異性装系魔法少女   作:麻婆うどん

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短めの回です


悪夢

 

暗い廃工場の中。

地に落ちた彼女(天使)が黒い人影に純潔を奪われそうになっていた。

 

「やめろ」

 

あいつの前では決して使わない荒い口調が出てしまう。

 

「キャハハ」

 

聞くだけで吐き気を覚える邪悪な笑い声が頭上から聞こえる。

視線を上に上げると彼女と同じくらいの背格好の少女達が笑っていた。

 

何故、笑っていられる?

 

同じくらいの年の少女が襲われているのだぞ?

特に一番前で笑っている少女。

何故か見覚えがあり、一番怒りが湧き出てくる。

 

「やめろ!」

 

衣服が破られ裸体が露わになるが誰も彼女への行為を止めようとしない。

誰も彼女を助けないのなら俺が助けるしかない。

そう考えつくと目の前に転がってきた彼女の武器(ガンブレード)を握った。

そこで俺の意識は一度途切れる。

 

 

意識が戻ると黒い人影はすべて地に伏せていた。

全く覚えていながいが体や武器に付着している体液から察するに全部俺が倒したのだろう。

 

「ひっ!」

 

そういえば上にいた女達はいないな〜、などといった事を考えていると背後から怯えた声聞こえ振り返る。

そうだ、俺は彼女を助けるために人影を倒したんだった。

その事を思い出し手に持っていた武器を適当な場所に放り投げる。

そして空いた手を差し出す。

腰が抜けて立てていない彼女なら掴んでくれるだろうと思った。

 

しかし、予想に反し差し出した手が強く振り払われる。

予想していなかった行動に混乱し、呆然としていると震える小さな声が耳に入ってくる。

 

「いや・・・」

 

何故、俺を拒絶する?

 

「来ないで・・・」

 

何故、俺から逃げる?

そして何故・・・

 

「お兄ちゃん」

 

俺に怯えている(・・・・・・・)

 

 

「痛って・・・」

またあの夢か?

 

額の痛みによって急速に目が覚める。

目を開けば痛みの原因はすぐに分かった。

どうやらいつも通り自分の右手で額を殴ったらしい。

この夢をみるたびにこのように起きるのが習慣になってしまった。

 

「痛ッ!」

バーカ、昨日の大怪我忘れたのか?

「こちとら寝起きなんだよ」

 

上半身を起こそうとすると額の痛みよりも大きな痛みが全身に走り体が強張る。

昨日、ウィッチ・・・シルバーロータスと共闘し何とか突然変異のインクブスを倒せたがあまりにもダメージを負って、時間がかかってしまった。

俺の回復は睡眠時間に比例する。

今日はほとんどの寝れなかった為かほとんどの怪我が治っていない。

 

・・・やっぱ休んだほうがいいんじゃねーか?

 

痛みを堪えながら制服に着替える様子を見て相棒が提案してくる。

いつもなら一考するところだが今日はそういうわけには行かない。

 

「昨日も言ったがあの女は絶対今日動く」

 

僅かしか彼女に関して俺は知らない。

だけど知っている情報からある程度性格は予想ができる。

それに・・・

 

「今日はあの日だろ」

あーそうか

 

ネックレスである相棒には目がない。

しかし、おそらく見ているであろうカレンダーの今日の欄には丸が書いてある。

 

あいつの見舞いの日か

 

正規の相棒と過ごした日を思い出しているのか懐かしむような声で呟く。

それを聞きながら着替えを済ませると荷物と相棒を持って一階に降りる。

 

 

どういうことだ!

 

異界の闇に浮かぶ白磁の円卓。

オークの長であるサンチェスの怒声が響く。

同じ長同士でも半数ほどがその威圧感に動けなくなる。

 

うるせーな。そんなに叫ばなくても聞こえるぞ

 

しかし、その怒りの矛先であるブラドは気にすること無く眠そうに目を擦る。

 

だいたい、なんでそんなキレてるんだよ?

とぼけるな!

 

招集の際に目的を伝えておいたにもかかわらず発するその言葉に円卓に拳を叩きつける。

 

貴様の勝手な行動で我らの仲間が死んだのだぞ!

 

ブラドを含む全てのインクブスは間近にある大規模侵攻に向け兵を温存するよう伝令がでていた。

にもかかわらず無断でニホンに兵を送り、誰一人として帰ってくることがなかったのだ。

あまりにも自分勝手な行動をしておいてしらを切る様子にサンチェスは怒りを隠すこと無く声を上げる。

 

なんだそんなことか?

そんなこと、だと!

 

くだらないこと、とでも言うような言い方に怒りはさらに増す。

椅子から立ち上がりサンチェスはブラドに向け凄まじい敵意と殺意を向ける。

 

サンチェスよ。一度落ち着け

 

一触即発の空気の中、闇の中からどこからともなく現れた影がサンチェスをなだめる。

 

しかし!

他者の怒りはコイツの生きがいだぞ

 

ブラドのその性格は誰もが知っている共通認識である。

怒りが霧散した訳では無いがこれ以上の憤怒は無駄と感じたサンチェスは不満げな表情で椅子に座り直す。

 

ただブラドよ。何故、勝手な行動をしたか聞かせてもらおうか

 

先程までの雰囲気とは異なり真剣な口調で影が問いかける。

その実力の高さからある程度のことならば許されていたが今回のことは目を瞑れない。

伝令を無視し侵攻をしたことと、他の種族の軍を使い全滅させたこと。

どちらか片方でも十分大きな問題にも関わらずまるで反省の色もない様子に影も決して表に出すことはないが怒りを覚えていた。

 

何故って言われても・・・なんとなくかな

なんとなくだと!

 

その言葉にオークの長であるサンチェス・・・ではなくライカンスロープの長、ラザロスが反応する。

 

ラザロス、よせ

なんとなくで兵を向かわせたというのか!

 

サンチェスがなだめるがラザロスは止まらない。

ゴブリンと共に実力を認めているオークの兵士。

戦友である存在を全滅させ、その理由がなんとなくとはあまりにも死んだ兵が救われない。

 

いーじゃん、面白いことも分かったんだし

 

多数の犠牲を出しておきながら自分のことを語る言葉に誰もが苛立ちを覚える。

しかし、その一言に別の意味で反応するものがいた。

 

面白いこと、とは?

 

どこか普段とは違った雰囲気感じたシリアコが追求する。

ブラドは普段ふざけて入るが何処か寂しそうな雰囲気も纏っている。

そんな存在が面白いということが珍しく、どこか引っかかった。

だが、その内容が話されることは無かった。

 

別に、弱っちい君たちじゃ役に立たないようなことだよ

ッ!貴様!

 

明らかにこちらを下に見た言葉でラザロスの我慢は限界に達した。

 

我らを愚弄するのも大概にしろ!

だって事実じゃん

 

自信の怒声に続いた言葉に抑えていた怒りがさらに爆発する。

憤怒に身を任せ腰に据えてある剣を抜こうとした。

その時だった。

 

ッ!?

 

不意に剣を握った右手の親指に痛みが走る。

それだけなら問題ないのだが何故かその手は何も掴むことができなかった。

怒りよりも困惑が勝ち、空を握った手を見ると親指がなかった。

足元に視線を移すとそこには自身の指が落ちている。

 

だから言ったろ。事実だって

 

人差し指と中指を立てた銃のような形の手をこちらに向け、少し目つきを鋭くしたブラドがそう告げる。

先程までのこちらを見下した態度とは明らかに違う態度に背筋が凍る。

 

これでお前と俺の差はよ~く分かったと思うけど・・・

 

ブラドが何かをしたのは確実。

しかし、何を、いつ、どうやってしたかまで理解できず困惑と恐怖が生まれる。

 

まだやる?

 

殺意や敵意は草木かのように全く感じられない。

しかし、人ほどの体格からは想像できないほど不気味な圧がその場を支配する。

 

ブラド。やめろ

 

影が厳しい口調で命令する。

その言葉がブラドがかけていた不気味な圧を消し去った。

背筋が凍るような空気が消え、ラザロスは倒れるように椅子に座り込む。

 

は~いはい

 

他の長であれば即謝罪する状況であったがいつも通りの反省が微塵も感じられない適当な返事をする。

 

まあ、今回は俺が全面的に悪いし・・・そうだ!

 

柄にもないことを言うと、わざとらしく顎に手を当て何かを考え込むような(ポーズ)をとる。

そして、その場にいる誰もが耳を疑うような発言をする。

 

今度の侵攻の報酬の半分をお前らにやるよ

「「な!?」」

 

他の者を常に見下している者の提案とは思えない内容にゴブリンとオークの長は絶句する。

つまり、結果としてブラド自身の報酬は3分の1。

最初に影が提示した報酬よりも量が減る。

どう考えてもブラドのメリットはない。

 

・・・貴様はそれで良いのか?

別に、もともとふっかけて断る口実にしようとしてただけだし

 

先程まで・・・いや、普段とは違いすぎる態度に影を含んだ全ての長が驚き、言葉を失う。

 

ま、待て!

なんだよこれ以上の補填は嫌だぞ

 

とても被害を出した者とは思えないような発言。

しかし、今その事を咎めるものはいなかった。

 

いや、内容に文句はないが確証が・・・

何だ、俺が失敗するとでも言いたいのか?

 

その言葉にサンチェスは口を閉じる。

先程までの態度で信用はもはや皆無。

だが、僅かに見えた実力の片鱗からは説得力が出てしまっている。

 

・・・失敗しないのだな

まあだって・・・

 

念を押すように影が睨見つけ、圧をかける。

だが、いつも通りそれを軽く受け流し真剣な表情を浮かべる

 

どうせ、俺がいれば絶対に勝つんだから・・・

 

前回帰り際に言い放った余裕にまみれた言葉。

そこから笑みと共に胡散臭さが消え、自信のみが残った言葉を繋ぐ。

 

黙って見てろ




インクブスの会話・・・というか戦闘描写以外が難しい
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