嵐と共に過ごす徒然とは程遠い日々   作:ムラムリ

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古龍と一緒にほのぼのするだけの小説を書きたいなー、から始まったのに、そのほのぼのをそこまで書かないまま本編が完結したので、番外編を書きました。
気が乗ったら続きも書くんじゃないでしょうか。


嵐が俺を改造しやがりまして

 村の専属の狩人として毎日欠かさない事は、村、人としての縄張りを見回る事だ。

 代々この村の専属となってきた狩人達が、連綿と受け継いできた、その縄張り。俺がここに来てからは、この村の近くに生きるような獣竜は弱いか、相当に強いかの極端な二択になった訳だが、ただのジャグラスでさえも一般人にとっては強い脅威である事には違いない。

 だからその縄張りに入り込んだ者は、誰であろうと何であろうと容赦なく狩る。

 中に入り込んで作物を食い散らかそうとしたり、ポポを盗もうとした命知らずは勿論、興味本位や度胸試しのように少しだけ入り込んできたようなお調子者も若輩者も。そんなだから、バギィには分かりやすいようにすぐに鈴付きの首輪を付けたし、外で友達が出来たとしても中には入れさせない事を厳守させている。

 結局、竜が分かり合える人間は、竜と対等な力を持てるような人間だけなのだ。

 だから、バギィを連れている俺の方が異端で。

 更に加えて、時が経つに連れてクシャルダオラと繋がりを持っている事も半ば暗黙の了解になっていけば。寛容な人達が比較的多い村だと言えど、流石に畏れどころか、負の感情を抱くような人が出てくるのも仕方のない事ではあったりする。

 

*

 

『もうそろそろ、身体が脱皮の準備をするのだがな』

 久々に来たクシャルダオラは、何故かそんな言葉を、どこか楽しげな声で言ってきた。

 気付けば、白銀色の肉体が少しずつ錆び始めていた。

『錆びるの嫌いじゃないのか?』

『甲殻が分厚くなってくるのも、身体を動かす度に軋むのも心地の良いものではない。

 だがな、逆に言ってしまえば、その時だけは身体が錆びるのを気にする必要がないという事だ。

 海を泳ぐ事も、硫黄の溢れるような火山に赴くのも、この時だけは何も気にしなくて良い』

「……じゃあ、行きたい場所も決まっていたり?」

『とある山の窪んだ場所には、海を全て凝縮したかのような塩が溜まっているそうだ。

 見渡す限り、塩しかない純白の光景。それでいて何者も住めない、火山よりも、海底よりも、死に近しい場所。

 そこに行ってみたいと思ってな。来るか?』

 ……それ、俺達人間にとっても結構有名な場所なんだよな。

 ここから往復するには半年はまず掛かるだろうから行く気にならなかっただけで。

 何というのか、誰も知らない秘境ではなく、有名な観光地に行こう! と言われてちょっと落胆したような気持ちもあるような、無いような。

 でも、行かないという訳でもなく。

「それ、俺達の間でもちょいと知られた場所だったりするけど、ここからだととんでもなく遠いから、乗せてってくれるなら」

 俺が不在の間に他の場所から派遣を頼むにせよ、今の俺は金が有り余っているという訳でもないし。

『勿論だ。……それに、錆びた身体になると言えど、塩しか無い場所で私だけで過ごす事までは余りしたくないからな』

 クシャルダオラは、地底に潜ってからというものの、傲慢さがかなり薄れていた。

 そういう弱音みたいな事も平然と口に出すくらいには。

「それで、もうどの位で錆び始めるんだ?」

『冬が過ぎる頃には、錆び始めるだろう』

 今は夏が過ぎたとは言え、雪はまだ降っていない。後半年くらいか。

「その位に、遠出しても良いようにしておきますよ」

『金とやらは必要か?』

「……少し、恵んでくれると嬉しい」

『ふむ……。いや、私がここで脱皮すれば良いだろう? 錆びたものまで欲しがるのは理解出来ないがな』

「……それなら、釣りが出るにも程があるな」

『なら、急ぐ必要もない。色々巡っていこうか』

「りょーかい」

 俺自身、表向きは少しばかり素っ気ない素振りをしつつも、多分時が近付いて来るに連れて子供みたいにワクワクしてくるんだろうな、と思った。

 

*

 

 冬が少しずつ深まってきたある日の夜。

 久々にやってきた組合の人から、ここらの継続的な調査の纏めと引き換えに各地の調査報告書を貰って読んでいた。

 捕獲された竜やらの大きさの変遷を辿って、特異な出来事が起きていないかの調査。

 飛行船を使った調査での、ラージャンやイビルジョーといった特に大きな被害を及ぼす竜種に対する事前警戒が出来るかの試み。

 それとエルガドでは、とうとうキュリアの根絶を達成した事が大々と書かれていた。

 取材を受けたのか、あのエルガドの王様が猛き炎や王国騎士団と共に傀異化した竜を討伐する写真が載っていた。

 キュリアを根絶すれば協力関係も終わりかと思えば、そういう訳でもないようで。

 特に被害の大きかったエルガドやカムラから離れる事が増えても、過去に数多の同族を狂わせたガイアデルムに関しては、これから先地上に出す事を許さないように動き続ける事を王国騎士団に告げたそうだ。

 そして、王国騎士団もそのように動く事を望む、と。

 人語を理解するところから、新大陸にまで行ってネルギガンテにまで協力を取り付けて。

「なんっつーのか、そうしないともう生きていけないのかね、あの王様は」

 小山の大将のキリン亜種とは背負っている……背負わされたものが違い過ぎる。

 次のページをめくる。

「…………」

 俺の両手は、本を触っていなかった事に気付いた。……いつから?

 ページを戻してみる。無意識の内にやっていたように、風を使って。

 ぺらり、とそよ風がページをめくった。器用に一枚だけ。

 ……戻せた。

「……俺、どんどん人間離れしていくな……」

 意識しなかったら、人前でもやってしまいそうというか、きっとその内やってしまうんだろうな、という確信。

 クシャルダオラが俺に与え続けた力は、最早俺の本質そのものになっていた。

 

 少し、外に出てみる事にした。

 見張りの人には適当に誤魔化して、人の縄張りの境界線をぶらぶらと。

 風に意識を張り巡らせてみれば、目を閉じようとも周りの事がある程度ではあるが、分かる。ゴア・マガラが見ている光景もこれと似たようなものなのだろうか?

 夜。流石に肌寒さが強くなってきている時期。風を纏いながら歩いていると、ここらの近くに良く現れる竜の一匹、トビカガチの亜種の気配を感じた。

 ここらの竜の中では随一と言っても良い強さではあるが、肉体までが特段強い訳でもなく、毒針の扱い方に長けていると言った印象だ。飛ばして使うだけではなく、地面に突き刺して罠のように使ってウルクススを追い詰め、仕留めていたところを見た事がある。

 襲ってくる気配はなく、偶然近くに居合わせただけだろう。冬に向けて、脂肪でも蓄えようとしているのかもしれない。

 ただ……何故か余り無視したくないような気持ちに駆られる。不快に思うような感覚だ。

「……」

 思い当たる事が一つ。クシャルダオラは、毒が苦手だという事。特にエスピナスなどは大っ嫌いらしいし、同じ古龍であるオオナズチも意思疎通し易いにせよ、近くには寄せたくないらしい。

 俺自身も毒に弱くなっていたりするんだろうか?

 ……そう言えば、この頃辛いものを食いたくなる事が少なくなってるような?

 トウガラシを煎じて作るホットドリンクを想像して、出来れば飲みたくないという感想が咄嗟に出てきた。

 いや……いや、それよりも……鉱石に食欲を沸かせるようになるんじゃないか?

 ライトクリスタルとかノヴァクリスタルとかを見て、口に入れたくなったら、俺はどうしたら良いんだ?

「……分かんねえ」

 俺がここから先どうなるのか、その何もかもが。

 悪い事か良い事かって問われたら、総合的には良い事に傾くのは分かりきった事で、研究者からしたら垂涎ものなのだろうけど。それ以上に俺自身がどんどん人間離れしていく事に、月明かりもない真っ暗な森の中を突き進んで行かなければいけないような、強い不安がある。

 …………また、巫女に会いに行くか。

 キリン亜種の鱗を持っていけば、巫女もそれを察して帰って来てくれるだろうし。

 俺がこの先どうなっていくかを少なからず推測出来るのは、巫女が居るあの集落の人達しか居ない。少なくとも、俺が知る限りでは。

 

*

 

 本格的に冬が始まった頃には、俺がクシャルダオラと共鳴してからも親しくしてくれていた狩人の仲間と手紙のやりとりをして、俺がここを数週間離れても問題ないように調整出来た。

 それから、どうにも他の場所でティガレックスかゴシャハギの被害でも食らったのか、ポポの出荷が昨年と比べて盛況で、その作業も手伝ったりしていると、唐突に村長に呼ばれた。

「新しい血を貰いに行くのに、同行してくれ」

「……」

 この日が来たか、と思った。

 引き継ぎの時に何か思わせぶりな話をちょいとされたのと、それから時々聞く噂話やら、この村の獣竜に対する価値観の肌感である程度は察していたのだが。

 この村には、狩人の技量の向上で大半が失せていった風習が未だに残っている。

 空気感の違いを察して黙ったままの俺に対して、それを肯定と捉えたのか、村長が口を再び開く。

「では、その旅程と、そこで執り行う取引の詳細を伝える。

 いつかこの村を出ていくとしても、この事は他言無用だ」

 ……端的に言えば、とにかくデカいガムートとポポを三対一で交換する、との事だった。

 多分、それ、銀嶺ガムートとか言う二つ名だろ。

 

 要するに、この村には獣竜に対する畏敬が強く残り続けている。

 狩人の進歩によって、古龍すらも比較的容易に狩れるようになった昨今、一般の民の中では薄れ始めつつあるそれが。

 俺の雰囲気か、興味本位でか、また近くにやってきたクシャルダオラと話せば。

『……アレに関しては、黙っておこう』

「……何故です?」

 距離を離しての会話。部屋の中で独り言のように話す俺の事を、久々に来ていたもうほぼドスバギィのバギィは既に理解していて、柔らかいベッドの上でぐでっとしている。

『まあ、何だ。とにかく。

 貴様が忘れようとしていたものを、きっと思い出す事になる』

「はぁ……?」

 クシャルダオラが何を言いたいのか良く分からないままだったが、どうにも詳細を言いたくはないらしく。

 取り敢えずは、と近況を話す事にした。

 二十日間程はここを離れても問題ないように調整出来た事。

 それと、とうとう俺自身が自発的に風を操れるようになって、ついでに辛いものとかを食べたくなくなってきた事。

「また近い内にあのキリン亜種のところに行って、この後どうなるのか聞きに行こうと思ってる」

 そこまで言うと、少し不満そうな感情が。

『別にあの猛き炎まで埒外じみた存在にはならないのだから。それだけで良いのではないのか?』

 何と言うか、ベクトルが違うんだよな。ベクトルが。

 ただ、それを直接言ってもあんまり伝わらなさそうだなあ、と。

「うーん……」

『とにかく、貴様の寿命が伸びたり、更に私に近付くようになって人里に居られなくなったなら。

 その時は私と共に来れば良い』

 ……こいつ。そもそも、俺が人外になる事を望んでやがる。というより、クシャルダオラが望むように、俺は改造されている? そこまでの能力があるのかは知らんが、十二分に有り得る。

 それで多分、クシャルダオラが不満に思ってる事の本質は、たった二十日しかここを空けられない事だ。

 更に言えば、俺が人間社会のしがらみに絡まっている事。

 ……そこまでは手放したくないんだけどな。

 最早、ライダーにでも転身した方が良いんだろうか。それもそれで嫌なんだけど。世間の風当たりもまだまだ強いし。

 溜息を吐いて、ドスバギィに占領されているベッドを押し退けてスペースを作って、横になる。

「俺、クシャルダオラになるんだってさ」

 何言ってるんだこいつ、という目で見られた。

「もう、こんな事も出来るんだぞ」

 ドスバギィの身体をなぞるように風を流してやれば、面白いように飛び上がった。

 

*

 

 恐らく銀嶺ガムートと、不利なレートでのポポの交換の為の数日間の旅。

 俺が登山した時に切り拓いた道とは大幅にずれて、森の中を淡々と。

 別にクシャルダオラもドスバギィも着いて来ない。

 数年に一度くらいしか使われなくとも、若干ながらに踏み均されているような道は、この慣わしが長年続いている事を示していた。

「いつもなら、鳥竜とかアオアシラとか、ティガレックスが襲ってきた事もあるんだけどねえ」

「……ティガレックスが襲ってきた時はどうしたんです?」

 そう言うと、手製のボウガンと腰に吊り下げた、大量の手製の肥やし玉を見せてきた。全員が持っている。

「この慣わしを止めたら、村が絶えるだけだからね。鼻にめがけてありったけをぶちこむのさ!」

「……勇ましい事」

「いやいや。最近知ったけど、カムラの民はそんなもんじゃないんだろう?」

「……うん、まあ」

 あの人達、狩人でもないのに、時にラージャンに向けてボウガンやら大砲やら放ったりするからな。

 しかも、噂話によるとラージャンが群れを成してカムラに押し寄せてきた時も問題なく退けたとか言うけど、流石にそれは嘘だと思う。……八割方は。

 

 二日目の昼過ぎから、ガムートの縄張りの一つに入った事を嫌でも理解する。

 巨体を保つ為に、柔らかい若葉とかそんな軟弱な食性ではなく、木ごと食して各地を歩き回るその痕跡が、どでかい足跡と共に並んでいる。

「うおあ……」

 声にならない声が出た。

 その、足跡。

 銀嶺ガムートの最大金冠が大体27mくらいらしいが、多分……それより遥かに大きい。

 踏まれた大地は強く凹み、人が道を何度も叩き均すよりも遥かに固いまま。地中奥深くまで詰められてしまえば、そこから草花が新しく生える事など望めないだろうと思うレベル。

 同じ二つ名を持つ荒鉤爪ティガレックスであろうとも、歯牙にも掛けないような。

「あんさんはここに来た狩人様の中でも相当に強い方だと見受けるが、流石に山神様には敵わんだろう?」

 山神様……。

 その言葉に余り良いものは感じないが、素直に頷いておく。

「そりゃあ……そうですね」

「ま、何にせよ。村長の言う通りにしてくれや」

「はい」

 それでもどうしたら勝てるかを考えてしまうのは、狩人としての性だろうか。

 これだけの巨体なら乗ってしまえば振り落とせないだろうし、背中からチマチマ削れそうであるが何にせよ片手剣では表皮すら裂けないだろうし……撃龍槍でもないとやっぱり無理じゃないかな。しかも複数。

 その何よりも問題な事は……もしこれが襲ってきたら、俺を含めて誰も防衛出来ないまま蟻のように潰されるしかないという事なんだよな。

 ボケたりしてとかで。

 そんな事を思いながらも縄張りを横断して、ガムートを追い掛けて夜が近付いて来た。

 

 然るべき場所で焚き火をすればガムートの方から近付いて来るらしく、控えめな音楽と共に呼び寄せる儀式を行う。

 敵意が無い事を示す為に、俺は武器も防具も並べて見えやすいように置く。

 ……まあ、これで殺されてたら超特殊許可とかの依頼に並んで討伐されているんだろうけどさ。そんな相手に裸同然の状態で突っ立ってるっていうのは、誰だろうと平静じゃ居られない。

 程なくして、地響きが足元から伝わり始めた。

 夕闇の光景に、地平線の先からどデカい、黒い塊が見え始めた。

 心臓がばくばくと鳴り始めた。

 一応、このガムートが狩人を殺した事は無いらしい。ただ、村人総出でクシャルダオラと共鳴を結んでいる俺を騙して殺そうとしているんじゃないかという邪推がふと頭に入り込んでくると、思わず後ろを振り向いてしまう。

 収穫祭の時とかと同じようにしながら、控えめな音楽を奏でている人達。ただ、流石に緊張しているようで、時々リズムがずれたりする。

 比較的落ち着いているのは、一番歳上の人だったけれど、何と言うかそれは、ここまで生きたのなら別に死んでも良いというような達観に思えもして。

 結局、一番落ち着いているのは、本能からかガムートを味方だと理解しているポポの三匹だけだった。

 まあ……邪推でしかないよな。ないよな?

 前を振り向き直せば、まだまだ遠くに居るというのに出来ている陰影は更に大きくなっていて。地響きも段々と地震かと思う程に強くなっていく。それに連れて音楽も段々とリズムが崩れていく。

 まるでこの世の終わりかのような雰囲気を覚える。目の前にある武器防具を手に取ろうとも思えなくなる。

 クシャルダオラの言っていた事を思い出す。

『貴様が忘れようとしていたものを、きっと思い出す事になる』

 それも、畏敬だ。

 忘れようとしていた訳じゃない。ただ、けれど、クシャルダオラと繋がってからというものの、古龍との距離すらも近付いてしまって、畏れ敬うしか出来ないという存在が頭からすっぽり抜け落ちていた。

 逃げ切れるであろう距離がとうとう無くなった。

 地響きと心臓の鼓動がごちゃまぜになる。

 流石にあのガイアデルムの幼体と比べたら多分小さいが、肉体の密度で言ってしまえばこのガムートの方が遥かに高い。多分、真正面から力比べをして勝つ事が出来る程に。

 地響きが地震と等しい程になる。焚き火程度では到底映しきれないガムートの全体像。闇夜が近付いて来て、その巨大なシルエットばかりが大きくなってくる。

 後から追うように、普通のサイズのガムートやポポが付いて来ているのに、かなり近付いて来てからやっと分かった。

 

 でかい。

 とても、でかい。

 とんでもなく、でかい。

 頭殻は完全に二つに裂けていた。伸びた牙や甲殻の先は最早既に朽ちたかのような色合いを出しながらも、ぽろぽろと崩れ落ちそうな雰囲気は微塵もない。

 太く長い鼻は、その一振りでどれだけの破壊力を出すのか見当もつかない。何はともあれ、どんな装備を着た狩人だろうがぺしゃんこに潰す事だけは分かる。

 それからその身に内包されている冷気は、一体どれだけなのか。人間はおろか、ポポやガムートまで含めて、この場所に居る全てを凍てつかせる事が出来ても全くおかしくない。

 そんな、全てが規格外なガムート……銀嶺と言う二つ名すら烏滸がましいようなそのガムートは、俺の数十歩先で、止まった。そのガムートにとっては一、二歩の距離。

 俺は突っ立っているだけで良い。交換自体は、後ろの村人達が執り行う。

 三匹のポポが引っ張られて、そのガムートの前に出される。そして、何かを命じたのか、小さなガムート……大きさの感覚が麻痺し過ぎて、それが成体なのか子供なのかすら分からない一匹のガムートが、ポポを一匹鼻で押し出してくる。

 押し出されたポポを村人達が恭しく受け取れば、ガムートが軽く鳴く。それだけで三匹のポポは新しい主であるガムートに着いていった。

 ただ、それだけ。儀式的な事をしているのは人間の方だけで、ガムートの方は強いて俺に多少興味を持っているように見えるだけ。

 交換が済み、相も変わらず村人達が恭しくしていると、その巨大過ぎるガムートが少し鼻を動かして、ゆっくりと俺に近付けてきた。

「……!!??」

 ガムートからしたら、クシャルダオラと共鳴している俺に興味を持っただけなのだろう。

 ただ、その巨体が軽く匂いを嗅いだだけで、一瞬にしてそこから空気が消え失せたような感覚に陥った。

 俺は半ば無意識に風を操って窒息を防いでいたが、後ろの村人達まで影響が出たのかバタバタと倒れる音が聞こえた。

 けれど、それ以上は特に何かをする事もなく。

 そのガムートはゆっくりと踵を返して俺に背を向けた。ガムートの太く短い尻尾が俺の上を通り過ぎ、そして去っていく。

 それに続いて、普通のガムートとポポ達も去っていく。

 距離が出来ていく。少しずつ、少しずつ。

 地響きが地震と呼べる大きさではなくなっていく。

 通常サイズのガムートの陰影が目立たなくなっていく。

 そして、その巨大過ぎるガムートの陰影が遠目でも常識的な大きさにまで落ち着いていき、そこで俺はやっと息を吐く事が出来た。

 そして振り返ると、未だに失神している村人達が居て。慌てて介抱に取り掛かる。

「ほんと、まったく……その、なんだあれ、なんと言うのか、なんとやら……」

 感嘆とする言葉ばかりが出てきて、形容する言葉が何一つ出てこないのが、俺が受けた衝撃の大きさそのものを物語っているようだった。

 

*

 

 後日。

『実はな。あのガムートからは、介錯を頼まれてしまってな』

「……え?」

『アレを見て、どう思った?』

「どう、とは……取り敢えず、本当に何もかもが規格外だな、と。

 それと天敵のティガレックス……同じ二つ名を持つ荒鉤爪と呼ばれる個体でもアレには全く敵わないだろうな、と」

『それだけか?』

「えーっと……? まあ、万一襲ってきたら、蟻のように潰されるだけだろうな、と」

『その襲うような事が起きる可能性は万一にしか無いと』

「…………えっと?」

『アレは巨体になり過ぎている。言い換えれば、その身体を保つだけで、食さなければいけない量が桁違いということだ。

 身体を保つだけでも、幾多の縄張りを歩いて更地にし続けている。幸いここらは龍脈が通っているから、それだけなら、その食す速さに再生はどうにか間に合っているがな』

 ……言いたい事を、理解した。

『アレはその通り、荒鉤爪にも容易く勝てるだろうよ。

 だが、そう戦った瞬間。戦闘に活力を注いて、その身体が温まってしまえば。アレは最早止まる事が出来ない。

 飢餓に陥ったイビルジョーのように、死ぬまで際限なく森の全てを更地にして回る』

「万一、ではなくて、かなり可能性の高い事なのか……。

 ……でも、どうやったらあのガムートを止められるんだ?」

『全てが規格外という事は、呼吸すらも大量に要する事だ。

 そして一度倒れてしまえば、あれ程の巨体は最早、立ち直る事すら出来ん』

「……ああ、なるほど」

 あのガムートを止めるには、ネルギガンテとメル・ゼナでも苦労するだろうと思っていたけれど……クシャルダオラが一番容易く、あのガムートを止められるのか。

『……古龍と、他の獣竜の最たる違いは、龍の力を身に取り込み、操れる事だ。

 イビルジョーやあの黒いジンオウガなど、時に龍の力を操る竜も居るには居るが、あれらがやる事と言えば龍の力をそのままの形で出し入れしているだけで、我等古龍から見れば余りにも稚拙だと言わざるを得ない。

 言ってしまえばアレはな……ただの獣竜の、龍の力を扱えない者の、限界の一つだ。

 そしてあの時登頂してそのまま力尽きた貴様のように、最早そこからどこにも行く事が出来ない』

 哀れ、というにも、その言葉すら軽過ぎる気がした。

『別にそんな止めてやる義理なども無いのだがな。

 エルガドの王と関係が出来た上で、そんな事を断ったら私の身が危ないのでな。

 それに形は何であれ、ただの竜から頼りにされるのはまんざらでもなかった』

「まあ……その時はお願いします」

『うむ。

 それと貴様に関しては、そのようなどうにもならない行き止まりに到達してしまう事は無いようにするから安心しておけ』

 ……とうとうこいつ、俺を自分の意思で改造している事を公言しやがった。




結局あんまりほのぼのしてなくね????

男:
・風を自発的に操れるようになった(そよ風程度だが、本のページはめくれる)
・氷耐性 + 1
・毒を持つ竜やらに嫌悪感を抱くようになった
・刺激物が好物から外れた

クシャルダオラ:
・そろそろ錆びる
・二度目の霊峰への登山の時に、男が風を纏い始めていたのに気付き(活動報告のボツ文章切り抜き)、そこからこっそり色々試し始めていたりする

銀嶺超えガムート:
30mオーバー。
時限爆弾。悪神落ち間近。
それを自覚しており、クシャルダオラに介錯を頼む。
男の事は、死ぬ前に興味深いものが見れたという気持ち。

因みにガムートはMHST2で少し触れたくらい。
強シンボルのガムートに何もさせて貰えずに三乙させられた気がする。
いや、相性有利ぶつけ続けてればどうにかなったんだっけ? 最初にゲームオーバーになったの凶光化タマミツネだった気がするから、多分どうにかなったなこれ。
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