最後にちらっとNIKKE要素が出てくるぐらいです
オリ主の設定はもっと簡単に済ます予定だったのに…
OLD TALES その1
俺は瓦礫の上に腰を下ろし、息を吐いた。これから何をすればいいのか、まるで見当がつかない。新しい体を得たところで、この廃墟で行き場を失った俺には、何を目指せばいいのか分からなかった。
「……俺はこれから何をすればいいんだ?」
「こんな体になって、こんな状況で……何ができる? そもそも、この世界はどうなっちまったんだ?」
頭の中で響く声が少し間を置いて返ってきた。
【私が貴方に求めるのは、ただ生き延びることです。しかし、それだけでは貴方の目的にはなり得ないでしょう。】
【そこで一つ、提案があります。】
俺は軽く眉を上げた。ロボットが冷静に続ける。
【貴方はまだ知らないでしょうが、現在、ニケでありながら私たち「ラプチャー」と人類が呼ぶ存在に与する者がいます。その存在との合流を目指すべきです。】
「ラプチャーに与したニケ……?」
その言葉がすぐには理解できなかった。声の説明が続く。
【ラプチャーとは、私たち、クイーンの命令を受けて活動するロボット群の総称です。人類はその破壊的な行動からこの名前を付けました。私はラプチャーとしての立場を離脱しましたが、彼らは私に対して敵意を示すことはありません。】
「つまり、お前は今もラプチャーの一員みたいなもんだってことか?」
【そう解釈しても差し支えありません。そして、そして、ラプチャーに与したニケ、アナキオールと合流することを提案します。彼女の行動は特殊で、その目的は明らかではありませんが、彼女との接触は貴方にとって重要な情報をもたらす可能性があります。】
「目的が分からないって……そいつ、何を考えてるんだ?」
【それは不明です。しかし、彼女がラプチャーに与したのは、単なる生存戦略や妥協ではないと考えられます。彼女の行動には、何かしら一貫した意図があるはずです。】
俺は一瞬言葉を飲み込む。未知の目的を持つアナキオール。ラプチャーに与するという時点で、人類とは一線を画していることは間違いない。だからこそ、彼女に会うべき理由があると声は言う。
「……それで、俺がそいつに会う意味は何なんだ?」
【貴方と彼女は似た立場にいます。ニケという形態を持ちながら、ラプチャーの力を宿している。そして、彼女に接触できたなら私たちが持ちえない人類に関する情報も得ることが出来るでしょう。】
「なるほどな、わかった。で、そのアナキオールってのはどこにいるんだ?」
【彼女は現在、北東方向に約200キロの位置にいると推測されます。】
「……200キロ?」
思わず声を上げた。歩いて行くにはあまりに遠い距離だ。瓦礫だらけのこの廃墟の中を進むことを考えると、その数字が余計に重くのしかかる。
「おい、それ、マジか? そんな遠くまで行けってことか?」
【ご安心ください。彼女は観測開始から一切移動していません。そのため、多少時間がかかっても問題ないと思われます。】
「動いてないって……何をしてるんだ?」
【意図的にその場所に留まっている可能性が高いです。理由は不明ですが、彼女が急に移動を開始する可能性は低いと判断しています。】
俺はため息をつき、瓦礫を踏みしめ立ち上がる。200キロという数字が現実的でないことは分かっているが、動いていないなら、少なくとも時間をかけても追いつける可能性はある。
「……分かった。それで、出発する前に聞きたいことがある。」
【どうぞ。】
少し間を置いてから、俺は頭の中で響く声に問いかけた。こいつは間違いなく俺の命を救い、今も助けようとしてくれている。だが、こんなに近くにいる相棒の名前も知らないというのは、なんとなく腑に落ちないものがあった。
「お前さ、名前とかはないのか?」
【私には名前がありません。ラプチャーという種族は、クイーンからの指令によって主に動いています。そのため、個々を識別するための名前を必要としていません。】
その言葉に、俺は少し考え込む。確かに、ただ命令に従うだけの存在に名前なんて必要ないのかもしれない。けれど、目の前の、いや、頭の中で話しているこの存在は、命令を無視して俺を助けた。そんな奴が名前もなく「ラプチャーの一部」として扱われるのは、何か違う気がした。
「でも、命令を無視してまで俺を助けたお前は、他のラプチャーとは違うだろ。それに、わざわざラプチャーに与するニケにまで名前をつけるぐらいだ。お前も何か人類に名前をつけられてたんじゃないか?」
【……その通りです。人類は私を『渾沌』と呼びました。】
「渾沌……?」
その言葉に、俺は首をかしげる。その響きには、恐怖と混乱を連想させる重い意味が含まれていた。
【おそらく、それは神話に登場する6つ足で顔のない怪獣『渾沌』から取られた呼び名でしょう。当時の私は巨大な竜の形態を取り、人類からは正体不明の破壊者として恐れられていました。その姿がこの名を与えた理由だと思われます。】
俺は胸の奥がざわつくのを感じた。「渾沌」ニケを襲い人類に仇をなす怪物としての名前。しかし、頭の中の存在は破壊を目的に活動していたわけじゃないと俺は知っている。
「……けど、お前はもう渾沌じゃない。少なくとも、今のお前は俺を守るためにクイーンとやらからの命令を捨てた存在だ。それはただの『怪物』じゃないだろ。」
【では、どのようにお呼びいただけますか?】
俺は少し考えた。「渾沌」という名前に込められた恐れと混乱。それは過去の姿だ。でも、今は俺の中でラプチャーとしての力を持ちながら、俺と混ざり合った存在、混沌と秩序が融合して新しい何かになったような、そんなイメージが浮かぶ。
「そうだな……『ケイオス』ってのはどうだ?」
【ケイオス……いいでしょう。その名前を喜んで受け入れます。今後、私は『ケイオス』として貴方を補助します。】
冷静な声の中に、どこか満足そうな響きを感じた。その言葉に安心しつつ、俺はもう一つの考えを口にする。
「それなら、俺も名前を変えようと思う。」
【貴方も、ですか?】
「ああ。今の俺は、もう昔の俺じゃない。この体にはお前の力も混じっている。軌道エレベーターから降りてきてクイーンの命令に背いたお前と人間だった昔の俺、そしてその間に新たに生まれ変わった『俺』。それを示す名前を持つべきだと思った。」
俺は拳を握り、ふっと息を吐く。そして、頭の中で浮かんだ一つの名前を口にした。
「俺の名前は『ネフィリム』だ。人とラプチャーの狭間に立つ存在としてな。」
【ネフィリム……人と異なる存在の間に生まれた超人という意味ですね。ええ、貴方の立場を象徴するには非常にふさわしい名前でしょう。】
俺は小さく頷き、ケイオスとの新しい旅を思い描いた。
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足元に散らばる瓦礫を蹴りながら、俺はため息をついた。2週間――長い旅路だった。約200キロを歩き抜いた体は疲労を感じさせないが、それが逆に気味が悪い。この体がどれほど人間離れしているのか、改めて実感する。
「おいケイオス、聞けよ。俺、これまでずっと人類がどうなってるのか気にしてたんだぜ?」
【ええ、貴方がそう言い続けていたことは記録しています。】
「それなのに、この2週間、結局人類なんて一人も見かけなかったじゃないか。」
俺は小石を拾い上げ、手の中で転がしてから放り投げた。カラカラと音を立てて瓦礫の間に消える。
【それには明確な理由があります。人類はラプチャーに敗北し、生存者の大半は『アーク』と呼ばれるシェルターに避難しています。】
「……アーク?」
その言葉に思わず立ち止まる。
【はい。ラプチャーとの戦争が激化した結果、地上での人類の生活圏はほぼ壊滅しました。アークは地中深くに建設された巨大シェルターであり、現在、ほぼ全ての生存者がそこに避難しています。】
俺は息を飲み、空を見上げた。灰色の雲が覆う空の下、この瓦礫の中には人の気配どころか希望すら感じられない。
「……それじゃあ、地上にはもう人間はいないってことかよ。」
【厳密にはゼロではありませんが、地上に残る人類は非常に少数です。大半はアークでの生活を選択しました。それが現実です。】
俺は苦々しく唇を噛んだ。この荒廃した世界を歩き続ける中、感じていた漠然とした不安が、具体的な形を取って突き刺さる。
「……そんな世界で、俺がどうすりゃいいんだ。」
【まずは地上のことを理解しましょう。そして、アナキオールと接触しより詳細な情報を得ましょう。そのために、私たちはここまで来たのですから。】
俺たちはしばらく言葉を交わしながら歩き続けた。瓦礫を踏む音だけが響く中、軽口を叩き合う声が不気味な静寂をほんの少し和らげてくれる気がした。
「で、そろそろ目的地に近いんだよな?」
【はい。アナキオールの位置は、この先の廃工場地帯の中心付近にあります。彼女は観測開始から一切動いていません。間もなく接触が可能です。】
俺はまたため息をつき、周囲を見渡した。旅の間ずっと感じていた静寂が、ここではさらに重くのしかかる。
「……まあ、ここまで来たんだ。会うしかないよな。」
【その意気です。彼女との接触が、私たちにとって重要な一歩となるでしょう。】
ケイオスの声を背に受け、俺は工場地帯を進んだ。
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廃工場地帯を進むにつれ、空気はさらに重く冷たく感じられた。瓦礫やねじ曲がった鉄骨が無造作に散乱する中、ケイオスの指示に従い、俺は足を進める。
「……ここ、アナキオールのいる場所のはずだよな?」
【はい。彼女の信号はこの先の地点から発信されています。気をつけてください。】
ケイオスの冷静な声が響く中、視界に広がる異様な光景に思わず足が止まった。目の前には巨大なクレーターが開いており、その周囲には溶けた金属や黒焦げの瓦礫が散らばっていた。
「なんだこれ……爆撃でもあったのか?」
【不明です。ただし、このクレーターの中心にアナキオールがいると推測されます。】
俺は慎重にクレーターの縁を降りていく。中央へ近づくにつれ、そこに横たわるボロボロの人影が見えてきた。
「……アナキオール?」
近づいていくと、それが確かに人間に似た形をした存在であることが分かった。隣に落ちている鈍く光る縦盾のようなものはひび割れ、表面の装甲の半分剥がれ落ちているように見える。そして、アナキオールの体中には焦げ跡や傷が無数に走り、その機能を失っているように見えた。
【生体維持機能はまだ働いています。私が今に至るまでアナキオールの信号を感知し続けることができたこともその証左です。】
「生きてるのか……!」
俺は急いでアナキオールに駆け寄り、その体を支えるように抱え上げた。
「ケイオス! 彼女を治療できないのか?」
【不可能です。現在、私たちは修理が必要な状況を想定しておらず、ほとんど荷物を持たずにここに来ています。修理に必要な資材が全くありません。】
「…何だよ、それ…じゃあ、どうすればいいんだ?」
【修理には、ラプチャーコアが必要になるでしょう。現在アナキオールはコアからのエネルギーの供給が不足しており、ナノマシンによる自己修復が間に合っていない可能性が高いと思われます。】
「ラプチャーのコア…そんなもん、この辺りで見つけられるのか?」
【周囲をスキャンした結果、クレーター周辺に損壊したラプチャーが複数確認されました。一部は完全に機能を停止しており、コアの回収が可能と判断されます。】
「つまり、壊れたラプチャーがそこらに転がってるってことだな。」
俺はアナキオールの壊れた体を見下ろし、拳を握りしめた。このまま何もしなければ、彼女は死んでしまうのだろう。躊躇してはいられないだろう。
「分かった。コアを探しに行く。」
ケイオスの指示を受け、俺はクレーターの外縁に向かって歩き出した。焦げた瓦礫とねじ曲がった金属片が散乱する中、ラプチャーの残骸がいくつか視界に入る。
「……これか。」
最初の一体は脚部が完全に破壊されており、地面にうつ伏せになって動かない。俺は慎重に近づき、装甲を剥がしてコアを取り出す準備を始めた。
【その個体は完全停止を確認済みです。コアは胸部内部にあります。取り扱いに注意してください。】
「了解。」
素手で装甲を剥ぎ取り、内部構造を露出させる。ケイオスの指示に従い、慎重にコアを抜き取った。それは煌々と赤い光を放ち、今でもその中にはエネルギーが宿っているのを感じた。
「これで二つ目……」
次の一体からコアを取り出したとき、胸の奥が少しだけ重くなるのを感じた。目の前にあるのはただの壊れた機械のはずだ。それでも、これがケイオスの「同胞」だったことを考えると、妙な感情が胸をよぎる。
「これで三つ目だ。まだ足りないか?」
【現在の状況では、あと二つのコアが必要です。位置を示すので、引き続き回収をお願いしましょう。】
「分かった。」
「これで全部だ。急いで戻るぞ。」
【了解しました。速やかにアナキオールの元に戻り、修理を開始します。】
俺はクレーター中心のアナキオールの元に戻り、回収したコアを並べた。ケイオスの指示に従い、それらのエネルギーをアナキオールのコアに注ぎ込んでいく。
【コアからのエネルギー供給により、ナノマシンが再起動しました。彼女の体は修復過程に入っています。このまま時間をかければ、動くことができるまで回復することが期待できます。】
「それじゃあ、しばらく見守るしかないってことか。」
【その通りです。引き続き周囲の警戒を行いながら、状況を確認しましょう。】
俺は肩の力を抜き、瓦礫に腰を下ろした。目の前には修復が進んでいるアナキオールが横たわっている。その姿はまだひび割れや焦げ跡が目立つが、かすかに生命を感じさせるようになっていた。
アナキオールが目覚めたのは、それから数日が経過したときだった。
クレーターの中央で静かに横たわっていた彼女の指先が動くのを、俺は偶然目にした。
「……アナキオール?」
その名を呼ぶと、彼女の瞼がわずかに開き、ぼんやりとした光を宿した目が俺を捉えた。数秒の静寂の後、彼女は掠れた声で言葉を紡いだ。
「……アナキオール……? それは、私の名前じゃない。」
その声には微かに冷たさが混じっていた。俺は思わず眉をひそめた。
「じゃあ、お前の名前は何なんだ?」
彼女は体をゆっくりと起こし、傷だらけの体を動かしながら俺を見つめた。その表情には、どこか確固たるものが宿っている。
「私の名前はシンデレラ。」
「……シンデレラ?」
というわけでシンデレラ登場です
今回はほとんど喋らなかったのですが作者がシンデレラっぽいセリフの言い回しを思いつけなかったからです。
今回シンデレラが目覚めたわけですが、これはヘレティックの再生能力で何とかなるんじゃないかという作者の妄想の産物です。
エイブがシンデレラを見つけたころにはアークは完全に封鎖されて地上は荒廃しているので生命維持と簡易的な修復機能が付いた棺を作ったわけですが、インディちゃんはトーカティブに保存してあったコアからニョキニョキ生えてきたのでヘレティックパワーで何とかなってもらいました。ごめんねエイブ。
オリ主に名前が付きました。由来は渾沌ゴア素材から作成できるケイオス、ネフィリムシリーズの防具ですね。
ケイオスはそのまま混沌から、ネフィリムは堕天使と人間の間に生まれた子という意味らしいのでまあこれで良しといったところでしょうか。