いねキヨナガ、僕の方はまだもうあるのに…」

「この後上司から今度の仕事の説明があるので、今日はこれで失礼します」

「え?マジかよ」

「…私の分も終わったわ。用事があるから先に帰らせてもらうね」

「俺もだ」

「私も」

 

 オレに便乗するように、マーヤとルルーシュ、カレンも書類の束を置いて席を立つ。

 

「ええ?ルルーシュたちも?」

「喋ってばかりで手を動かさないからだよ。じゃあ、お先に」

「頑張ってね、リヴァル」

「失礼します」

「あっちょっと待ってキヨナガ、まだ僕の分が―――」 

 

 スザクを置いてオレ達は生徒会室から出た。

 

「…さっきはありがとうねキヨナガ」

「何のことですか?」

 

 部屋から出てすぐ声をかけてきたマーヤ。

 

「気まずくならないようにしてくれたんでしょ?」

「…オレはただ仕事を早く終わらせたかっただけですが」

 

 噓は言っていない。

 

「ふふ…うん、そういうことにしておくね」

 

 「それじゃあ」と別れの挨拶をしてオレはクラブハウスから出た。

 

 

 

「…怪しい」

「なんかいつもより距離が近かったね…」

「そういえば、最近マーヤのキヨナガ君に視線を向ける回数が増えてたような」

「ムフフ、これは話を聞く必要がありそうだわぁ~」

「あはは…会長本当そういうの好きですね」

 

 

 

 

「あれ?スザク君は?」

「生徒会の仕事で遅れてくる」

「あらま…まあいいや。二度手間は面倒だから後でキミが代わりに伝えといてね」

 

 特派の拠点に戻ると、ロイドから週末の仕事の説明を受けた。

 

「週末はナリタまで遠出するよ」

「ナリタ?」

「ナリタ連山に日本解放戦線の本拠地があることが判明してね。コーネリア殿下が本腰を入れて一気に連中を殲滅するつもりみたいだよ」

 

 まあ河口湖でホテルジャック事件を起こしたからな。妹のユーフェミアが巻き込まれたともなれば怒り心頭なのだろう。

 

「それで、オレとスザクは後方で待機という形で参加なのか?」

「そうそう。河口湖でのこともあったからまた出番があるかもよぉ~」

 

 ああ、唯一の侵入口であるトンネルの中で対峙した大砲のことか。対処にランスロットが当たったことは報告書で知っている。

 

「それに、また黒の騎士団と遭遇するかも」

 

 かもじゃなくて、ほぼ高い確率で来るだろうな。サイタマゲットーにコーネリアを狙って来たみたいだし。

 今度は私兵を揃えて本気で攻めてくるだろう。

 

「…ナリタ連山ってどんなところなんだ?」

「ん?植民地になる前から温泉町で有名なナリタ市の近くにある高い山だよ」

「その温泉の源泉は山からか?」

「そうだよ。なに?温泉に入りたくなっちゃった?」

 

 

 温泉の源泉がある山の中にある日本解放戦線のアジト。

 そして麓から進軍するコーネリア軍。

 

 この状況でゼロがコーネリア軍に勝つために練る奇策となると…

 

「ちょっと頼みがある…」

 

 ロイドにもう一度頼みごとをすることになるとはな。





新型機の型式はE-01にしました。
サザーランドの型式番号RPIは「皇立機甲歩兵」の略のようなので、新型機もELEVEN(イレヴン)の頭文字を取ってEにしました。
鉄血で出てきたモビルスーツの型式番号がEB-06とあったのもありますが…
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